小屋を建てたら固定資産税は発生するの? 回避できる条件や建築基準法の注意点とは
キャンプの流行や企業によるリモートワークの推進などで注目されているのが、自宅の敷地に自分だけの「仕事部屋」や「プライベート空間」を作ることができる小屋。この小屋を建てるときに、どんな規制や税金がかかるのかご存知でしょうか? ここでは、小屋を建てたときに課税される可能性のある「固定資産税」や、建築時に適用される「建築基準法」などについて解説していきます。
固定資産税とは
固定資産税は、土地・建物などの固定資産を所有する人に課税される税金(地方税)です。原則として、市町村(東京都23区の場合は、区ではなく都)が固定資産税を管理・徴収しており、毎年1月1日時点での固定資産の所有者に対して「固定資産税評価証明書」や「固定資産税納税通知書」などが送付されます。
例えば、2月1日に不動産売買によって土地の所有権が売主Aから買主Bに移ったとしても、1月1日時点で所有していた売主Aに固定資産税の納税義務があります。
なお、土地・建物などの固定資産が「市街化区域」に所在する場合は、都市計画税も一緒に課税されます(今回は、固定資産税の解説がメインであり、わかりやすくするため都市計画税については割愛させていただきます)。
不動産を所有する人全員に発生する税金
固定資産税は、固定資産の所有者に対して課税されるため、その課税対象となるのは所有者「全員」です。
例えば、土地を親族複数人の共同で所有している場合、全員が「連帯」して納税義務を負います。とはいえ、固定資産税納税額(以下、「納税額」という。)が共有者それぞれの持ち分ごとに分けて計算されているわけではありません。固定資産税の「全額」を、所有者全員が連帯して納税することになっているのです。
共有者の「誰が」「いくら」払うのかは、市町村が振り分けるのではなく、共有者同士の協議によって決めることになります。
参考:地方税法第10条の2(第三節 連帯納税義務等)総務省|地方税
また、固定資産税納税通知書は、原則として共有者の代表者1人に送付されるため、名義人全員に送られてくることもありません。そのため、もし各共有者が持ち分に応じた納税額をそれぞれ納税したい場合でも、市町村が納付書の個別発送を対応していないケースが多いです。
固定資産税額は各市町村が決定
先述の通り、固定資産税の課税主体となるのは、対象の固定資産が所在する市町村(東京23区は都)などの地方団体です。具体的には、役所(市役所や町役場など)の資産税課に固定資産課税台帳が備えられており、その台帳に登録されている所有者が納税義務者となります。
なお、土地・建物といった不動産の場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている名義人から確認されて、その所有者として固定資産課税台帳に登録されるケースもあります。
小屋を建てて固定資産税が発生する条件
原則として、土地や建物には固定資産税が課税されます。そのため、小屋を建設したときも固定資産税がかかってしまう場合があります。ただし、小屋が「建築物」としてみなされるかどうかは小屋の設置方法や使用目的などによって異なるため、あらかじめ確認しておくとよいです。
一般的な建物の定義としては、以下の3つが挙げられます。
【建物とは】
- 屋根及び周壁(周囲に外壁)を有する
- 土地に定着している
- 使用目的に適した状態である
この3つの要件を満たしている場合は、簡易的な小屋であっても建築物とみなされ、固定資産税がかかる場合があります。では、それぞれの内容についてざっくりと見ていきましょう。
外気分断性
風雨が小屋の内部へ入ってくるのを防ぐために、屋根及び外壁があり、かつ使用目的が達成できる状態であれば、外気分断性があるとみなされます。
「使用目的が達成できる状態」というのは、例えば居住用であれば屋根があるのはもちろん、外壁が四方に囲まれている状態。倉庫であれば二方や三方に外壁があり、目的達成のために使用できる空間がある状態、などを指します。
土地への定着性
定着性とは、小屋が基礎などで土地に固定されている状態を指します。例えば、キャンピングカーやトレーラーハウスなどは、いつでも自由に移動できるため建物とみなされません。
ところが、いくらトレーラーハウスであっても基礎工事を施して土地に固定した場合は「定着物」として認定され、固定資産税がかかるだけでなく、建築確認の申請が必要な場合もあります。
もし小屋を建てるときは、「基礎に固定」「簡易的なブロックの上に設置」「地面の上に直接設置」、といった設置方法によってその定着性が異なるため、あらかじめ確認が必要です。
居住、作業、貯蔵などに利用できる
原則として、簡易的な小屋であっても居住性があったり、作業、貯蔵に適しているものは「建築物」とみなされて固定資産税がかかる場合があります。
例えば、基礎がなく地面の上に直接設置をしている小屋であっても、屋根と壁があり、居住や作業が可能なものであれば「建物」として認定されるケースも。
「プライベート空間を作るために小屋を設置したい」というときは、どうしても「快適な居住空間」をイメージして作ってしまいがちではないでしょうか? そのために建物と判断されてしまい、固定資産税の課税対象になることもあるので、小屋を設置する前から納税額のことも含めて検討しておくことが大切です。
免税点(家屋20万円)以上
ここでいう免税点とは、固定資産税が課税対象外(払わなくてもいい状態)になる基準額のことをいいます。「総務省自治税務局固定資産税課」から発表されている固定資産税の免税点は以下の通りです。
【免税点】
土地 | 30万円 |
---|---|
建物(家屋) | 20万円 |
償却資産 | 150万円 |
参考:固定資産税制度について|平成28年8月 総務省自治税務局固定資産税課(PDF)
同一名義人が所有する不動産や償却資産につき、課税標準額(固定資産税を計算する上での基礎になる額)の合計が免税点未満の場合は、固定資産税が課税対象外となります。
例えば、山林に土地を買って小屋を建てた場合、建物(家屋)の課税対象額が20万円未満の場合は固定資産税が課税されません。
ちなみに償却資産とは、土地家屋以外の事業用資産のことをいい、例えば工場や厨房などの事業用設備が償却資産に当たります。
小屋を建てて建築確認申請が免除される場合
原則として、都市計画区域及び準都市計画区域内に住宅や倉庫などを建てる(新築する)ときは、建築基準法に基づいた建築物を建てなければなりません。
そのために、行政庁の建築主事や民間の指定確認検査機関が建物の施工前に建築確認を行い、建築計画が建築基準関係規定に適合しているかチェック(審査)しています。
小屋を新築するときも同様で、「建物」とみなされる場合は、建築前に建築確認申請を行い、審査を受けなければなりません。ただし、建築確認が必要な建築行為には一定の基準があり、その基準に該当しない場合は建築確認が不要です。
建築確認申請が免除される場合というのは、主に以下の2つがあります。
防火地域・準防火地域以外の区域に建てる
都市計画区域及び準都市計画区域内であっても、防火地域または準防火地域以外で小屋を「増築・改築・移転」する場合で、床面積が10m2を以内のものは建築確認が不要です。
これはあくまでも「増築・改築・移転」をする場合の措置であって、小屋(建築物としてみなされる小屋)を新築するときは基本的に建築確認が必要なので気をつけたいところです。
床面積10m2以下
先述の通り、防火地域または準防火地域以外で増改築や移転をする場合は、床面積が10m2以内であれば、建築確認はいりません。
ただし、例として、自宅の敷地内に「増築」する小屋の床面積が10m2以内だとしても、その自宅がある所の法令制限が防火地域及び準防火地域「内」となっている場合は建築確認が必要です。
固定資産税はいくらかかるのか
プライベート空間が欲しくて建てた小屋に、固定資産税がかかってしまったとき、その納税額はいくらになるのでしょうか。ここからは、固定資産税の税率や納付額などについて解説していきます。
原則として税額は1.4%
固定資産税の標準税率は「1.4%」で、課税標準額を基に納税額が計算されます。固定資産税の基本的な計算式は以下の通り。
固定資産税納税額=課税標準額×税率
建物の場合、正確には「固定資産税課税台帳に登録されている価格(以下、「課税標準額」という。)×税率1.4%」です。
例えば、木造で床面積7m2の小屋に対して、固定資産税の課税標準額が50万円だった場合は、「50万円×1.4%=7,000円」となり、年間7,000円の固定資産税がかかることになります。
また、「新築住宅の減額」といった特例措置もありますが、その適用要件が「戸建住宅の場合は、床面積50m2以上、280m2以下」と、小屋にしては大きめなサイズ感になるため、小屋の場合は該当しないケースが多いかもしれません。
詳細については、東京都主税局の公式サイトをご覧になってみてください。
参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局
土地や建物の本来の価値を適正に反映した価格のことを固定資産税評価額といいますが、固定資産税評価額も、対象の不動産が所在する自治体が決定します。
なお、本記事では「小屋」に焦点を当てているため建物の固定資産税にしか触れていませんが、当然ながら、土地(敷地)に対しても固定資産税はかかるため注意が必要です。
別荘を所有するとかかる税金は?定義や課税される税金について紹介
固定資産税の納付金額は評価額で確認する
固定資産税の納付額は、固定資産税評価額(以下、「評価額」という。)を基に算出されています。
厳密には課税標準額に税率を乗じて計算しますが、課税標準額は、評価額に特例措置を適用して求められたものなので、評価額と同額の場合もあれば異なる場合もあります。
また、建物の評価額は、「同じ建物を新築した場合にかかる費用(再建築価格といいます)」を基に評価されるのが一般的です。
原則、新築・増築したら新たに課税される
多くの場合、小屋を新築したり増築したときは、固定資産税が課税されます。これまで挙げてきた例外も存在しますが、「建築物を建てたときは税金がかかる」くらいに考えて小屋の建築計画を立てていったほうがよいでしょう。
また、近年では、小屋ブームに乗って「ウッディハウス」といったおしゃれな小屋が多く販売されています。従来の物置や倉庫のような簡素なイメージではなく、断熱を施して快適な空間を作り出した住宅のようなイメージのものが多いです。
こうした小屋は、その見た目や構造から「建築物」と認定される場合もあるため、やはり固定資産税の課税が可能性として考えられます。
建築確認や固定資産税は床面積と免税点がポイント
ここまで、小屋を建てるときの注意すべきポイントとしていくつか挙げてきました。主なチェックポイントとしては、建築する小屋の床面積と免税点の2つ。固定資産税の課税には特例措置や例外が設けられているため、この「床面積」と「免税点」によって建築確認の有無や納税金額などが変わってきます。
例えば、自宅敷地内に10m2以内の小規模な小屋を建てるのであれば、増築とみなされ建築確認が不要(防火地域地域及び準防火地域以外の場合)になるケース。免税点で規定されている課税標準額以内であればそもそも固定資産税がかからない、といったケースもあるため、こうした部分が小屋建築にとっての大きなポイントといえます。
もし固定資産税がかかる場合であっても、基準となる固定資産税の計算式を使ってざっくりと納税額を計算できるため、前もってある程度の想定をすることができるのもメリットです。
小屋の建築計画は、建築基準法のルールを守りつつ、固定資産税についての基礎知識を身につけておくと安心して進められます。もしわからないことがあれば、小屋の販売会社や役所の建築指導課・資産税課などで相談してみるとよいでしょう。
※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
関連キーワード