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公開日: 2023.09.15

不動産投資が節税対策になる仕組みとは? 税理士による基礎解説(パート2)

不動産投資が節税対策になる仕組みとは? 税理士による基礎解説(パート2)

税金が重いと感じる人にとって、税金の仕組みを理解することは大切です。パート1では、会社から支払われる給与収入に対してどう税金がかかるのかを解説しました。パート2では、給与収入と不動産投資との関係を解説します。

会社員の収入にかかる税金について(パート1のおさらい)

“不動産投資で節税”を知る前にここまでで学んだこと。税金は、給与全体にではなく課税所得に対してかかる。

【関連リンク】
【限定公開】不動産投資が節税対策になる仕組みとは?税理士による基礎解説(パート1)

税率は、所得額の区分によって変わる

税金のかかる範囲は「課税される所得=課税所得」とご理解いただけたかと思いますが、節税を考える場合、ここから先が重要です。

それは、課税所得の区切りごと税率が異なる、ということです。

累進課税

大切なのはここからです。節税に興味がある人にとっての重要ポイントは…“累進課税!”

所得金額は下記のように区分けされて、その区分ごとに税率が上がっていきます。これを累進課税といいます。

累進課税は、所得の区分ごとに税率が変わる

※2023年9月時点 

注目すべきポイントは、同じ1人の所得に対しても、区分によって、税率が5%〜45%と変わっていくことです。これを超過累進課税といいます。

国税庁のページで、課税所得金額と税率の表を見て「私の課税所得は1,000万円だから、自分の所得税率は33%だ」と思われている方も少なくないのではないでしょうか?

実はそれは間違いです。

護身の税率を見るとき、一区分だけ見ていませんか? 不動産投資で節税を考えたいなら不十分!
国税庁の速算表にRENOSYマガジン編集部が「a〜g」を追加

節税を考えたいならば、各税率とそれに応じた所得金額とかかる税金を分解して把握する必要があります。

なぜ税率別にみる必要があるか、その理由は、分解して把握することで見えてくることがあるからです。

節税を意識する場合は“税率別”に見る 例えば課税所得が1,000万円なら、税率5%〜33%にかかる各所得区分すべてが、総税額を算出するのに必要

つまり、あえて速算表を使わずに、かかる税率別ごとに所得金額を割り出していきます。

累進課税の各税率に相当する所得金額は?

所得税の税率の変化は5%〜45%と7段階です。

各区分ごとに引き算して、大体の所得金額を割り出すと、下記の税率別の所得金額となります。

各区分の差額を計算して、各税率とそれにかかる所得金額を把握する
実務と同じ厳密な計算をすると金額が複雑になり、わかりにくくなるためここではざっくりとしたイメージで捉えていただければ十分です。

上の図をもとに、課税所得1,000万円を例に計算していきます。

国税庁の図にある通り、900万円以上の所得に対しては33%の税率がかかります。

33%がかかる所得金額を割り出すと所得金額100万円分となり、税率別の所得ごとに税額を計算すると、次のようになります。

例えば課税所得1,000万円の場合 所得税額各区分の合算 約176.4万円

所得税は1,764,000円となります。 

※おおよそのイメージをしていただくため、実際の税務とは計算方法は異なります。
※税務上計算は1,000円未満の端数は切り捨てます。

課税される所得が1,000万円の方の場合、1人の所得であっても金額の区分によって、税率が5%から33%へと5段階変化します。

繰り返しますが、通常は速算表を用いた計算で問題ないです。税額は分解した計算方式と変わらず、1,764,000円となります。

ただ、分解して1区分ずつあえて税率別に計算をすることで、どの部分の税金が重いのかを可視化できます。

税金のかかり方の見方がわかったところで、いよいよ「不動産投資と節税の仕組み」の話に入っていきます!

所得税は給与だけにかかる税金ではない

税金のかかる所得金額を割り出したあと、金額区分ごとの税率を掛けることはご理解いただけたと思います。

ただしこの所得税は、給与収入(給与所得)だけにかかるのかというと、そうではありません。

次に注目すべきなのが、給与所得だけでなく不動産所得にも所得税がかかる

不動産による収入から経費を引いた不動産所得に対しても、同じ「所得税」がかかります。

不動産投資の利益にかかる所得税

不動産所得に対してかかる税金は、給与所得と同じ所得にまとめられ、「所得税」がかかる分類となります。

所得税を計算するとき給与と不動産の所得はひとかたまりで取り扱う

この、何種類かの所得がひとくくりにされるというルールが、節税のキモとなります。

利益と損失を相殺する、損益通算

所得とは、収入から経費(やさまざまな控除)を引いたものです。

給与収入に対する給与所得が赤字(マイナス)になることはありません。しかし不動産所得は赤字になることがあります。不動産投資を始めたばかりの年など、購入時の諸経費がたくさんかかって家賃収入よりも経費の方が多くなった際に、赤字が発生することがあります。

不動産所得が赤字(マイナス)」になるとどうなるかというと、この赤字部分(損失)を、給与の所得(利益)と相殺する「損益通算」というルールが適用されます。

不動産投資では不動産所得が0円を下回り不動産所得が赤字になることがある。その赤字は、給与所得と相殺される

損益通算をすると、給与所得が計算上減ることになります。

給与所得のプラスと不動産所得のマイナスを相殺。これが“損益通算”。給与所得が減り課税所得が減る。

所得税は、課税所得金額によって5%〜45%の税率がかかりますが、高い税率であればあるほど、税率が高い分、減らせると効果はその分高まります。

高い税率のかかる所得例を挙げます。

課税所得が1,000万円の場合、もっとも高い税率は33%で、その税率がかかる金額(課税所得)は、100万円弱です。

課税所得1,000万円の場合 負担の大きい33%の所得区分の税額は33万円

このとき、不動産投資の収支が100万円のマイナスだったとします。

不動産投資を始めて赤字が100万円になった場合。損益通算で、給与1,000万円-不動産所得100万円=課税所得900万円

損益通算によって、給与のプラスが不動産投資のマイナスで相殺されます。つまり、損益通算で給与の課税所得を減らすことになります。

このとき、高い税率がかかる部分の金額から減っていきます。

給与所得のプラスと不動産所得のマイナスを損益通算することになるので、課税所得金額100万円分から、不動産所得100万円の赤字をマイナスできる、ということになります。

課税所得が900万円となり、33%の税率がかかる部分の所得金額が0円に。

そして課税所得金額を100万円減らすと、納める税額が33万円ほど減らせるということになります。

不動産投資をすると、33%の税率の納税額が0円に。“33万円の節約”をすることができる

給与収入が多く高い税率がかかる人にとっては、累進課税によって高い税率がかかる部分の所得を、効果的に減らすことができるのです。

この仕組みのことを「節税」とよんでいます。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

中井哲也 公認会計士・税理士

公認会計士・税理士。同志社大学経済学部を卒業。国内大手税理士法人に約12年勤務。富裕層、未上場会社、上場会社の対応案件を多数経験。メガバンク系証券会社、銀行にも出向、上場オーナー、未上場オーナーの事業承継、資産形成の業務に従事。 2021年7月に中井哲也公認会計士税理士事務所を開設。富裕層の手残りを増やすアドバイスには定評がある。 趣味は税金の勉強と筋トレです。

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