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更新日: 2021.05.21

株、FX、ブルベア投信、不動産投資。レバレッジ活用のリスクとは?

株、FX、ブルベア投信、不動産投資。レバレッジ活用のリスクとは?

少ない投資元本で大きな収益の獲得を目指す場合、レバレッジの活用が有効な解決策の一つです。しかし、多くの投資手法では、レバレッジを活用して投資を行うとリスクが高くなってしまいます。現実に、「為替や株式によるレバレッジを活用して取引に失敗し大損してしまった」というケースも少なくありません。一方、不動産投資でレバレッジを活用すると、過度にリスクを高めることなく資産運用が可能です。

今回はレバレッジをかけた取引の種類やリスク、そしてそれらと比較した場合の不動産投資の優位性を紹介します。

レバレッジをかけた投資とは

レバレッジとは「てこ」の意味で、「少ない力で大きな効果を得る」という「てこの原理」の基本的な意味から転じて用いられるようになった金融用語です。

もともとは企業財務の分野で、借金をすることで企業が持つ資本よりも大きな金額でビジネスを行うことを指します。この用法が転じて、投資の世界でも実際の投資元本より大きな金額で投資することを指すようになりました。

企業財務の場合、レバレッジを活用するための手段は借金をすることになります。一方個人投資の世界では、資産運用によってレバレッジのかけ方は借金以外の手法もあります。次の章で、レバレッジを活用した代表的な手法をいくつか紹介していきます。

レバレッジを活用した投資の種類

一昔前までレバレッジを活用した取引といえば、個人投資家が取り組めるのは不動産投資くらいでした。しかし現代ではいくつかの手法で簡単にチャレンジすることが可能です。ここでは代表的なレバレッジを活用した投資手法について4つほど紹介します。

株の信用取引:レバレッジは最大3.3倍程度

1つ目の手法は株の信用取引です。これは証券会社などから借金をすることにより、株式を売買する手法です。なおこの借金は、もっぱら投資家が指定した株の売買のみに自動的に使用されるため、銀行や消費者金融で借りる「ローン」とは意味合いが異なります。

何もない投資家に資金を貸すのは証券会社にとっても大きなリスクになるため、投資家は「証拠金」とよばれる担保金を証券会社に預ける必要があります。

証券会社によって細かくルールは異なりますが、近年はおおむね証拠金の3.3倍程度の金額まで取引ができるケースが多いようです。例えば100万円の証拠金を預けたら、330万円分の株の売買ができるということになります。

信用取引では、このように元本より大きな株式投資ができることに加え、「空売り」といって、まだ保有していない株を売却したのと同じ効果のポジションを持つことで「値下がりしたときに儲かる」投資を行うことが可能です。したがって、株が上がるときはもちろん、株が下がるときにも収益を得るチャンスがあるということです。

ただし、借金をして売買をしている以上、どこかのタイミングで返済しなければなりません。信用取引の形態によりますが、6カ月もしくは3年以内に投資していた株を売却(もしくは空売りしていた株を買い戻す)する必要があります。

FX(外国為替証拠金取引):レバレッジは25倍まで

個人投資家に人気の投資手法として「FX」があります。もともとは外国通貨への投資手法でしたが、近年は仮想通貨への投資にも対応している業者が多くなってきています。

FXも運営業者に証拠金を預け、証拠金より大きい金額で投資を行うことができます。かつては100倍以上のレバレッジを許容する業者も多々ありましたが、投資に不慣れな個人投資家が大幅な損失を出してしまうことが問題となり、現在では25倍まで(国内の個人口座の場合)と定められています。

なおやや専門的な話ですが、FXでは業者に借金をして為替売買を行っているのではなく、「デリバティブ」という金融商品を活用して、FX業者と「為替相場に連動して利益をもらったり、損失を受ける」という契約をしています。そのため一般的に損失が拡大する等の事態が起きない限り、FXは期限なくポジションを持ち続けることが可能です。

FXも先に紹介した信用取引も「証拠金」を差し入れますが、証拠金の性質は若干異なる点に留意しておきましょう。

ブルベア投資信託:レバレッジは最大4倍程度

一般的な投資信託の売買の中で疑似的にレバレッジをかけた投資を行う手法として「ブルベア」というタイプの投資信託を購入する方法があります。

このブルベアタイプの投資信託は、特定のインデックス(日経平均・ダウなど)のパフォーマンスを数倍した値動きと連動する仕組みを持っています。倍数は商品によって異なりますが、例えば日経平均2倍に連動する投資信託を1万円購入した場合、原理としては2万円分日経平均に投資したのと同等の価格の値動きになります。

例えば日経平均が10%値上がりしたら、普通の日経平均のインデックス投資信託に1万円投資していた場合は、1,000円の利益が出ますが、日経平均2倍の投信なら2,000円の利益が出ます(本来は信託報酬など費用がかかりますし、完全に指数に連動できるとは限らないので、あくまで原理としてご理解ください)。

日本株の指数である日経平均を例にして紹介しましたが、近年は日本株のほか、米国株、債券、為替などさまざまな金融商品に連動するブルベア型投資信託が販売されています。倍数は投資信託の銘柄によってあらかじめ定められていて、大体4倍程度のレバレッジの投資信託までは一般的に販売されています。

ここまで紹介した指数のパフォーマンスを増幅する投資信託は、ブルベア投資信託の中の「ブル」の投資信託になります。逆に「ベア」はそれぞれ特定の指数の「マイナス○倍」に連動するように設計された商品です。

つまり値下がりすればするほど収益が出る投資信託となります。このようにブルベア投資信託を活用すれば、相場の下落局面でも収益を得ることが可能です。

不動産投資:レバレッジは40倍程度

不動産投資におけるレバレッジの活用は、古くからある手法です。不動産投資では物件を購入するためにまとまった資金が必要です。資産価値にもよりますが安いものでも数百万円、一般的な物件で数千万円、ビルなどになると億単位の価格が付けられます。

多くの投資家はそれほどのまとまった現金を持っていないため、銀行ローンを活用して物件を購入するケースが一般的です。これまで紹介した手法とは異なりますが、金融機関からの借金により現在の所持金(=投資元本)より高額の物件に投資するわけですので、やはりレバレッジを活用した投資を行っているといえます。

不動産におけるレバレッジの限度は、借りる人の信用力に大きく依存します。例えば初期費用50万円だけを支払って、2,000万円の物件をフルローンで購入した場合は、当初払った現金が50万円で物件の資産価格は購入時点で2,000万円なので、40倍のレバレッジをかけている計算になります。 

【関連リンク】
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レバレッジを活用した投資の注意点

レバレッジを活用すると、実際の元本より大きな投資ができる点は魅力的にみえますが、注意すべき点が大きく分けて3つほどあります。

リスクも大きくなる

株や債券・為替など金融商品への投資において、レバレッジを活用して元本より大きな金額で投資を行うと、価格変動のリスクも大きくなります。価格が上昇した場合には大きな利益が発生しますが、裏を返せば価格が下落した際には損失が拡大することになります。

株式投資などは個人投資家が一般的に行う投資の中ではリスクが高い部類に入ります。株式指数でも数十%の下落が発生することは決して珍しくありませんし、個別企業の株式は企業業績にも連動するため、さらに大きな株価の下落が発生する場合もあります。

そこにレバレッジをかけると、個人投資家では管理が困難なほどリスクが高くなる場合もあります。例えば、2020年のコロナショックにおいては、米国株の指数は一時30%以上下落しました。もしこの時2倍のレバレッジで投資を行っていた場合、単純計算で60%以上の損失を被ることになります。

為替取引自体は株と比較すればややリスクの低い取引ですが、為替を用いたFXでは、先に書いた通り25倍までレバレッジをかけることが可能です。25倍のレバレッジというのは、わずか4%下落しただけで、損失が投資元本相当に達してしまうということです。

例えば、現在のドル円為替相場を108円とすると、4%の下落幅は約103.7円です。25倍でポジションを持っていた場合、103.7円になるだけで投資元本と同額の損失が発生してしまうのです(簡単化のため、金利収入などを無視しています)。為替取引自体のリスクはさほど高くなくとも、このようなレバレッジをかけることで極めてハイリスクの投資手法になってしまいます。

投資元本が「ゼロ」になれば済むとは限らない、信用取引とFX

普通の投資で想定される最悪の「大損ケース」は、「投資元本がゼロになる」ことだと思います。リスクの高い株式投資でも、通常の投資なら企業が倒産して株価がゼロになれば終わりです。これでも個人投資家にとっては十分重大な痛手ですが、レバレッジを活用した取引の中でも信用取引とFXでは、当初の投資元本以上の損失が発生するリスクがあります。

信用取引やFXは、先にお伝えした通り一定額の証拠金を入れておく必要があります。そして投資先から損失が発生した場合、損失額が証拠金から減額されます(その後価格が回復すれば証拠金は戻ります)。

証拠金は当初の投資額(元本ではなく実際の投資額)の一定割合を維持しなければならない決まりになっています。もし、証拠金がその一定割合を下回った場合には、追加の証拠金を差し出して、証拠金額を維持しなければなりません(これを追証といいます)。

大幅な損失が発生すれば、それだけ追証も大きくなり、時には当初差し入れた証拠金以上の額を新たに差し出さなければならない場合もあります。その後も価格が回復せず、追証できないとなれば、信用取引・FXの損失額は当初の元本以上になるリスクがあるというわけです。

ブルベア型の投資信託については、基準価額がゼロより下がることはないので、投資元本以上の損が発生することはありません。例えば投資信託の運用会社が基準価額ゼロになる前に投資信託の運用の終了を決めれば、完全にゼロになる前に強制的に換金される場合もあります(投資信託は一部を除き運用期間が定められていませんが、運用残高が小さくなりすぎたり、基準価額が下がりすぎたりした場合に、運用を終了し、強制的に換金する場合があります)。ただしそれでも、個人投資家の投資手法としてはリスクの高い商品であると言えるでしょう。

個人投資家では難しいリスク計測

以上のように現代では手軽にレバレッジをかけた投資が個人で行えるようになったのですが、リスクが高いという難点があります。現実に信用取引・FXの失敗で大きなダメージを負ってしまった経験を持つ個人投資家も少なくありません。

「投資のリスク=想定される価格変動の大きさ」は、機関投資家であればシステムなどを用いて厳格管理が可能です。しかし個人投資家がリスクを厳密に計測するのは困難です。多くの個人投資家は、自分がどの程度リスクを取っているのか実はよくわからないまま、時には知らずにレバレッジをかけてハイリスクな運用を行っています。

比較的安全にレバレッジをかけることが可能な不動産投資

信用取引やFXに比べると、不動産投資はあまりリスクを高めることなく、大きなレバレッジをかけた資産運用が可能といえます。

不動産の購入は銀行など金融機関のローンを借りることになります。金融機関は融資対象の不動産の価値を評価し、融資金額を決めます。審査によっては、物件価格100%を借りられるフルローンがおりることもあります。

個人投資家は月々のローン支払いは発生しますが、一般的には家賃収入で賄える水準のローンを借りるので、ローンの支払いによって投資家の資金が出ていくことは、適切に投資ができていればありません(これが成り立たない不動産投資は行わない方がよいでしょう)。

個人投資家が不動産投資を行う場合、物件の立地・物件そのもの・家賃収入等を基準にして投資判断をします。不動産価格は投資期間の内に変動すると見込まれますが、上記の運用を行ううえでカギとなる家賃水準は、資産価格に連動するわけではありません。そのため、物件を売却しない限り投資家が価格変動の影響を直接受けることはありません。

このように、所有している間は不動産の価格変動の影響を受けにくいため、不動産投資ではレバレッジをかけて高額な物件へ投資したとしてもリスクは高くなりません。

ローンの支払いが完了すれば、購入した物件がそのまま資産になります。先の例のように50万円の元本で2,000万円の物件を購入した場合、35年後のローン完済時には、50万円で2,000万円相当の物件が手に入ることになります。経年劣化により資産価値が下がっている可能性はありますが、50万円の当初元本と比較すれば相応の金額の資産が手に入るケースがほとんどでしょう。

以上のように、不動産投資ならレバレッジをかけてもほかの手法と比較して低リスクで運用可能なため、厳格なリスク計測が難しい個人投資家にとってはおすすめの投資手法といえます。もちろんリスクがないわけではなく、入居者がいることによって家賃が入るという前提のもとで成り立つ投資のため、立地選びなどは重要です。

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レバレッジを活用して、小さい元本で大きな投資をするなら不動産投資がおすすめ

金融商品の進化により、現代ではレバレッジを活用して、実際の元本より大きな投資を行う手法がいくつもあります。

これらを活用すれば、小さい元本で大きな収益を得るチャンスがあります。しかし投資手法によっては、投資元本以上の損失が発生する可能性があるなど、個人投資家にとってはレバレッジをかけた投資の多くはハイリスクな手法です。

一方、不動産の価格変動の影響を受けにくい不動産投資は、レバレッジをかけても金融商品のようにリスクが上がることはありません。安定性を重視しながら少ない元本で大きな投資を行いたい場合には、物件エリアの選定を慎重に行ったうえで、レバレッジを活用した不動産投資がおすすめです。

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この記事を書いた人

伊藤圭佑 証券アナリスト

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。

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