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公開日: 2022.09.12

遺産相続は期限を意識して計画的に。まず行うべきこととは?

遺産相続は期限を意識して計画的に。まず行うべきこととは?

遺産相続の手続きの種類は多岐にわたります。それぞれに期限があり、期限内に申告・申請を行わない場合は、時効が成立したり、ペナルティーを科せられたりするなど、相続の恩恵を受けられなくなってしまいます。まずは手続きの順序や注意点を確認しましょう。

相続開始から3カ月以内に行うこと

身内が亡くなったときは、残された者同士で協力しながら、さまざまな手続きを進めていかなければなりません。遺産相続に関しては、すべての遺産を洗い出し、相続人の範囲を確定させるところからスタートします。

預金・不動産・債務などの遺産を把握する

遺産相続にあたり、被相続人(故人)の遺産を洗い出す「遺産調査」を行う必要があります

一般的に、預貯金と不動産が遺産の中で大きな割合を占めます。預金口座を保有していない人はほとんどいないため、預金通帳を調べるところからスタートしましょう不動産を所有していれば、毎年「固定資産税納税通知書」が郵送されているはずです。

遺産相続では、プラスの財産だけでなく、債務などのマイナスの財産も相続対象です。債務がある場合、郵便物や保管物の中に契約書や借り入れの明細、督促状などが見つかるケースがあります

相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」に単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択しなければなりません。マイナスの遺産が多ければ、相続放棄という選択肢もあり得るでしょう。

遺産調査はできるだけ早く行うのが望ましいといえます。

参考:民法 | e-Gov法令検索

遺言書の有無や相続人の範囲を確認する

自宅から自筆の遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合、家庭裁判所で「遺言書の検認」を行う必要があります。

検認とは、相続人に遺言の存在や内容を知らせることで、遺言書の偽造や変造を未然に防止する手続きです。申立から完了までに1カ月以上の期間を要するケースもあるため、遺言書探しは迅速に行いましょう。

また相続税の申告が必要な場合は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に申告・納税を行います。遺産調査のあとは、できるだけ早く相続人を確定させ、遺産の分割について協議するのが望ましいでしょう。

相続から10カ月以内に行うこと

相続から10カ月以内に行うこと

相続の開始から10カ月以内に行うことは、「相続税の申告・納税」です。被相続人から遺産を受け継いだ相続人は「相続税」を納めなければなりません(基礎控除あり)。

申告期限内に申告・納税をしない場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティーが科せられます。

相続税の申告

相続税には以下の基礎控除があり、課税対象となる相続財産の額が基礎控除を超えなければ、基本的に相続税の申告は不要です。

  • 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

ただし、税額が軽減される特例や控除を活用する場合は、基礎控除を超えず相続税が無税となるとしても申告の必要があります。

相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」です。申告期限までに申告をしない場合は「無申告加算税」、期限内に申告書を提出したあとに修正申告や更正があった場合は「過少申告加算税」が課せられます。

参考:No.4152 相続税の計算|国税庁
参考:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁

相続税の納税

相続税の納税期限は申告期限と同じです。所轄の税務署または金融機関にて納税を済ませましょう。納税期限を過ぎると、期限の翌日から納付する日まで「延滞税」が課せられます。

国税は現金による一括納付が基本ですが、相続税に関しては「延納」と「物納」が認められています。

延納は、相続税額が10万円を超え金銭での納付が困難な事由がある場合、担保を提供する代わりに年賦で納付できる制度です。延納を利用しても金銭での納付が困難な場合は、相続財産による物納が可能です。

参考:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁

各種財産・契約を引き継ぐ手続き

各種財産・契約を引き継ぐ手続き

被相続人の預金や不動産を相続した場合は、早めに手続きを済ませるようにしましょう。相続登記に関しては、2024年より申請が義務化されます。

銀行口座の相続手続きは10年以内

被相続人の金融機関口座に預貯金がある場合、金融機関で預貯金の解約と名義変更の手続きを行います。手続きに期限は設けられていませんが、遅くても10年以内に行うのが望ましいでしょう。

10年以上放置された口座の預金は「休眠預金」の扱いとなり、休眠預金等活用法に基づいて民間公益活動に活用されます。

休眠預金の払い戻しは可能ですが、通常の預金よりも引き出しの手続きに時間がかかるため、休眠預金扱いとなる前に手続きを済ませておくのが賢明です。

参考:長い間、お取引のない預金等はありませんか?|金融庁

相続登記は3年以内

「相続登記」とは、不動産を相続した際に行う名義変更手続きのことです。2024年4月1日からは相続登記の申請が義務化され、取得を知った日から3年以内に手続きを行わなければなりません

所有者不明の土地の増加によって、土地の再開発や有効利用が妨げられており、所有者不明土地の解消は喫緊の課題となっています。正当な理由のない申請漏れには過料の罰則が科せられる恐れがあるため、早めの相続登記の変更手続きを心掛けましょう。

参考:あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~|法務省

故人の年金に関する期限

故人の年金に関する期限

国民年金の第1号被保険者や年金受給者が亡くなった場合は、遺族が死亡一時金や未支給年金を受け取れます。必要書類をそろえたうえで、期限内に請求手続きを行いましょう。

死亡一時金や未支給年金は相続財産には該当せず、「受け取った人の一時所得」という扱いです。

死亡一時金の受け取りは2年以内

国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36カ月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった場合、生計を一にしていた遺族に対して死亡一時金が支給されます。受け取りの優先順位は以下の通りです。

  1.  配偶者
  2.  子
  3.  父母
  4.  孫
  5.  祖父母
  6.  兄弟姉妹

死亡一時金を受ける権利は、死亡日の翌日から2年で失効します。「住所地の市区町村役場の窓口」「年金事務所」「街角の年金相談センター」のいずれかで手続きを行いましょう。

参考:死亡一時金を受けるとき|日本年金機構

未支給年金の請求は5年以内

年金を受けていた人が亡くなり、かつ未支給年金がある場合、生計を一にしていた遺族は未支給年金を受け取れます。受給の優先順位は以下の通りです。

  1.  配偶者
  2.  子
  3.  父母
  4.  孫
  5.  祖父母
  6.  兄弟姉妹
  7.  上記以外の3親等内の親族

「受給権者の年金支払日の翌月の初日より起算して5年」で時効となるため、5年以内に請求の手続きを完了させましょう。手続きは「年金事務所」または「街角の年金相談センター」で行います。

なお、亡くなった受給者の口座が解約されていない場合、未支給年金の請求をしたあとでも年金が振り込まれるケースがあります。口座の解約については、金融機関に相談しましょう。

参考:年金を受けている方が亡くなったとき|日本年金機構

死亡保険金・死亡退職金に関する期限

死亡保険金・死亡退職金に関する期限

死亡保険金や死亡退職金の受取人になっている人は、決められた期限内に請求手続きを行いましょう。どちらも相続財産に該当しませんが、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

死亡保険金の受け取りは3年以内

死亡保障が付帯した生命保険の加入者が亡くなった場合、保険金の受取人に指定されている人は「死亡保険金」を受け取れます。

死亡保険金の請求期限は、支払事由が発生した日の翌日から起算して3年(かんぽ生命は5年)です。期限や手続きの詳細は、各生命保険会社に確認しましょう。

死亡保険金は、受取人の固有財産で相続財産ではありませんが、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象となる点に注意が必要です。相続税が発生するのは、保険料の全部または一部を被相続人が負担していた場合です。

相続人が死亡保険金を取得した場合は、以下の「非課税の適用」が受けられます。非課税限度額を超える場合、超える部分が相続税の課税対象です。

  • 非課税限度額=500万円×法定相続人の数

参考:No.1750 死亡保険金を受け取ったとき|国税庁
参考:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

死亡退職金の請求は5年以内

会社員などが在職中に亡くなった場合、会社から「死亡退職金」が支給されます。受取人は会社の規定によって異なりますが、亡くなった人の配偶者を指定するケースが多いようです。

死亡退職金の請求時効は、行使することができるときから5年間です(労働基準法115条)。請求方法の詳細は、勤務先に確認しましょう。

被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものについては、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。ただし、全額が相続税の対象となるわけではなく、相続人が取得した場合は以下の非課税限度額が適用となります。

  • 非課税限度額=500万円×法定相続人の数

参考:No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁
参考:労働基準法115条 | e-Gov法令検索

必要に応じて期限内に手続きを

必要に応じて期限内に手続きを

状況によっては、「遺留分侵害額の請求」「準確定申告」「相続税の更正請求」が必要になるケースもあります。それぞれの期限と手続きの注意点を確認しましょう。

遺留分侵害額の請求は1年以内

遺留分を侵害された場合、遺留分の侵害を知った時から1年以内に「遺留分侵害額の請求」を行いましょう。民法1048条には以下のように記載されています。

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

引用:民法1048条 | e-Gov法令検索

「遺留分」とは、一定の相続人に対し、法律が最低限保証する相続分を指します。遺留分の権利を有する相続人は、「配偶者」「子」「直系尊属(親など)」です。

遺留分を侵害された人は、贈与または遺贈を受けた人に対して、侵害額に相当する金銭の支払請求を行うことができます。

準確定申告が必要な場合は4カ月以内

確定申告を行う予定であった人が年の中途で死亡した場合、相続人が代わりに申告と納税を行わなければなりません。この手続きは「準確定申告」とよばれ、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内」が期限です。

本来、確定申告が必要でない人でも、準確定申告をした方がよい場合もあります。例えば、生前の医療費やOTC医薬品の購入費用が高額だった場合は、準確定申告で医療費の還付が受けられます(医療費控除・医療費控除の特例)。

「配偶者控除」や「扶養控除」「寄付金控除」などの控除を受ける場合も、準確定申告が必要です。

亡くなった人が会社員で、年末調整を行う前に他界した場合は、源泉徴収で税金を多く払い過ぎている可能性があり、申告をすれば差額分が還付されます。

参考:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁

後発的理由による相続税の更正請求は4カ月以内

すでに行った申告の税額が過大だった場合、減額更正を求める「更正請求」が行えます。更正請求は原則として、法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条)。

ただし、相続税法上の後発的事由による更正請求は「それらの事実が生じた日の翌日から4カ月以内」に行う必要があります(相続税法32条)。主な後発的事由として、以下のようなものが挙げられます。

  • 法定相続分に応じて申告しており、遺産分割協議によって未分割の遺産が分割された
  • 未分割の遺産の分割により、軽減措置や特例が適用された
  • 遺留分侵害額の請求によって返還が行われた
  • 申告後に遺言書が発見された
  • 相続人の廃除や廃除の取り消しがあった

必要書類を添付したうえで、所轄の税務署に更正の請求書を提出しましょう。

参考:[手続名]相続税及び贈与税の更正の請求手続|国税庁
参考:国税通則法23条| e-Gov法令検索 
参考:相続税法32条 | e-Gov法令検索

期限から逆算してスケジュールを立てよう 

期限から逆算してスケジュールを立てよう

身内が亡くなると、遺産相続の手続きや準確定申告などで一気に慌ただしくなります。中には期限が長いものもありますが、時間がたつにつれ手続き自体を忘れてしまい、時効が成立してしまう可能性が高いでしょう。

それぞれの期限から逆算して、無理のないスケジュールを立てるのがポイントです。残された者同士で協力しながら、手際よく進めていきましょう。

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RENOSYマガジン編集部

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