不動産投資にかかる費用とは〜初期費用・運用費用・手数料・諸費用など
不動産投資は、初期費用・運用費用・手数料がほとんどかからないといわれます。ですが、費用が最もかかるのは不動産投資を始めるタイミング。投資用の不動産を所有するための諸経費がかかります。今回は諸経費には何があるのかを見ていきます。また、不動産投資をするのに初期費用だけ用意すればその後は費用がかからないのかについても考えていきます。
不動産投資の仕組み
不動産投資は、物件を購入してその部屋を第三者に貸し出しして家賃収入を得るという仕組みです。物件の購入価格は高く、場所と物件によって数百万円から数億円と高額なので、よほど資産がある人ではないとできないと思われるかも知れません。
しかし不動産投資には、金融機関から借入れを行って物件を入手しローンの返済は家賃収入を充てて返済していくという方法があります。金融機関は物件そのものを審査するため、潤沢に資産を持っていないサラリーマンでも、審査が通れば始めることができます。
動画「リノシーチャンネル」でも解説しています。
不動産投資の始め方〜具体的な5つの手順・やり方などを解説
不動産投資にかかる初期費用
▼結論
物件価格の8〜10%
物件を購入する際、どの程度の初期費用がかかるのでしょうか。当然物件価格によって初期費用の額は異なりますが、目安としては物件価格の8〜10%を見込んでおくとよいでしょう。
1,000万円の物件なら80万〜100万円の初期費用ということになります。では、その内訳を見ていきましょう。
不動産投資にかかる初期費用の内訳7つ
上記で挙げた初期費用ですが、内訳に何が含まれるのかを見ていきましょう。
一つひとつ具体的に紹介します。
1. 不動産登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
不動産を所有する際は、所有者を明らかにするために所有権の「登記」をします。不動産を登記する手続きに必要な料金が不動産登記費用です。不動産登記費用は、登録免許税と司法書士報酬の2つに分かれます。もちろん、手続きを自分自身で進める場合は、司法書士報酬は発生しませんが、複雑で専門性の高い業務なだけに司法書士に依頼することが一般的です。
なお、取得した不動産の建物の一部もしくは建物すべてが「未登記」である場合などには、土地家屋調査士へ依頼し、取得不動産の「表題部」に関する登記(表示に関する登記)をするケースもあるようです。
登録免許税
不動産登記の申請をする際、国に税金を納めなければいけません。それが登録免許税です。ただ、一口に不動産登記といっても、さまざまな種類があります。
例えば、売主から買主に所有権が移転する際にする登記は、所有権移転登記を行います。所有権移転の税率は下記の通りです。
課税標準 | 税率 | |
---|---|---|
土地 | 固定資産税評価額 | 原則2.0% 軽減税率1.5%(2026年3月31日まで) |
建物 | 固定資産税評価額 | 原則2.0% |
また、不動産を不動産投資ローンで購入した場合には、融資を行う金融機関が抵当権を設定します。ローンの返済が万が一滞った場合、その不動産が競売にかけられ、融資を行う金融機関が優先的に弁済を行うことができる権利です。この権利を明らかにするために行うのが、抵当権設定登記です。税率は以下の通りです。課税標準は、金融機関からの借入金です(債権額)。
課税標準 | 税率 |
---|---|
債権額 | 原則0.4% |
また、ローンを完済した時には「抵当権の抹消の登記」が必要な場合もあります。詳しくは「 法務局の抵当権の抹消の登記に関するページ 」や以下のページを参考にしてみましょう。
司法書士への報酬
不動産の登記申請は自ら法務局へ申請することもできますが、登記手続きは複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。
登記の手続きや登録免許税の納付などを司法書士に代行してもらう場合、不動産登記の申請時までに納付する必要がある登録免許税のほか、司法書士へ支払う報酬が発生します。
司法書士の報酬額は、 平成14年(2002年)の司法書士法改正(平成15年4月1日施行)により、2003年4月1日以降自由化されました。現在は不動産会社の仲介手数料のように法律で決まってはいないので、司法書士事務所、司法書士によって報酬が異なります。
不動産購入に関わる司法書士への報酬の目安は、インターネットで登記の種類別に金額が確認できる司法書士事務所サイトなどを見つけることができます。
取得する物件により幅がありますが、登録免許税と司法書士報酬を合わせて数十万円といわれています。
2. 各種税金(不動産取得税、印紙税)
不動産を取得する際には税金がかかります。具体的には、取得に関わる不動産取得税と、売買契約書・ローンを組む際の契約書締結の際にかかる印紙税です。それぞれ詳しく解説します。
不動産取得税
不動産取得税は、初期費用といっても物件購入時には発生せず、購入後数カ月〜半年後くらいに各都道府県から「納税通知書」が届き、納める税金です。
不動産取得税=取得した不動産の価格(課税標準額)×3%
取得日 | 土地|家屋(住宅) | 家屋(非住宅) |
---|---|---|
平成20年4月1日から 令和6年3月31日まで |
3.0% | 4.0% |
上記の「取得した不動産の価格(課税標準額)」とは購入時の金額ではなく、取得した不動産の固定資産税評価額となります。
また土地と建物の税率3%は、上記の期間とされています。さらに土地に関しては、令和6年3月31日までに取得した場合、固定資産税評価額の1/2の金額に対して課税されます(2023年時点)。
土地にかかる不動産取得税=固定資産税評価額×1/2×3%
参考: <都税Q&A><都税:不動産取得税> | 東京都主税局
印紙税
紙で契約書を交わす場合、印紙税という税金を納める必要があります。印紙税は契約の金額により異なります。例えば次のような契約金額に対しての税額を抜粋します。
記載された契約金額 | 税額→軽減措置 |
---|---|
1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円→1万円※ |
5,000万円超~1億円以下 | 6万円→3万円※ |
※平成26年4月1日から令和6年(2024年)3月31日までの間に作成される契約書について、印紙税の税率が軽減されます(2023年時点)。
参考:
No.7102 請負に関する契約書|国税庁
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
また、購入後の保有期間中には固定資産税や都市計画税が必要になります。地方によって納付時期や納付方法は異なりますが、東京都の場合この2つを合わせて納付することになっています。
3. ローン事務取扱手数料
不動産投資ローンを銀行などから融資を受ける際に、支払う事務手数料が不動産投資事務取扱手数料です。事務手数料と略されることもあります。事務手数料は借入金額の1〜3%で設定されていることが多いようです。
東京スター銀行
(1件につき)融資実行日に、ご融資金額に対して2.2%の事務手数料をお支払いいただきます。
引用: スター不動産担保ローン - 商品説明書(東京スター銀行)
オリックス銀行
借入金額の1.1%(消費税込み)の取扱事務手数料をいただきます。
引用: 不動産投資ローン(オリックス銀行)
4. ローン保証料
融資してくれる銀行とローンを組む場合、ローン保証会社と契約を結ぶ必要があります。その際、ローン保証会社へ支払う保証料が不動産投資ローン保証料です。保証料を不要としている会社もあります。
5. 火災保険料(地震保険料)
不動産オーナーになる際、気になってくるのが火災保険です。火災保険料は、損害保険料率算出機構が算出する火災保険参考純率をベースに、建物の構造や面積などを加味して各社が算定するため、あまり大きな違いが出ません。
火災保険は加入が義務付けられているわけではありませんが、加入にはさまざまなメリットが存在します。
火災保険は加入すると、確定申告の際に加入にかかった費用を経費として申告ができます。
また、地震保険に加入するためにも火災保険に加入する必要があるという側面もあります。地震保険は単独で加入することができません。ただでさえ地震や台風などの自然災害の多い日本ですから、地震保険・火災保険には入っておきましょう。
【不動産投資】地震保険には加入するべき? その必要性を解説
6. 仲介手数料
中古物件を購入する際など、投資用の物件購入に仲介の不動産会社が入る場合には、仲介手数料がかかります。売主が不動産会社自らである場合は、仲介手数料はかかりません。 例えばRENOSYでは、不動産投資物件を自ら売主として販売しており、仲介手数料はかかりません。
仲介手数料は、不動産の売買契約が成立したときに、売主との間を仲介した業者に対して成功報酬として支払います。
不動産の売買価格(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
(1)200万円以下までの部分 | 5% |
(2)200万円超400万円以下までの部分 | 4% |
(3)400万円超の部分 | 3% |
また、仲介手数料は消費税の対象なのでここに消費税が加わります。例えば、2,000万円の物件を購入しようとした場合の仲介手数料ですが、
(1)200万までの部分:200万円 × 5%=10万円
(2)200万円超 400万円までの部分:200万円 × 4%=8万円
(3)400万円超 2,000万円までの部分:1,600万円 × 3%=48万円
(1)+(2)+(3)=66万円
これに消費税分(10%)を加算し
66万円 × 1.1=72万6,000円
これが不動産仲介手数料の上限となります。
上記を簡便に算出する方法があります。
不動産の売買価格(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
(1)200万円以下 | 取引額の5% |
(2)200万円超400万円以下 | 取引額の4%+2万円 |
(3)400万円超 | 取引額の3%+6万円 |
2,000万円の物件で計算してみると、上記(3)の式に当てはまり
(2,000万円 × 3%+6万円)× 1.1=72万6,000円
このように簡便な方法でも同じ金額が算出でき、速算することができます。
なお、400万円以下の低廉な空き家等の不動産については、報酬告示改正により、2018年1月1日から現行の報酬額の上限に加え「現地調査等に要する費用」が請求できることとなり、仲介手数料の上限は18万円(税別)となりました(売主から受け取ることができる報酬のみ)。事前に両者間で合意する必要があります。
7. 清算金(固定資産税・都市計画税、管理費・修繕積立金)
売主がすでに支払った費用、例えば毎年1月1日時点の所有者に課税される固定資産税・都市計画税や、毎月支払う管理費・修繕積立金について、日割り計算で請求されることがあります。
固定資産税は、毎年1月1日時点に固定資産を保有している人に納税義務のある税です。都市計画税も同様に1月1日時点で固定資産を保有している人に納税義務のある税です。
それでは両者の違いは何なのでしょうか。固定資産税がすべての固定資産保有者に納税義務があるのに対して、都市計画税は市街化区域内の土地・家屋を対象とした税になります。
不動産投資の初期費用を下げる方法はあるのか
中古の区分マンション投資なら初期費用を少額にしやすい
中古区分ワンルームマンションへの投資のメリットとして、初期費用が小さくなるという点が挙げられます。初期費用の目安は、物件価格や購入方法(不動産会社から直接購入するか、不動産会社を介して購入するか)によっても変わってきますが、50万〜100万円程度と、比較的少ない資金で始めやすいといわれています。
不動産投資は中古マンションがおすすめ! その理由とは
その理由は、中古区分ワンルームマンションは、所有投資の対象となる物件の価格がそもそも低いためです。ただ、「必要になる自己資金の金額も少なくなる」とは言っても、一番自己資金がかかるのが不動産投資を始めるタイミングです。不動産取得に関わる諸費用は、原則現金で支払います。そのため、最低限の現金資金は予め備えておくようにしましょう。物件価格1億円の一棟マンションですと、仲介手数料込みで800万円程度といわれています。
頭金なしで不動産投資は可能か
頭金とは、物件の購入に金融機関からの融資を受けローンを組む場合、物件価格の一部を先に現金で支払うものです。頭金は諸費用には含まれません。金融機関によりますが、頭金なしでも融資を受けられ不動産を取得することは可能です。
初期費用を含めたローンが組める銀行もある
不動産投資ローンで借りられるのは、通常、融資の対象となる物件の価値で担保された金額だけです。物件価格すべてを融資を受けることをフルローンといいます。つまり頭金0円でローンを組めることになります。
さらに頭金のみならず諸費用をカバーしたオーバーローン(物件の価値以上の金額を融資するローン)が可能な金融機関もあります。
しかし、それだけ大きなローンを組むということは、返済額も大きくなります。条件のいい物件でなければ、月々のキャッシュフローが回らなくなってしまうリスクもありますので覚えておきましょう。
初期費用だけあれば不動産投資はできる?
超低金利時代のいま、諸費用までもローンで返済できるとなると、初期費用がまったくなくても不動産投資をできると考える人もいるかもしれません。ただそれは危険な考えです。なぜなら、物件購入後に思わぬ出費が発生する可能性もあるためです。
物件購入後の思わぬ出費に注意
災害などによる突発的な修繕費の出費が必要になったり、予想外に長期間の空室などが発生したりすることもゼロではありません。長期間にわたって安定して不動産投資を行うためには、これら不測の事態に備えた資金を常に手元に用意しておくことが必要です。
物件購入後の思わぬ出費で首が回らなくなれば、最悪物件を手放すことにもなりかねません。諸費用のほかに、これらのリスクに備えた自己資金も準備し、余裕を持った資金運用を目指しましょう。
物件価格が決まれば初期費用を予測可能
不動産投資の初期費用は物件価格が決まれば、あらかじめ予測を立てられる項目が多いのが事実です。不動産会社の担当者へもヒアリングをし、しっかりと試算して、自分がどれくらい負担すれば安定した不動産運用が可能になるのか理解して、不動産投資の計画を立てて始めてみましょう。
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