プライベートカンパニーとは? サラリーマンが設立するメリット・デメリットを解説
サラリーマンなど個人で不動産投資などを行っている方の中には、「法人化」を検討している方もいるのではないでしょうか? 不動産などの個人資産を管理する会社のことをプライベートカンパニーといいます。
そこで今回は、そもそもプライベートカンパニーとはどのようなものなのか、会社設立方法やプライベートカンパニーのメリット・デメリットについて説明をします。不動産投資のほか株式投資・副業などを行っているすべての方に参考になる内容です。
プライベートカンパニーとは
プライベートカンパニーとは、個人資産を管理したり副業などの小規模事業を行う会社のことをいいます。プライベートカンパニーは資産管理会社とよばれることもあります。
では、プライベートカンパニーの主な特徴から見ていきましょう。
プライベートカンパニーの主な特徴は3つあります。
1. 個人資産を管理する
プライベートカンパニーは、一般的な事業会社ではなく、主に個人資産を管理します。個人資産の管理とは、具体的に不動産や株式投資などが該当します。
一般的な事業を行うことを目的とする会社ではなく、個人名義の不動産や株式投資などを法人名義で行うことによって、税制面でのメリットなどを受けることが目的の会社です。
2. 主な目的は節税対策
プライベートカンパニーを設立する主な目的は、節税対策です。
プライベートカンパニーは法人に該当しますので、該当する税金は法人税になります。所得税の最高税率は住民税と合わせて55%ですが、法人の最高実効税率は33%なので、所得が多い方ほどプライベートカンパニーを設立することによって節税することができます。
プライベートカンパニーを設立する最大の目的は、この税率の差を利用した節税です。
プライベートカンパニーを設立した方が節税になる年収の目安等については後ほど詳しく説明します。
3. サラリーマンでも簡単に設立できる
プライベートカンパニーは、サラリーマンでも簡単に設立することができます。
副業にあたるのではと心配される方でも、資産管理を行う会社であれば日々業務を行うこともなく本業に支障が出ることはないため、副業に該当することはほとんどないと考えられます。そのため、特に問題なく手続きを経て設立することができます。ただし、会社によってはプライベートカンパニーの設立が禁止されているところもありますので、事前の確認はするようにしましょう。
プライベートカンパニーの事業内容
不動産・株式投資や小規模事業
プライベートカンパニーの事業内容で多いのが、不動産や株式投資などの資産管理業務です。また、副業などで行っている小規模事業の場合もあるでしょう。
プライベートカンパニーを設立することによって法人税が適用されることになりますので、高所得者ほど税金が安くなるメリットがあります。また、副業などで小規模事業を営んでいる場合、法人化することによって信用が増し仕事を取りやすくなるメリットもあります。
一般的な事業を目的とはしていない
プライベートカンパニーは、あくまで個人の資産の管理などの小規模事業を目的としているため、一般的な会社のような事業を目的に設立されるものではないことがほとんどです。
プライベートカンパニーの作り方
プライベートカンパニーの特徴についてご理解いただけたところで、次にプライベートカンパニーの作り方について具体的に説明します。
設立するならどの形態がいい?
一口に会社といっても会社には以下のようにさまざまな形態があります。最も一般的な会社の形態は株式会社でしょう。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
それぞれに特徴がありますが、ご自身の費用の支出を最大限に抑えたいと考えるならばおすすめなのが合同会社になります。相続を視野に入れる場合におすすめなのは株式会社になります。
資産管理会社とは?作るメリットとデメリット
この記事では合同会社について取り上げます。おすすめの主な理由は2つです。
- 設立費用が安く手続きが簡単
- 株式会社と同じ節税メリット
1. 設立費用が安く手続きが簡単
合同会社は登録免許税6万円から設立することが可能です。
株式会社の場合、登録免許税が最低15万円かかり、定款認証という手続きも必要となり、定款認証には5万円かかります(加えて登記申請用の謄本の請求手数料がかかります)。つまり、株式会社の場合、最低でも合計21万円ほどかかるのです。
さらに合同会社の場合、ランニングコストも株式会社に比べて安くなります。
なぜなら、決算公告義務や定期役員改選義務などが合同会社にはないため、公告を官報に掲載するとしたらかかる費用の約7.5万円がかかりません(ただし株式会社の場合も掲載場所として官報を選択しなければ実質費用はかかりません)。
費用が安いだけではなく、株式会社と同様の税制メリットを受けることができることも合同会社がおすすめの理由になります。
2. 株式会社と同じ節税メリット
合同会社に馴染みがないため、株式会社と同様の税制メリットが受けられるか不安に思う方も多いでしょう。
しかし、合同会社は株式会社と同じく法人税が適用されますので、個人の所得税に比べ税率が低いことは先にお伝えした通りです。
合同会社設立に必要な書類
合同会社設立を法務局に申請するために必要な書類をまとめました。
それぞれを見ていきましょう。
合同会社設立登記申請書
合同会社設立登記申請書とは、会社の基本情報についてまとめた書類になります。記載例は法務局のページにあります。
なおオンライン申請(Windows版のみ専用ソフトが必要)を選択すれば、法務局に行かずに登記の手続きを完了することができます。
参照:合同会社設立登記申請書【R3.2.15更新】:商業・法人登記の申請書様式:法務局
参照:[株式会社・合同会社の設立]オンライン申請・QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について:法務局
参照:登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと
登記用紙と同一の用紙
オンライン申請以外の方法では、「登記すべき事項」を申請書に直接記載するか、任意の用紙に記載して、申請書とあわせてホッチキスなどでひとつにまとめ、割り印をする方法があります。
なお、登記すべき事項をパソコンの「メモ帳」等のソフトウェアを利用してテキスト形式(.txt)で記録し、それをCD-Rに記録させたものを提出することもできます。
参考:法務省:商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について
定款(会社保管用と法務局提出用の2部)
定款とは、会社の運営にあたってのルールなどをまとめたものです。
代表社員の印鑑証明書(印鑑登録証明書)
合同会社を設立するためには代表者の印鑑証明が必要になります。
もし実印の届け出をしていない場合、事前に手続きしておくようにしましょう。
出資金の払込証明書(通帳のコピー)
出資金が正しく振り込まれていることを証明するために、証明書の作成および通帳のコピー等が必要になります(払い込みがあったことを証する書面)。
印鑑届書(オンライン登記申請の場合は任意)
オフラインでの申請の場合には、会社の印鑑を実印として登録する必要があります。
登録免許税(収入印紙)
合同会社を設立する際は必ず登録免許税を支払わなければなりません。収入印紙は法務局で購入できます。収入印紙貼付台紙へ貼付します。
登録免許税の金額は以下のようになります。
以上が、合同会社を設立するために必須の書類になります。ケースによっては代表社員の就任承諾書や代表社員、本店所在地及び資本金決定書などが必要になります。
いかがでしょうか? 合同会社は思ったより簡単に設立することができると思っていただけたと思います。
では次に、このプライベートカンパニーを設立した方がよい年収の基準は一体いくらくらいなのかを見ていきます。
プライベートカンパニー設立を検討した方がいい収入
プライベートカンパニーを設立した方がよい収入の基準は次の通りです。
課税所得金額800万円超が目安
個人の課税総所得金額が800万円を超えたらプライベートカンパニーを設立することを検討しましょう。
なぜなら、所得金額が800万円を超えるあたりになると、所得税等より法人税等の方が税率が逆転する、つまり安くなるからです。
設立すると生じるメリット・デメリット
プライベートカンパニーを設立すると、所得税と法人税の税率の違い以外にさまざまなメリットがあります。
しかし逆に、デメリットもありますのでプライベートカンパニー設立のメリットデメリットについてはしっかり理解しておく必要があるでしょう。
メリット
プライベートカンパニーを設立するメリットは主に3つです。
- 経費として計上できる範囲が増える
- 所得を分散して税金を減らせる
- 損失を10年間繰り越しできる
それぞれのメリットについてわかりやすく説明していきます。
1. 経費として計上できる範囲が増える
個人事業主に比べて、プライベートカンパニーを設立すると経費として計上できる範囲が格段に広がります。
例えば、個人で生命保険に加入した場合には、かけた保険料のうち最大で4万円しか生命保険料控除はありませんが、法人として生命保険に入ると、保険の種類によっては全額が経費として計上できるようになります。
2. 所得を分散して税金を減らせる
プライベートカンパニーを設立して配偶者や子供などを役員にすれば、給料として配偶者や子供にお金を渡すことができます。
所得を分散することにより所得税率の低い家族の所得とすることで、一家としてみた場合に税金を減らすことができます。
ただし、配偶者や子供を役員にして給料を支払う場合、勤務実態が必要になりますので注意するようにしましょう。
3. 損失を10年間繰り越しできる
個人の場合、不動産経営の損失を最大3年間しか繰り越すことができませんが、法人の場合最大10年間繰り越すことができます。
繰越期間を長く利用できるとそれだけ法人税を抑えることができるので、プライベートカンパニーを設立する大きなメリットになるでしょう。
デメリット
プライベートカンパニーを設立するデメリットは主に3つです。
- 法人設立費用がかかる
- 決算公告が義務
- 赤字でも法人住民税均等割分の支払いは必須
それぞれのデメリットについてわかりやすく説明します。
1. 法人設立費用がかかる
プライベートカンパニーを設立する際、株式会社はもちろん合同会社でも設立費用がかかります。先に述べたように、登録免許税で6万円、オンラインで登記申請ができなければ収入印紙代もかかります。
2. 決算公告が義務
プライベートカンパニーも法人に変わりありませんので、株式会社の場合は決算公告を出すことが義務になります(会社法第440条)。
決算は自分で行うこともできますが、税理士に頼むと費用がかかります。
なお、先に述べた通り、合同会社の場合は決算公告義務はありません。
3. 赤字でも法人住民税均等割分の支払いは必須
法人住民税の中には、法人住民税均等割という制度があり、市区町村によって金額が違いますが、おおよそ年額7万円程度発生します。
しかも、この法人住民税均等割は、会社が赤字でも毎年納税がありますので、プライベートカンパニーを設立する大きなデメリットといえるでしょう。
まとめ
今回は、プライベートカンパニーについて詳しく説明しました。
節税効果を狙うことが主な目的であるプライベートカンパニーですが、不動産投資による不動産所得金額によってプライベートカンパニーを設立した方がよいタイミングがあります。メリットとデメリットを考慮のうえ、設立の時期を検討しましょう。
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