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公開日: 2021.02.16

老人ホームに入るにはいくら必要? 費用と相場を解説

老人ホームに入るにはいくら必要? 費用と相場を解説

自分らしく豊かなセカンドライフを送るためには、老後はどこでどのように暮らしたいか、リタイア後の暮らしを具体的にイメージしておくことが大切です。

特に高齢期には介護が必要となる場合もあります。老後に充実した設備やサービスが受けられる住まいを確保するにはいくらかかるのか、気になる方のために老人ホームにかかる費用と相場について解説します。

高齢者向け施設と住まいの種類と特徴

高齢者向けの住まいはさまざまな種類があり、それぞれ対象者や役割に違いがあります。また公的施設と民間施設があります。公的な施設は比較的費用が安く、民間の施設は立地、設備やサービス内容により費用が大きく異なります。主な高齢者向け施設について解説します。

高齢者向け住まい引用:高齢者向け住まいを選ぶ前に-消費者向けガイドブック|厚生労働省

特別養護老人ホーム

要介護高齢者のための公的な生活施設です。原則、要介護3以上が入居対象者です。家庭での生活が困難な人に、介護や身の回りの世話を提供しています。

一般に「特養」とよばれ、年収や要介護度により利用料が決まります。安価に入居できるため入居希望者が多く、満室状態で数年の待機が必要な状況です。

個室も増えてきましたが、4人部屋などの大部屋も多くあります。入居金は不要で、月額費用は要介護度や収入に応じて決まり、約5万円から15万円です。

ケアハウス

自治体や国の助成金で運営される公的な介護保険施設です。運営団体は、社会福祉法人や医療法人などです。

本人の収入に応じて低額な費用で生活支援サービスを提供します。介護型ケアハウスの場合は介護サービスも提供します。入居金は0円から、介護型では数百万円の所もあります。

月額費用は要介護度や収入に応じて決まり、約7万円から15万円です。

有料老人ホーム

民間事業者が都道府県知事への届け出をして設立する高齢者向けの施設で、主として利用権契約を結びます。介護付き、住居型、健康型の3種類があります。

老人を入居させ、(1)食事の提供 (2)介護(入浴・排泄・食事)の提供(3) 洗濯・掃除等の供与 (4)健康管理のうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供します。

事業者ごとに建物の豪華さやサービスに違いがあり、一般的に費用は公的な施設より高額となります。入居時の費用は0円から1億円超と幅があり、月額費用も約15万~30万円を超える所などもあります。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは都道府県知事の指定を受けて、施設内で介護保険制度における介護サービスを提供します。さらに、施設独自の上乗せサービスを提供する施設もあります。

入居対象者は自立から要介護まで広く対応する所が多く、介護が必要になっても住み続けることが可能です。

住宅型有料老人ホーム

住居型有料老人ホームは生活支援サービスを提供します。介護が必要になったときは、住居内で外部の介護保険事業所の介護サービスを利用しながら生活を継続します。

介護の費用は外部の介護事業者への支払いとなります。

健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。

健康な方向けの施設のため、介護が必要となった場合には原則退去が必要です。入居にあたっては介護度が進んだときの住み替えリスクを考える必要があります。

サービス付き高齢者向け住宅

民間事業者が提供する、居住スペースが25m2以上(東京の場合)あるバリアフリー等の基準を満たした高齢者向け住居です。主として賃貸借契約を結びます。

サ高住」ともよばれ、入居時費用は敷金として賃料の2〜3カ月程度支払います。また家賃の前払いをする場合は、数千万円から1億円超えとなります。月額費用は約5万~30万円超と幅があります。

安否確認と生活相談が基本サービスで、東京都の場合には緊急時対応も加わります。生活支援サービスである食事や家事等は選択サービスとなっています。

介護が必要になった場合には、外部の介護保険事業所の介護サービスを利用する、または特定施設入居者生活介護の事業者指定を受けた住居の場合は、スタッフが介護サービスを提供します。

要介護度が重症化したときには住み替えが必要となる所もありますので、契約時にはよく確認しましょう。

参考:国土交通省住宅局 安心居住推進課 高齢者の住まい・住み替えに関する相談・情報提供マニュアル

高齢者向けのサービスの内容とは(公共/民間)

高齢者向けの住まいを選ぶときに、住まいにおけるサービスの提供状況を確認することはとても大切です。

老後安心して過ごすためのサービスにはどのようなものがあるか、また公的施設の「特別養護老人ホーム」と民間の「介護付き老人ホーム」のサービスの違いについて解説します。

特別養護老人ホームのサービス

要介護高齢者のための生活施設であり、提供されるサービスは入浴、排泄、食事等の介護その他日常生活の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話です。

介護要員の基準は入居者3人に対し、職員1人と決まっています。また居住面積の基準は1人あたり10.65m2です。

民間の高齢者施設が提供するサービス

有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅のなかには「特定施設入居者生活介護」を提供する施設があります。これは、介護保険法に基づき、特定施設に入居している要介護者を対象として行われる、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話のことであり、介護保険の対象です。

介護要員の基準は入居者3人に対し職員1人であり、特養の基準と同じです。居住面積の指針は有料老人ホームで1人あたり13m2、サービス付き高齢者向け施設で25m2となっています。

基準以上の手厚いサービスとは

民間施設では介護保険では提供できない特別なサービスをオプションで提供しており、より豊かで自由な生活を実現することができます。各施設により提供されるサービスの内容に違いがあり、かかる費用は大きく違います。

介護付き有料老人ホームの月額費用の平均は約23万円(介護保険利用料含まず)です。調査結果全体では、10万円未満から30万円以上と幅広く分布しています。

それでは、この費用の差となる特別なサービスについて説明します。

介護付き有料老人ホームの月額費用引用:第81回社会保障審議会介護保険部会 介護サービス基盤整備(参考資料)|厚生労働省

職員の増員

介護保険法では入居者3人に対し職員1名ですが、指定の人員数を超えて職員を配置し、手厚いサービスを実施する民間施設もあります。

教育が行き届いた職員による買い物代行や指定回数以上の病院の付き添いのほか、レストランの予約やタクシーの手配などコンシェルジュサービスなどもあり、快適に過ごすことができます。

豪華な設備

居住スペースがキレイな個室であることはもちろん、共有スペースもホテルのような豪華なエントランスやロビー、大浴場やシアタールーム、ジムやリハビリ施設といった運動ができる場所、静かに読書ができるライブラリなどがあります。また、ほかに住む家族が帰省時に宿泊するゲストルームなどがある場合もあります。

食事の豪華さ

やはり食事は生活を豊かにする大切な要素です。栄養士による栄養バランスを考えた献立や、施設に併設されているレストランで一流シェフの食事を楽しむことができます。アルコールを提供するバーを別途併設している所もあります。

レクリエーションやイベント

ヨガや太極拳といった体を動かすものや、書道や英会話といった学びのプログラムなど各施設によって多彩です。また音楽ミニコンサートや季節のイベントなどが催される施設もあります。

【特養vs高級老人ホーム】かかるお金はいくら? 

実際に老後に老人ホームに入ったときに、いくらお金が必要なのかについて具体的に試算していきます。「特別養護老人ホームに入居した場合」と「高級老人ホームに入居した場合」を比較して試算します。

特別養護老人ホームにかかる費用

月額利用料は利用料、食費、居住費、その他の合算です。

試算にあたり、東京都23区内の特別養護老人ホームを例に調査しました。利用料は収入や介護度によって変わるため、要介護3、介護保険自己負担1割で低所得者に該当しない方が個室を利用した場合で調べたところ、初期費用は0円、月額利用料145,500円でした。

なお、収入が低い方は食費、居住費で優遇があり、生活保護者等の世帯全員が市町村民税非課税の方は要介護3、個室利用では月額65,000円でした。より安価にするには個室ではなく4人部屋などの多床室を選びましょう。

公益財団法人生命保険文化センター調べ「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?」によりますと、介護を経験した人の介護期間を尋ねたところ平均4年7カ月、4年以上介護した割合は4割を超え、10年以上は14.5%でした。そのデータをもとに、将来の長生きリスクを考慮し、入居期間10年として計算します。

月額145,500円の方は10年で合計1,746万円、低所得の方は月額65,000円で10年で合計780万円となりました。

参照:介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?|公益財団法人 生命保険文化センター

高級老人ホームにかかる費用

民間施設である老人ホームでかかる費用は介護にかかる費用は同じですが、立地、建物の豪華さ、居住・共有スペースの広さ、1人あたりの従業員の数により費用が上乗せとなります。また高級といわれる施設では一般的に、入居一時金として3,000万円以上かかる所もあります。

試算にあたり前提条件は先述の特別養護老人ホームと同様、要介護3で介護保険自己負担1割、低所得者の優遇に該当しない方が東京23区内で高級老人ホームの個室を利用した場合とします。

一例として初期費用(前払金)6,000万円、居住費は前払い済み、月額利用料は管理費、共益費、上乗せ介護費用、食費で30万円とします。これに介護保険自己負担分とし要介護3の方は月25,102円が上乗せされて、合計月約325,000円となります。

年間では390万円、10年で3,900万円となります。これに初期費用6,000万円を合わせると約1億円となります。

年金だけで老人ホームに入れるか

次に、年金だけで老人ホームに入れるかを検証します。年金額は国民年金受給者の満額は月額約65,000円、厚生年金受給者の平均年金月額は65歳以上の男性は172,742円、女性は108,756円です。

参照:令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和2年12月 厚生労働省年金局
費用について、東京都23区内の特別養護老人ホームの例では、費用を抑え個室でなく多床室に入居した場合、要介護3で生活保護者等の世帯全員が市町村民税非課税の方は月37,000 円、低所得に該当しない介護保険自己負担率1割の方で月101,600円でした。

入居費がかからないので、厚生年金受給者は多床室の利用であれば足りる計算になります。より快適な個室を選ぶと月額利用料145,500円となるため、男性の平均額でなければ足りません。

また、前述の通り特別養護老人ホームは人気が高く待機者が多くいるため、入居まで数年待ちとなります。入れないことも想定して老後資金を準備しましょう。

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早い時期から将来に備えよう

特別養護老人ホームの4人部屋であれば、年金でまかなえる可能性が高いですが、快適な暮らしを希望するのであれば、ある程度まとまった資金が必要となります。

希望する施設のグレードやサービスが明確になれば用意すべき費用がわかり、資産づくりの目標金額がはっきりします。

今回の試算では、都内の高級老人ホームの入居費用は1億円となりました。大きな金額を用意するには、稼ぐ力と貯める力だけでは実現が難しく、運用で増やす力も必要となります。

老後の資金について早い時期から考えることで、時間を味方につけることができます。一度、自分の理想とする老後の生活について考えてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

山内真由美 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

北海道出身。ファイナンシャルプランナー(CFP®)大学卒業後、食品メーカー勤務。40歳で双子を出産。育児のかたわら、都市銀行にて資産運用相談部門を経験し、独立。FP事務所「FPオフィス ライフ&キャリアデザイン」を東京都内で開業。 著書:『FPママの親と子で学ぶお金のABC』(河出書房新社) FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」

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