高配当株ETF、連続増配株ETFって何? 下落相場のいま投資するならこのETF
世界最大の経済大国といえば、米国です。米国は先進国でありながら人口が増加し、長期的に経済が拡大していくことが見込まれます。中でも米国株は、経済的自立を果たして早期リタイアを目指すFIRE(Financial Independence, Retire Early)の有力な投資先としても注目されています。
しかし、個別の米国株は値動きのリスクが大きくなりがちです。いくら米国が今後成長すると見込まれているといっても、短期的には値下がりすることもあるからです。現に2022年から2023年の現在まで、不安定な相場・下落相場となっています。
そこで注目したいのが高配当株・連続増配株に投資するETF(上場投資信託)です。
今回は、米国の高配当株・連続増配株を紹介したうえで、高配当株・連続増配株にまとめて投資できるETFについて、解説します。
高配当株とは?
株式投資をすると得られる利益には、大きく分けて「値上がり益」「配当金」「株主優待」の3つがあります。このうち配当金は、会社の事業がうまくいったときに株主に支払われる「利益の一部」です。配当金を支払うことを「配当」といいます。高配当株とは、この配当金をたくさん出してくれる銘柄のことです。
米国株は、株主に配当を還元する文化が浸透しています。日本株の場合、配当は年に1~2回程度支払われるのが一般的なのに対して、米国株では年に4回配当金がもらえるのが一般的です。
したがって、たとえば
- 1月・4月・7月・10月に配当金を支払う銘柄
- 2月・5月・8月・11月に配当金を支払う銘柄
- 3月・6月・9月・12月に配当金を支払う銘柄
という具合に米国株を分けて保有すれば、毎月配当金がもらえる状態も作り出せます。
2022年12月末時点の、米国株の高配当銘柄上位10社は、次のようになっています。
●米国株の高配当銘柄上位10社(2022年12月末時点)
トップのアルトリア・グループで8.23%、10位のアイビーエムでも4.68%となっています。しかも、10位までの顔ぶれの中には、世界的な大企業も多くランクイン。インテル、フォード、スリーエムなど、日本でも名前の知られている企業も見られます。
ただし、配当利回りを見るときにはひとつ、注意点があります。それは、「株価が下がって高配当」の銘柄が入っている可能性があることです。
配当利回りの計算式は「1株あたりの配当金÷株価×100」です。配当利回りの計算式には、株価が含まれています。つまり、1株あたりの配当金が同じでも、株価が下がると配当利回りは上がるのです。
業績が悪い銘柄に「配当利回りが高いから買う」と飛びついてしまうと、もらえる配当金の利益よりもその後の株価下落の損失のほうが大きくなってしまうこともあり得ます。高配当銘柄を買う際には、好業績かどうかを最重要ポイントとしてチェックしてから投資をしましょう。
連続増配株とは?
配当金の金額を増やすことを増配といいます。連続増配株とは、その増配を何年も連続して続けている銘柄のことです。
日本で連続増配株というと、花王(4452)が有名です。花王は、2022年時点で33年連続の増配を実現しています。これでも十分にすごいことなのですが、米国株には60年以上増配する銘柄も複数あります。
米国の主な「60年以上連続増配」銘柄
トップのアメリカン・ステイツ・ウォーターはなんと68年。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やジョンソン・エンド・ジョンソン、コカ・コーラといったおなじみの会社も60年以上連続で増配を続けています。
リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)のように、市場はときどき大暴落するものですが、これらの銘柄はそんなときにでも変わらずに増配を続けているのです。
連続増配は、財務が安定して、かつ業績が好調・堅実に成長していないと難しいでしょう。好業績であることはもちろんですが、連続増配できる企業は景気の動向に左右されにくい業種であるといえるかもしれません。
いいかえれば、連続増配する企業を選べば、下落相場にも強く、中長期で安定成長する可能性が高いというわけです。
高配当株・連続増配株にまとめて投資できるETF
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託です。日本語では「上場投資信託」などと訳されます。ほとんどのETFは指標に連動するインデックス型。米国株の場合、たとえば「S&P500」などの株価指数と連動する値動きを目指します。
高配当株ETF・連続増配株ETFは、上で紹介した高配当株・連続増配株にまとめて投資するETFです。ETFごとに、どの銘柄に投資しているかは異なりますが、たくさんの銘柄に投資しているため、そのうちのどれかが仮に値下がりしても損失は限定的ですし、他のどれかの値上がりによって値下がりをカバーし、お金を堅実に増やす期待ができます。そのうえ、高配当株ETF・連続増配株ETFの保有中には分配金がもらえます。
ETFは総じて投資信託よりも低コストです。投資信託も、今は選べば信託報酬(持っている間にかかるコスト)が年0.1%程度の安い商品がありますが、ETFの経費率は0.1%を切るものが多くあります。
ETFを選ぶ際も、一般的にはできるだけ経費率の安いものを選ぶほうがいいでしょう。たとえ少しの違いでも、長く投資を続けるほど手数料の差が大きくなるからです。もっとも、ETFも商品ごとに違いがあるので、その違いを理解したうえで投資しましょう。
主な高配当株・連続増配株のETFには、次のようなものがあります。
【主な高配当株の米国ETF】
- バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)経費率0.06%
大型株のうち配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成。
- SPDR ポートフォリオS&P500高配当株式ETF (SPYD) 経費率0.07%
S&P500銘柄のうち高配当株80銘柄で構成される指数に連動。 - iシェアーズ コア米国高配当株ETF(HDV)経費率0.08%
高配当株で構成される指数に連動。財務が健全な銘柄へ投資。 - iシェアーズ 好配当株式ETF(DVY)経費率0.38%
高配当株で構成される指数に連動。過去5年間配当支払いがある銘柄へ投資。
【主な増配株の米国ETF】
- バンガード・米国増配株式ETF(VIG)経費率0.06%
大型株で連続10年以上増配実績がある銘柄に投資。 - SPDR S&P500米国高配当株式ETF(SDY)経費率0.35%
20年以上連続増配を続ける高配当銘柄で構成される指数に連動。
2023年1月23日時点
下落相場に強い、増配株ETF「VIG」への投資がおすすめ
上記6つのETFの中で筆者が特におすすめするのは、バンガード・米国増配株式ETF(VIG)です。VIGは、大型株で連続10年以上増配している実績のある銘柄に投資しています。情報技術やヘルスケアといった、今後有望で長期的な値上がりの見込める業種に多く投資しているうえ、経費率も0.06%と安いからです。
VIGの値動きを、米国の代表的な株価指数である「S&P500」と連動する「バンガードS&P 500 ETF」(VOO)と比較したのが以下のグラフです。
VIGとVOOの値動き比較(2020年12月〜2023年1月)
グラフは、2020年12月を100として各指標の値動きを指数化し、2023年1月までの推移をまとめたものです。
VOOは、2021年には大きく値上がりしているものの、2022年には逆に値下がりし、VIGと比べると値動きが荒いことがわかります。対するVIGも、2021年の値上がり・2022年の値下がりはありますが、その上下は緩やかで、全体としては安定して資産が増やせています。好業績株は下落・暴落に強く、下落や暴落からいち早く立ち直る傾向がありますが、この期間においても確認ができます。
米国の高配当株・連続増配株、そして高配当株・連続増配株に投資するETFについて紹介してきました。米国は今後も成長を続ける可能性が高いですが、個別株ではリスクが大きくなってしまうのも事実です。そのリスクを抑えつつ投資するために、高配当株ETF・連続増配株ETFという選択もぜひご検討してみてください。
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