1. TOP
  2. RENOSY マガジン
  3. 特集
  4. 不動産コンサルティングマスターとは?合格率や難易度、勉強方法について

更新日: 2021.05.21

不動産コンサルティングマスターとは?合格率や難易度、勉強方法について

不動産コンサルティングマスターとは?合格率や難易度、勉強方法について

不動産コンサルタントの資格に不動産コンサルティングマスターという資格があります。ただ、合格率や難易度、試験内容、勉強方法などあまり知られていません。本記事では不動産コンサルティングマスターの解説をするとともに、取得後の登録要件や年収、更新などについて詳しく紹介します。

不動産コンサルティングマスターとは

不動産コンサルティングマスターとは、不動産コンサルティング業務を行うのに必要な一定水準の知識や技能、実務経験を有していると認定され、公益財団法人 不動産流通推進センターに登録された人に与えられている資格です。

以前は「不動産コンサルティング技能登録者」という名称でしたが、平成25年1月に「公認 不動産コンサルティングマスター」に名称が変わりました。

平成31年3月時点で、公認 不動産コンサルティングマスターの認定を受けている人は約16,000人です。平成5年から平成30年までの合格者数は57,474人となっています。

不動産コンサルティングマスターが必要となった背景

不動産の取引を行う際は、さまざまな問題に注意する必要があります。普通に売買や賃貸借をするだけでも複雑な法律上の問題が発生する可能性は常にあります。

また、不動産を投資の手段として活用する人は以前からたくさんいましたが、今もなお増え続けています。最近では資金調達の手段として不動産の流動化・証券化が進んできています。

このような社会状況の中で不動産関連業務は高度化・複雑化の度合いが深まっており、従来の不動産関連業務で通用していた知識だけでは適切に業務を遂行することが難しい場面も多くなってきました。

そこで不動産コンサルタントの重要性がクローズアップされていますが、誰でも不動産コンサルティングを適切に行えるわけではありません。

不動産コンサルティングマスターは、法律はもちろん、経済や金融、建築や税制など不動産関連業務に関わる幅広い知識と実務経験を備えた不動産のプロとして個人・法人を問わず多種多様なニーズに的確に応えることができる専門家です。

不動産の売買、賃貸借に関する相談はもちろん、不動産投資や有効活用、相続にまつわる相談などに幅広く対応し、依頼者が最善の選択をとれるように企画、調整、提案する業務を行っています。

不動産コンサルティングマスターが可能な業務

また、不動産コンサルティングマスターは通常のコンサルティング業務の他にも、以下の事業についても許可・登録を受けて行うことができます。不動産関連業務の中では非常に活用範囲が広い資格といえます。

「不動産特定共同事業法」における「業務管理者」(ただし、宅地建物取引士の資格を有していることが必要)

※不動産特定共同事業とは、投資家からの出資を受けて賃貸等の不動産収益事業を行い、その収益を投資家に分配する事業を言います。RENOSYでは、不動産特定共同事業法に登録した上でRENOSY ASSET クラウドファンディング事業を行っています。

「不動産投資顧問業登録規程」における「登録申請者」および「重要な使用人」

※不動産投資顧問業登録規程とは、不動産投資に関する助言や投資一任業務などを行う者を登録するもので、国土交通大臣の告示に基づく任意の登録制度です。

「金融商品取引法」における「不動産関連特定投資運用業」

※不動産関連特定投資運用業とは、顧客から資産の投資について一任を受けて、不動産信託受益権などを投資対象として運用する投資運用業をいいます。

不動産に関する業務は今後も多様化、高度化、複雑化が進むと思われますので、不動産コンサルティングマスターの需要はますます高まっていくと考えられます。

不動産コンサルティングマスター試験について

不動産コンサルティングマスターになるためには、試験を受けて合格する必要があります。試験の正式名称は「不動産コンサルティング技能試験」といいます。

それでは、どんな試験なのかをみていきましょう。

試験内容

試験は丸一日かけて行われ、午前中に択一式試験、午後に記述式試験が行われます。

午前中択一式試験・午後記述式試験と一日かけて試験が行われます。
試験の出題範囲は、出題範囲を参照してください。

<択一式試験>

50問の四肢択一式です。

試験科目は事業、経済、金融、税制、建築、法律の6科目です。

<記述式試験>

必修科目が3科目と、選択科目が1科目あります。

【必修科目】 
実務、事業、経済の3科目

【選択科目】 
金融、税制、建築、法律の中から1科目選択

選択科目については、試験当日に問題を見てから選択することができます。

なお、公益財団法人不動産流通推進センターが運営している不動産コンサルティング技能試験の専用サイトに出題範囲が詳しく公表されています。受験を考えている方はチェックしておきましょう。

参照:令和元年度 不動産コンサルティング技能試験

合格率や難易度

最近の不動産コンサルティング技能試験の合格率は以下のとおりです。

年度 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
平成25年度 1,272 874 68.7
平成26年度  1,313 607 46.2
平成27年度  1,320 654 49.5
平成28年度 1,304 648 49.7
平成29年度  1,404 608 43.3
平成30年度 1,393 589 42.3

参照:平成30年度 不動産コンサルティング技能試験 実施結果

平成30年度の合格率は42.3%でした。

平成25年度までは概ね50%~70%で推移していましたが、平成26年度以降は40%台となっています。

ちなみに、比較的易しい試験といわれている宅建試験の合格率は15%~17%、行政書士試験の合格率は10%~12%です。

それに比べて、毎年合格率が40%を超えている不動産コンサルティングマスター試験はとても簡単であるかのようにも思えます。

しかし、次の項でご説明しますが、不動産コンサルティングマスター試験は誰でも受けることができる試験ではなく、既に一定の資格と実務経験を有している人しか受験できません。

もともとレベルが高くて意欲が高い人たちでも2人に1人以上は不合格となる試験です。

試験科目を見ても出題範囲が広いので、そう簡単に合格できる試験ではないことが分かります。

特別に頭が良くないと合格できないというわけではありませんが、幅広い知識と実務経験がなければ合格できないという意味で、難易度は比較的高い試験です。

受験資格のハードルは高い

不動産コンサルティングマスター試験は一般的な資格試験とは異なり、受験資格として以下の3つのうちのいずれかを満たしている必要があります。

  • 宅地建物取引士資格登録者で、現に宅地建物取引業に従事している人、または今後従事しようとする人
  • 不動産鑑定士で、現に不動産鑑定業に従事している人、または今後従事しようとする人
  • 一級建築士で、現に建築設計業・工事監理業等に従事している人、または今後従事しようとする人

不動産鑑定士と一級建築士はかなり難関の資格です。宅建はそれほど難関ではありませんが、現在これらの資格を持っていない人はまず3つのうちどれかの資格を取得しなければならないので、受験資格のハードルは高いといえます。

試験合格後の登録要件もハードルは高い

試験に合格した後、公益財団法人不動産流通推進センターの登録を受けないと「公認 不動産コンサルティングマスター」を名乗ることはできません。

登録要件は、以下の3つの要件のいずれかを満たしていることです。

  • 宅地建物取引士資格登録後、不動産に関する5年以上の実務経験を有し、登録申請時において宅地建物取引士証の交付を受けていること
  • 不動産鑑定士登録後、不動産鑑定業に関する5年以上の実務経験を有し、登録申請時において不動産鑑定士の登録が消除されていないこと。
  • 一級建築士登録後、建築設計業等に関する5年以上の実務経験を有し、登録申請時において一級建築士の免許が取り消されていないこと。

試験を受けるときは、現に実務に従事していなくても「今後従事しようとする人」であれば受験できますが、合格後登録するときには5年以上の実務経験が求められます。

実務経験のない人がとりあえず試験を受けて合格しても、すぐに登録して「公認 不動産コンサルティングマスター」を名乗れるわけではないのです。

ただ、合格してから数年後に登録を受けることは可能です。ただし、合格した日の属する年度の翌々年度の3月末日の翌日以降に登録申請する場合は「演習問題」という試験のようなものを再度受けて合格しなければなりません。

いずれにしても、合格後に登録するためにも高いハードルが待っています。

例年の試験実施の日時や開催地域

不動産コンサルティングマスター試験は、例年11月の第2日曜日に実施されています。令和元年度の試験日は11月10日(日)です。

開催地域は例年、札幌・仙台・東京・横浜・静岡・金沢・名古屋・ 大阪・広島・高松・福岡・沖縄の12地区です。

ただし、今後変更されるかもしれませんので、受験を考えている方は早めに試験実施概要を確認しておきましょう。

試験実施概要は、公益財団法人不動産流通推進センターの不動産コンサルティング技能試験専用サイトで例年7月までには公表されます。

参照:不動産コンサルティング技能試験

申込受付や合格発表の時期、受験料

例年、申込受付は8月初旬~9月中旬で、合格発表は翌年1月の第2日曜日です。

受験料は31,000円(税込)です。

令和元年度は申込受付が8月1日~9月17日、合格発表が令和2年1月10日となっています。

これらの点も今後変更されるかもしれませんので、受験を考えている方は早めに試験実施概要を確認しておきましょう。

不動産コンサルティングマスターの勉強方法

比較的難易度の高い不動産コンサルティングマスター試験ですが、どのような勉強をすれば合格できるのでしょうか。

まずは、どの程度勉強すれば合格できるのかをみてみましょう。

合格するために必要な勉強時間

何時間勉強すれば合格できるのかはもちろん人それぞれですが、目安としてはトータルで50時間~150時間程度といわれています。

毎日2時間勉強するとして2~3ヶ月程度、人によっては、数週間~1ヶ月程度で集中的に勉強して合格する人もいます。

これだけをみると簡単に合格できそうにも思えますが、既にハードルの高い受験資格を満たしていることが前提であることを忘れてはいけません。

受験資格の一つである宅地建物取引士の試験に合格するための勉強時間の目安は150〜300時間程度といわれています。毎日2時間勉強するとして3~5ヶ月かかります。

まだ何の資格も持っていない人が不動産コンサルティングマスター試験合格を目指すとすれば、300時間~400時間程度、勉強期間としては半年以上をみておいたほうがよいでしょう。

では次に、勉強方法についてみていきましょう。

インターネットの通信講座を受講する

不動産コンサルティングマスター試験は知名度があまり高くないためか、宅地建物取引士や不動産鑑定士の試験のように予備校で講座が開講されているわけではありません。

独学では不安という方には、インターネットの通信講座を受講するのがおすすめです。

公益財団法人不動産流通推進センターが提供している「不動産コンサルティング入門研修」というインターネット通信講座で、基礎から合格レベルまでの知識を学べるようになっています。

この講座を修了すると、同じく公益財団法人不動産流通推進センターが開催するステップアップ・スクーリング(集合教育)の受講を申し込めるようになります。

参照:不動産コンサルティング入門研修 インターネット通信講座

過去問や参考書を使って独学で学習する

独学したい方は、過去問や参考書を使って学習することももちろん可能です。

ただ、他の資格試験のように過去問集や参考書がさまざまな出版社から豊富に販売されているわけではありません。

よい参考図書が見つからない方は、公益財団法人不動産流通推進センターが紹介しているものを購入するのもいいでしょう。

参照:不動産コンサルティング技能試験 参考図書一覧

過去問は一部ですが公益財団法人不動産流通推進センターのサイトでも公開されているので、参考にしてみましょう。

参照:不動産コンサルティング技能試験 過去問に挑戦してみよう

不動産コンサルティングマスターに関する気になる疑問

不動産コンサルティングマスターの業務や試験、勉強方法などについてザッと解説してきましたが、まだいろいろな疑問があると思います。

ここでは、よくある疑問についていくつかお答えしていきます。

不動産コンサルティングマスターは国家資格なの?

不動産コンサルティングマスターは、残念ながら国家資格ではありません。かといって、背景の不明な民間の資格というわけでもありません。

公益財団法人不動産流通推進センターが国土交通大臣の登録を受けて不動産コンサルティングに関する一定水準以上の知識と技能を有していると認定された人を登録したもので、準公的資格になります。

「公認 不動産コンサルティングマスター」を名乗ることができれば一定水準以上の知識と技能を持っていることの証明になるので、不動産関連業務において信頼性の高い資格といえます。

資格を取得しないと、不動産コンサルタントと名乗れないの?

資格がなければ不動産コンサルタントと名乗れないことはありません。

しかし、不動産関連業務が高度化・複雑化・多様化した現在では、不動産コンサルティングを行うためには幅広い専門知識や実務経験が必要で、顧客も一定水準以上の知識と技能を有しているコンサルタントを求めています。

公認 不動産コンサルティングマスターの資格を持つことで一定水準以上の知識と技能を持っていることを証明できれば顧客から信頼され、収入も上がることになります。

資格を取得すると、年収は上がるの?

資格を取得することで年収が上がるかどうかは資格の生かし方にもよりますし、元の宅建士・不動産鑑定士・一級建築士としての年収にもよるので一概に言うことはできません。

しかし、不動産コンサルティングマスターの資格があると、宅建士なら不動産売買等の仲介手数料とは別にコンサルティング報酬を受け取ることができます。

また、複雑・高度・多様な不動産関連業務に関わることができるので、どのような業務を行うかにもよりますが、年収が上がる可能性は高いといえます。

ちなみに、転職サイトなどの情報から推計すると、不動産コンサルティングマスターの平均年収は600万円~700万円程度になります。独立自営ならさらに高収入を目指すことも可能です。

資格を取得した後、更新は必要なの?

資格を取得して公益財団法人不動産流通推進センターの登録を受けた後は、5年ごとに登録の更新が必要です。

登録を更新するためには、不動産コンサルティングに関する2,000文字以上の研究報告を提出したり、不動産コンサルティング地方協議会が実施する不動産の専門教育を受講したりするなどの更新要件が定められています。

資格を持つ人にとっては厳しい制度ですが、それだけに有資格者は顧客から信頼されるということになります。

まとめ

不動産コンサルティングマスターの資格を取得するのは容易ではありません。

しかし、資格を取得すれば幅広い範囲で活躍できますし、高収入も目指せます。不動産関連業務はますます高度化・複雑化・多様化が進んでいくはずなので、不動産コンサルティングマスターへのニーズは今後も高まっていくでしょう。

興味がある方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

Facebook Twitter Instagram LINE Mail magazine LINE