住人目線の街案内:フランス、ドイツなどの大使館が集まる広尾で、パン大好き住人と個性的なベーカリーを巡ってみた
東京にはたくさんの駅がある。その存在は知ってはいるけど、まだ降りたことがない駅も多い。食べたことのない料理に挑戦するように、行ったことのない街を歩いてみたら楽しいのではないか。そこで、初めて訪れる街に住む人にお願いをして、その人の目線でどんな街なのかを案内してもらうことにした。第3回は東京メトロ日比谷線の『広尾』駅だ。
広尾で生まれて葛飾で育ち、縁あってまた広尾に戻ってきたあみさん
東京メトロ日比谷線で、恵比寿駅に六本木駅という超メジャーな人気スポットに挟まれているのが広尾駅。この街を案内してくれるのは、葛飾区の下町エリアから7年前に引っ越してきたという、あみさんだ。
「広尾に住んでいるっていうと、みんなにビックリされますね。やっぱり家賃の相場が高くて、最初に恵比寿の不動産屋さんにいって『8万くらいでありますか?』っていったら門前払い。こりゃ無理かーと思ったんですが、白金高輪の小さな商店街にある昔ながらの不動産屋さんで、今の家を見つけました。1Kですけど、広さはまあまああるので気に入っています」
広尾に来たきっかけは、広尾病院に入院したおばあちゃんのお世話をするため。大好きだったおばあちゃんが天寿を全うした後も、この街が気に入って住み続けている。
そんなあみさんが広尾で気に入っている一番のポイントは、なんとパン屋さんのクオリティと数だとか。ということで、本日はあみさんがお気に入りのベーカリーを回りつつ、広尾の街を案内していただこうという趣向である。
5年間働いていた思い出のパン屋『BURDIGALA(ブルディガラ)広尾店』
「広尾にはフランス、ドイツ、さらにはノルウェーやフィンランドといった大使館が集まっていることもあって、我が家から徒歩圏内に10店舗以上の個性的なパン屋さんが揃っているんですよ。最初に向かう店は、私が広尾に来てから5年間働いていたBURDIGALAというお店です」
「ここはハード系と呼ばれる欧州スタイルのパンが得意です。ブルディガラはフランス語でボルドー地方という意味ですが、フランス、イタリア、ドイツ系のヨーロッパのパンがミックスされているのかな。一度にクロワッサン20個とかバケット6本とか買っていかれる外国の方もいて、この土地ならではですね」
「バレンタインやホワイトデー、イースターやハロウィンといったイベントに合わせて凝ったパンを出すのも楽しいですよ。おそらく広尾店でしか買えないフランスの正月に食べるパンとか」
なるほど、パンにも季節商品があるんですね。
ドイツパンにこだわる『東京フロインドリーブ』
続いてやってきたのは、東京フロインドリーブ。伝統的な製法を守るドイツパンが人気の店で、生地の仕込みから焼成まで、すべてを店内の工房で行っている。
「パンはお店によって全然違いますよ。最近は国産の小麦を使った独特の甘さやモチモチ感が売りの店も人気です。発酵にイースト菌じゃなく天然酵母を使っていたり、そういうのを比較するのが楽しいですね」
「旅行が好きなんですけれど、旅先で気になったパン屋やカフェに入ったりするのも大好き。全国のパン屋が集まるパンフェスみたいなイベントも興味ありますが、やっぱりお店で買ってこそ。店内の空気を吸って、陳列された商品を吟味して、店員さんとちょっと話す。これがいいんです!」
あみさんと話していると、本当にパンが、そしてパン屋さんが好きなんだということが伝わってくる。そんなあみさんにとって、毎日でも違うパンが食べられる広尾は、多少家賃や生活費が高くついても、住む価値が充分にある街なのだろう。
最近お気に入りの店、『SAWAMURA(サワムラ)広尾店』
続いてやってきたのは、広尾駅から外苑西通りを北側に歩いたところにあるSAWAMURAである。SAMURAIではない。なんでもこの店が最近では一番のお気に入りなのだとか(BURDIGALAは殿堂入りなので除く)。
見回せば確かにいろんなパンがあり、素人の私には味の想像すらできないパンが多い。なんでも20種の粉、そして4種の自家製酵母を、パンの個性に合わせて使い分けているのだとか。この店だけでも全種類を食べようとしたら、2か月くらいは掛かりそうだ。
今まで以上にテンションが上がったあみさんは本当に楽しそうだ。
魚介類が好きな私が地方の魚屋で知らない魚に出逢って興奮するのと同じだと思えば納得のリアクションである。
なんだろう、ネッチネチのパンって。それは褒め言葉なのだろうか。パンというものはおにぎりみたいに具や形で選ぶものだと思っていたが、どうやら生地自体の味や食感にこそ、選ぶ楽しみがあるようだ。うーん、奥が深い。
「みてください、この美味しそうなサンドウィッチ。ブルディガラで働いていた時も、常連さんがここのサンドウィッチを絶賛していたんですよ」
今は銀座で洋菓子の販売員をしているというあみさんだが、その眼はただのパン好きではなく、ライバル店を視察に来たパン屋の店員のように鋭くなるときがある。
「とりあえずパン屋にいったら求人の時給は必ずチェックしますね……」
あみさんも知らなかった新店、『3206 Hiroo』
SAWAMURAの窓から何気なく外を眺めていたあみさんに緊張が走った。
「あれ、あんなところに新しいパン屋が……。ちょっと寄っていきましょう!」
今日食べる分のパンなら十分過ぎるほど買ってあるのだが、やはり新店は見逃せないようだ。だんだんと私もパンを見るのが楽しくなってきたので、ぜひご一緒させていただこう。
徒歩圏内に新しく有名店が加わったことで、あみさんのパンライフはさらに豊かになりそうだ。
そしてもちろん、この店でもパンを購入した。
『MARUYAMA COFFEE西麻布店』でコーヒーのテイクアウト
これから公園で買ってきたパンを食べる予定なのだが、そうなると飲み物が欲しくなる。うまいパンには美味しいコーヒーということで、やってきたのはMARUYAMA COFFEE西麻布店。ここも軽井沢で生まれたお店である。
西麻布、とんねるずの歌でしか知らなかったが、こういう街だったのか。
「今日はお持ち帰りですけど、ちょっと落ち着きたいなっていう時に、ここでゆっくりさせてもらっています。駅からちょっと離れているので、静かで落ち着けるんですよ。ここのオススメはドリップ式ではなくフレンチプレスで淹れたコーヒー。フィルターを通さない分、豆の油分がしっかりと味わえる……らしいです」
そういえば我が家にもこの道具があるのだが、これってコーヒーを淹れるためのものだったのか。今まで紅茶にしかつかっていなかったよ。いろいろと発見の多い散歩である。
有栖川宮記念公園でパンランチ
4軒まわって買い集めたパンを食べる場所は、有栖川宮記念公園である。テニスコートとか野球場もある大きな公園だ。
「いつもの通勤でほんの気持ちだけ遠回りして、気分転換にこのちょっとした森を抜けたり、休みの日にきたりしています。都心なのに自然が濃いんですよ」
南麻布にある公園なのだが、千葉県の市原市あたりなんじゃないかと錯覚するくらい、確かに自然が濃い場所だった。公園内にはかなりの高低差があり、様々な木々が立ち並び、子どもたちはザリガニを釣り、大人も釣竿を並べている。
公園を抜けたところにある『ナショナル麻布』という国際的なスーパーで、パンと一緒に食べる食材を購入した。
「外国人向けのスーパーなので、量が多かったり、ちょっと高かったりしますが、珍しい食材とかあって楽しいですよ。日本の商品のほうが少ないんじゃないかな。最近はインドのレトルトカレーにハマっています。いつもの買い物は白金高輪にある庶民的なスーパーですけどね」
有栖川宮記念公園に戻って、適当なテーブルに買い集めたパンや食材、そしてコーヒーを並べた。広尾在住のパン好きがセレクトした、広尾特選ランチである。
さすがパンマニアが選んだだけあって、どのパンも個性的で、とてもおいしかった。全部生地の味や食感が違う。これは楽しい。
特に気に入ったのは、あみさんがネッチネチだといっていたSAWAMURAのパン・ド・ロデブ。確かにネッチネチで、それがうまいのである。「こんなパンが世の中に存在するのか!」というレベルでの驚きがあった。
カレー好き、ラーメン好きの友人ならいるけれど、パン好きという知り合いはいなかったので、なかなか勉強になる広尾散歩だった。パンなら毎日でも食べられるし、一食で何種類か食べられる。広尾ならお店の選択肢はたくさんあるし、季節によって商品も変わる。パンという趣味、いいね。好きになる理由がよくわかった。
いつもはスーパーに売っている安いパンを買っているが、たまにはちゃんとしたパン屋にいって、ちょっといいパンを食べようかなと思った。
今回あみさんに案内してもらった場所の地図はこちら。
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