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作成日: 2018.02.01

中古マンションのさらなる可能性「民泊へのシフト」を考える

中古マンションのさらなる可能性「民泊へのシフト」を考える

訪日客の急増とともに注目が高まる「民泊ビジネス」。自宅などを宿泊施設として提供するプラットフォームを展開する世界最大手のAirbnb(エアビーアンドビー)を利用し、所有マンションを貸し出して利益を上げているホストが日本にもいます。「民泊による不動産活用はどこまで可能か」「デメリットはないのか」について解説します。

「空き家増加」と「訪日客の増加」が民泊拡大の要因

民泊とは「住宅を活用した宿泊サービスの提供」のことです。この文言の中の「住宅」という言葉には、一軒家だけでなくマンションやアパートなどの集合住宅も含まれます。この民泊が広がっている理由の背景は「空き家増加」と「訪日客の増加」です。

まず、「空き家の増加」です。2017年6月に作成された「2030年の住宅市場」(出所:野村総合研究所)のレポートによると、1990年代前半には10%以下だった空き家率は、2018年には約17%に上がっています。さらに、2030年代に入ると空き家率は30%超となり、日本の住宅の3軒に1軒が空き家になる時代が到来するのです。そんな中、従来とは違った発想の住宅活用が模索されています。

次に「訪日客の増加」では、政府のインバウンド誘致、東京オリンピック開幕の影響で訪日客が急増しています。日本政府観光局(JNTO)の発表では、2012年 約836万人だった訪日客は、5年後の2017年には 3倍以上の約2,869万人まで伸びています。それに伴って東京都内や大阪府などでは、宿泊施設が極端に足りない状況が生まれています。

このように「空き家の急増」「訪日客の急増」両方の変化が民泊ビジネスを拡大する追い風になりました。Airbnbに登録している宿泊施設(リスティング)だけでも、2016年は370万人以上の海外旅行者に利用されています。

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合法的に民泊を営もうとする難しさ

ちなみにAirbnbが発表した2016年の日本の標準的なホスト(宿泊施設運営者)の年間収入額は100万4,830円(平均貸し出し回数89泊)です。月にすると約8万3,000円であり、長期空室になっている物件や遊休物件を活用したいという方も多いかもしれません。

しかし、これまでは、民泊の多くが「ヤミ民泊」といわれる違法の物件でした。2017年12月に交付された旅館業法の改正により日本の旅館施設は厳しく規制され、抵触すると「6ヵ月以下の懲役、100万円以下の罰金」の対象となります。実際に違法な民泊の運営者が相次いで摘発されました。

民泊で法的な部分をクリアするには、旅館やホテルほど条件が厳しくない「簡易宿所」として届け出る必要があります。しかし、「延床面積の合計33平方メートル以上という条件」「設備やトイレの数などの制約」などに阻まれ、多くの民泊運営者が申請を断念しているのです。特にワンルームマンションの一般的な広さは、18~25平方メートル程度ですから、合法民泊はほぼ不可能でした。

ワンルームマンションの最大の障壁は「管理組合の規約」

この状況が大きく変わろうとしているのは、 2018年6月の「民泊新法」スタートです。この法案では「年間の営業日数上限180日以内」の規定が設けられましたが、面積や設備についての要件がかなり緩和されます。これにより、マンションを使った「合法の民泊」が増えるかのように見えます。

しかし、地域の安全や環境を守りたい各自治体が民泊に関する条例を次々に作り、民泊増加に待ったをかけている状態です。例えば、東京23区では、多くの自治体で「平日の営業はできない」という条例が作られています。

さらに、各マンションや管理組合の規約が民泊を阻むケースもかなりあります。現実的にワンルームマンションで合法的な民泊をするのはかなりハードルが高いです。また、東京オリンピックが終わった後、民泊が「発展するのか」「衰退するのか」は未知数です。

「民泊が盛り上がっている」「民泊だと賃貸以上の利益が上がる」という雰囲気に流されず、所有物件が賃貸としてニーズがある間は、賃貸物件としての活用を第一に考えるのがよさそうです。しかし、人口減少とともに、空室率が上がっていくリスクもあります。不動産投資をしている人は、将来の転用可能性として民泊を継続的にウォッチすることも大切です。

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RENOSYマガジン編集部

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