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作成日: 2021.04.30

PropTech(不動産テック)特集【アフリカ編】〜不動産登記約3%といわれるナイジェリアでデジタル変革を起こすスタートアップ企業などを紹介〜

PropTech(不動産テック)特集【アフリカ編】〜不動産登記約3%といわれるナイジェリアでデジタル変革を起こすスタートアップ企業などを紹介〜

PropTech特集vol.5となる今回は、大自然サバンナ、ジャングルのイメージが強いアフリカ諸国(以下、アフリカ)の不動産テックについて紹介します。

経済成長も期待されるアフリカにて、人口増加に伴い携帯電話、情報通信技術などの普及が進み、IoTやビッグデータ、シェアリングエコノミーなどテクノロジーの活用が進んでいます。そんな中、多くの産業でテクノロジーを活用したビジネスが生まれつつあり、不動産業界もその一つです。

今回、2030年前後から本格的に人口ボーナス期を迎えるアフリカにて、PropTech企業のエコシステムに取り組むPropTech Africa創設者の1人、Sean Godoy氏に紹介いただいた3つのスタートアップ企業を紹介します。

参照:アフリカこそFinTech(フィンテック)先進国、2030年は経済の主役に?|Yahoo! ファイナンス

アフリカの人口と市場について

アフリカの人口は、2050年には25億人を突破すると見込まれています。2015年から2050年の国別の人口増加予想によると、人口増加数上位10カ国のうち、7カ国がアフリカ、2050年以降では、世界の人口の4人に1人がアフリカ人という予想結果です。

地域別人口予想・2015〜2050年国別人口増加数予想引用:アフリカ経済の⻑期成⻑と パン・アフリカ株式ファンドの魅⼒|SOMPO Holdings(PDF)

GDP面でも成長を続け、2050年には2020年のGDPの5.7倍、2060年には8倍になると予想されています。

Knight Frankによる「The big five:Key economic themes set to drive growth across Africa」の記事では、2023年までにアフリカの世帯の46%以上が5,000USドル以上(日本円で約54万円)の年間所得を得るとのことで、アフリカの経済成長が予想されています。

参照:The big five: Key economic themes set to drive growth across Africa|KnightFrank 

アフリカのGDPの長期予想引用:アフリカ経済の⻑期成⻑と パン・アフリカ株式ファンドの魅⼒|SOMPO Holdings(PDF)

アフリカ企業の資金調達について

2020年、フランスのベンチャーキャピタル、partechが発表したPartech Africaのレポートによると、アフリカのテック系スタートアップ347社で計359件、14億3000万USドル(約1,577億円)の資金調達が実施されているとのことです。

アフリカのテック系スタートアップで359件、14億3000万USドル(約1,577億円)の資金調達が実施されている引用:2020 Africa Tech Venture Capital Report |partech

2020年は新型コロナウイルスの影響により日本やアメリカ含め各国で資金調達が難しい年になりましたが、その状況下でもアフリカは前年と比べて109ラウンドの増加となっており、このことからも投資家からの高い注目がうかがえます。

参照:2020 Africa Tech Venture Capital Report |partech

アフリカは前年と比べて109ラウンドの増加引用:2020 Africa Tech Venture Capital Report |partech

近年、アフリカのスタートアップ企業は、国内外の投資家から資金調達を実施しており、2015年に4億ドル(約420億円)だった調達額が、2019年には20億ドル(約2,100億円)と、4年で約5倍に増加しています。

参照:2020年におけるアフリカのスタートアップの資金調達状況|TechCrunch

アフリカのPropTech (不動産テック)市場に関して

アメリカや中国、ヨーロッパなど多数の国でテクノロジーを活用したPropTechが不動産業界を変革している中、アフリカの不動産業界においてもPropTechに大きな期待がされています。

その理由は、他国ですでに立証されているPropTechによる業界の活性化、業務効率化などが、アフリカの非効率な不動産業界でも機能すると見込まれているからです。

例えば、World Bank’s Ease of Doing Business Indexで挙げられている「建設許可」「登記手続き」「不動産市場の非効率性」などアフリカの不動産業界でもみられる不動産業界の問題が、ビッグデータやAI、シェアリングエコノミーなどを絡めたPropTechの活用で解決されていくことが予想されています。

また、上記の不動産業界の非効率な問題は、不動産業界特有もあれば、住宅ローンや登記手続きをはじめとする金融分野のフィンテックなど、ほかの分野にもつながる部分もあり、この意味でもPropTechの注目は高いとされています。

参照:Mapping the East African Proptech Ecosystem |Sean Godoy(PDF)

アフリカのPropTech企業について  

PropTech Africa創立者の1人であるSean Godoy氏のレポートによると、アフリカのPropTech企業数は2019年時点で42でしたが、現在は約60の企業が存在すると記載されています。

実際、アフリカのケニア、タンザニア、ウガンダを対象にPropTech企業の調査を行ったところ、合計51社の企業が確認され、その多くは「サービス・ソフトウェア」「販売、賃貸」のカテゴリーでビジネスを展開していることがわかりました。

また、コワーキングやフレキシブルスペースなど、場所の提供を行っている企業は49社が確認されました。

参照:Mapping the East African Proptech Ecosystem |Sean Godoy(PDF)

アフリカの注目スタートアップ企業

Spleet 

Spleetは2017年に創業され、ナイジェリアを拠点に居住用物件をプラットフォーム上で提供している企業です。借主はオンライン上で物件検索が簡単にでき、貸主は自分が保有している物件の貸し出しをオンライン上で行えます。

ナイジェリア最大の都市・ラゴスでは、手軽な価格のアパートを見つけることが困難で、理想の物件が見つかったとしても、家賃の支払い問題で契約が難しい人たちがたくさん存在しており、Spleetの創立者Dolapo Adebayo氏もその問題に直面していた1人でした。

ラゴスでは、高い生活費を理由に家賃の支払いが停滞するリスクがあり、ほとんどの貸主は、借主に入居時に2年もしくはそれ以上の家賃を前払いすることを義務付けています。このような入居前の多額な前払いを理由に、ラゴスで物件を借りることは難しい状況でした。

参照:Just like Airbnb, Spleet is providing flexible rent experiences for accommodation seeker|Techpoint Africa.

Spleet引用:Spleet 

Spleetはこのような課題を解決すべく、独自の技術を活用し、借主の審査を実施し、審査を通過した人だけがオンライン上で簡単に物件を借りることができるサービスの提供を開始しました。

それぞれの家には家具がついており、借主はこれをサブスクリプションで支払うため、入居初期にかかる家具購入費など、これまで負担となっていた高い生活費の軽減ができます。

また、このプラットフォーム上で予約を行うと、家具・水道光熱・清掃・セキュリティなどすべての費用がサブスクリプションでの支払いで完了する仕組みなので、支払いの停滞の問題も解決され、貸主としても安心でき、この点もSpleetとほかのサービスとの大きな違いになっています。

Spleetで検索した際の物件の一例画像は短期滞在で検索した際の物件の一例
引用:Altura|Spleet
家賃に水道光熱費やセキュリティサービス費用なども含まれている引用:DESIGNED FOR YOU All bills inclusive living|Spleet

Spleetの提供している物件は家賃に電気・水道・ガス・クリーニング費用やセキュリティサービス費用なども含まれているため、料金が不透明になっていた問題も解決されているとのことです。

Spleetのミッション

Spleetは、「Building a future where everyone gets a fair chance at efficient and affordable living spaces(誰もが効率的で手ごろな価格のリビングスペースを公平に手に入れることができる未来を築く)」をミッションに掲げており、プラットフォームの提供を通じて物件オーナーと借り手の取引をスムーズに行うことを目指しています。

ベータ版の提供を開始した2017年には、7軒の家主と提携し、31室のユニークな部屋を月額もしくは四半期のサブスク契約で会員に提供しました。その際、部屋の平均稼働率は98%で、600泊以上の予約が入っていたとWeb メディアDisrupt Africa「Nigerian rental platform Spleet works on funding to meet demand」は紹介しており、サービスへの注目度がうかがえます。

現在は200以上の物件が掲載されており、物件提供者数は100人以上、今まで300万以上の予約が行われました。

参照:We are building the future of structured and equitable access to housing.|Spleet

家賃の前払い問題はラゴスに限ったことではなく、アフリカのほかの主要都市に同様な問題があるため、隣接国にも展開していきたいと2019年のWeb記事「Nigerian rental platform Spleet works on funding to meet demand by Distrup Africa」にてCOOのAkintola Adesanmiはコメントしており、2021年、同記事にて、ガーナ、ルワンダ共和国、ケニア向けのサービス拡大が発表されました。

参照:Nigerian rental platform Spleet works on funding to meet demand |Disrupt Africa参照:Nigerian prop-tech startup Spleet expanding to Ghana, Rwanda and Kenya|Disrupt Africa

Spleetの特徴

  • サブスク型のホームレンタルサービス
  • 柔軟な支払い方法の提供(日割・月割・四半期割)
  • シェアルーム、一軒家など幅広い契約・部屋タイプの提供

Spleet 概要

Seso Global

2017年ナイジェリアを拠点に創業。現在、ナイジェリア、ガーナ、南アフリカ、イギリスにてサービスを展開しています。

同社はブロックチェーンを活用したデジタルな不動産取引(住宅ローン)をワンストップで提供しており、JETROによると2020年時点にて、2,000以上の不動産を掲載、5,000以上の閲覧を記録しているとのことです。

Seso Globalの特徴は、プラットフォーム上にて不動産、法律事務所、銀行の3者をつなぎブロックチェーン上で情報管理をしていることです。これにより、不動産登記が公的に機能していないナイジェリアで安心した不動産取引の実現をサポートしています。

同社は、2020年に日本のベンチャーキャピタル「Kepple Africa Ventures」から投資を受けています。

参照:[Interview] ナイジェリアの不動産ブロックチェーン “Seso Global”|TOKEN EXPRESS参照:Japanese VC Firm Kepple Funds 16 More African Tech Startups | Business Elites Africa参照:アフリカ・スタートアップ 商談会&セミナーのご案内|JETRO(PDF)

SESO GLOBAL引用:Seso Global about us |Seso Global

ナイジェリアでは不動産の正式な所有権が確保されておらず、当局に正式に登録されている土地は約3%といわれています。このような背景から、Seso Globalは不動産の所有権を確保するためブロックチェーンを活用したプラットフォームを展開、デジタル上で土地の情報管理が行えることを目指しサービス提供を行っています。

同サービスは、不動産取引において電子契約を活用、不動産取引(売買・賃貸)、住宅ローンサービスなどすべての取引をスマートコントラクトにて実施しています。また、ビッグデータやAIを活用した住宅市場の分析データや住宅ローンに関する予測レポートの提供も行っています。

サイト上では、デベロッパーから仕入れた新築・新中古物件を取り扱っており、ポータルサイトから簡単に物件の検索が可能です。

ポータルサイトから簡単に物件の検索が可能引用:Find your dream home 4-bedroom detached |Seso Global

Seso Globalの特徴

  • 物件リサーチ・提案、内見、契約、登記までワンストップで提供
  • ブロックチェーンを活用した物件情報管理
  • 不動産、法律事務所、銀行の3者間をワンプラットフォームでコネクト
  • 物件検索プラットフォームを運営
  • 住宅ローンや土地サービスも一気通貫で提供
  • 住宅ローンを提供(ナイジェリアのスタンダード・チャータード銀行)

参照:アフリカ・スタートアップ 商談会&セミナーのご案内|JETRO(PDF)参照:Seso Global ABout us |Seso Global

Seso Global 概要

flow

2017年南アフリカにて創業。借主は家賃の支払いをアプリ内で行うことでポイントが付与され、flowが提携している食料品・衣料品・ホームクリーニング・旅行・家具・Netflix・インターネットなどの各サービスをそのポイントを使って割引価格で購入できます。また、このアプリを通じて、部屋の修繕依頼や家主への報告なども行えます。

家賃の支払いをアプリ内で行うことでポイントが付与される引用:How Proptech Helps You Retain Your Tenants|flow

また、毎月入居者へポイント付きのアンケートを実施することで、各物件の満足度を調査し、貸主へ報告しています。

貸主側は定期的にアンケート結果を受け取ることで借主の物件に対する満足度を把握でき、今後の賃借契約や更新の際の参考データとして活用することが可能です。

アンケートを実施し、各物件の満足度を調査引用:How Proptech Helps You Retain Your Tenants|flow

このほかにも、Pay Rent (家賃支払い)キャンペーン、契約更新キャンペーン、テナントチェックインキャンペーンなど、定期的なキャンペーンを通じてユーザーのアプリ利用頻度の増加施策、ポイント付与を通じたオンタイムの家賃支払いを促進しています。

flowの特徴

  • アプリを通じた家賃支払い
  • ポイント付与制度
  • アプリ上での家主とのやりとりが可能

flow 概要

PropTech Africa コミュニティについて

冒頭で紹介したPropTechのコミュニティ「PropTech Africa」は、2019年南アフリカの経済の中心地・ヨハネスブルグにてKevin Teeroovengadum、Sean Godoy、Wayne Berger、Richard Benstedの4人によって設立された非利益団体コミュニティです。

アフリカを中心としたナイロビ、ラゴス、モーリシャスでのイベント開催や、世界のPropTechコミュニティなどと連携し、定期的なPropTechのオンラインイベントなどを開催しています。

参照:About |PropTech Africa

PropTech Africa引用:PropTech Africa

PropTech Africaは、有意義な交流と関係を築くために、アフリカのプロップテック・エコシステムを結びつけ、同時に、不動産業界や関連するステークホルダー全体に向けてPropTech分野を宣伝し、アフリカ大陸での認知度向上と成長の促進を行っています。

PropTech Africa × PropTech JAPAN イベント開催

2021年5月13日日本時間17:00〜18:00に、PropTech Africa × PropTech JAPANのオンラインイベントが開催されます。PropTech Africa創立者の1人であるSean Godoy氏からPropTech Africaに関する紹介や不動産テックのスタートアップ企業が数社登壇する予定です!

参加は、近日Peatixのこちらのページからイベントへの登録が可能です。
ご興味ある方はぜひ参加してみてください。

PropTech Africa × PropTech JAPAN

イベント名:[PropTech Africa × PropTech JAPAN]
PropTechs from Africa & Japan -Pitch and Panel Session-

  • 日時:2021年5月13日(木曜日)17:00 開始 18:30 終了予定
  • 開催場所:オンライン
  • 参加費用:無料
  • 参加人数:先着50名
  • イベント概要:2021年2月、PropTech JAPANとProptech Africaは相互協力の覚書を締結、コミュニティ間の連携を開始。相互協力の覚書締結を記念し、連携後初となるイベントを開催。今回アフリカ、日本のスタートアップに登壇頂き、ピッチそしてパネルディスカッションを開催。日本とアフリカという全く異なる環境下で生まれたPropTechスタートアップの経営者たちが一堂に会するイベントです。
  • URL:https://peatix.com/event/1896789/view
     

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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この記事を書いた人

早田菜美

13歳から25歳まで海外へ。 タイのインターナショナル大学を卒業後、就職を機に帰国。その後ニューヨーク、バンコク、ヤンゴンにてイベント制作や広報を担当したのち、TravelTech事業のスタートアップ企業で広報室立ち上げを経験。現在は株式会社GA technologiesにて、海外向けPRやプロダクト・グループ会社のPRを担当。

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