ふるさと納税の確定申告手続きが簡単・便利に!簡素化された点はどこ?
「ふるさと納税」に興味があっても、手続きが面倒で利用をためらっていた方や手続きに苦労していた方にとって、うれしい新サービスが始まります。このサービスを利用することによって「確定申告」する際の負担を軽減することができます。お金を稼ぐ力があり、収入が多い人ほど利用価値が高い「ふるさと納税」の魅力と「確定申告手続き」を簡単にするための新サービスについて詳しく解説します。
ふるさと納税する人は増加傾向
「ふるさと納税」は、納税という言葉を使っていますが、実際税制上は地方の自治体への「寄附金」です。都道府県・市区町村へ「寄附」をして、各自治体からお礼の特産品などを受け取り(返礼品)、寄附した金額を「確定申告」にて「寄附金控除」の申請をします。
寄附金税制を利用して地方の自治体に寄附する「ふるさと納税」は、平成20年5月から開始され、現在この制度を利用している人はすでに552.4万人います(令和3年度)。
「ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります)」(「総務省ふるさと納税ポータルサイト」より抜粋)
ふるさと納税の受入額は全国で約6,725億円(令和2年度)、対前年度比では約1.4倍と大きく伸びています。
過疎化に悩む地方の自治体にとって「ふるさと納税」は貴重な財源として、年々重要な位置を占めてきており、工夫をこらした素敵な返礼品が増えています。「令和2年度ふるさと納税受入額の多い20団体」には、大都市部ではなく北海道や九州など全国各地の市や町の名前があります。今後もますます利用価値が高まることが予想されます。
参照:総務省|ふるさと納税ポータルサイト|トピックス|令和3年度ふるさと納税に関する現況調査について
ふるさと納税手続きの簡素化とは
そんな「ふるさと納税」の利用を促進すべく、新たな取り組みとして確定申告手続きが簡素化されることとなりました。これまでは、寄附するごとに、各自治体から届く「寄附金の受領書」を保管しておき、確定申告の際に申告書類として受領書をすべて用意する必要がありました。
今回の変更によって、特定事業者に指定された事業者の運営する「ふるさと納税のポータルサイト」を経由した寄附金に関しては、この事業者が発行する1年分の「寄附金控除に関する証明書」1枚で済ませることができるようになります。また、「e-Tax」を活用して確定申告をする際、「寄附金控除に関する証明書」のデータを添付することで寄附金を入力する作業が大幅に削減できます。
では、具体的に手続きがどのように簡素化されるのか、順を追ってご説明します。
これまでの申告書類
ふるさと納税の確定申告では、自治体が発行している「寄附金の受領書」すべてを添付する必要がありました(e-Taxでの申告を除く)。受領書は「ふるさと納税」をするごとに、寄附をした自治体から返礼品とは別に郵送で届きます。
自治体により発送のタイミングはバラバラで、早いところは1週間、遅いところは2カ月かかる自治体もあり、いつ届くかハッキリしないため届くまでの間、自宅に届く郵便物に注意を払う必要がありました。
私自身も毎年ふるさと納税を利用しているのですが、この受領書の準備・管理がとても大変でした。さまざまなDMなどの郵便物から受領書を見つけて、翌年の確定申告の時期まできちんと保管しておかなければなりません。
しかも自治体によって形態はさまざまで、封書で届いたりハガキで届いたりと見落としてしまう危険がありました。もしも紛失してしまった場合には自治体に再発行をお願いしなければならないなど、管理が大変でした。
これからの申告書類
令和3年度の確定申告からは、各自治体が発行する「寄附金の受領書」 の代わりに、特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」 を添付書類とすることができるようになります。
特定事業者とは地方公共団体と「特定寄附金」の仲介に関する契約を締結している事業者であって、適正かつ確実に管理することができるものとして国税庁長官が指定した事業者です。
令和3年9月15日現在、13の事業者が指定されています。「寄附金控除に関する証明書」は特定事業者が運営する「ふるさと納税のポータルサイト」から「電子データ」での提供、または「書面郵送」するなどの方法で発行します。もちろん、これまで通り各自治体の受領書でも申告書類とすることも可能です。
参照:令和3年分の確定申告からふるさと納税(寄附金控除)の申告手続が簡素化されます|国税庁
「寄附金控除に関する証明書」の利用方法
寄附する人の負担を減らすことができる「寄附金控除に関する証明書」ですが、特定事業者ごとに提供されるサービス内容に違いがありますので、事前に比較検討されることをおすすめします。
例えば、証明書の発行方法は「電子データ」のみのところや、電子データに加えて「書面郵送」を選べるところがあります。また令和3年1月1日決済分から対応する事業者と、令和3年のある期日以降から対応としている事業者があります。それぞれの内容について、ご利用前に各事業者が運営する「ふるさと納税ポータルサイト」でしっかり確認してください。
それでは「寄附金控除に関する証明書」の利用方法について確定申告の方法ごとに解説します。
税務署に持参・郵送して確定申告をする
税務署に持参または郵送する場合は、「寄附金控除に関する証明書」を書面化しなくてはなりません。書面化の方法は2通りあります。
QRコード付控除証明書の作成
ひとつは特定事業者の「ふるさと納税ポータルサイト」から証明書データ(XMLファイル)をダウンロードし、そのデータを国税庁が提供する「QRコード付証明書等作成システム」で読み込み、プリントアウトして確定申告書に添付します。詳しくは国税庁ホームページを参照してください。
※QRコード付証明書等作成システムで作成されるQRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
ポータルサイトの証明書発行サービスを利用
もうひとつは特定事業者の「ふるさと納税ポータルサイト」から「寄附金控除に関する証明書」を書面で郵送してもらい、その証明書を確定申告書に添付して申告します。こちらは書面郵送に対応しているサイトのみのサービスとなります。
インターネットで確定申告をする
「e-Tax」を利用して確定申告をするなら、さらに便利になります。特定事業者の「ふるさと納税ポータルサイト」から「寄附金控除に関する証明書」のデータ(XMLファイル)をダウンロードします。そのまま「e-Tax」を利用してダウンロードしたデータを確定申告書に添付して送信することができます。
また令和4年1月から確定申告(令和3年分の申告)において「ふるさと納税」が「マイナポータル連携」による自動入力の対象となる予定です。「マイナポータル連携」とは「e-Tax」で確定申告する際「確定申告等作成コーナー」を利用して「マイナポータル」と連携して「寄附金控除に関する証明書」の情報を申告書に自動入力することです。個々にデータ入力する必要がなくなり、簡単に計算できるようになります。詳しくは以下のサイトを参照してください。
参照:マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡便化(マイナポータル連携特設ページ)|国税庁
利用する際の注意事項
「寄附金控除に関する証明書」を発行してもらうには特定事業者の「ふるさと納税ポータルサイト」に利用者登録をする必要があります。その際寄附者本人の住所、氏名、生年月日を正確に登録します。サイトにログインした状態で寄附をした分だけが対象となり、ほかのサイトで行った寄附の情報は一括できませんので注意が必要です。
寄附ごとに自治体が発行する「寄附金受領証明書」はこれまで通り送られてきます。こちらも念のため保管しておきましょう。確定申告をしなくてもすむ「ワンストップ特例制度」も引き続き利用することが可能です。自分にあった手続きで申告しましょう。
生きたお金の使い方を考えよう
FPとしてお金のご相談にお受けしていますと、資産形成のできているご家庭は自分が利用できる制度を上手に活用されている方が多いと感じます。所得税、住民税を支払うことは国民の義務であり「ふるさと納税」を利用しなければ、全額を税金として支払うことになります。
税金は給料天引きとなるためあまり意識していない方も多いのですが、この金額のうちの一部を「寄附金」にすることで、財源が少ない地域や復興に資金が必要な自治体を応援することができます。
また寄附金の使い道を寄附者本人が指定することができる自治体もあります。そして自分が寄附した自治体から地域の特産品を受け取り、自分の生活に活用することができます。なんとなく税金を支払うのではなく、制度を活用して自分の意思を反映させたお金の使い方をしてみませんか。
「ふるさと納税」の確定申告手続きが簡素化されたこの機会に、まだ始めていない人はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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