アセットアロケーションとは?投資歴12年の投資家が伝える、全世界式インデックス投資の具体的な始め方
前回の記事ではインデックス投資の基本である長期投資を続けるマインドについて紹介しました。今回はインデックス投資を実践するときの、具体的なステップについて解説します。
アセットアロケーションとは
アセットアロケーションとは、投資をする際、株式や債券など、どのアセットクラス(投資の種類)にどれだけの資金を割り振るか、投資の配分のことを言います。
インデックス投資を実践する上でもアセットアロケーションを決め、その次にポートフォリオを決めるステップへと進みます。
インデックス投資を始める4ステップ
インデックス投資とは、市場全体に長期で投資していくこと、そして危機が訪れても淡々と継続することが大事、ということをお伝えしました(前回の記事)。
この前提を踏まえ、いよいよ、ネット証券の口座開設の手続きへ進むのですが、本記事ではインデックス投資実践のための最初のステップを詳しくみていきます。
STEP1 リスク許容度を決める
はじめに、収入から支出を引いた残り(=余裕資金)のうち、投資にいくらまわすかを決めます。言い換えれば、リスク資産と無リスク資産の割合を決めることから始めます。
リスク資産(元本保証のない金融資産)の金額の決め方は、「投資にあてる元本の3割くらいなら損失を被っても構わない範囲」などと、自分でルールを決めます。
年間の余裕資金が50万円の場合
次のように想像してみてください。たとえば、50万円をリスク資産として投資に割り当て、損失が発生したとします。元本50万円の3割、つまり15万円減ると35万円になります。
もし自分が「15万円の損失に耐え切れない」というのであれば、余裕資金の50万円を全額リスク資産として投資にまわすことは止めましょう。
「10万円くらいなら、投資をやめることなく続けられそうだ」というならば、10万円=3割の損失となり、これがその人のリスク許容度となります。逆算してリスク資産の投資にまわすことができる金額は33万円までとなります。
なおいくら損失が発生しても売却さえしなければ、その損失は確定せず評価損でしかないので、「保有する商品の価額が回復するまで我慢さえすればよい」と強気に考える人もいるかもしれません。
しかし損失が3割までしか耐えられない人にとって、たとえ損失が確定していない評価損であっても、それが4割や5割にも達してしまえば、投資を続けることが難しい心理に陥ってしまうかもしれません。ですから、評価損であっても堪え切れる範囲内で投資の元本を決めておく方が無難です。
STEP2 アセットアロケーションを決める
投資の元本を決めたら、次は「アセットアロケーション」を決めます。
アセットアロケーションを決めたら、次は個々のアセットクラスのインデックス(市場全体の動きを表す代表的な指数)に連動する投資信託をそれぞれ選んでいき、複数の投資信託を併せ持つ「ポートフォリオ」を決めます。
アセットアロケーションで迷ったら
投資信託を用いた分散投資に不慣れな方は、上記のように「アセットアロケーションやポートフォリオを決めましょう」といっても、そこで躊躇し先に進めないという方もいるでしょう。
そこで、手っ取り早く決めるための方法をいくつか提案します。
アセットアロケーションでは、どれだけ分散を効かせるかがまず焦点です。アセット毎に市場規模などを参考にして比率を検討しても構わないのですが、日本株式ははたして全体の10%がよいのか20%がよいのかなんて誰も答えをもってはいません。それに検討の上で算定した期待リターンが必ずそのとおりになる保証もありません。
そこで、次の3つの中から選んでみることを提案します。
アセットアロケーションは3つのどれかで決まり
1. 株式100%
元本の「値上がり益」と「配当金」の合計による長期的なリターン伸長を最も狙うならば、株式アセット1本勝負です。ただしここでは必ず日本株式と先進国株式に分散することだけは欠かさないでください。また新興国株式を含めてさらに分散を効かせても良いでしょう。
日本株式と先進国株式の比率については、時価総額や経済規模からみて先進国の方が圧倒的に大きいこと、円建てで給与を得ていたり、保険などの金融資産を別途所有していること等をふまえると、日本株式よりも先進国株式にウェイトを置く方が適切です。極端に言えば、2つの間に数倍の差があっても不自然ではありません。
2. 株式50%と債券50%
オーソドックスな分散投資のスタイルです。株式をリターン獲得の主エンジンと位置づける(株式の分散については上記の株式100%の項を参照ください)一方で、値動きが少ない債券でアセットアロケーションの運用残高の変動を緩和しつつクーポン(利子)、分配金を手堅く得ることになります。
なお株式100%と同様に、株式や債券ともに国内外のアセットにさらに分散するのが一般的です。
なお債券を持たずに、その分預金もしくは10年国債にするという選択肢もあります。しかしその場合は、50%が無リスク資産ということになるので、投資にまわすことができる金額は当初の半分になることを意味しています。
3. 8資産均等
日本株式、先進国株式、新興国株式、日本債券、先進国債券、新興国債券、日本REIT、先進国REITへの投資先の分散を徹底するケースです。他に金やコモディティなどがありますし、海外のアセットは為替ヘッジの有り、無しを使い分けるというバリエーションもあります。しかしながら後述しますが手間とコストの面から8資産で十分だと考えられます。
以上のように、上記にあげた3つの区分でザックリと考えれば、先ずは十分でしょう。
・S&P500とは? S&P500の概要や過去の値動き、日本から投資する方法を紹介!
・3分でわかる株式投資の仕組みとは? 特徴・銘柄の選び方のポイントをお金のプロが解説
・債券は株より低リスク? 初心者に適した安全重視な投資、債券を詳しく解説!
STEP3 ポートフォリオを決める
アセットアロケーションを決めたならば、次はポートフォリオです。
上述の(1)から(3)の選択に沿って、各アセットのインデックスに連動する投資信託を選んでポートフォリオを組成します。まずは投資信託選びのヒントから、以下に示します。
選び方
1. 株式100%
日本株式と先進国株式のインデックスに連動する投資信託を選びます。
これに新興国株式を加えたい場合には、「3つの対象のインデックスに時価総額で分散投資する全世界株式のバランスファンド」がありますので、そちらを選んだ方が手間いらずで簡単です。
2. 株式50%と債券50%
株式や債券に投資する方法では、さらに国内外のアセットに分散する必要があるため、保有ファンドの数が多くなりがちです。
そこで、「株式50%:債券50%のアセットアロケーションを採用するバランスファンド」を保有することで、一発解決を図った方が簡単です。
3. 8資産均等
8つの資産に分散するとなると、いよいよ個別ファンドを同時並行して保有するのはかなり面倒になります。ここでもバランスファンドを選ぶべきでしょう。
低コストな商品を選ぶ
各アセットのインデックス投資信託を選ぶ際の重要なポイントとして、低コストな商品を選ぶ必要性にもふれておきます。
金融商品は元来リターンをあげるものですから、そのリターンを引き下げるコストは低ければ低いほど良いことは明らかです。
どのような金融商品であっても、事前に高いリターンを上げる商品を100%当てることは不可能であり、高いコストはその分リターンを損ないます。
では、星の数ほどあるインデックス投資信託から低コストなものを選ぶためにどうすればよいでしょうか。
手っ取り早い選択方法をお伝えします。金融庁が開示しているつみたてNISA対象商品の一覧表にある商品の中から選ぶことです。
そこにあげられているインデックス投資信託は、信託報酬が
- 0.5%以下(国内資産を対象とする商品)
- 0.75%以下(海外資産を対象とする商品)
(いずれも税抜)
さらに、売買手数料がかからない商品に絞り込まれています。
より詳しく知りたい、という場合には、インデックス投資を実践する個人投資家諸氏が投資ブログを各自で運営しており、彼らは定期的に低コストなインデックス投資信託の情報を更新して発信していますので、それらも重要な情報源となります。
アセットアロケーションの中で8資産均等を挙げた理由は、このアセットアロケーションを採用した低コストなバランスファンドが複数の運用会社によって設定されているからです。低コストなバランスファンドで一番分散が効いているケースとして、8資産均等を挙げたというわけです。
推奨できる商品
さて商品選択ついて色々と書きましたが、「もったいぶらずに推奨できる商品名をズバリ教えてほしい」という方もいるかもしれませんので、2つだけ紹介します。
三菱UFJ国際投信が設定する「eMAXIS Slim」シリーズ
このシリーズの特徴は、他社の同種商品が信託報酬を引き下げた場合、eMAXIS Slimも同じ信託報酬に追随して引き下げる方針をとっていることです。つまりこのシリーズから選んでいけば、常にもっとも低コストな商品選びが自動的に維持できるというわけです。
ニッセイアセットマネジメントが設定する「購入・換金手数料なし」シリーズ
このシリーズは、インデックス投資信託の低コスト化の先駆者であり、eMAXIS Slimシリーズと並んでほぼ最安値のコスト水準を維持しています。
STEP4 積み立て投資を開始
STEP1〜3の準備と並行して、ネット証券に口座を開設・入金したらいよいよ積み立て投資が開始できます。
積み立て投資は、ネット証券の口座で自動積み立て購入を設定すれば、毎月決まった金額を自動で投資してくれるので、まったくの手間いらずです。
積み立て投資は長期間にわたりますので、時には収入や支出の変化によって投資にまわす資金の変動があっても構いません。相場の暴落が発生すれば投資信託の基準価額も大幅に値下がりしますので、安値買いのチャンスと捉えてスポットで買い増しに動くこともあり得ます。
大事なことは、どんな状況の変化が生じても積み立て投資自体を決してやめてはいけないということです。
下落した相場で買い増せば、相場が回復した時が大きく利益が伸びますし、天井と思えるような高値でも、さらなる高値がまっているかもしれず、その時点でさえ安値買いとなるかもしれないからです。
税制上の優遇措置枠を活用
積み立て投資は、ネット証券内に開設した特定口座(税金申告の手間が減るタイプの口座)を利用する前に、譲渡益や配当益について非課税が適用されるNISAあるいはつみたてNISAをまずは利用する、と考えてください。
さらに、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用や、サラリーマンで企業型確定拠出年金に加入しておりマッチング拠出(本人による掛金の上乗せ拠出)を採用している場合には、それに申し込むことも是非実行していきたいものです。
これら税制上の優遇措置が受けられる制度にまず余裕資金を第一にまわしてください。そして残った余力で特定口座を用いた積み立て投資を行うのが理想的です。
ちなみに、私はNISAに関しては1年あたりの非課税投資枠が大きい(一般)NISAを選んで、かつ勤務先がマッチング拠出を設けているので、掛金を上乗せ拠出しています。
こうして積み立て投資のスキームを一度組み上げたら、あとは継続するだけです。
リバランスは、目減りしたアセットを追加で購入
なお運用を続けていくA資産は+10%だけどB資産は▲5%というようにとアセット毎に運用成績の差が発生します。そうなるとアセットアロケーションにおける各アセットの保有割合が徐々に崩れてきて期待リターンやリスクが当初の狙いからズレてきます。
これを補正するために、儲かったA資産の一部を売却して、目減りしたB資産を追加買いするリバランスをと巷では言われますが、各アセットの比率が著しく変わっていなければ慌ててリバランスする必要はありません。
せいぜい目減りしたアセットの投資信託を、その後の投資資金でやや多めに購入していく格好で補正すればよいです。
ましてやバランスファンド選びさえすれば、リバランスの悩みも手間も省くことができます。これはバランスファンドの大きな利点であり、低コストなバランスファンドが揃ってきた現状であれば、ますますバランスファンドをお勧めしたい理由にもなります。
出口戦略
さて長期間にわたって積み立て投資を行い、その間に何度か発生した相場の暴落にも耐え、ようやく目標の運用金額に達成した個人投資家は、いよいよ豊かな老後生活や趣味に打ち込むために、運用資産を取り崩して使うステージへと移行します。
その時にはどうやって取り崩してくべきか。
なかには長期投資の終盤、ゴールに近づいた時点で相場の大暴落に直面し、保有資産が大幅減になってしまったらと不安になる方も少なくないかもしれません。もっともこれはインデックス投資に限らず、元本保証がないリスク金融資産であれば何であっても直面する悩みです。
しかしあまり深刻になる必要はありません。
長期投資で積み上げた資産が、老後になって直ちに全額必要になるとは通常は考えにくいからです。実際の老後生活で都度必要になるのは資産総額の一部ですので、必要な分だけを売却していけば良いのです。
それでも残念ながら売却する時点では大暴落の真っただ中であり、資産の評価益は大きく減っているか、アセットクラスによっては評価損に陥っているかもしれません。しかし資産を長期にわたって取り崩すのであれば目の前で確定した評価益の目減り分や損失はごく一部に限られます。
今後取り崩していく間も、リスク金融資産の残高がまた増えていく可能性もありますので、ある時点で評価益が大きく減った又は評価損が発生しそれを確定させてしまった分について取り戻すこともあるでしょう。
決意し、始めよう
投資の世界にはいついかなる時も勝つ(常勝)、全てにおいて勝つ(全勝)、これ以上ないくらい最高の成績で勝つ(完勝)といった保証はありません。
10の投資対象に対して8勝2敗や7勝3敗ということも大いにあり得ます。しかし最終的にトータルで目標に達成すればよいのであって、その内訳やプロセスにこだわりすぎるのは詮無きことです。
何より忘れないことは、投資の世界に踏み込んでリスク金融商品を買う行動を起こさなければ、結果もついてこないということです。
今日、手元にあるお金を使わずに我慢して投資にまわす。そうすれば明日は増えて帰ってくるかもしれない。あるいは明日は増えなくともいつかきっと増えるかもしれない。
投資とはそうした素敵な未来を実現させる個人の決意なのです。
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