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2021.01.15

不動産投資ローンは転職すると不利って本当? 現役銀行員が解説します

不動産投資ローンは転職すると不利って本当? 現役銀行員が解説します

「転職すると不動産投資ローン審査に通りにくいの?」一般的に不動産投資ローンでは、転職直後は審査に通りにくいとされています。では、それはなぜか? 今回は、審査をする立場から銀行員が解説します。

転職直後は不動産投資ローンが組みづらい

不動産投資ローンは、投資対象となる不動産を購入する際に、購入者が借入れを希望して組むローンです。銀行など融資する側は、投資対象の不動産の事業性・価値を審査します。しかしそれだけにとどまりません。融資する相手の「安定性」と「安全性」という2点を重視します。ここからはこの2点に沿ってポイントを説明していきます。

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勤続年数が不動産投資ローンの条件になる理由

不動産投資ローンは、購入したアパートや区分所有マンションなどを賃貸して、その家賃で返済していきます。

しかしながら家賃収入は保証されているものではなく、入居してもらえなければ収入が減ります。特に区分所有マンションなど戸数が少ない場合では、未入居の場合すなわち収入ゼロにもなりかねません。こうしたリスクを内包するからこその投資なのです。
 
不動産投資ローンの審査では、家賃収入などのシミュレーションやレントロールは重視しますが、それを鵜呑みにすることはありません。

例えば「家賃収入が毎月50万円で、家賃保証付きなので入居率は100%」といったレントロールを示されても、銀行では額面通り受け取ることはないのです。

空室はあって当たり前、家賃保証も永続する保証はないので、審査に加味しないところも多いです。

もちろんそこまで厳しく審査すると、今度は融資可能な人がいなくなってしまうのでバランスをとりますが、業者などの作成した予測数値を100としたら、銀行は80%、良くて90%程度に低く見ます。

これを「数値にストレスをかける」などといいます。このように家賃収入が絶対ではないので、家賃収入だけでは返済できなくなったときのセーフティーネットとして、ほかに安定した収入が求められます。

そのために、家賃以外に安定した収入があるかどうかが審査対象となる、というわけです。家賃以外に安定した収入がなければ、審査は通らないと言ってもいいでしょう。

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不動産投資の経験者なら、何をいまさらと思うかもしれません。これから不動産投資をしようと検討されている人は、不動産投資ローンの審査においては勤続年数が重視され、ハッキリと条件化されることもあるということを覚えておいてください。

不動産投資ローンが求める勤続年数

参考までに、いくつかの不動産投資ローンで年収や勤続年数に関する条件を見てみましょう。

前年度の給与収入が550万円以上で、同一勤務先に2年以上勤務されている給与所得者の方

引用:イオン住宅ローンサービス株式会社

同一勤務先に3年以上勤務している方(自営業の場合は営業開始後3年以上経過している方)。前年度の税込み年収(自営業の方は所得)が500万円以上で、返済期間中、安定した収入が見込める方。

引用:オリックス銀行

不動産投資ローンでは、金融機関各社によって基準が異なり、また条件など公開していないところもあります。しかし金融機関の求める数値はおおむね似かよっており、銀行員の視点から言うと「給与収入500万円以上、勤続年数3年以上が基本」と考えていいでしょう。

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ちなみに年収500万円以上の人がどれくらいいるかというと、サラリーマン全体で見ると3割です。

※全構成のうち500万円〜2,500万円超の割合30.7% 男女、正規・非正規含んだ給与所得者全体より

出典:令和元年分民間給与実態統計調査|国税局

職業選択は個人の自由であり、また働き方や勤め方に対する考えも多様化している現在ですが、銀行は「勤続3年未満は不安定」と考えています。

金融機関は、給与という安定した収入を「返済原資」(原資とは、もとになるお金という意味)ととらえているため、安定性の観点から勤続年数は長い方がよく、最低でも3年は必要、逆に言えば3年未満では安定していないと判断すると覚えておいてください。

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転職直後は転職先での年収が証明できない

転職直後はローンの審査が通りにくい原因として、転職先での年収が証明できない点も挙げられます。

給与所得の証明は、源泉徴収票(会社発行)や所得証明書、納税証明書(役所発行)が一般的です。これらの証明書は原則として1年間給与収入がないと発行できません。

ですから転職してまもない場合、自分の給与収入を証明することが難しくなります。転職直後でまだもらってもいない給料を年収とは言えません。かといって、辞めた会社の年収証明を出しても意味がないのは、言うまでもありません。

転職が多いと収入が不安定だとみなされる

安定性の観点から見ると、転職歴が多いとマイナスに作用する場合があります。

一般的にローンの申し込みでは、現勤務先と勤続年数、前勤務先(転職歴がある場合)と勤続年数の2カ所記入欄がありますが、前々勤務先の記入欄があるものは少数です。これも銀行の勤務先、勤続年数に対するある意味古い考え「勤務先は1つが基本、転職しても1回」が基本になっているからです。

しかしながら、記入欄がないからといって転職歴を調べないわけではありません。例えば満40歳で現勤務先に勤続10年、前勤務先に勤続5年の人がいるとします。一般的な大卒なら22か23歳で新卒就職すれば通算の勤続年数は17年~18年です。この人の通算勤続は15年なので、さらに転職歴があると考えられます。

数年といった短い期間で転職を繰り返していると、収入が不安定だとみられるだけでなく、本人の資質でも安定性に欠ける、とみられてしまうこともありますので、注意が必要です。

転職直後でも不動産投資ローン審査に通るケースもある

上記で述べたことと反する内容になりますが、転職直後でも、ローン審査に通る場合もあります。安全性がクリアされれば審査は通る傾向にあります。
ここでいう安全性とは、「給与が途切れることがないか?」ということ。突き詰めれば「会社が倒産するようなことはないか?」といった観点です。

現在、銀行ではローンを融資する人の勤務先も審査で重視しており、それは不動産投資ローン、住宅ローンどちらの場合も同じです。

良い会社に勤めている人ほど審査で有利
小さな会社の部長より、大きな会社の平社員の方が審査で有利となる場合もある

端的な表現をするとこのようになります。

大きな会社への転職

銀行の考える良い会社とは、潰れにくい会社といった意味です。何をもって潰れにくいと判断するのでしょうか? 結論から言うと、資本金や従業員数などを銀行の融資審査では重視します。

個人事業主より法人、中小企業より大企業、非上場より上場会社といった具合で、資本金も大きいほど安全性が高いと考えます。勤務先の規模、従業員数などを融資審査に用いる手法は「スコアリング審査」「AI審査」などとよばれ、住宅ローンやマイカーローンなどいわゆる消費者ローンの審査では主流になりつつあります。

スコアリング審査では特に安全性を重視するので、同じ年収・同じ勤続年数の人でも、上場会社勤務の方が中小企業勤務より有利になる傾向にあります。

参考までに、安全性の面でいうと、公務員、役所職員、公立学校教員はダントツに「安全性が高い」と判断します。なぜなら勤務先が倒産することがないからです。

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このように転職といっても、良い会社、大きい会社への転職なら審査にマイナスではなく、プラスに作用する場合もあります。規模の大きい会社への転職は「ステップアップのための転職」とよばれ審査で有利となる場合もあります。

年収が大幅アップした場合

転職により収入が大幅アップするなら、これもステップアップと考えられ、融資審査でプラスに作用する場合もあります。

ただし、勤務先規模と引き換えに年収がアップした場合、例えば「上場企業の課長さんが、取引先の中小企業重役に転職し、年収が2倍になった」場合、審査の上ではステップアップとはみなしません。年収が2倍になっても、勤務先の安全性が低下してしまうと手放しでプラス評価はしてもらえないのです。

不動産投資ローンで、同じ物件購入で以下2人が同時に審査の申し込みをすると仮定します。

Aさん:中小企業から上場企業に転職して、年収は増減なし
Bさん:上場企業から中小企業重役にヘッドハンティングされ、年収は2倍

ほかの審査要素を抜きにするなら、私はAさんを選びます。銀行は今の年収より、将来にわたる安全性を重視する点も、覚えておいてください。

転職直後に不動産投資ローン審査を通すためのポイント

転職を検討している場合や、転職してまもない場合など、これまで説明してきたような、審査の障害となる心配が当てはまる人に、いくつか参考となるポイントをお話しします。

転職前にローンを組む

転職が具体的に決まっていたとしても、不動産投資ローンを借りる前なら問題ありません。一度ローンを借りてしまえば、そのあと転職したとしても、銀行に報告する義務はないからです。これは決してずるいこと、悪いことではありません。

元来銀行の融資申し込みでは「申込時の条件」として勤務先や年収を申告して審査を受けるのが原則で、極端に言えば融資を受けた翌月に転職したからといって、銀行に報告する必要はないのです。

ですから、不動産投資ローンの申し込みと転職時期が重なりそうでも、もし転職時期をあとに延ばせるなら、その方が審査で不利にならないといえます。

繰上返済を検討する

不動産投資ローンでは、収入の安定生、安全性だけではなく返済能力も重視されます。今回以外に不動産投資ローンが残っていたり、住宅ローンやマイカーローンなどの融資が残っていたりすると、その分返済比率が高くなります。

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そこで自己資金がある人なら、こうした以前からの借入れ(既存借入、既往借入とも)を繰上返済し、債務を減らして返済能力を良くしておくこともよいでしょう。ただし、こちらもテクニックがあり、次項で紹介する例とあわせて検討することをおすすめします。

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借り換えや「メイン化」を検討する

不動産投資ローンの融資を受ける銀行以外の金融機関で、不動産投資ローンや住宅ローンなどの既往融資があるなら、それらの残債を今回の銀行に移す、つまり借り換えすることもよいでしょう。

既往融資については、新規の融資申し込みのときすべて申告し審査を受けるのが一般的です。ですので、今回融資がOKとなったなら、あなたの既往融資は無理に繰上返済しなくてもよいと考えられます。

銀行にとっても、他行の既往融資の借り換えはメリットも大きくなります。こうした取引の拡大を「メイン化」とよんで、銀行では歓迎されます。

例えば既往他行ローンを借り換えするのが難しければ、あわてて繰上返済せずにその銀行へ新規で定期預金などで預けると「返そうと思えば既往融資を返済するお金は持っている」とアピールできるので、有効です。

不動産投資ローンを組みたいなら転職時期をよく考えて

ここまで不動産投資ローンと転職、勤続年数について解説してきましたが、最後に注意していただきたいことを2点お伝えしてまとめにします。

それは「ムリをしない」「ウソをつかない」です。

まず、ムリをしないでください。

いくら転職前ならよいといっても、不動産投資ローンを借りた直後に転職して、もし収入や待遇が予定通りでなかったら? 自分が長続きできそうもない職場だったら?

家賃収入が減ったときに、融資返済に充てる給料が途切れてしまうかもしれません。

不動産投資は区分所有マンションなら数百万円単位で、サラリーマンでも可能な投資です。しかし、決して少額ではありません。そして、転職という、こちらも小さい出来事ではない転機を同時期に迎えるなら、無理せず慎重な判断、行動をするようおすすめします。

そして、ウソはつかないでください。

不動産投資ローンではレントロールなど投資物件に関わるウソ(虚偽)が目立ちます(私の経験上)。しかし勤務先や年収なども虚偽はあるのです。

具体的にお話しすることはできませんが、ウソはいけません。虚偽の内容で融資を受けても、必ず発覚します。その場合ペナルティーも大きく、それも具体的には言えませんが相当な痛手になります。

ですからどうか、ムリせずウソはつかない、この2点はぜひ覚えておいてください。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

加藤隆二

勤続30年の現役銀行員。金融ライター。 入社してから渉外担当、融資担当者として数え切れないほどお客様と会ってきました。とくに年齢を重ねてからは融資窓口で「事業資金融資」「住宅ローン」「不動産投資」など、あらゆる融資でお客様の相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けない自信があります。そんな一介の銀行員目線で記事を書いています。

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