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作成日: 2021.04.15

住宅ローンを組んだ家、離婚でどうなる? 名義変更や財産分与についても解説

住宅ローンを組んだ家、離婚でどうなる? 名義変更や財産分与についても解説

離婚したら住宅ローンはどうなるのでしょうか。また家はどうすればいいのでしょうか。住宅ローンの返済途中での離婚は、トラブルになりやすく注意が必要です。そこで、離婚した際の住宅ローンの処理について、名義変更や財産分与までを解説していきます。

離婚すると発生する住宅ローンの問題点

住宅ローンの扱いについては、次のような点で問題となります。

住宅ローンの名義人がそのまま住み続ける場合

例えば、夫が住宅ローン名義人で離婚後も夫がそのまま住み続ける場合です。この場合、夫が住宅ローンの返済をし続けるため、それまでと変わることはありません。仮に夫が返済不能になっても、家を出て行く妻の方に迷惑がかかることもないでしょう。

ただし、妻が連帯保証人や共同名義、ペアローンなどを組んでいる場合については、夫がそのまま住み続ける事態はおすすめできません。夫がローン名義人であっても、夫が返済不能になった場合は、連帯保証人である元妻に請求がいくためです。

住宅ローンの名義人ではない人が住み続ける場合

例えば、夫が住宅ローン名義人で、離婚後に夫が家を出て行き、妻が住み続ける場合です。この場合は大きなトラブルになりやすいため、絶対に避けるべきです。

ローン名義人以外がその家に住み続けるのは住宅ローンの契約違反となり、強制的に解約されたり、ローンの返済ができなくなったときに多額の借金を肩代わりさせられたり、自宅を没収される可能性まであります。

住宅ローンの名義変更は原則不可

では、離婚でローン名義人ではない人物が離婚後に住み続ける場合、「住宅ローンの名義変更」はできるのか?という疑問が湧くかもしれません。

住宅ローンの名義変更とは、住宅ローンを返済する人を契約の途中で変更することを指します。住宅ローンは、契約の際に金融機関側で契約者の収入や勤務先、債務の状況など信用情報を審査したうえで、融資の可否や融資金額を決めています。

そのため、原則として契約途中で審査をしていない人に名義変更はできません。離婚が原因でも、ローン名義の変更は原則として不可です。

連帯保証人を解除することは難しい

住宅ローン契約において、ローン名義人ではない配偶者を連帯保証人とするケースはよくあります。連帯保証契約では、名義人がローンの返済ができなくなると、連帯保証人に支払義務が発生します。

もし離婚したあとにそのような事態になれば、連帯保証人の生活に大きく影響することになるので、すぐにでも連帯保証人という立場を解除したいと考えるでしょう。しかし、お金を貸す側も連帯保証人の存在によって住宅ローン契約を締結したのであって、契約した以上は、住宅ローン名義人や連帯保証人の都合で連帯保証人を解除することは原則として認められないでしょう。

ペアローンの場合は一括返済になることも

共働きの夫婦であれば、ペアローンという方法でローンを組む場合もあります。ペアローンとは、夫婦それぞれが別個の住宅ローンを組む方法です。

つまり、同じ一つの家に対して2つの住宅ローンを組むことになります。住宅ローンが別々であるため、夫婦がそれぞれの住宅ローンをそれぞれが返済していくことになります。またペアローンでは、お互いが相手の住宅ローンの連帯保証人となるのが一般的です。

住宅ローンには「自分が住んでいる家」という条件があるので、離婚して一方が家を出て行くとなると、その人は住宅ローンの条件を満たさないことになります。そのため、ローンの一括返済や金利が高いローンへの条件変更を求められることもあります。

離婚する際に確認するべきこと

前述のような問題点があることを踏まえ、住宅ローンの返済中に離婚することとなった場合は、以下を確認することが必要です。

自宅や住宅ローンの名義は誰になっているか

自宅が夫婦共有名義で、さらに夫婦ともに住宅ローンを利用している場合、離婚にともなう処理は複雑になります。

前述したように、住宅ローンの名義変更や連帯保証人の解消は原則としてできません。またペアローンでは自宅が共有名義となっているケースがほとんどであるため、別れる相手の同意がなければ、ローンの条件変更や借り換えも難しくなります。

住宅ローンの残高および現在の自宅の価格はいくらなのか

離婚時に住宅ローン残債がある場合に知っておきたいのが、アンダーローンとオーバーローンです。

アンダーローン

アンダーローンとは、自宅の売却価格が住宅ローン残高を上回っている状態のことです。

アンダーローンの場合は、そのまま住み続ける方の人が、自宅の時価とローン残高の差額の一定割合を相手に財産分与すれば、問題に発展するということはあまりありません。財産分与については次の章で解説します。

オーバーローン

オーバーローンとは、自宅の売却価格が住宅ローン残高に満たない状態のことです。自宅を売却したとしても、残債を払い続けなければなりません。

ローン名義が夫で、夫がそのまま住み続け、売却もせず残債を返済し続けるなら問題には発展しないでしょう。しかし、夫に多額の残債があって返済が難しくなり、妻が連帯保証人となっている場合には、大変なトラブルになりやすいといえるでしょう。

離婚で自宅を財産分与するときの方法

離婚すると、財産を分ける取り決めが必要となります。「財産分与」とは、夫婦が婚姻中に築きあげた財産を、離婚する際に分け合うことをいいます。

結婚を機に購入した「住宅」は夫婦が築きあげた財産で、財産分与として検討される項目となります。財産分与の方法や注意点について解説します。

家を売却して現金化

家を売却して現金に変え、それを分け合う方法です。家を売却した価格が住宅ローン残債よりも高ければ、売却したお金でローンを一括返済し、残ったお金を一定の割合もしくは1/2ずつに分け合うことができます。

この方法がもっとも簡単で公平といえます。しかし家が売れるまでは財産分与が完了しないという点には注意が必要です。

相手配偶者の持ち分を買い取る

家の価値を適切に評価し、算出された評価額の半分を片方が現金で受け取り、一方は家を引き取るという方法です。

例えば、子どもの通学や通勤の事情により引っ越しを避けたい場合は、この方法により、そのまま同じ場所で生活を続けることができます。

譲渡所得税が発生するケースもある

不動産を売却すると、売却したことによって譲渡益が生じた場合には、譲渡所得税が発生します。

財産分与の場合、家の売却価格から取得費用や売却にかかる費用を差し引いた額がプラス(譲渡益)の場合に課税されます。したがって、その差額がゼロ、あるいはマイナス(譲渡損)の場合は課税されません。

実際には、所有権の名義人になっている側(財産分与をする側)が住んでいる家を売却する場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用されて、譲渡所得税は課税されないケースに該当することがほとんどです。

ただし、親族に対する不動産譲渡ではないことが要件となっているので、所有権でない側に家を売却する場合は、離婚をしたあとに財産分与をする必要がある点には注意が必要です。

住宅ローンの名義変更をするには

家を売らずに、そのままどちらかが住み続ける場合、問題となるのは住宅ローンの扱いです。

住宅ローンの名義変更は原則として不可ですが、名義を変更しないことで発生する問題を回避するためには、どうしても名義変更しなければいけません。このような場合には、「名義変更と同じ状態」にする必要があります。

では実際にどうすればいいのでしょうか。

金融機関の同意が必要

金融機関では、ローンを組む際に申し込んだ人の借入れ状況や収入、担保になる物件の情報などをチェックします。そして融資を行っても問題ないと判断されて、初めて融資が実行されます。言い換えれば、申し込んだ人の信用力でお金を貸すかどうか判断するわけです。

住宅ローンの名義変更をするということは、審査をしていない人が今後返済していくということです。審査をしていない、信用があるかどうかわからない人にお金を貸すことはできません。

したがって、住宅ローンの名義変更を申し込む場合は、金融機関の同意が必要であり、改めて審査をやり直してもらうことになります。

住宅ローンの借り換え

住宅ローンの名義変更において、金融機関の同意が必要ですが、返済条件が整っていない場合には金融機関は簡単に同意してくれるとは限りません。同意が得られない場合は、住宅ローン契約を解消し、借り換えを行うことになります。

住宅ローンの借り換えについて

住宅ローンの名義変更が難しい場合には、借り換えを検討することになりますが、そのほかにも、借り換えを検討した方がいい次のようなケースがあります。

夫婦で連帯保証や連帯債務を設定しているケース

住宅ローンの契約時に、配偶者を連帯保証人や連帯債務者に設定しているという場合も、借り換えを検討するべきです。

連帯保証も連帯債務も「夫婦ともに収入があること」を前提とした契約で、夫婦それぞれに返済の責任があるからです。夫婦の事情により、離婚したからといって連帯保証人や連帯債務者の責任を簡単に免除はできません。

代わりの連帯保証人や連帯債務者を探すよりも、借り換えを検討する方がハードルは低いでしょう。

夫婦でペアローンを組んでいるケース

ペアローンを組んでいて離婚した場合も、借り換えを検討した方がいいでしょう。ペアローンでは夫婦それぞれが住宅ローンの契約をしますが、契約条件に「その家に住むこと」が含まれているのが一般的です。

離婚してどちらかが家を出る場合には、契約違反になってしまうため、家を出る方が契約変更をする必要がでてきます。

金融機関との契約変更は難しいため、借り換えを検討することになるでしょう。

住宅ローンの借り換え方法

住宅ローンの借り換えとは、今組んでいる住宅ローン契約を一括返済し、別の住宅ローン契約に変更することです。例えば、銀行Aで住宅ローンを借りている状態で、銀行Bから新規に借り入れをし、銀行Bから借りたお金をそのまま銀行Aに一括返済し、その後は銀行Bへと返済を続けていくことです。

このように、借り換えによって債務者(借りている人)を変更することが可能になります。なお金融機関を変更すると、返済条件も変わることになります。

借り換えするときの必要書類

住宅ローンの借り換えをする場合、それまでローンを受けていた金融機関から別の金融機関へと契約を変更することになります。変更の際に提出する書類の一例は以下の通りです。

【借換時に必要な書類】

本人確認のための必要書類 住民票、印鑑証明書
マイナンバーカード・運転免許証、パスポートなどのコピー
健康保険証のコピー
借り換えに関係する必要書類 現在の住宅ローン返済予定表
返済用口座の通帳コピー
収入を証明する書類 給与所得者の場合、前年度分の源泉徴収票
確定申告している場合、直近2〜3年分の確定申告書、納税証明書など。
会社代表者の場合は確定申告書に加え、会社の決算報告書
物件に関する書類 土地、建物の登記事項証明書(発行後3カ月以内のもの)
売買契約書、工事請負契約書など
団体信用生命保険(借入金額が5,000万円を超える場合) 定期健康診断結果通知書など

上記は一例で、金融機関によっては上記以外の書類が必要となるケースもあります。必要な書類が多いため、準備に時間がかかることを想定しておきましょう。

住宅ローンが残った状態での離婚について

住宅ローンの返済途中で離婚が現実的になろうとしている夫婦にとって、家をどうするかは、その他財産分与と合わせて大きな問題です。

どちらかが住み続けるという場合にはローン契約の内容によってトラブルになりやすく、離婚時に相当な労力を要することは確かなようです。ローン契約の内容をしっかり確認し、必要な場合は税理士や弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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この記事を書いた人

河野雅人 公認会計士・税理士・CFP

大手監査法人勤務の後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後9年間で法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。セミナー、研修会講師年間約10件。近年は執筆活動にも力を入れている。

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