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住まい・暮らし

住人目線の街案内:神谷町に住むしょうたくん(3歳)にお散歩コースを教えてもらった

2018.03.19

東京にはたくさんの駅がある。その存在は知ってはいるけど、まだ降りたことがない駅も多い。食べたことのない料理に挑戦するように、行ったことのない街を歩いてみたら楽しいのではないか。そこで、初めて訪れる街に住む人にお願いをして、その人の目線でどんな街なのかを案内してもらうことにした。第1回は日比谷線の『神谷町』駅だ。

神谷町の案内人は、3歳のしょうた君

今までに何度も通り過ぎてきた日比谷線の神谷町を案内してくれるのは、生後まもなく最寄駅が神谷町の家に両親と引っ越してきた、初対面のしょうた君である。春から幼稚園へと通う3歳の男の子だ。

霞が関駅と六本木駅に挟まれた神谷町は、子どもが住んでいるイメージのまったくない街だが、一体どんな場所を案内してくれるのだろうか。

待ち合わせ場所は神谷町駅。集合時間より少し前から待っていると、カラフルな上着の男の子がやってきた。どうやら彼がしょうた君のようだ。こちらから手を振ると、「さきにみつけられちゃったー」と顔をくしゃくしゃにして悔しがった。どうやらしょうた君の方から声を掛けたかったようだ。なんだかごめん。

「さきにみつけられちゃったー!しょうたくんがみつけたかったのにー!」と全力で悔しがるしょうた君。

予想外の初対面に今後の展開が心配されたが、すぐ笑顔になってくれて、「いろんなとこにあんないしなきゃー」と元気に歩き出して一安心。

馴染みの八百屋、芝八百宗商店

歩くのが大好きだというしょうた君。時間がある日は欠かさず散歩を楽しんでいるそうで、その足取りは3歳とは思えない程しっかりしている。最初に案内してくれたのは、芝八百宗商店という八百屋さん。こういった個人経営の店が神谷町にもまだ残っているのが意外だった。

店のおばちゃんの話では、しょうた君のお父さんが子供の頃、真冬でもランニング姿でよくここに買いに来ていたのだとか。おばちゃんにとって、しょうた君はかわいい孫みたいな存在であり、見事なまでに満面の笑顔である。

最近店舗を移転したという芝八百宗商店。
しょうた君の来店に喜ぶ店のおばちゃん。
「おとうさんはね、ブドウがだいすきなんだ」

慣れた足取りでお店に入り、商品をチェックするしょうた君。「しょうたくんのおうちにはリンゴがないから、きょうはリンゴをかいます」と、おばちゃんに選んでもらったリンゴを2つ購入した。

「ここのリンゴはおいしいんだよ~」

創業百年の青野茶園

「つぎはね、あおのさんのとこにいくの。このトンネルのさきだよ」と、スタスタ歩き出したしょうた君。このように今までごきげんだったのだが、急になにかを思い出したように、「しょうたくん、おこりっぱなしだよ!」と言われてしまった。どうやら怒りのスイッチが入ったようだ。

恐る恐る、どうしたの?と聞くと、「さきにみつかってはずかしいからおこっているの!」とのこと。どうやらこちらが先に声をかけたことを、まだ気にしているようだ。ごめんなー。

写真には出てきませんが、もちろんお母さんが隣にいます。

そんなしょうた君に案内された『あおのさん』は、なんと青野茶園というお茶屋さんだった。まさか3歳の散歩コースにお茶屋さんが組み込まれているとは。

「ここがあおのさんだよ。のりとおちゃをかうんだ」

同行いただいているお母さんの話では、しょうた君はここで売っている海苔が大好物で、ここの海苔じゃないと食べないのだとか。またお茶は同居しているひいおばあちゃんから頼まれたもの。青野茶園のお茶じゃないと納得しないそうで、海苔とお茶の違いこそあれ、好きだという想いが隔世遺伝をしたようだ。この店が見えた途端、しょうた君の機嫌はすっかり直っている。

「おばあちゃんにおちゃをたのまれたんだよ」

この店の創業は、なんと大正7年。大正という単語を久しぶりに聞いた気がする。

「昔は海苔を煎餅みたいに手焼きして、缶に詰めて売っていたの。歴史があるっていっても、まだ100年はいってないかな。えーと、大正7年だから1918年か。あら、ちょうど100年だ。100年祭やらなきゃ!」

店内で抹茶や煎茶をいただくこともできる。
散歩の途中で、神谷町の歴史に触れながらちょっと一息。
昔の写真を見せていただいた。茶箱もおかみさんも変わっていない。
まだお茶が飲めないしょうたくんは、お菓子をもらってニッコリ。

愛宕神社で『出世の石段』を登る

続いて向かったのは、愛宕(あたご)神社のある愛宕山。東京23区内にある一番高い山である。周囲にビルが建つ前は、山頂から東京湾や房総半島が見渡せたとか。

愛宕山には『出世の石段』という階段があり、江戸三代将軍の徳川家光が「誰か、馬にてあの梅を取って参れ!」と命じ、急勾配を馬で登り切った曲垣平九郎が馬術の名人として称えられたという故事がある。

「せっかくだから案内してあげなよ」というお母さんだが、「やだー!案内しないー!エレベーターでいこうよー」と完全拒否の姿勢をみせるしょうた君。それでも「見るだけだから」と説き伏せて連れて来てもらうと、石段をみた途端に「のぼってくるー」とダッシュで向かった。しょうた君、将来は出世間違いなしだろう。

愛宕山の『出世の石段』。出世を願ってこの石段を登ってお参りする人は今も多い。
大人でも結構きつい石段を元気に登るしょうた君。

愛宕山にある愛宕神社にはコイの泳ぐ池があり、エサをあげるのを楽しみにしていたしょうた君だが、冬場はエサをあまり食べないためか、エサの販売が中止されていた。

「おさかなさんにごはんをあげるの、だめなの?さむいからじゃない?」

エサをあげたいと駄々をこねるかと心配したが、自分の頭でエサをあげてはいけない理由がわかったようだ。

「おさかなさん、しょうたくんのところにきたよ!あたたかくなったらごはんをあげるからね!」
「どっちからでるかな~」と、顔ハメの穴から交互に顔を出すしょうた君。
「ねこがいるー!ねーこちゃん。おともだちになれるかな?」
「うわーーわー!めっちゃみられた!」
なかなか表情に迫力のある猫でした。

NHK放送博物館は入場無料

愛宕神社のすぐ隣にあるのが、NHK放送博物館。ここは平日なら混み合うことも少なく、大人も子供も入場無料なので、散歩のついでによく立ち寄るお気に入りの場所だ。入り口ではかわいいシールももらえる。

「はやくいこう!」とせかすしょうた君。
「みて、しょうたくん、ここにうつっているよ!」

NHK放送博物館には、いろいろな世代に響く思い出が詰まっていた。じっくりと見たくなる展示も多かったが、何度も来ているしょうた君は、迷うことなくお気に入りの場所だけを効率よく回っていく。

この場所が一番のお気に入りらしい。

しょうた君が映像に夢中になっている間、お母さんからちょっと話を伺った。

「神谷町って子育てをする街のイメージがないと思いますが、ここみたいに子どもも喜ぶ場所が意外とあるんですよ。芝公園には遊具もあるし、その隣には図書館もあります。しょうたが春から通う幼稚園も徒歩圏内。小学校や中学校もあるので、実は子育てがしやすい街なんです。昔から住んでいる人達も、みんなやさしいし」

子どもの目線で見上げたじゃじゃまるはちょっと怖かった。
「つくしがあったよ!」
都心でもしっかりと春を感じられるようだ。
「かえりはエレベーターだよ!」

アイスクリームの老舗、SOWA

ようやくしょうた君と打ち解けてきたところだが、次が最後の目的地。向かったのは創業1955年という老舗アイスクリームショップのSOWA(ソーワ)である。アイスという商品こそ子どもっぽいが、その店が渋い。歴史のある店がまだ多く残る神谷町で育ったしょうた君だからこそのセレクトだ。

「しょうたくん、イチゴのアイスがだいすきなの」
近いうちに建て替え予定のSOWA。1955年創業の老舗アイスクリープショップだ。
色とりどりのアイスを前に、テンションの上がるしょうた君。
季節限定のフレッシュストロベリーをワッフルコーンで注文。

さすがはしょうた君の行きつけのお店である。手作りアイスが160円からと安く、いろいろな味を食べたくなってしまう。

あまりにおいしいので、ついつい2つ目のアイスを頼もうとしたら、「おなかをこわしてもしらないよ」と、しょうた君にたしなめられた。

日替わりのミント味のソフトクリーム。
寂しいですが、そろそろお別れの時間です。

しょうた君、この街はどんな街ですか?

「うーん、わかんない」

そうだよね。質問が悪いよね。じゃあ、この街は楽しい?

「うん、このへんたのしい!」

お母さんはどうですか?

「神谷町って人が住んでいるイメージがないかもしれませんが、日用品を買うスーパーもあるし、個人商店もまだまだ元気。昔からの住人に言わせると、住んでいたら駅ができて、ビルが建つようになっただけ。オフィス街ですが、路地に一本入れば意外と住宅が残っているんですよ。日比谷線の神谷町駅以外にも、南北線の六本木一丁目駅が利用でき、またバスを使えば新橋などへもすぐ行けます。住んでいて特に不便はなく、むしろどこにでも出やすくて便利な街という印象ですね。ただ、ちょっと家賃は高いかもしれません」

今でも東京のシンボルである、東京タワーもすぐ近く。
バスを使いこなせば、さらに便利な街となる。

もし勤務地がこのあたりで、通勤に時間をかけたくないのなら、一人暮らしでも家族と住む人でも、神谷町に住むという選択は意外とアリなのだろう。

「もうかえっちゃうの?おうちにくればいいのに」

ごめんね、また神谷町を案内してね。

「またね、こんどはさきにみつけるからね!」

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