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公開日: 2025.08.12

不動産投資における分散投資とは? メリット・デメリットや成功のポイントを解説

監修:
柴田充輝 (1級ファイナンシャルプランニング技能士、社会保険労務士)
不動産投資における分散投資とは? メリット・デメリットや成功のポイントを解説

不動産投資は、中長期的に安定した家賃収入を得られる投資手法です。しかし、投資である以上、一定のリスクが存在します。

そのため、「一つの物件にのみ投資して良いのか」「複数の投資先でリスクを分散した方が良いのではないか」と考える方もいるでしょう。

本記事では、不動産投資における分散方法やメリット・デメリット、分散投資を成功させるポイントを解説します。リスクを抑えて安定的な利益を出したい方に役立つ内容なので、お役立ていただければと思います。

不動産投資における分散投資とは

 

分散投資とは、資産を複数の対象に振り分けて投資する手法のことです。不動産投資においても分散投資は可能です。物件の種類やエリアを分けることで、投資してリスクを分散します。

不動産投資のリスクには、空室や修繕の発生、金利上昇などがあります。これらの問題が発生した場合、一つの物件しか投資していないと、収入が途絶えたり、利益が減ったりしてしまいます。

複数の物件に分散投資することで、一つの物件でマイナスが生じても他の物件からの収入があることで、全体の収益を安定させることが可能です。

不動産投資の分散方法

 

不動産投資の分散方法は主に以下の7つです。

  1. 地域・エリア
  2. 物件種別
  3. 築年数
  4. 投資タイミング
  5. 価格帯
  6. 構造
  7. 間取り

順番に解説します。

1. 地域・エリア

地域ごとに経済状況や人口動態、自然災害リスクなどは異なります。特定の地域にのみ投資すると、その地域の経済状況が悪化したり、大規模な自然災害に見舞われたりした場合に、保有する資産に悪影響が出るでしょう。

また、大学や企業の移転、再開発の有無などの環境変化により、賃貸需要が急変することもあります。投資エリアを分けておくことで、こうした地域依存のリスクを抑え、安定した収益を目指せます。

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2. 物件種別

物件種別を分散させることで、特定の市場変動や需要の変化によるリスクを軽減し、収益を安定させることが可能です。たとえば、ワンルームのような単身者向けマンションと、ファミリー層向けの一軒家を組み合わせれば、人口構成やニーズの変化にも柔軟に対応できます。

多様な物件に分散投資することで、空室リスクや収益変動を抑え、安定した収益を得られる可能性が高まります。

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3. 築年数

築年数を分けて物件を保有することも、不動産投資における分散方法の一つです。

新築は初期費用が高めですが、設備が新しいため修繕リスクも低い傾向にあります。一方、中古物件は購入価格を抑えられ利回りが高い傾向にあるものの、修繕や空室リスクがあります。

また、複数の物件が同時期に大規模修繕が必要になると、一度に高額な費用が発生して資金繰りを圧迫するかもしれません。築年数の分散によって、修繕や設備交換の時期が重なるのを防ぎ、キャッシュフローを安定させられます。

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4. 投資タイミング

不動産投資においては、購入タイミングを分けることも有効です。不動産価格は景気や金利、政策の影響を受けて変動し、最適な投資タイミングを見計らうのは困難であるためです。複数の物件を同時期に購入すると、市場の影響を受けやすいリスクがあります。

しかし、タイミングをずらして複数物件を購入すれば、価格変動の影響を抑えられ、長期的な安定収益につながります。利回りや運用期間が異なる不動産を保有することで、柔軟な不動産投資が可能です。

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5. 価格帯

不動産市場は、価格帯によって需要や流動性が異なります。市場環境が悪化する状況でも安定した収益を確保するために、投資物件の価格帯を分散させるのも効果的です。

高価格帯の物件は立地や設備が優れており、安定した入居者が期待できます。しかし、景気変動の影響を受けやすく、空室が長引く可能性があるのが欠点です。一方で、低価格帯の物件は初期投資が少なく、経済が不安定な時期でも一定の需要が見込めます。

異なる価格帯の物件を組み合わせて投資することで、資金面・収益面のバランスを取りながら、経済変動へも柔軟に対応できる可能性が高まります。

6. 構造

不動産の構造によって法定耐用年数が異なり、減価償却費の計上期間や修繕周期、費用も変動します。

たとえば、木造は建築コストが抑えられ初期投資を抑えやすい反面、耐用年数が短く修繕の頻度が高くなりがちです。一方、鉄筋コンクリート造(RC造)は耐久性が高く長期的に安定した運用が期待できるものの、建築費が高くなる傾向にあります。

異なる構造の物件を組み合わせて保有することで、各物件の特性を活かし、計画的で安定した資産運用が可能になります。

7. 間取り

間取りの異なる複数の物件に投資することで、入居者層を分散でき、安定した賃貸経営が可能になります。

賃貸物件の需要は、単身者やファミリー層、学生など入居者の属性によって異なります。単身者向けのワンルームや1Kは需要が安定している傾向ですが、入居者の入れ替わりが比較的早く、空室期間が発生しやすいのが特徴です。

一方、2LDKや3DKなどのファミリー向け物件は一般的に入居期間が長く、収益の安定性につながります。しかし、空室になると次の入居者が見つかるまでに時間がかかることも少なくありません。

ターゲットとする地域の人口構成や入居者のライフスタイルを考慮し、多様な間取りの物件を組み合わせることで、賃貸需要の変動リスクを効果的に分散できます。

不動産投資における分散投資のメリット

 

不動産投資における分散投資のメリットは以下の4つです。

  1. リスク軽減により安定収益が見込める
  2. 市場変動への対応力が向上する
  3. 収益機会が多様化する
  4. 流動性を高められる

順番に解説します。

1. リスク軽減により安定収益が見込める

不動産投資で分散を行う大きなメリットは、リスクを抑えながら安定した収益を確保できる点です。

一つの物件が空室になったり、特定エリアの市況が悪化したりした場合でも、他の物件やエリアからの家賃収入で補うことが可能です。家賃収入と資産価値の両面で損失の偏りを防ぎ、長期的に安定したキャッシュフローを実現しやすくなります。

ローン返済や資産運用の継続性を保つうえでも、分散によるリスクヘッジは欠かせない戦略といえるでしょう。

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2. 市場変動への対応力が向上する

不動産市場は、経済状況や金利の動向、人口の変化といった外部要因によって常に変動しています。特定の地域や物件タイプに集中投資していると、何か問題があった際に、ポートフォリオ全体が大きな打撃を受ける可能性があります。

地域や物件種別、投資タイミングが異なる複数の物件に投資することでリスクを分散でき、市況変動の影響を最小限に抑えることが可能です。

3. 収益機会が多様化する

投資対象物件を異なる地域や物件種別を分け、投資タイミングを分散することで、収益機会が多様化し、収益性を高めることが可能になります。

たとえば、単身者向け物件では入退去時の更新料礼金による一時収入が見込める一方、ファミリー層向けでは長期的な安定収入が期待できます。また、地域や価格帯、築年数を分けることで、空室リスクや賃料下落の影響も抑えられることが期待できます。

多様な物件を組み合わせることで、時期や市場環境に応じた収益機会を逃さず、柔軟な資産運用が可能になります。

4. 流動性を高められる

不動産投資における流動性とは、売却のしやすさのことを指します。

不動産は一般的に数千万円規模の取引になるため、スムーズに買い手が見つかるとは限りません。株式や債券のようにすぐに現金化できない、流動性が低い資産です。しかし、価格帯や物件種別を分散することで、市場環境に応じて売却しやすい資産を柔軟に選べるようになります。

たとえば、ワンルームや1Kなどの低価格帯物件は需要が高く、ファミリー向けの物件よりも現金化しやすい傾向があります。一方で、高額な物件は買い手が限られ、流動性が低くなるケースもあります。

複数の不動産を保有することで、資金が必要になった際にも迅速に対応できる体制を整えられ、資産運用の自由度が高まります。

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不動産投資における分散投資のデメリット

 

一方、不動産投資における分散投資のデメリットは以下の3つです。

  1. 管理コストと手間が増加する
  2. 初期投資額が増大する
  3. 投資効果も分散される

順番に解説します。

1. 管理コストと手間が増加する

複数の地域に異なる種類の物件を保有すると、その分管理コストと手間が増えます。各物件の入居者の状況把握や維持管理などに時間と労力、費用がかかるためです。遠隔地や海外の物件の場合、現地への移動コストやコミュニケーションコストもかかります。

また、異なる物件タイプや構造を持つ物件は、それぞれ異なる専門知識や管理ノウハウが必要です。管理の把握が行き届かなくなると、空室の長期化や物件価値の低下といったリスクにつながるため、適切な管理体制の構築が欠かせません。そのため、自分の所有物件の組み合わせに適した管理会社やそれぞれの物件に適した管理会社に協力してもらうことで、安定した運用を目指す必要があります。

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2. 初期投資額が増大する

異なる地域や物件種別で複数の不動産を取得するためには、購入費用に加えて、登録免許税不動産取得税仲介手数料などの諸費用が物件ごとに発生します。自己資金が限られている投資家にとって、初期投資額の増大が大きなハードルとなることが考えられます。

しかし、初期投資額が増えるからといって、必ずしも分散投資を諦める必要はありません。融資を活用して初期投資額を抑える方法も一般的かつ効果的です。あえて複数物件を持つことで、一部物件の売却益を活用してローン返済額の早期完済を目指す選択肢も持てます。

3. 投資効果も分散される

投資家自身で投資先のエリア検討から物件選びおよび管理まで行うタイプの場合、さまざまなエリアに物件を分散投資するとなると、分散させた分だけエリア調査や情報収集が必要となります。結果として、運用を継続するなかで対応が追いつかずに投資判断が鈍る可能性も考えられます。

また、分散していることで収益性においてもデメリットと感じることはあり得ます。ある一つの物件が高い家賃収入を生み出したり、大幅な価格上昇を遂げたりしても、その影響はポートフォリオ全体の一部にしか及びません。そのため、一つの物件に投資していた場合に比べて、分散投資をする場合、総リターンは平準化されます。これはメリットですが、リスク分散ができる反面、値動きが小さくなり大きな利益を得にくくなります。

分散投資は短期的な高リターンを追求するものではなく、長期的な視点で安定した資産形成を目指す戦略です。投資効果が分散される可能性を考慮したうえで、自身の投資目標とリスク許容度に応じて、最適な分散の度合いを見極めることが重要です。

不動産の分散投資を成功させるポイント

 

不動産の分散投資を成功させるポイントは以下の2つです。

  1. リスク許容度を超えた投資をしない
  2. 各物件の収益性を確認する

順番に解説します。

1. リスク許容度を超えた投資をしない

リスク許容度とは、資産価値の変動や損失にどれだけ耐えられるかを示す尺度です。年齢や収入、資産状況、投資経験などによって個人差があります。

不動産は価格が高額なため、ローンを活用するケースが一般的です。ローンを活用するからといっても、想定外の空室や修繕費に耐えられる余裕がないと、投資全体が破綻する可能性もあります。運用方針を明確にし、その範囲内でバランスの取れた分散を行うことが、長期的な成功の鍵です。

2. 各物件の収益性を確認する

分散していても、すべての物件が低利益であれば、資産は増えません。分散投資をしたからといって収益が安定するわけではなく、収益性が見込める物件に投資をするのが、不動産投資の基本です。

表面利回りだけで判断せず、管理費や修繕費、空室リスク、周辺環境なども加味した実質利回りを確認することが大切です。

また、将来的な家賃下落や資産価値の変動も視野に入れることで、より正確な収益予測が可能になります。各物件の収益バランスを整えることが、安定した資産形成に欠かせません。

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不動産投資の利回りとは?利回り計算方法と事前に知っておくべき注意点

分散投資を上手く活用して不動産投資を成功させよう

不動産投資における分散投資は、リスクを最小限に抑えながら安定した収益を得る戦略です。地域・エリアや物件種別、築年数などの軸で分散することで、さまざまなリスクを軽減できます。

分散投資のメリットは、リスク軽減による安定収益や市況変動への対応力向上です。一方、管理コストの増加や初期投資額の増大というデメリットもあります。ポイントを押さえた適切な分散投資により、将来的な安定した収益を確保し、着実に資産を積み上げられます。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

この記事を監修した人

柴田充輝 柴田充輝 1級ファイナンシャルプランニング技能士、社会保険労務士

厚生労働省や不動産業界での勤務を通じて社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。 FP1級と社会保険労務士資格を活かして多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。現在はWebライターとして金融・不動産系の記事を中心に執筆しており、1,200記事以上の執筆実績がある。自身でも株式や不動産への投資を行っており、実体験を踏まえて記事制作・監修に携わっている。

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