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2021.11.05

PropTech(不動産テック)特集【インドネシア編】〜9割が2015年以降の創業。超黎明期のインドネシアのPropTech市場〜

PropTech(不動産テック)特集【インドネシア編】〜9割が2015年以降の創業。超黎明期のインドネシアのPropTech市場〜

こんにちは、本多です。ナマステ!
PropTech特集vol.10となる今回は、インドネシアのPropTechについて紹介します。

vol.8で執筆しましたインド編の次は何にしようと考えた時、「インド、インド、インドネシア!!!」となり、インドネシアになりました。今日も絶好調ですね!(笑)

さて、場も温まってきたので(凍りつかないうちに)、さっそく、インドネシア編、始めます!

豊富な労働人口が後押し! インドネシアの居住用不動産市場

ASEANで1位、世界でも4位の約2.7億人(※1)の人口を誇り、中間所得層の数がここ20年間で2倍以上も拡大(※2)しているインドネシア。GDPの半分以上を個人消費が占めている同国では、15〜64歳の労働人口が約1.8億人おり、消費意欲が高いその層の消費の拡大が、居住用不動産セクターにも影響を与えているようです。

また、インドネシアは外資規制が厳しく、法人の設立だけでなく、外国人による土地や物件の所有ができないなど、インドネシア人の内需で不動産業界を成り立たせようとする側面が、他国と比べても強い国のようです。

居住用不動産領域の不動産テック企業の影響を見てみると、東南アジアの各国同様に、物件を掲載するポータルサイトは十分にあります。一方で、物件検索後の内見・交渉・契約といったリアルなオペレーションが伴う領域が盛り上がるのは、これからになりそうです。

※1. 参照:Population by Country (2021) - Worldometer※2. 参照:医療国際展開カントリーレポート(PDF)P8より|経済産業省

インドネシアの主要ポータルサイト

今回はインドネシアの主要ポータルサイトを運営する2社を先に紹介し、次に、今後盛り上がりが期待されるリアルオペレーションを伴う注目PropTech企業3社を紹介したいと思います。

PropertyGuruと99.co

シンガポール編で二大不動産ポータルサイト運営会社として紹介したPropertyGuru Groupと99 Group。東南アジア各国の主要不動産ポータルサイトのM&Aを通じて大きくなった両社ですが、それはインドネシアも例外ではありません。

東南アジアの不動産テックの雄であるPropertyGuruは、2011年にRumah.com、2015年にRumahDijualを買収しています。2社の合計トラフィックは、月800万件ほどとなっており、この数値はPropertyGuru Groupの合計トラフィックの20%強を占めるものとなっています。

Rumah.com引用:Rumah.com

もう一つの主要不動産ポータルサイト99.coは、2018年にUrbanIndo(現在は99.coに統合)、 2019年にRumah123.comを買収しています。

99 Groupとしてインドネシアでのトラフィックは月500万件ほどで、これは同社が運営する合計トラフィックの半分ほどを占めるものとなっています。

Rumah123.com引用:Rumah123.com

インドネシアには、ほかにも不動産ポータルサイトは複数存在していますが、大きなトラフィックを誇るのは、両社およびそのグループ会社で運営されているものです。両社にとっても、自社におけるトラフィックでインドネシアで運営しているポータルサイトが大きな割合を占めているので、このM&Aは目的を一定以上果たしているのではないでしょうか。

また、両社は大きなトラフィックを武器に、ポータルサイトの提供にとどまらず、近年では住宅ローン関連のサービスなどを展開し始めています。以降で紹介するような、最初からリアルなオペレーションに軸足を置いた戦いをするPropTech企業と両社の戦いが激しくなってきており、目が離せない状況です。

リアルオペレーションに軸足を置く注目すべきPropTech企業3社

Jendela360:賃貸領域に注力する一気通貫のデジタル仲介

先ほど紹介したように、インドネシアの不動産探しは、PropertyGuru Groupや99 Groupをはじめとする不動産ポータルによってテック化が先行しています。しかし、その後の内見・契約・決済などの後工程はアナログなままで、顧客体験が良くないという課題があります。

その課題に対し、Jendela360は、不動産ポータルの提供だけでなく、リアルオペレーションが伴う、内見・交渉・契約・決済の各工程にテクノロジーを入れ、エンドユーザー、オーナー、エージェントがサービス上でスムーズにやりとりできる仕組みを提供しています。

Jendela360引用:Jendela360

同社が提供をしている賃貸領域の既存サービスには、

  1.  情報がまとまっていないポータルからの物件検索
  2.  良いエージェントが探せず、交渉も難航
  3.  1年間の家賃の前払いがデフォルト

などの問題があります。

これらを解決するために、同社では入居希望者と外部の不動産エージェントの間に立つアドバイザーを用意し、場所や予算などの事前ヒアリングを行い、その後は360度バーチャルツアーや家賃の分割払いなどの手段で、エンドユーザーの悩みを解決していくサービスを提供しています。

特に若者の負担となっている1年間の前払い家賃に関しては、入居者は現金に加えて最大5%の割引でクレジットカードを使用して全額を支払うか、手数料0%でクレジットカードを使用した3〜12カ月の分割払いをするかのオプションを選ぶことが可能。この仕組みにおいて、同社はインドネシアの主要銀行のほぼすべてと提携をしています。

これらのテクノロジーとリアルオペレーションを掛け合わせた一気通貫のサービスにより、2018年時点で、約5,000件/日(約15万件/​​月)のトラフィック、約1,600万円/月の売上が出ていたとのことです。(※1)

※1. 参照:JENDELA360, SECEPAT-CEPATNYA CARA SEWA APARTEMEN DI JAKARTA

Jendela360 の特徴

  • インドネシア不動産業界に、360度バーチャルツアーを普及させた企業
  • 不動産検索・内見・交渉・契約・決済の各工程をオンライン化
  • 特に若者の負担となっている「前払い家賃」の問題を仕組みで解決
  • 月間約15万件のトラフィック、月間約1,600万円の売上

Jendela360の概要

Flokq:20兆円の賃貸不動産市場を席巻するCo-living企業

次に紹介するFlokqは、Co-livingをはじめとする長期賃貸不動産プラットフォームを展開し、約20兆円の市場規模がある東南アジアの賃貸不動産市場のNo.1を目指している企業です。

Flokq引用:Flokq

前回のインド編で紹介した、インド最大級のCo-livingプラットフォームを運営する“Stanza Living”の背景と似ており、東南アジアでは、以下のような課題があります。

  1.  賃貸物件の契約前の敷金が高額
  2.  生活用品を揃える準備金が生活を圧迫する
  3.  物件オーナーによる管理がずさんで、内見時や入居後も不安が伴う

そこでFlokqは、きれいで好立地な賃貸物件をオーナーから借り上げて管理することで、「頭金なし」「家具や掃除付き」「3カ月ごとにほかのFlokqの物件に移動可能」など、既存の賃貸物件サービスにはない条件でサービスを開始しました。

その好条件にもかかわらず既存の賃貸物件よりも家賃が安いこともあり、事業開始から1年で、管理物件の占有率が95%(※1)、数百万ドルのARR(年間経常収益)が生まれ、キャッシュフローもプラスに転じ、順調に事業が立ち上がりました。

FlokqのCo-livingのサービス内容引用:FlokqのCo-livingのサービス内容

さらにFlokqは、500 StartupsやY Combinatorなどが支援し、テクノロジーとデータ面を強みに持つYukStayを、2021年3月にM&Aしました。

不動産のバリューチェーンの簡素化を目的とした同社の物件管理ツールを用いることで、Flokq内での不動産エージェントは取引が容易になり、エンドユーザーの顧客体験も向上するだろうといった狙いでのM&Aでした。

YukStayは創業してまだ2年ですが、1,000以上の物件を管理しており、物件の高い占有率や、早期のキャッシュフローの黒字化、そしてインドネシアにおける賃貸市場の中でも、市場の拡大スピードが早いCo-living領域で戦っていることを考えると、今後も注目したい企業の一つです。

※1. 東南アジアの不動産市場は占有率50%前後が平均値

Flokqの特徴

  • Co-livingを中心とした長期賃貸不動産プラットフォームを管理・運営
  • 事業立ち上げ1年で、管理物件の占有率95%、数百万ドルのARRに拡大
  • 500 StartupsやY Combinatorなどが支援する企業の買収によりテック強化
  • 東南アジアの20兆円の賃貸市場でNo.1を目指す企業

Flokqの概要

Pinhome:Gojekの幹部が創業した大注目企業

Uberの競合で、インドネシア唯一のデカコーン企業(※1)であるGojekの幹部が創業したPinhomeは、テックを用いた住宅ローンの合理化からスタートし、不動産取引のオンライン化、そして、東南アジアではまだ確立していない不動産価格査定システムの構築を行っている注目企業です。

※1. ユニコーンが創業10年以内で、時価総額10億ドルの未上場ベンチャー企業を指すのに対して、デカコーンは時価総額100億ドルのベンチャー企業を指す。

Insignia Ventures Partners(創業者のDayu Dara Permata(左)と Ahmed Aljunied(右))引用:Insignia Ventures Partners(創業者のDayu Dara Permata(左)と Ahmed Aljunied(右))

1億人がまだ不動産を所有していないインドネシアですが、2020年度の住宅購入者の40%が35歳未満と、ミレニアル世代の住宅需要が急速に伸びています。しかし、住宅購入者の住宅ローン利用率は85%と高い数値にもかかわらず、金融サービスへのアクセスに何かしらの制限がある人が9,000万人もいるといわれ、住宅ローン周りが住宅購入における大きな課題となっています。

Pinhomeは、インドネシア最大の銀行を含め、住宅ローンを備えた85の銀行と提携し、住宅購入希望者が自分に合った住宅ローンを提供する銀行とマッチングし、住宅ローンの申し込みプロセスをオンライン上でできるプラットフォームを提供しています。

同社のプラットフォームから住宅ローンの申請書を提出すると、申請書のステータスを追跡でき、オンライン上で支払いが完結できる仕組みです。

Pinhome引用:Pinhome

また、同社は住宅ローン周りにとどまらず、今では不動産ポータルやエージェントによるデジタル仲介、そして、住宅ローンで必要な不動産価格査定システム「Pinvalue」の構築、アプリの最適化にも力を入れ、購入から売却までのオンライン不動産取引の実現を目指しています。特に「Pinvalue」は注目すべきサービスかと思います。

東南アジアでは、日本のREINSやアメリカのMLSに該当する不動産取引の基盤となるインフラが存在しておらず、また、取引データが市場に出回って存在していないが故に、データに基づく不動産価格評価がほとんどできていないのが現状です。

この課題の解決に加え、アメリカ不動産テックの雄・Zillowは、不動産価格査定システム「Zestimate」のリリースにより、物件データが急増し、取引件数も増え、今の地位に駆け上がったといわれており、同様のことが「Pinvalue」を通じて起こるのでは?と個人的に注目しています。

【関連リンク】
PropTech(不動産テック)特集【アメリカ編】〜GAFA的存在「ZORC」の正体〜

Pinhomeの特徴

  • Gojekの幹部が創業
  • インドネシア最大の銀行を含む85の銀行と提携し、住宅ローンのプロセスを合理化
  • 不動産ポータル、デジタル仲介、住宅ローン申し込み、不動産価格査定といった各プロセスをテック化
  • Zillowの「Zestimate」に似た「Pinvalue」は、今後の注目サービス

Pinhomeの概要

  • 設立:2019年12月
  • 本拠地:Jakarta
  • 代表:Dayu Dara Permata, Ahmed Aljunied
  • URL:https://www.pinhome.id/

これから始まる、インドネシアのPropTech

インドネシアのPropTech企業ですが、今回紹介した企業を含め、私が調べた50社ほどの企業の9割以上が2015年以降の創業でした。PropertyGuruや99.coなどがM&Aを通じ、インドネシアの主要ポータルサイトを運営していますが、リアルオペレーションを伴う新興企業がここ2〜3年で台頭してきている印象を受けます。

ただ全体感としては、PropTech企業というよりも、インドネシアの不動産市場自体がまだまだ黎明期で、中間層の伸びに伴ってこれから大きく成長してくる市場かと思うので、引き続き注目していきたい市場の一つです。コロナが落ち着いたタイミングでの、訪問国リストに追加しておきます。

では、今回はこの辺で。ナマステ!(最後にやっぱり言いたいフレーズ Of The Year)

各国のPropTech事例をもっと詳しく知りたい、PropTechに興味があるという方もいるかと思います。カジュアル面談のリンク、私のFacebook・Twitterアカウントリンクを貼らせていただきますので、気軽にご連絡ください。一緒に世界のPropTechを盛り上げていきましょう!

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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

本多淳一

ニューヨーク州立大学卒業後、ソーシャルベンチャーで新規事業開発、前職では日系不動産デベロッパーのインド支社にて新規事業開発に従事。2020年に株式会社GA technologiesにジョインし、新規事業開発に従事。 社内アワードにクルタ(インドの正装)で登壇するくらい、インドが大好き。ナマステ! Twitter:@JH19890813 Facebook:junichi.honda.98

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