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更新日: 2023.07.18

節税になるって本当!? 不動産投資が節税対策と言われる仕組みと注意点

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)
監修:
税理士法人 スバル合同会計
節税になるって本当!? 不動産投資が節税対策と言われる仕組みと注意点

サラリーマンをはじめ多くの人に対して「不動産投資が節税対策になる」といわれているのは、「減価償却費」を経費に計上したり「借入金利息」など計上できる費用が多く、結果として不動産投資をしなかった場合に比べて所得税の納税額を減少させることができることがあるためです。不動産投資が節税対策になる仕組みについて、税理士に取材しました。

不動産投資が節税対策になる仕組み

不動産投資で節税対策は可能です。そうはいっても、不動産投資に対して特別な税制優遇措置があるわけではありません。

一般的に「不動産投資が節税対策になる」と言われるときの税金は、大きく分けて所得税、住民税、相続税贈与税、法人税があります。まずはそれを理解していきましょう。

動画「リノシーチャンネル」でも解説しています。

【関連リンク】
不動産投資が節税対策になる仕組みとは? 税理士による基礎解説(パート1)
不動産投資が節税対策になる仕組みとは? 税理士による基礎解説(パート2)

所得税・住民税

不動産投資で利益が出た場合、その不動産所得には所得税がかかります。不動産投資を始めたばかりの頃は、初期費用など多くの出費があり、また建物の価格に対する減価償却費が多額になるため、不動産の家賃収入よりも経費が上回る(マイナス状態になる)ことがあります。

この場合、本業である勤務先の会社からの給料(給与の課税所得)から不動産所得のマイナス分を相殺することが可能です。これを「損益通算」といいます。

例えば、給与所得610万円(年収800万円)のサラリーマンが不動産投資を始めた初年度、不動産収入20万円に対して購入時の初期費用が230万円かかったとします。

給与所得610万円、不動産投資の家賃収入20万円・経費230万円の場合、不動産所得は-210万円

不動産所得は、課税ルール上、給与所得などと合わせて「ひとかたまりの所得」として所得税を計算するルールになっています(総合課税に分類されます)。

給与所得と不動産所得はひとかたまりの所得(総合課税)

給与と不動産の所得をひとかたまりとして考えるので、不動産投資の損失分をサラリーマンの給与所得からマイナスできることになり、結果として納める税金の金額は減ります。この仕組みが「損益通算」です。不動産投資を始めると節税になるといわれるのは、この仕組みがあるためです。

損益通算の仕組み 給与所得610万円ー不動産所得210万円=課税所得400万円 400万円に対して所得税がかかるため、不動産投資をしたら課税金額が下がった!

サラリーマンの場合、会社が社員の代わりに国に税金を納めるので、所得税は源泉徴収されている状態です。

上記の例のサラリーマンが不動産投資を始めて確定申告をすると、課税される所得金額は610万円ではなく400万円となるので、会社経由で先に納めていた税金は払いすぎていることになります。そこで、所得税が還付されることになります。

住民税も所得税計算と同じ損益通算の概念が適用されます。住民税は、所得税の確定申告書を使って市区町村側で計算されます。基本的には所得税の計算ルールと連動した形で計算されます。

所得税がマイナスになるのであれば、住民税も結果的にマイナスになります。

【関連リンク】
高所得者にとって不動産投資は節税になる? 税理士が注意点を解説!

相続税・贈与税

現金を相続する場合は、相続する金額がそのまま評価額となります。例えば、相続人が1人で1,500万円の現金を相続する場合、財産評価額は1,500万円となります。

一方、不動産を相続・贈与する場合、財産評価基本通達に応じ、土地は路線価、建物は固定資産税評価額から不動産価額が評価されます。

一般的に土地は8割程度、建物は7割程度の評価になることが多いです。販売価格1,500万円の不動産が、評価額では6割の900万円くらいとなります。さらに建物を賃貸用に貸し出していると、借地権や借家権の影響でさらに評価額が低くなります。

【貸家建付地の評価の場合(借地権割合70%、借家権割合30%)】

(800万円の土地×80%×(1-70%×30%))+(700万円の建物×70%×(1-30%))=848万円

このために、現預金ではなく、同額の不動産で相続・贈与することで節税効果があるといわれています。

【関連リンク】
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最高裁の判決に業界激震、不動産相続に路線価は認められない!?
税理士中井の課税ルール解説

法人税

サラリーマンであれば、「個人」で不動産投資をする方も多くいます。しかし「法人」で不動産投資をすることで節税になるケースもあります。

小規模であれば法人税の節税メリットはありませんが、もともと給与所得が多い人で不動産所得の規模が一定以上に大きくなれば、個人より法人の方が所得税を抑えられる場合があります。なぜなら、個人の所得税・住民税は累進課税により最大税率が55%(所得税最大45%+住民税10%)になるのに対し、法人に適用される税率は相当低く設定されているからです。

例えば、給与所得が2,000万円超ある人が法人を設立した場合、そこに適用される税率は利益が400万円以下なら実効税率は22%となるため、個人と比べて有利となります。

しかし、法人化すると会社設立費用や社会保険への加入、法人の住民税など何かと費用がかかります。専門家の税理士などと話し合い、不動産所得の規模と個人と法人での税率を比較して決めるのがよいでしょう。

所得税の税率

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

参照:No.2260 所得税の税率|国税庁

法人税の税率(資本金1億円以下の法人)

課税所得 法人税
所得800万円以下部分
(適用除外事業者以外の法人)
15%
所得800万円以下部分
(適用除外事業者)
19%
所得所得800万円超の部分 23.2%

参照:No.5759 法人税の税率|国税庁

累進課税
課税対象額が増えるほど、より高い税率を課する課税方式のことです。
【関連リンク】
給与所得2,000万円超で考える資産管理会社の活用方法。不動産は個人と法人のどちらで購入する?

大幅な経費として計上できる減価償却とは?

不動産投資では最初に建物を購入しますが、その高価な購入費用を一度に経費として計上することはできません。不動産は一度購入すると長く保有するものですが、経年によって低下する建物の資産価値を、定められた計算によって経費として計上します。

その計算は減価償却」とよばれる方法で算出します。建物の構造等によって耐用年数と償却率、償却期間は定められていて、償却期限が来るまで毎年経費として申告します。新築の物件と中古の物件で耐用年数は異なります。

例えば、ある年の6月に、

  • 築15年6カ月、建物価格が2,000万円(土地込みで5,000万円)のRCマンションを購入した場合

新築の住宅用家屋の耐用年数は省令で47年と定められ、中古耐用年数の見積もりは

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%(1年未満の端数切り捨て)

と計算式が決められています。

例に当てはめると、中古物件の耐用年数は34年となります(経費として計上するのは34年間です)。

34年の減価償却率は0.03です。購入した年の翌年の確定申告では、2,000万円に減価償却率0.03をかけた60万円を12カ月分の6カ月(年の中途で購入したための月数按分、6/12)した30万円を、減価償却として経費計上します。

購入直後は減価償却費に加え借入金利子不動産取得費、関連費用など、計上する経費額が多額になります。そのため結果として不動産収入より経費額が多くなり、損失が生じるケースがあります。給与所得との損益通算が可能となり給与所得から天引きされた所得税が確定申告により還付されます。

【関連リンク】
不動産投資をするなら必ず理解したい、減価償却費とは?【基礎編】
不動産投資で年収2,000万円超の人が考える、中古の建物を「躯体と設備」にわけた場合の減価償却シミュレーション

経費となる費用を確認する

不動産投資では、不動産取得時にかかる不動産取得税や保有している間にかかる固定資産税減価償却費、管理費、融資を受けて不動産購入した場合の借入金利息といったさまざまな費用を「経費」として計上することができます。

この経費が多くなると、上記で述べた通り、他の給与所得などと「ひとかたまり」ととらえた際に、所得(利益)が少なくなる(損益通算) のです。

【関連リンク】
不動産投資で見落としがちな固定資産税。計算方法や算出例で解説します

不動産投資の主な経費

減価償却費以外の、不動産投資の主な経費を挙げてみましょう。

  • 不動産取得税(購入時のみ)
  • 固定資産税都市計画
  • 火災保険料・地震保険料
  • 管理費
  • 修繕積立金(一定の要件あり)
  • 借入金利息(一定の要件あり)

その他、不動産投資にかかる通信費、新聞図書費、消耗品購入費なども費用として計上できます。不動産投資事業に関わる経費に関してきちんと記録を残しておき、漏らさず経費として計上できるようにしておきましょう。

【関連リンク】
不動産投資で赤字、そんなときの損益通算には制限があります
確定申告で不動産投資ローンの金利(借入金利子)は経費にできる?

不動産投資で節税するには確定申告が必須

不動産投資で節税するためには、サラリーマンの人でも確定申告が必ず必要です。ここでは確定申告の主なやり方や流れを解説します。

1. 青色申告か白色申告のいずれかを行う

確定申告の流れは以下の通りです。

  1.  必要書類の準備
  2.  確定申告書の作成
  3.  税務署に確定申告書を提出
  4.  税金を納付する
【関連リンク】
不動産投資の経費どこまで落とせる? 計上できる経費とNGまとめ

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。白色申告は、売上や収入、経費などを入れ込むだけで作成できる「簡易帳簿」を使います。

白色申告は家計簿のように「簡易な方法」で作った帳簿をもとに申請ができるというメリットがあります。しかし実は、青色申告も事業的規模でなければ白色と同じく、簡易な帳簿による申請書作成が認められています。

そのため、事業的規模(5棟10室以上)でなくても白色申告より青色申告が向いています。

参照:申告手続の流れ|国税庁
参照:所得税の確定申告|国税庁
参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
参照:No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度

青色申告の方が税務メリットが多い

前述した通り、白色申告に比べて青色申告の方が税務メリットがあります。

  • 非事業的規模の場合10万円、事業的規模の場合は最大65万円(55万円の控除に加え、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行うと10万円が上乗せで控除される)の特別控除が受けられる
  • 赤字を3年間繰り越せる など

不動産の収益から10万円でも控除できれば、所得を減らして節税につながります。今後、不動産投資の事業を拡大する人なら青色申告で確定申告を行いましょう。

参照:No.2070 青色申告制度|国税庁

【関連リンク】
税理士が解説! 不動産投資をするなら、区分1件から青色申告を選択すべき理由

不動産投資で高い節税効果が得られる人の特徴

節税効果が高い人

不動産投資を始めることで節税が可能な人の特徴は、収入が多く高額納税をしている方です。結果的に高い税率を低い税率に下げることができれば、効果が高いといえます。また節税効果を維持するために、新たに別の不動産物件を購入する行動も、節税効果を維持することにつながります。

【関連リンク】
【不動産投資と税】減価償却は土地と建物の割合によって変わる
【不動産投資と税】損益通算は土地と建物の割合によって変わる
高所得者にとって不動産投資は節税になる? 税理士が注意点を解説!

節税額のシミュレーション

所得税の節税シミュレーション

節税額がいくらぐらいなのかをシミュレーションするためには、支払うべき所得税を算出し、どれほど損益通算できるのかを計算する必要があります。

サラリーマンの場合、基礎控除・給与所得控除・社会保険料を計算し所得税を算出します。

例えば、

  • 給与収入:年収600万円

のサラリーマンが不動産投資をしたと想定します。2年目の不動産所得が30万円の赤字だったとします。基礎控除は令和2年より変更され、以下のようになっています。

合計所得額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円以上2,450万円以下 32万円
2,450万円以上2,500万円以下 16万円
2,500万円以上 0円

また、給与所得控除も以下のように変更されています。

給与等の収入金額 給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円以上1,800,000円以下 収入金額 × 40% - 100,000円
1,800,001円以上3,600,000円以下 収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円以上6,600,000円以下 収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円以上8,500,000円以下 収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)
  • 基礎控除:48万円
  • 給与所得控除:164万円(収入金額×20%+440,000円)
  • 社会保険料:86.4万円(年収×14.4%)

年収から控除額や社会保険料を差し引くと、課税される所得金額を算出できます。

  • 600万円-(48万円+164万円+86.4万円)=301万6,000円

ここから実際の所得税額を計算します。計算は以下の表で行います。

課税される所得金額 税率 控除額
1,949,000円以下 5% 0円
1,950,000円以上3,299,000円以下 10% 97,500円
3,300,000円以上6,949,000円以下 20% 427,500円
6,950,000円以上8,999,000円以下 23% 636,000円
9,000,000円以上17,999,000円以下 33% 1,536,000円
18,000,000円以上39,999,000円以下 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円
  • 所得税額:301万6,000円×10%-97,500円= 20万4,100円

上記金額が所得税額になります。

不動産投資の赤字が30万円出た場合、課税される所得金額から赤字分を差し引きします(損益通算)。

  • 301万6,000円-30万円=271万6,000円

課税対象の所得額が減少します。この額に対して、上記表に書いてある所得税を計算すると

  • 所得税額:271万6,000円×10%-97,500円=17万4,100円

となり、不動産投資をしていなかった場合に比べて3万円の節税となりました。

住民税に関しても見ていきましょう。

住民税の節税シミュレーション

まずは住民税の基礎控除を算出します。所得金額の合計が2,400万円以下の場合、基礎控除は43万円です。

合計所得額 控除額
2,400万円以下 43万円
2,400万円以上2,450万円以下 29万円
2,450万円以上2,500万円以下 15万円
2,500万円以上 0円
  • 住民税の基礎控除額:43万円

年収から住民税の基礎控除、給与所得控除、社会保険料を差し引き、課税対象所得額を算出します。

  • 600万円 -(43万円+164万円+86.4万円)=306万6,000円

住民税の税率は、所得割が10%、均等割が5,000円(東京都の場合。都民税1,500円、区市町村民税3,500円)なので、

  • 306万6,000円×10%+5,000円=31万1,600円

が不動産投資をしていない場合に納めるべき住民税となります。ここで、同様に不動産投資の赤字が30万円出ていると、

  • 課税対象の所得額:306万6,000円-30万円=276万6,000円
  • 納めるべき住民税:276万6,000円×10%+5,000円=28万1,600円

となり、不動産投資することで3万円の節税となります。

節税目的で不動産投資を始める場合の3つの注意点

1. 長期間の節税効果は見込みづらい

物件購入時の初期費用がかかる初めの年は、不動産投資をすることで多くのケースで一定の節税効果が得られます。

2年目以降は、同一の投資物件に対して初期費用ほどの経費は一般的にはかからず、節税効果は1年目よりも弱まります。

2. 損益通算上の注意点には一定の制限がある

借入金利息については損益通算に一定の制限があります。具体的には土地の取得のための借入金に係る利息は損益通算額計算上、除外して計算しなければなりません。

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確定申告で不動産投資ローンの金利(借入金利子)は経費にできる?

3. 青色申告特別控除が使えない

青色申告をした場合、青色申告特別控除として10万円もしくは最大65万円を控除することができますが、青色申告特別控除はこの控除額計上前に既に不動産所得がマイナスの場合には使えないということです。

また控除上限は控除額計上前の所得金額となります。例えば青色申告特別控除前の所得が1万円で10万円の控除が使えたとするとマイナス9万円になりますが、この9万円は切り捨てられることになります。

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不動産投資のポイントは損失マネジメント

不動産投資は、損失をしっかりとマネジメントし、トータルでは利益を出すようにプランを立てましょう。

損益通算による節税も損失マネジメントという意味では大事な論点ですが、不動産投資である以上「税引き後所得の最大化」が最も大事です。損益通算狙いの過度な経費計上は税引き後所得を減少させるだけでなく、税務調査でのリスクを高めることになりますのでご注意ください。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

この記事を監修した人

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)
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