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作成日: 2018.02.13

テクノロジーが不動産業界にもやってくる。ReTechカンファレンスに行ってきた

テクノロジーが不動産業界にもやってくる。ReTechカンファレンスに行ってきた

FAXが日常的にまだまだ行き交う不動産業界にも、テクノロジー化の動きがあること、ご存知ですか?「住む」のは誰もが関わること。影響範囲の広いこの分野への変革が、不動産テック「ReTech リーテック」です。ReTechで業界が変わり、私たちの生活にはどのような影響があるのか。都内で開催されたイベントの様子をお伝えします。

カンファレンスは、 インベスターズクラウド 主催で開催され、会場の アマゾンウェブサービスジャパン には100名を超える参加者が集まりました。登壇者5名の講演の後、登壇者3名によるReTechの未来が語られました。

不動産データのオープン化、IoTデバイスの普及が鍵 - 開会挨拶 -

開会の挨拶は、インベスターズクラウド執行役員の松園勝喜さん。

松園勝喜さん

「従来の産業構造が変わっていき、働き方も変わっていく。その先には社会構造が変わる可能性がある。これが、テクノロジーがもたらすイノベーションです。Fintech分野はもちろん、Agritech(農業×テック)、Edutech(教育×テック)分野にもビックデータやテクノロジーを用いてイノベーションを起こそうという動きは起こっています。

不動産テックの中心は、ほかのテックと同じ、AIです。AIの性能を最大限に発揮するために、やはりビックデータ、量と質が大事ですが、まだ利用可能な高品質のオープンデータが非常に少ない。

AIにとってはオープンデータが必要ですが、プライベートデータというのは、それを保持する企業にとっては付加価値を生み出す源になる。プライベートデータを共有したいけれども、安易な共有はできない。しかしプライベートデータだけではデータ量が少なくて、高品質な解析が行えない。このジレンマを解決していくのが、今後の不動産業界の課題かなと思っています。

モノが繋がる、IoTのネットワークインフラも重要です。いかに安く幅広いエリアをカバーするか。LPWA(Low Power Wide Area)はそのコアになるでしょう。

LPWAの基地局はどうするのか?不動産物件そのものを基地局にもできるでしょうし、不動産を住む場所とか働く場所と考えずに『ただのプロダクトなんだ、箱なんだ』と考えたら、可能性は無限に広がっていくかなと思います」

テクノロジーが不動産業界へもたらす可能性

続いて、インベスターズクラウドIT技術本部課長の門木啓蔵さん。国内外の事例やデータを交えながら、不動産業界へもたらされるテクノロジーの可能性を示しました。

インベスターズクラウド研究開発課で取り組まれている活動の一つに「データ分析、データの可視化」があります。物件周辺の環境データ(温度、湿度、照度など)から、住居者のスマホに「ゲリラ豪雨が近づいているので、駅にあと10分はいた方がいいですよ」といったプッシュ通知を送るという実証実験や、「浸水予測データの可視化」事例を紹介されました。日本政府が公開する公共のデータ、オープンデータを活用して、浸水データを時間の経過とともに地図上に表示させる事例です。

「ユーザ体験を損なわない工夫というのを、設計の段階から考えて実装しています」

ユーザがどこにいても、ユーザの端末に素早く情報が表示される工夫を施しているそうです。

総務省 行政管理局が運営する、各省庁のオープンデータとりまとめサイト「 データカタログサイト 」と、そのデータを使った取り組み事例

テクノロジーに詳しくない人にとっても豊かな生活を目指す

続いて、20年不動産のポータルサイト「 LIFULL HOME'S 」を運営するライフルのCTO長沢翼さん。テクノロジー化の波に乗れる人と乗れない人で差が出る社会ではなく、リテラシーの有無に関わらず使えるサービスを、という観点で様々な取り組みを紹介されました。

長沢翼さん

「枯れた技術」(誕生から時間が経ち安定稼動中の技術)を使ったサービス「GRID VRICK」は、ブロックを使った間取りや家具配置のシミュレーションツールですが、年齢を問わない「ブロック」で誰にでも利用できます。

YouTube「 GRID VRICK 」より

「完成前の物件の、完成した様子をみる」「家具を配置した状態を確認する」「スマホを家にかざすだけで計測ができる」というように、不動産業界と、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)の相性はとてもいいと言い、それらの技術をつかったサービス紹介もありました。

IoTプラットフォーム、アグリゲーターに注目

デジタルマーケティング、IoTコンサルなどを手掛ける ウフル のプロダクト開発本部 本部長の竹之下航洋さんは、アメリカで開催された家電見本市「 CES」に行かれたばかりということもあり、CESでみたReTechに関連しそうなプロダクトを紹介。

今後の方向性を示唆する、様々なIoTプラットフォームをスマホ一台でまとめて操作しますよという展示があったそうです。

ドイツ企業の展示

CESでは、あらゆる家電が有線ではなく、無線でつながっていたそうです。IoTを考える上では、どの規格の無線に繋げるか、は一つの判断材料になるだろうとのこと。

1兆個とも言われるインターネットに繋がるモノが増えることによって、問題になるのは通信費。速度の遅い、安い規格も出てきています。

竹之下航洋さん
月に数百円かかっていた通信費が数十円に下がると言われている

まだ2-30社しかないReTech推進企業、業界を盛り上げていきたい

プレゼン最後は、GA technologies社長の樋口龍さん。不動産業界をテクノロジーの力で変えていきたいと起業し、業務効率化(RPA)に成功した事例を紹介。

不動産業界ではお馴染みの「マイソク」という情報。建物名や間取り、築年数、家賃、最寄駅などが物件ごとにまとめられた情報です。仲介会社からFAXで送られてくるマイソクは、企業によってフォーマットもバラバラ。担当者は目視でそれらに目を通します。日に何百というデータを見るけれど、そのデータはこれまで蓄積されず担当の頭の中にだけ入るという状況でした。

そこで、紙のマイソクから情報を自動で読み取りデータベース化し、さらにAIの力で各物件がユーザ(買い手・借り手)にとって魅力的か否かの判定までを行うシステムを開発しました。

独自システム「Tech Supplier」

今後に注目、不動産業界×テクノロジー

他産業との比較で不動産産業に対する投資額の少なさ、オンラインに乗らない各社のデータ、共通のプラットフォームなど、テクノロジー化の余地はまだまだまだまだありそうですが、私たちの日々の暮らしと切っても切り離せない「住まい」にまつわるこの分野。今後注目していきたいですね。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

清水まゆみ 宅地建物取引士

RENOSY マガジンスタッフです。 2017年から区分の不動産投資を始めました。現在は1物件の管理組合理事長を経験中。体験談を語っています。 【不動産投資をやってみた】体験レポート

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