投資用物件を売却したとき、居住用物件の売却時と同じく譲渡所得に対して所得税と住民税がかかります。このときの税金はいったいいくらくらいになるでしょうか。今回は、不動産投資用の物件を売却する際の税金を紹介します。投資用物件は居住用物件と異なり税金が軽減される特例はあまりありません。ただし条件が揃えば使える特例もあります。しっかりと事前にどのような特例があるのかチェックしてください。
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不動産投資用のマンションなどを売却して得た所得は、住居用のマンションを売却したときと同様に「譲渡所得」といいます。そして譲渡所得に対して、所得税と住民税がかかります。譲渡所得がマイナスになった場合には、所得税および住民税の課税はされません。譲渡所得に対してかかる税金を総称して「譲渡所得税」とよぶことがあります。
かかる税率は、不動産投資用でも住居用でも違いはありません。
不動産の売却益にかかる所得税は、不動産の所有期間により税率が異なります。所有期間と保有期間の定義は次の通りです。
所有期間:取得時から譲渡した年の1月1日までの期間
保有期間:取得時から譲渡時までの期間
売却した年の1月1日時点で5年を超えて所有していた場合の税率は15%、5年以下の場合は30%です。不動産を売却した翌年の確定申告のときに支払います。
所得税と同様に不動産の所有期間によって税率が異なります。売却した年の1月1日時点で5年を超えて所有していた場合は5%、5年以下の場合は9%となります。
復興特別所得税とは、東日本大震災の復興財源を確保するための税金のこと。税額は所得税額の2.1%です。令和19年(2037年)12月31日まで課税されます。
所得税、住民税、復興特別所得税の税率を一覧にすると、以下のとおりとなります。
項目 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
それでは実際に譲渡所得税を計算してみましょう。譲渡所得は以下の計算式で求めることができます。
譲渡所得=譲渡収入 [1] -(取得費 [2] +譲渡費用 [3] )
[1] 譲渡収入:不動産を売却した金額
[2] 取得費:不動産購入時の物件価格と、不動産購入時にかかった仲介手数料や登録免許税などの諸費用から、期間の経過とともに減価する建物について減価償却費分をマイナスしたもの
[3] 譲渡費用:不動産会社に支払う仲介手数料や印紙税など不動産売却時に発生した費用
それでは、以下の条件の場合にどれくらいの金額がかかるのかチェックしていきましょう。
まず建物の取得費 [2] から算出します。取得費を算出するために、減価償却費の合計(所有している間に経費計上した合計)を求めます。
2,000万円×0.023×12年=552万円
所有していた12年分の減価償却費の合計は552万円ということがわかりました。税制上は建物価格2,000万円のうち、1,448万円が価値として残っているということになります。
取得費は、3,500万円+200万円(購入時の諸費用)-552万円=3,148万円となりました。
計算式にあてはめて、譲渡所得は
4,000万円([1])-(3,148万円([2])+250万円([3]))=602万円
となりました。
所有期間は売却年の1月1日時点で5年を超えているので、長期譲渡所得の税率(20.315%)が適用となります。
602万円×20.315%=122万2,963円となり、これが譲渡所得の所得税金額となります。
投資用不動産を売却する場合、居住用不動産とは異なり、「3,000万円の特別控除の特例」「10年超の減税率の特例」「特定の居住用財産の買い換えの特例」はありません。
かわりに一定の要件をクリアした際に、投資用物件に適用できる特例「事業用の資産を買い換えたときの特例」があります。この特例を使うと、一部の税金を納めるタイミングを未来に先延ばしすることができます(譲渡益が非課税になるわけではありません)。
この特例は、細かく要件が設定されています。
個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得し、その取得の日から1年以内にその買換資産を事業の用に供したとき
引用: No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例|国税庁
所有する不動産を売却し、一定期間内に新たな不動産を買い、1年以内に貸し出しを開始した際に利用できます。ただしさらに適用されるための条件があります。
大きな条件としては、売却する年の1月1日時点で、事業用不動産の所有期間が10年を超えていること、買い換える不動産が土地の場合、売却する土地の面積の5倍を超えないこと、などです。この特例は特定の組み合わせに合致したときなどに適用される等、さまざまな要件があります。詳しくは税務署、税理士等に確認しましょう。
この特例を受けたときの譲渡所得金額は、譲渡代金と買い換え代金の関係によって、また譲渡した年度によって計算式が異なります。租税特別措置法の規定のため年度や地域によって課税割合も20%でないケースもあります。詳細は税務署、税理士等にお問い合わせください。
投資用物件は居住用物件と異なり、適用となる特例は多くありません。事業用の不動産の買い換えで特例が適用されそうになる際にも要件が複雑なので、不明点は必ず税務署や税理士に問い合わせて確認しましょう。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
この記事を書いた人
「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。
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