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お金と制度
2022.11.29

金利が上昇したとき、住宅ローン利用者が取るべき行動とは?

金利が上昇したとき、住宅ローン利用者が取るべき行動とは?

日本では金利上昇はわずかですが、世界各国ではアメリカをはじめ2022年に入って急速な金利上昇が進んでいます。日本は日銀の金融政策の効果もあり金利が低く抑えられていますが、最近はインフレも進むなか、低金利がいつまでも続く保証はどこにもありません。

この記事では、金利が上昇したときに住宅ローン利用者が取るべき行動をお伝えします。繰上返済などの選択肢をあらかじめ整理しておけば、金利負担をいたずらに増やさずうまく対処できる可能性も高まります。金利上昇による住宅ローンの支払い負担を懸念している人は、ぜひ参考にしてください。

世界では金利上昇が進み、住宅ローンの金利も上昇

自身が居住する住宅の購入時に組む住宅ローンや、投資用不動産を購入する際に利用する不動産投資ローンの金利(以下これらを総称して「ローン金利」といいます)は、債券や現金の貸し借りを行う金融市場の金利に左右されて水準が変化します。

2022年は世界各国でインフレが進行したため、金利の上昇も急速に進みました。例えばアメリカでは、政策金利が0%に近い水準から2022年11月時点で4%近くまで引き上げられている状況です。それに伴い、住宅ローンの金利は平均で7%前後まで上昇し(2022年10月時点)、住宅購入を検討している人や、変動金利で借りている人の悩みの種となっています。

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日本では、半年ほど前に下記記事でお伝えした通り、政策の変化は見られません(2022年11月時点)。そのため金融市場の金利の上昇幅も海外と比較するとわずかです。住宅ローン金利についても変動金利はほぼ横ばい、固定金利については若干引き上げる動きが見られますが、海外の動きと比較すると上昇幅はわずかです。

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日本のローン金利も、低位安定が続くかは不透明

ただこのような日本のローン金利が、今後も低位のままで永続するとは限りません。実際のところ、中長期的な金利上昇につながる要因もいくつか存在します。

最も大きいのはインフレです。低成長の日本は海外と比較するとインフレ率が落ち着いているものの、2022年10月の消費者物価上昇率は変動の大きい食品を除いたベースで前年比3.6%と約40年ぶりの伸び幅になりました。このままインフレが加速すれば、日本でも金利上昇が進行する可能性があります。

2つ目に、日本の金利を低く抑えている、金融緩和策を行っている日本銀行です。日本銀行は、世界で極端に緩和的な政策を行っている中央銀行となっています(2022年11月時点)。

日本銀行の現在のトップである黒田総裁は、金融緩和を強力に進めるスタンスであるため、ここまでゼロ(条件付きマイナス)金利、資産買い入れなどの政策が続けられてきました。

ただ黒田総裁は来春で任期切れとなり、新たな総裁と交代する方向性です。総裁が変わるのが契機となって、今後徐々に金融政策の方向性が変化する可能性もあります。もし、金融緩和政策が緩められれば、これまで抑えつけられていた金融市場の金利が上昇して、ローン金利にとっても上昇圧力がかかるでしょう。

特に変動金利のローン契約者は、ここから2023年以降の経済動向日本銀行の動向を見ておくとよいでしょう。

金利上昇の前後で、ローン利用者ができること

国内の債券などを売却して繰上返済を進める

将来の金利上昇の影響を緩和する最も基本的な手法は、繰上返済を進めることです。金利上昇前に残債を減らしておけば、それだけ金利上昇による利払いの負担が増大するのを防ぐことが可能です。

「ローン金利の上昇が起こるであろう」と予想するなら、余裕資金があるのであれば、繰上返済を今のうちに進めておきましょう。さらにこれから来年にかけて経済環境が悪化するリスクも高いため、株式などリスク性の高い有価証券に投じる予定であった資金を、ローン返済に充ててしまうのも一つの選択肢です。

投資している有価証券を売却して繰上返済を進めるのも一案ですが、このときは現金化する資産を慎重に選ぶことが大切です。最終的には個々人で判断することをおすすめしますが、例えば日本の債券(現物取引)や日本の債券へ投資するファンド(投資信託)を保有しているなら、そこから売却するのが一つの選択肢です。

日本の金利はこれ以上の低下は見込みづらく、逆に金融政策が変化すれば、ローン金利同様金利が上昇する可能性があります。債券は金利が上昇すると価格が下がるため、これらの債券や債券ファンドは価格が下落するリスクがあります。そのため金利上昇する前にこれらの有価証券を売却して、ローン返済に充てるのは理にかなっています。

なお、同じ債券でも海外債券のファンドの売却は慎重に判断しましょう。海外の債券は今年に入って大きく金利が上がり、現時点で損失が発生しているファンドが多くなっています。目先で売却するとただの損切りになってしまいかねません。

海外の債券は、ここまでで金利が上昇した分、今後の上昇余地は限定的です。海外債券は高金利でかつ金利上昇リスクが相対的に小さい商品となっているため、保有を続ければ今後は金利収入により価格の回復が期待できます。

株式や株式ファンド(投資信託)を保有している場合は、国内外問わず、自身のリスク許容度や投資期間を踏まえて方針を考えましょう。もしハイリスクを許容し、かつ長期で投資を継続できるなら、景気後退を乗り切って、相場回復するまで耐えて待つというのも一つの考え方です。

一方、年初来でアメリカや中国など世界の多くの国や地域で相場下落が進むなか、これ以上の下落リスクは避けたいという方は、やはりこのタイミングで売却してローン返済に充てるというのも選択肢の一つでしょう。

日本の金利上昇と相性のよい資産へ積極的に投資する

焦って資産を売却したり、想定外に手元の現金を減らしたりしたくないという人は、投資先を工夫して金利上昇によるローン支払い増の影響を抑制するという方法もあります。投資信託などを通じて個人で投資可能な商品の中には、今後の日本の金利上昇と相性のよい投資先がいくつかあります。

直接的にマッチするのは変動金利の日本国債やインフレ連動債です。日本は個人向けの変動金利国債を定期的に発行していますが、これは金利が上昇するとクーポン収入(利息)が増える仕組みを持っているので(詳しくは下記記事を参照ください)、ローン負担の増大と相殺できます。

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また、インフレ連動債とはインフレに応じて元本もしくはクーポンが増減する仕組みを持つ商品です。日本の金利上昇の原因となるインフレが加速するときには、収益性が高まります。投資信託の中には日本のインフレ連動債に投資する商品もあるので、投資信託を活用すれば個人投資家でも投資できます。

前述の通りすでに海外は金利が上がってしまっていて、当面は日本よりも海外主要国の金利が高い状況が続くと予想されます。そのため海外の債券ファンドへの投資により、金利収入を土台とした収益を獲得していくのも一案です。

そのほか、少しリスクの高い投資とはなりますが、ソーシャルレンディングを活用するのもよいでしょう。日本国内のソーシャルレンディングの中には、金利が既存のローン金利と比較して十分に高い商品が多いため、金利上昇が起こってもソーシャルレンディングの投資収益で増大分をカバーできます。

ただしソーシャルレンディングの貸付先は新興企業などのケースもあり、今後景気後退が深刻化した場合には貸し倒れによる損失リスクが高くなる恐れもあります。投資先を事前に確認して安心できるファンドに投資するとともに、ほかの安全性の高い資産と分散投資するのがおすすめです。

金利上昇はすぐに起こらない? まずはローン契約内容をチェック

金利上昇に対する対処法をいくつか紹介しましたが、そもそもすぐに行動しなければならないとは限りません。

近年のローン契約は、たとえ変動金利であってもすぐに極端に返済金額が増えない契約になっている場合があります。今すぐにローン返済を進めるべきかは、契約内容にもよってくるので、まずは今一度ローン契約書を確認しましょう。

元利均等返済か元金均等返済か

元利均等返済とは、元本部分と利息部分を合計した月々の返済額が一定になるように設計された商品です。返済額が増減しないで済むという特徴がある一方で、借入れ当初は金利部分の返済が多いため、なかなか元本が減っていかないのがネックです。

元利均等返済は、支払額の急激な増大を抑える仕組みがついている場合が多いため、目先の支払額の増大については過度な心配は不要な場合もあります。この仕組みについてはこのあと詳しく紹介します。

元金均等返済は返済する元本部分が均等になるように設計されるローンです。金利部分は返済当初が大きく、徐々に小さくなる仕組みとなっています。こちらは金利が上昇すれば、すぐに返済額が増大します。元金均等返済を選んでいて、かつ目先で支払額が急増すると困るという場合には、早期に繰上返済やローン対策としての投資を進めましょう。

5年ルール、125%ルールはついているか

元利均等返済の場合に、急激なローン支払いの増大を抑える仕組みが5年ルールおよび125%ルールです。多くの元利均等返済の住宅ローンに付与されていますが、念のため自分が返済しているローンが該当するか契約書を確認しておきましょう。

変動金利の住宅ローンでは、金利水準は半年ごとに見直されますが、5年ルールがある場合は、返済額は5年に1度しか見直されないため、その間は元利金のバランスなどを調整しながら支払いを進めたうえで、改定のタイミングから必要に応じて返済額が引き上げられます。

また、125%ルールは、一回あたりの引き上げ幅はこれまでの返済額の125%までしか引き上げられないという決まりです。すなわち5年ルールと125%ルールがあるローンについては返済額が変わるのは5年に1度で、最悪でも+25%になるだけで済むため、変動金利が上がったからといって直ちにローン負担額が増えるわけではありません。

ただし、このルールに沿って返済を進めていった結果、当初の完済期間中に完済が見込めなくなったときには、ローン返済の終盤で追加の返済を求められる場合があります。変動金利が上がるからといって焦って対処する必要はありませんが、やはり当初想定より金利が高止まりする場合は、徐々に繰上返済を進めておくのがよいでしょう。

実は固定金利期間選択型も要注意

固定金利期間選択型(固定金利特約型などともよばれる)でローンを借りている人は、ここまで紹介した5年・125%ルールがないケースがほとんどなので、注意が必要です。近年は5年以下の短い固定期間を持つローンもありますが、金利がアップデートされるタイミングで、今より大幅に金利が上昇したら、実は変動金利よりも大きく支払額が増減する可能性があります。

特に2年や5年など短めの固定期間の契約となっている場合は、ここから数年で金利上昇が実現した場合に影響を受ける可能性が高いため、変動金利のローン契約者と同じく、金利上昇に対する対策を検討した方がよいでしょう。

金利上昇リスクが高まったときに適切な行動を取る準備を

2022年11月時点において、日本では急速な金利上昇は起こっていません。ローン金利も長期固定金利が少々上昇した程度で、目立った動きは見られていません。しかし海外では金利上昇が進行している国も多く、アメリカなどでは住宅ローン金利も急騰しています。

中長期的な金利上昇リスクを念頭に、まずは自分の契約内容をきちんと把握しておきましょう。最も速やかに行動すべきは元金均等返済の変動金利で契約している人です。金利上昇が始まればすぐに返済額の増大が起こるリスクがあるため、早めに対策を進めましょう。

5年・125%が付された変動金利や期間限定の固定金利になっている人も、数年後には影響が出てくる可能性があるので、今のうちから最適な方法で資金を用意し徐々に繰上返済を進めるか、ローン負担をカバーするための資産運用方法を検討しておきましょう。

ローン金利の上昇リスクを有価証券の売却や投資でカバーする場合には、日本の金利上昇との相性を考えながら売却、投資先を選別することが大切です。日本の金利上昇でダメージを受ける資産を売却し、日本の金利上昇に強い資産や今後高い利回りが見込める資産へ投資するのが有効です。ローンと投資をうまく結びつけて、効率的な資金管理を心がけましょう。

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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

伊藤圭佑 証券アナリスト

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。

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