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作成日: 2021.06.28

固定資産税の税額アップ、2021年は免れた。2022年以降はどうなる?

監修:
中井哲也 (中井哲也公認会計士税理士事務所 公認会計士・税理士)
固定資産税の税額アップ、2021年は免れた。2022年以降はどうなる?

2021年度の固定資産税、すでに支払いを済ませたという方も、納付金額は確認されましたか? 税額を見て「あれ?去年と同じだった」と気づかれた方もいるのではないでしょうか。実は2021年は、「固定資産税額が上がる」と予測されていた年でした。なぜ上がるといわれていたか、そしてなぜ上がらなかったのかについて説明します。

固定資産税がアップする背景

3年に1度の評価額見直し「評価替え」

固定資産とは、宅地や田んぼなどの土地と、住宅や店舗・工場などの建物(家屋)、そして土地・家屋以外の機械や器具などの事業用資産(償却資産)のことをいい、毎年1月1日時点でこれらの固定資産を所有している人が1年分の税金として「固定資産税」を納める決まりになっています。

土地と家屋の税額(課税標準額)は、購入価格がそのまま課税標準額になるのではなく、「適正な時価」であることと定められています。日本の国土は広大で、評価対象となる土地の数は「約1億8,000万筆」あり、また建物の数も「約6,000万棟」と多く膨大です。

そのため、毎年時価を評価するのは実務上不可能かつコストもかかるため、土地と家屋については原則として3年ごとに評価額が変わるルールになっています。適正な時価の見直しをすることを「評価替え」といいます。

土地の評価替えは、地価公示価格・不動産鑑定士の鑑定評価などに基づいて評価額が決まります。建物の評価替えは、評価の時点で新築するとしたときの建築費(再建築価格)に、経年によって発生する損耗状況の減点補正等をして決まります。

2021年(令和3年)度は、3年に1度の評価替えの年でした。

【関連リンク】
不動産投資で見落としがちな固定資産税。計算方法や算出例で解説します

2021年は評価額が上がっても据え置きに

土地の評価替えの基準のもとになる公示価格は、2020年1月1日時点の地価公示に基づいて課税されることになっています。そのため本来であれば全国的に上昇する傾向のはずでしたが、新型コロナウイルスの流行によって変わりました。

新型コロナウイルスによって日本企業の経営環境や家計の所得環境が悪化するなかでの固定資産税アップは、「コロナ収束後の回復の支障となる」という懸念が出てきました。そこで、2021年の評価替えによって課税額が上昇するすべての土地について、「2020年(令和2年)度の税額に据え置きされる」という、課税標準額の据え置き措置が取られることが税制改正大綱で決まりました(土地に係る固定資産税の負担調整措置等の延長と経済状況に応じた措置)。

商業地の地価動向引用:令和3年度国土交通省税制改正概要|国土交通省(PDF)

2021年の公示価格

「2021年(令和3年)度の評価替え」に向けた作業は、2020年1月1日から進められました。2020年の1月1日時点では、どの用途の土地も全国的に上昇が続いていて、首都圏の1都3県を中心とする東京圏では、住宅地・商業地・工業地いずれも7年連続でプラスでした。この動向は、2020年も継続するはずでした。それが新型コロナウイルスの影響によって大きく変わりました。

本来であれば2020年1月1日時点の地価公示をもとに固定資産評価額が決まるので、税額は増加するはずでしたが、2020年の評価替え作業が始まったあと、新型コロナウイルスの流行に伴って地価が下落している地点があることもわかってきました。そこで2020年7月1日までの間に地価が下落していることがわかった場合には、地価下落を評価額に反映させる措置が取られることになりました。

そして2,353人の鑑定評価員(不動産鑑定士)によって全国26,000地点が選定・確認され、分科会等で議論され決まった評価価格が2021年3月に発表された公示価格です。

結果は、全国平均で見たとき全用途の平均が6年ぶりに下落しました。住宅地は、東京圏が8年ぶり、大阪圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県)が7年ぶり、名古屋圏(愛知県・三重県)が9年ぶりに下落しました。商業地は、三大都市圏すべてで8年ぶりに下落に転じる事態となりました。

東京都の住宅地

2021年公示価格の全体的な傾向では下落が特徴でしたが、すべての土地で下がったかというとそうではなく、上昇した土地もあります。東京23区の住宅地では、港区と目黒区が上昇しました(対前年平均変動率0.3%)。

最も高い価格の住宅地は、東京都港区赤坂(1-14-11)の4,840,000円/m2で、前年の地価公示価格より2.5%上昇しています。

2022年〜2023年は負担調整措置が延長

固定資産税の評価替えで、評価額が上がった土地を所有している場合、新型コロナウイルスの影響による措置で、納税額が一気に上がることを防ぐ措置「負担調整措置」が取られています。

課税標準額は2021年は据え置きなので、実際に上がるのは2022年度分からの予定です。

評価額が上昇する場合
「太田市|固定資産税(土地)の課税標準額の据え置きについて(令和3年度のみ)」をもとに編集部が再作成

負担調整措置は、評価額に対して前年度の課税標準額の割合が高い土地は、負担が大きいので税負担を引き下げたりする一方で、課税標準額の割合が低い(つまり負担水準が低い)土地については、段階的に税負担を引き上げていくという仕組みです。

住宅地については、2022年以降は負担水準が100%を超える場合には税負担が据え置きもしくは下がり、負担水準が100%未満だった場合には税負担が上昇します。

2021年前半、日本社会では引き続き新型コロナウイルスの影響は大きく続いており、令和4年度の税制改正大綱で固定資産税がどう扱われるか、引き続き注目が必要です。

なお、新型コロナウイルスの影響によって納税が困難な場合には、1年間納税が猶予される制度が利用できる場合があります。東京都の場合には、下記ページをご覧ください。

参照:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方に対する猶予制度について | 東京都主税局

【関連リンク】
100万円以上も引き下げに? 住宅ローン控除はこう変わる【2022年度税制改正大綱の発表】

固定資産税の納税額に間違いを発見したら

固定資産税は地方税です。国税を申告する際の確定申告のように自分で申告するのではなく、固定資産のある市町村から課税される「賦課(ふか)課税方式」の税金です。納税額が通知されて、それに従って納税する仕組みです。

ただし、100%金額に誤りがないかというとそうでもありません。過徴収金といって、時には多く税金を納めることになる通知が届く場合もあります。その場合には、5年間は遡って返還してもらえます(地方税法 第18条 3)。

誤りに気づくのは、自治体自らの場合と納税者の場合とどちらもあります。地方自治体が誤りに気づいたら、ホームページ上でも公表されています。納税通知書が届いたら、金額まで含めて毎年確認するようにしましょう。疑問点があれば、送付元に連絡してみましょう。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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