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更新日: 2023.08.22

不動産投資の利回りとは?利回り計算方法と事前に知っておくべき注意点

不動産投資の利回りとは?利回り計算方法と事前に知っておくべき注意点

不動産投資の「利回り」は物件選定の際にどの程度考慮すべきでしょうか。今回は、不動産投資における物件情報の利回りとその数字の意味、そして購入前のシミュレーションの大切さについて解説します。

不動産投資の利回りとは

動画「リノシーチャンネル」でも解説しています。

不動産投資における利回りとは、物件への投資額に対する1年間の家賃収入の割合のことを指します。

一般的な金融商品における利回りは、投資金額に対する利子を含めた年間収益の割合を意味しますので、両者は同じように捉えられるようにもみえますが、異なります。

不動産投資の利回り

不動産投資における「利回り」には次の2つの指標があります。

不動産投資の利回り
  1. 表面利回り(グロス利回り)
  2. 実質利回り(ネット利回り)

それぞれの違いを見ていきましょう。

【関連リンク】
不動産投資におけるキャッシュフローの重要性と賢い運用方法とは

1. 表面利回り

表面利回りは簡便に利回りを計算できる方法として重宝します。グロス利回りともいわれます。不動産会社が販売図面(マイソク)という情報で出している利回りも、一般的には表面利回りとなります。

表面利回りの計算方法

想定する年間家賃収入÷不動産購入価格×100=表面利回り

例えば、不動産購入価格が2,000万円の物件に対して、毎月の家賃が10万円、年間の家賃収入が120万円なら、

120万円÷2,000万円×100=6.00%

となります。とてもシンプルです。

不動産投資の利回り(表面利回り)

表面利回りは、年間を通して満室を想定した家賃収入で算出しますので、想定利回りといわれることもあります。

不動産投資は、購入してからも修繕費や管理費などの複数の支出が発生します。入居者が退去した場合には一時的に空室期間も発生します。

そのため、利回りを算出する場合は、さまざまな費用を組み込んだ利回り、つまり実質利回りを使うべきです。しかし、実質利回りは不確定な要素が含まれているので、算出に時間がかかります。

不動産を検討する際には、多くの候補から自分の希望する条件に見合う物件を探し出す必要があるため、物件の状態を簡便に判断できる表面利回りを使って、物件比較の指標の一つとして用います。

投資物件事例集 利回りや収支など限定公開中 事例を見る
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2. 実質利回り

実質利回りは、細かい収益性を把握したいときに使う指標です。ネット利回りともいわれます。

前出の表面利回りは、管理組合費、修繕積立金など運用にかかる諸々の費用を組み込んでいないため、最終的な収益性が確認できません。この費用を組み込んだのが実質利回りです。

不動産投資の利回り(実質利回り)

実質利回りの方が、表面利回りよりもさまざまな経費を組み込んで計算するため、実情に合った利回りが算出できます。しかしこの実質利回りでも実は不十分です。なぜなら空室のリスクが考慮されていないからです。年間を通して「満室だった想定」での利回りということを認識しておく必要があります。

実質利回りの計算方法

(年間家賃収入-年間経費)÷(不動産購入価格 + 購入時諸経費)×100=実質利回り

年間の家賃収入は120万円ですが、管理費修繕積立金など毎月かかる経費が年間で20万円だったとします。

家賃収入からその経費をマイナスします。

また物件購入価格2,000万円についても、購入時は物件の登記費用やローンの手続き手数料など諸々の費用(諸費用または初期費用等)がかかっています。ここでは50万円かかったとして、その50万円をプラスして計算します。

(120万円-20万円)÷(2,000万円+50万円)×100=4.87%

表面利回りで計算したときよりも、実質利回りで計算したときの方が利回りが低くなりました。

不動産投資の利回りシミュレーション

表面利回りでは儲かっているように見えても、実質利回りで見ると利益が出ていない可能性もあります。そして本来であれば、空室発生までシミュレーションしたいものです。

物件購入時は、実質利回りをシミュレーションしてみてから売買契約するべきでしょう。

不動産投資シミュレーションを行う際の専門用語

不動産投資シミュレーションを行う際の専門用語

不動産投資では、聞き慣れない用語が頻繁に出てきます。ここでは、不動産投資のシミュレーション時によく出てくる以下の用語について解説します。

不動産投資シミュレーション時の専門用語

年間家賃収入

所有する物件から得られる1年間の家賃収入を指します。物件の購入費用に対して、どれだけの家賃収入が見込めるかを評価するために確認することが大切です。

また、物件購入後の運用段階においては、家賃収入が想定通りに得られるよう適切な家賃設定を行う必要があります。不動産投資ローンを組むことからも、短〜中期的には月毎の家賃収入は赤字で運用開始となることが多いものの、プラスに転じた後、どの程度の期間で利益が出るのか、必ずシミュレーションしておきましょう。

年間維持費

物件を所有し、運用するために発生するさまざまな費用で、1年間に負担する金額です。具体的には、税金、保険料、建物の管理費修繕積立金、不動産会社への手数料、そして空室時にかかるクリーニング費用や入居者募集のための広告費などを指します。

これらの年間コストをあらかじめ計算して、正確なキャッシュフローの算出が可能になります。

年間手取額

年間家賃収入から年間支出を差し引いた、実際に投資家が手にすることができる金額のことを指します。年間手取額は、その物件を保有する期間や市場環境もしくは財政政策等に影響された結果の物件価値の変動に影響されます。

返済比率

一般的に、不動産を購入する際には金融機関から借入れをします。返済比率とは、ローンの返済額と、物件の家賃収入との比率のことです。つまり、物件購入時の借入金に対して、その物件から得られる家賃収入がどの程度あるかを示す指標となります。

一般的には、返済比率が低いほど投資収益が高くなる傾向があります。返済比率が高い場合は、投資家が家賃収入で返済額を賄えるかどうかが問題となります。 

【関連リンク】
不動産投資の金利の種類と計算方法。適正な返済比率・年収倍率についても解説
不動産投資のローン返済で重視すること。失敗を回避する計画の立て方

利回りの目安

東京の区分中古マンションの表面利回り

不動産投資、特にサラリーマンや初心者に向いているのは、「堅実な利回りの物件」です。このような物件は、東京都内の好立地にある中古の区分マンションに多く見られます。

中古物件は新築に比べて、家賃が中長期で安定しており、かつ、物件価格は新築より安価なため、利回りが新築より高くなります。

また、好立地なら入居ニーズが高いため、空室リスクも抑えられます。人口が増加している都心エリアでは、底堅い賃貸需要があります。

区分中古マンションの表面利回り

都内の好立地にある物件の購入目安としては、表面利回りで3~4%です。

月々の家賃収入では利益が限られていますが、東京都内の中古物件は売却価格も安定しているため、最終的な「家賃収入+売却の合算」で考えると、トータルのリターンが期待できるでしょう。

ワンルームマンション投資の利回り相場

上記の利回りが高いのか安いのかを判断するために、投資家がどのくらいの利回りを期待しているかの調査データを見てみます。

賃貸住宅一棟の期待利回りの推移(東京 城南地区)
参照:一般財団法人 日本不動産研究所 不動産投資家調査をもとにRENOSY編集部にて作成 

(一財)日本不動産研究所が2023年10月に行った不動産投資家調査によると、 ワンルームマンション投資の期待利回りは、東京の城南エリア3.8%です。横浜・大阪は4.4%となっています。

利回りが突出して高い物件は、地方に多い傾向があります。

東京、横浜、大阪に比べて、地方都市は札幌・仙台5.0%広島は5.2%と高い割合であることがわかります。

【関連リンク】
不動産投資で大阪は狙い目? おすすめエリアと利回りの相場を要チェック

利回りが突出して高い物件は、地方に多い傾向

不動産投資のシミュレーションに必要な項目

不動産投資の前に行うシミュレーションとしては、まず以下の項目の確認が必要です。

不動産投資のシミュレーションに必要な項目

利回り

不動産投資を行っている個人投資家や不動産会社がはじめに注目するのは「表面利回り」です。投資対象の物件が「新築」か「中古」かによって指標となる利回りは異なります。

年間家賃収入

家賃収入は、賃貸マンションに投資をしていく上で、最も重要なポイントです。投資対象の賃貸マンションは、1年間あたりいくらの収入があるのか、さらに空室は何室あるのか、といった点をチェック。

アパートなどの場合、収益物件の家賃収入はレントロール(賃料等一覧表)を見ることで確認できます。

レントロールは、物件の仲介を行っている不動産会社から入手可能です。もし気になる物件があったときは、まず不動産会社に問い合わせてレントロールをもらうことをおすすめします。

物件価格

物件価格は、利回りを計算するために必要ですが、自己資金や不動産投資ローンを含んだ投資予算を把握するためにもチェックしておきたい部分です。せっかく良い収益物件を見つけても、投資予算オーバーで買えなければ意味がありません。そのため、「自分の投資対象となる物件価格はいくらまでなのか」というのを、シミュレーションの段階で確認しておくとよいです。

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購入前のシミュレーションは投資物件の購入後にも使える

自身でシミュレーションを作成する場合、利回りの計算はもちろんのこと、入力する項目を増やすことによって購入後のデータ管理にも活用できます。例えば、滞納情報を入力すれば滞納者とその期間が明確になります。滞納家賃回収に向けた対策を練りやすくなるでしょう。

投資物件の購入後にも使える

また、部屋の入退去情報を付けておくと、どの部屋の入退去が多いのか、どの部屋が空室になりやすいのかを把握することもできます。

複数物件を所有する場合には、1件目から収支管理をすることで、2件目以降のシミュレーションにも大いに役立ちます。

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不動産投資もシミュレーションが重要。やり方やポイントを解説

収支シミュレーションが大事な理由

不動産投資は、予測が立てやすい投資だといわれています。それは想定されるリスクがあらかじめ把握しやすい傾向にあるからです。そのため、安定した不動産投資を行うには、リスクを加味してどのくらいのランニングコストが発生するか、そして返済計画に問題はないのかを把握・管理することが重要です。

不動産投資のコストを可視化してリスクを把握

例えば、家賃・管理費修繕積立金というものは、市場環境や建物の管理状況に応じて、変動します。数値の変動に伴い、利回り自体も変わるので、定量的な分析には不可欠となります。

また、入居者の有無により収益は大きく左右されますので、全体の稼働率、空室期間、その際の募集条件などについても記録を残しておくことが不動産投資の成功には非常に重要な要素となります。

投資のコストを可視化してリスクを把握

不動産投資をより複雑に感じさせるのは、入出金の経路が多数に分散するためです。管理会社からの家賃送金、銀行からの融資金引落、建物管理会社への管理費修繕積立金の支払、自治体からの税金の徴収といったものを確認できるように努めましょう。

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修繕積立金に注意

修繕積立金は、長期的に積立をして対応しなければならないものの、物件選定時には念頭から外れてしまいがちです。

多くのマンションでは、将来的に修繕積立金は値上がりするといわれています。大きな費用が発生するリスクがあることも考慮しておきましょう。

利回りだけで判断するのは危険

利回りが高いほど投資の回収スピードが速まるからと、「利回りが高い物件」を探したくなるかもしれません。

ただし、利回りだけで投資する物件を判断することは危険です。利回りが高い物件が投資に適しているかというと、そうとも言い切れません。

利回りが高い投資物件

例えば、一般的に地方の物件は都市の物件よりも安い傾向です。家賃がだいたい同じだとすると、利回りは地方の物件の方が高くなります。

しかし入居率を考えたとき、地方の物件にリスクがないか、数十年間、入居者が絶えない周辺環境かどうかを見極める必要があります。

利回りが高い投資物件

賃貸需要が低い物件は、リスクに見合う売出し価格を設定しないと購入希望者が現れません。つまり物件価格が割安なので、利回りが高くなるのです。

人口が流出しているエリアでは、数百万円どころか、時には数十万円の物件も存在します。 こうした格安物件を購入して、10%台、20%台といった脅威の高利回りを実現している「大家」力の高い不動産投資家も中にはいます 。しかしこのような掘り出し物件を見つけるのは、初心者にはハードルが高いです。

地方のファミリー向け物件

地方の不動産投資物件で狙い目なのは、ファミリー層に向けた物件です。ファミリー層は、小中学生の子供を持つ家庭が多く、一度入居が決まると大きなライフイベントがない限りはあまり退去しない傾向にあります。

安定した収入を得ている傾向もあるため、家賃未払いのリスクが低いことも狙い目なポイントといえるでしょう。地方で不動産を選ぶ際は、周辺に学校や公園、商店街などがある立地が適しています。

高利回り投資物件のリスク

利回りが良くてもキャッシュフローが安定したものでないと結果的に損をする可能性もあります。検討している物件のエリアの賃貸需要を把握し、入居率や家賃下落リスクをきちんと理解した上で、投資の判断をすることが重要です。

高利回り投資物件のリスク

また、家賃設定を高めにすることでも、利回りは高くなります。ただ気をつけなければならないのは、家賃が高くて空室期間が増えると収入が減り、空室対策として家賃を下げると結果としてさらに収入が下がっていくという現象が起こります。

最初に家賃を高めに想定して、実際の入居率とかけ離れてしまうと、後になって想定していた利回りを大幅に下回ってしまうリスクがあります。

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1. 空室率が高い傾向にある

利回り物件は比較的安い金額で購入することが可能です。そのため入居者がいる場合は家賃収入が多くなるものの、実際には入居希望者が少ないことが多く空室率が高くなる傾向があります。

需要が限定的であることや、物件の状態によっては空室リスクに対してどのように対処するかを考えておく必要があります。

2. 土地や物件の需要が低い

需要が限定されている物件や、需要が少ない地域にある不動産物件は一般的に高利回りになるケースが多くあります。しかし、土地や建物の評価が低い物件も多く、キャピタルゲインを狙っても売却益が出ず、最終的に損をすることも考えられます。

3. 維持管理費用が高い

特に築年数が古い高利回り物件は、老朽化による維持管理費用の増加が懸念されます。古い物件は、構造や設備に問題があることが多く、修繕や改修が必要になるリスクがあるため、想定しておくべき費用はある程度高く見積もっておくことが重要です。

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利回りに関してのよくある質問

利回りに関してのよくある質問

次に、利回りに対してよくある質問を3つご紹介します。

利回りに関するよくある質問

Q1. 利回りが低い物件よりも高い物件を購入するべきですか?

利回りの計算は満室時を想定しているため、高利回りだからといって、必ずしも良いとは限りません。賃貸需要が低く、入居率も低い物件においては高利回りとなりやすいため、一定の水準で入居率が担保できる見立てがあればいいですが、そうでない場合にはリスクもあるでしょう。

一方で、利回りが低い物件を選択すると「投資リスク」は下がりますが、「収益性」も低下します。それぞれの物件の特長や投資家の投資戦略、リスク許容度、予算などを考慮して判断することをおすすめします。

Q2. 建物の構造によって利回りの違いはありますか?

建物の構造によって利回りに違いが生じることがあります。例えば鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、木造などの構造によって耐震性、耐久性、防火性能などの差があり、それに応じて建物の補修や維持管理費用、保険料などの費用が変化するからです。

Q3. 同じような利回りの物件が多いような気がします。何か理由はありますか?

不動産投資家が同じ投資戦略を持っている場合、同じ条件で物件を探すことがあります。例えば、事業用の不動産を対象とする投資家は、同じような物件を探すことが多く、競争が発生して利回りが似たような水準になります。

さらに不動産会社は、不動産投資物件の査定額を出す際に「利回り計算」によって売り出し価格を決めるのが一般的です(収益還元法)。そのため、同じような利回りの物件が多いのです。 

不動産投資はシミュレーションが不可欠

数多くの物件から良い物件を見つけ出すためには、感覚ではなくしっかりとしたシミュレーションが不可欠です。しかし、どれだけシミュレーションをしても、実際の投資はそう簡単ではなく、 利回りはあくまでも目安にすぎません。現時点では利回りが高い物件でも、空室や家賃下落が発生すれば一転、利回りは低下してしまいます 。

少しでもその確率を下げるためにも、周辺の賃貸マーケットの動向を把握した上で、リスク回避することが必要です。 空室リスクの低い物件や、家賃の下がる可能性が低い賃貸需要の高いエリアへの投資、又は、新築プレミアムから一定の範囲で家賃が下がった中古物件の購入などを検討しましょう。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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