S&P500とは? S&P500の概要や過去の値動き、日本から投資する方法を紹介!
S&P500はダウ平均株価と並んでメジャーなアメリカの株価指数です。巷のニュースなどでもしばしば目にする指数ですが、どのように計算されているかなど詳細を知らない方も多いでしょう。
実は、S&P500は複数のETFやインデックス型の投資信託が存在するため、日本からでも比較的容易に投資できる株価指数です。今回はS&P500の概要と日本の個人投資家がS&P500に投資する方法を紹介します。
S&P500とは
S&P500は正式名称をStandard & Poor's 500 Stock Indexといい、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数です。
その成り立ちは古く、1957年から算出が開始され、現在に至るまでダウ平均株価と並びアメリカの株式市場の値動きを示す基準となっています。
S&P500の構成銘柄
アメリカを本拠地とする代表企業500社から成っています。時価総額82億米ドル以上のニューヨーク証券取引所、NYSE MKT(旧アメリカン証券取引所)、NASDAQ(ナスダック証券取引所)のいずれかに上場している銘柄で構成されています。
基本的には時価総額の大きい方から500社で構成されますが、4期連続で黒字であることや、ビジネス実態から「アメリカが本拠地である」ことなども条件となっています。
本拠地がアメリカかどうかは指数を算出しているS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが個別に判断しています。また、指数の算出方法は時価総額の加重平均となっていますので、より米国市場の実態がリアルに反映されます。
なお、数値は1941年から1943年の平均株価を10として、そこからの株価の成長率を日々計算して算出しています(このような計算方法を「指数化」といいます)。
ちなみにS&P500の数値の単位は「ドル」ではありません。単位をつけず表記することが多いですが、単位をつける場合は「ポイント」が単位となります。
S&P500の組入比率上位10銘柄(2021年1月時点)
S&P500の過去約30年間の値動きの変遷
先に紹介の通り、S&P500は60年以上の長い歴史を持つ株式指数です。ここでは近年約30年間の指数の値動きと、株価に大きな変動をもたらした主なイベントについて紹介します。
1957年以降のS&P500の推移(各月月初の水準による月次データ)
過去の下落局面(1):ブラックマンデー(1987年8月~1987年11月)
過去30年よりは少し前になりますが、近年の中では比較的下落幅の大きかった「ブラックマンデー」から紹介しておきます。ブラックマンデー周辺の下落率は1987年8月~1987年11月の間で-30%でした(グラフと同様の月次データに基づく。以下の下落率も特記なければ同様)。
ブラックマンデーの背景
1980年代のアメリカは、「双子の赤字」とよばれる財政赤字・貿易赤字に悩まされていました。1985年プラザ合意によって米ドル安に誘導することで、貿易赤字の改善が図られましたが、不調に終わり、むしろ米ドル安が進行したことで状況が悪化。インフレ懸念が世界的に高まり、1987年10月19日のブラックマンデーを契機に米国株式が急落しました。また、システムを活用した取引が普及し始めたことによる取引の高速化が下落幅を拡大させたともいわれています。
過去の下落局面(2): ITバブル崩壊(2000年8月~2002年9月)
ブラックマンデー後の1990年代は、アメリカでは大きな株価下落局面はありませんでした。1990年湾岸戦争や1998年ロシア危機の際には一時的に下落しましたが、いずれも20%以内の下落幅に収まりました。
その中で、1990年代後半から2000年初頭にかけて、IT系の企業が急成長してきました。ここでいうIT企業の中にはすでに強固なビジネス基盤を築いていたマイクロソフトやIBMも含まれますが、株価の急騰はより急進のベンチャー企業の成長によりもたらされました。
次第にIT系企業の株価が割高になってきたことが囁かれる中で、アメリカ同時多発テロや、エンロン不正会計事件、アメリカ利上げによる信用収縮を背景に、株価は下落していきました。
結局2000年8月~2002年9月にかけて、S&P500は-46%も下落することになり、ITバブル崩壊によって多くのITベンチャーが倒産しました。近年勢いを伸ばすGoogleやAmazonは、その中の数少ない生き残り企業でもあります。
過去の下落局面(3):リーマンショック(2007年10月~2009年2月)
2003年以降は新興国の経済成長や、アメリカ国内の不動産市場の好調さなどを追い風にしばらく好景気が続きました。しかしITバブル崩壊による株価への影響は大きく、S&P500は2007年に入ってようやくITバブル崩壊前の水準に回復しました。
その2007年になると、「サブプライムローン」を裏付けとした資産の危険性が囁かれるようになりました。アメリカの不動産価格の上昇が頭打ちになるとサブプライム問題となって顕在化し、2007年の後半から株価の下落が始まりました。
2008年9月にリーマンブラザーズが破綻したことで「リーマンショック」と名づけられるこの経済ショックにより、S&P500は2007年10月~2009年2月にかけて-53%も下落しました。
2008年12月からアメリカでゼロ金利政策が導入されるなどの金融政策が功を奏し、2009年以降は徐々に株価が上向き始めました。
過去の下落局面(4):コロナショック(2019年12月~2020年3月)
最後は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う株価下落です。2020年初頭に中国で感染の拡大が進んだ新型コロナウイルスは、その後世界中に拡散しました。
この新型コロナウイルスでは以下3点によって、株価をはじめとした資産価格の下落が進みました。
- ウイルス自体の被害が大きく拡大することへの懸念
- 感染対策により経済が大きく悪化する懸念
- 未知のウイルスに対する懸念から、世界中の投資家が急速に資産売却と現金確保を進めたこと
月次ベースのデータで見ると、2019年12月~2020年3月のうちに-20%程度の下落となっていますが、コロナショックは短期間のうちに急落が発生した点も特徴です。日次ベースのデータですと、2020年2月19日〜2020年3月23日にかけて、-34%の下落を記録しました。
その後の株価回復の速さもこの下落局面の特徴です。S&P500では、2020年のうちに新型コロナウイルスによる下落前の水準を回復しています。力強い経済回復や、世界各国の経済対策が機能した結果であるとみられています。
S&P500はいまだに過去最高を更新し続けている株価指数
S&P500は過去幾度か下落局面はあったものの、長い目で見ればいまだに右肩上がりの傾向が続く指数です。
これはアメリカの株式市場が順調に成長過程にあることを示しており、日本では日経平均が1989年末に過去最高株価(38,915円87銭)を達成して以来、最高値を更新していないのとは対照的です。従って、S&P500は現在のところ、長期間保有し続けていれば儲かる魅力的な投資先であるといえます。
なお、S&P500の史上最高値はつい最近2021年1月25日の3855.36です。新型コロナショック後の経済回復を背景に足元米国株は好調なので、今後も史上最高値を更新する可能性は十分にあるでしょう。
日本でS&P500に投資する方法とは?
S&P500は米国株の株価指数ですが、実は日本にいながらでも比較的容易に投資を始めることが可能です。
米国株への投資に興味はあるが、個別企業にいきなり投資するのは不安という方には、気軽に始められるS&P500への投資は適しています。ここでは大きく2つのS&P500への投資方法を紹介します。
ETFを購入する
1つは、S&P500を実質的な投資先とするETFを購入する方法。ETFは「上場投資信託」とよばれるもので、投資信託でありながら、売買は証券取引所を通じて、取引所が開いている時間であればリアルタイムで可能です。いわば、株式と投資信託の特徴を併せ持った投資商品といえるでしょう。
日本で購入可能な、S&P500に連動するインデックス運用(特定の指数にできるだけ連動することを目指して行う運用方法)を行うETFは複数存在します。
例えば、下記のETFが東京証券取引所に上場しており、証券会社にて注文可能です。
- 上場インデックスファンド米国株式(S&P500)
- SPDR S&P500 ETF
- iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF
- 上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジあり
- iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF為替ヘッジあり
海外の取引所に上場しているS&P500に連動するETFは以下の通り。これらは外国株を取り扱っている証券会社で注文可能です。
- SPDR S&P 500
- iShares Core S&P 500 ETF
- Vanguard S&P 500 ETF
上記のS&P500の海外上場ETFは、アメリカで上場していることから米ドル建てになります。また、リアルタイムに取引できるのは、海外の取引所が開いている日本の深夜時間帯になります(もちろん証券会社が海外時間のリアルタイム取引サービスを行っていることが前提になります)。
非上場の投資信託を購入する
一方で、いわゆる一般的な投資信託である非上場型の投資信託の中にも、S&P500へのインデックス運用を行う投資信託があります。
多数の商品が現在販売されていますが、例えば以下のようなファンドです。
※以降、上場投資信託は「ETF」、非上場の投資信託を「投資信託」と表記します
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
- 米国株式インデックスファンド
- iFree S&P500インデックス
これらは一般的な投資信託の一種です。価格は日次で変動しますので、ETFのようにリアルタイムに投資することはできません。
ETFとインデックス投資信託の比較
さて、このようにS&P500に投資する方法としては、ETFと非上場のインデックス型投資信託があります。2つの商品の特徴を以下の表にまとめました。
売買の方法
投資信託 | ETF | |
---|---|---|
価格 | 1日1回算出される基準価額 | リアルタイムな市場価格 |
売買先 | 商品により購入できる金融機関が異なる 証券会社・銀行・郵便局など |
証券会社なら各銘柄が売買可能 (海外上場ETFは海外株を取り扱っている証券会社なら可能) |
注文方法 | 基準価額をもとに売買価額を指定 | 証券会社を通じて市場で指値/成行の注文を実施 |
コスト
投資信託 | ETF | |
---|---|---|
取得時/ 売却時の費用 |
商品・販売会社ごとに異なる販売手数料 信託財産留保額/換金手数料 (無料の場合もある) |
市場で取得する際の売買委託手数料 (証券会社によって異なり、無料の場合もある) |
信託報酬※ | 一般的に国内ETFと同等かやや高め 例:SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド0.0938% |
一般的に投資信託より安い。特に海外上場ETFの方が安い 海外上場例:Vanguard S&P500 ETF 0.0300% 国内上場例:SPDR S&P500 米国株 ETF 0.0945% |
※信託報酬とは、ETF・投資信託で運用を行っている間発生する費用。上表の率は年率だが、日々計上され、ETF・投資信託の運用資産から控除される
つみたてNISA
投資信託 | ETF |
---|---|
投資できる商品が複数ある SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド 米国株式インデックス・ファンド など |
現状ETFはつみたてNISAで購入できない |
分配金
投資信託 | ETF |
---|---|
出さずに再投資するものが主流 | 銘柄によっては分配金あり 例:上場インデックスファンド米国株式(S&P500) など |
一般的に、長期投資を考えているなら配当が自動的に再投資される投資信託、中短期の投資も念頭に置いており、取引コストを最小化したいならETFがおすすめです。
またつみたてNISAを利用して投資している場合は、必然的に投資信託を選択することになります。自分の投資スタイルを踏まえて、適した商品を選択するとよいでしょう。
S&P500の投資によってどの程度の収益が発生するのか?
続いて、S&P500への投資がどの程度の収益を生み出すのか見てみましょう。S&P500に限らず、ETFや投資信託の投資では、分配金を受け取るか・受け取らずに再投資するかで、最終的な収益額がずいぶん変わります。今回は10年間投資したとして、それぞれの収益額を見てみましょう。
ETFの「上場インデックスファンド米国株式(S&P500)」は10年以上の運用実績があり、年に一度のペースで分配金を出してきているので、こちらを例に見てみます。
元本100万円で10年間投資、毎年分配金を再投資しない場合
2010年の12月末(取引所の最終日である12月30日)に「上場インデックスファンド米国株式(S&P500)」を100万円分購入し、分配金を再投資せずに受け取りながら、2020年12月末(同じく12月30日)にETFを売却した場合の収益合計は、以下の通りになりました。
- 2010年12月30日の1口あたり基準価額は1074.85円で、100万円分購入すると930口
- 930口を10年間運用した結果得られる分配金の合計額は255,006円
- 2020年12月30日の1口あたり基準価額は4214.71円なので、資産価値は3,919,680円に成長
(売却時価額)+(分配金合計)-(購入時価額)が収益の合計となりますので、3,919,680+255,006-1,000,000=3,174,686円が収益額となります(税引き前の水準となります)。
税引き前とはいえ、当初元本の3倍以上の収益が発生するという結果になりました。S&P500が非常に魅力的な投資先であることがわかります。
元本100万円で10年間投資、分配金を受け取らず再投資する場合
続いては、分配金を受け取らず再投資する場合です。先に紹介した通り、投資信託では分配金を出さずに再投資する商品が多いのですが、現在販売されているS&P500のインデックス型投資信託は、運用期間が短い商品が中心となっています。
一方、ETF「上場インデックスファンド米国株式(S&P500)」が分配金を再投資した場合の基準価額も公表しているので、こちらのデータを使用して収益額をシミュレーションすることにします。
2010年12月末に100万円でETFを買い、分配金は再投資したものとして、2020年12月末に売却した場合の収益を計算します。
- 2010年12月30日の1口あたり基準価額(分配金再投資)は1074.85円*で、100万円分購入すると930口
- 2020年12月30日の1口あたり基準価額(分配金再投資)は4671.83円なので、資産価値は4,348,802円に成長
*当ETFは2010年12月末時点まででは分配金を出していなかったので2010年12月末の基準価額と基準価額(分配金再投資)は同一
分配金は受け取っていないので、単純に(売却時価額)-(購入時価額)が収益の合計となりますので、4,348,802-1,000,000=3,348,802円が収益額となります(こちらも税引き前の水準となります)。
このように、分配金を再投資した方が、分配金を受け取る場合より収益額が大きくなることがわかります。従って、定期的な現金収入が必要ないという方は、分配金を受け取らない投資手法がおすすめです。
実際に受け取れる金額はS&P500の成績とは異なる
さて、S&P500への投資方法としてETFや投資信託を紹介してきましたが、いくつかの理由で、実際に受け取れる金額はS&P500の成績とは異なることに留意が必要です。
為替変動の影響を受ける
S&P500の構成銘柄は米国企業の株なので、当然それぞれの株価は「米ドル建て」で取引されています。一方、未上場の投資信託や東証に上場しているETFは、円建てで取引されます。運用の中で米ドル円の為替変換が発生するので、米ドル円相場によって運用成績が変動することになります。
為替ヘッジ付きの場合は、米ドル円の影響を受けにくくはなりますが、完全に影響が無くなるわけではありませんし、今度はヘッジを行うための費用である「ヘッジコスト」が発生します。ヘッジ付きの投資信託では、このヘッジコストが引かれたあとの数値が運用成績として公表されます。
いずれにしても、米ドル円の為替があることにより、「S&P500」と「日本で上場するインデックス型のETF」や「未上場の投資信託」は運用成績に差が出ることになります。
ちなみに海外上場のETFは米ドル建てで取引されるので、これならETF自体の値動きは為替の影響を受けません。ただし、あらかじめ購入する時点で米ドルを用意しておく必要があります。
もし手元に円しかなく、証券会社に為替変換を依頼する場合は、その過程で為替変動の影響を受けることになります。
S&P500よりも運用成績が上下する場合がある
S&P500と同等の成績を目指しているETFや未上場の投資信託ですが、先の為替の影響がなかったとしても、完全にS&P500と連動するわけではありません。
ETFや投資信託は、「S&P500」に組み入れられている個別銘柄を購入することでS&P500に似た動きになるように運用が行われますが、取引コストやそれぞれの株の取引単位などの制約から、リアルタイムで500銘柄すべてに、指数通りの比率で投資することはほぼ不可能です。
そのため、システムで計算しながら、実際の構成銘柄より少ない銘柄数で運用しながら、S&P500に近い動きになるよう工夫して運用されています。従って、S&P500とETF・投資信託は近い値動きとはなるものの、多少の誤差が発生することは避けられないのです。
信託報酬をファンドに支払う必要がある
ETF・投資信託は運用にコストが発生します。そのコストは日々、一定の割合で運用資産の中から控除しています。
このコストのことを「信託報酬」といいますが、世に出る基準価額はこの信託報酬が控除されたあとの数値で算出されるため、S&P500とETF・投資信託ではこの信託報酬分だけ、運用成績に差が出ることになります。
所得税・住民税も発生する
最後に、ETF・投資信託の売買による収益や受け取った分配金には、所得税・復興特別所得税・住民税が発生します。税率は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%です。
分配金については、基本的に源泉徴収により自動的に控除されます。売買による収益についても、個人投資家が一般的に利用している「源泉徴収ありの特定口座」なら源泉徴収されますが、そうでない場合は、確定申告により自分で納税しなければなりません。
S&P500のインデックス投資で手軽に米国株投資に挑戦しよう!
今回はアメリカの代表的な株価指数であるS&P500について紹介しました。過去何度か大幅な下落を迎えながらも、長期で見れば順調に上昇している魅力的な指数であることがわかります。
ETFや投資信託を活用すれば、日本からでも投資が可能な株価指数なので、海外の株式投資の入門編として、まずはS&P500に連動するインデックス型のETF・投資信託への投資にチャレンジするのもよいでしょう。
・ETFと投資信託の手数料の違いはどれくらい? S&P500・ダウ平均株価・日経平均を直近1年で比較してみた
・ETFとは一体何? 仕組みや投資信託との違いも解説
・ETFと投資信託のメリット・デメリットとは?
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