2022年度の税制改正で住宅ローン控除改悪の可能性
2022年度の税制改正で、住宅ローン控除の内容が改悪される可能性が出てきました。現行制度の概要と、変更案の内容を解説します。
CONTENTS目次
住宅ローン控除の現行制度
住宅ローン控除、正式名称「住宅借入金等特別控除」とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得・増改築などをした場合に、「年末時点のローン残高の1%」が所得税から差し引かれ、還付される制度です。
要件を満たせば、個人が住居として利用するマイホームであれば、新築・中古を問わず適用される制度です。
控除が受けられる期間は、最長10年間です。消費税が8%から10%に増税された際に、最長13年間となる優遇措置がとられています(条件を満たした場合に適用)。
還付される金額には上限がありますが、最大で年間40万円、10年間で400万円です(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合、最大50万円/年)。所得税から控除しきれなければ、住民税からも控除ができます。
住宅ローン控除の適用要件
制度の適用を受けるには次の要件を満たす必要があります。
【適用条件:新築の場合】
- 減税を受けようとする人自身が、住宅の引渡し日から6カ月以内に居住すること
- 特別控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 対象となる住宅の床面積が50m2以上であり、床面積の1/2以上が自身の居住用であること
(床面積が40m2以上50m2未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であれば適用が受けられます) - 対象となる住宅に対して10年以上にわたるローンがあること
- 居住用にした年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていないこと
なぜ住宅ローン控除が改正されるのか
今回見直しされる背景には、次のような経緯があります。
住宅ローン控除の制度は、「住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るため」にできた制度です。
もともと1972年にできた「住宅取得控除」が、何度かの税制改正ののちに住宅ローンを利用する人に対する支援に進化したのが1986年です。住宅ローンの年末残高の一定率(1%)を税額控除する「住宅取得促進税制」が導入されました。
1986年の導入当時の状況といまの低金利時代とでは、ローン金利の状況が大きく変わっています。1986年、「旧住宅金融公庫」のローンの融資基準金利は5.25%でした(1986年3月時点)。それが、2019年8月時点で「フラット35」の借入金利は、最高の金利でも1.87%、最低1.17%とかなり低くなっていることが、会計検査院の調査で明らかになりました。
住宅ローン控除の「逆ザヤ」を問題視!
現在、半数以上が変動金利を利用しています(住宅ローン利用者の実態調査 2021年4月調査(PDF)|住宅金融支援機構)。また、変動型の金利は0.5%を下回っています。住宅ローン比較サービス「モゲチェック」の「新規借り入れ 住宅ローンランキング」を見ると、金利の低いおすすめとして以下のような利率が並んでいます。
auじぶん銀行で金利0.31%で住宅ローンを組んだ場合、年末の残高が4,000万円だとすると利息は12万4,000円です。一方、住宅ローン控除の控除額は40万円です。27万6,000円得していることとなります。
このように、毎年の住宅ローン控除額は金利の支払額を上回っていることになります。住宅ローン控除は、ローン残高に対して1%控除だからです。実質的にマイナス金利で住宅ローンを借りていることになっています。
このようなこの逆ザヤ現象が起こっていることに対して会計検査院は、
- 必要がないのに住宅ローンを組む動機づけになっている
- 住宅ローン特例の適用期間が終了するまであえて住宅ローンの繰上返済をしない動機づけになったりすることがある
という趣旨の懸念を示しました。
税制改正の可能性
このような問題の指摘を受けて、2022年度の税制改正の改正内容は、「実際に支払った住宅ローンの利息額」が上限となる可能性が高いです。
例えば、住宅ローン利率を0.5%で借りている場合、住宅ローン控除額は、借入残高に対して、0.5%の控除額で計算を行うなど、こうすることで、「逆ザヤ」が解消されるからです。
なお、すでに住宅ローン控除の適用を受けている方は、今回の改正の影響(遡及修正)は受けない可能性が高く、ローン残高1%の控除が維持される見込みが高いです。
税制は毎年変わるものです。引き続き最新情報を見ていきましょう。
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