不動産小口化商品とは? メリット・デメリットや向いている人の特徴を解説
不動産小口化商品は、不動産投資の手段の一つです。数十万円程度から始められる商品も出てきており、実物不動産に比べて少額から投資できるほか、資産分散や相続対策、節税目的でも注目されています。
本記事では、不動産小口化商品の概要とメリット・デメリット、種類別に向いている人の特徴を解説します。
不動産小口化商品とは
不動産小口化商品は、いくつかのカテゴリーに分類されます。不動産特定共同事業法に基づく「任意組合型」や「匿名組合型」、金融商品取引法に基づく「REIT(不動産投資信託)」や「不動産信託受益権型」などがあります。
同じ不動産小口化商品といっても、運用目的によって選ぶ商品は変わってきます。また何を選ぶかによって、かかる税金も変わってきます。
いずれも不動産を1口1万円から100万円程度に小口化し、複数人で購入・出資する商品となります。
不動産を直接購入するよりも投資単位が少額となるため、始めやすいのが特徴です。
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1. 不動産特定共同事業者が提供
不動産小口化商品は、不動産特定共同事業の許可を受けた事業者が提供する商品です。
不動産特定共同事業とは、複数の投資家から資金を集めて共同で不動産を運用し、収益を分配する事業のことです。この事業は、不動産特定共同事業法(不特法/FTK法)で定められた基準をクリアし、国から許可を受けた事業者のみが行えます。
不特法は、不動産特定共同事業の適正な運営と投資家の利益の保護を目的として、1999年(平成6年)に制定された法律です。その後も改正を重ね、2025年にも検討会が開催されており(一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会)、投資家が安心して投資できる市場を整備していくために、情報開示や行政監督の強化の必要性などが議論されています。
不動産小口化商品は、実物不動産を複数人で共有する形式で、特定の物件に直接投資できるのが特徴です。保有する不動産で得た収益は、自身の「不動産所得」として扱われるため、経費計上や損益通算、相続税評価の圧縮といった税制上のメリットを享受できる可能性があります。
なお、不動産特定共同事業とは別の枠組みで、不動産を小口化し証券化した商品があります。こちらは不特法ではなく、金融商品取引法の規制を受けます。
2. REIT(リート)との違い
なお、不動産特定共同事業とは別の枠組み、不動産を小口化し証券化した商品があります。商品は、こちらは不特法ではなく、金融商品取引法の規制を受けます。
REITは、不動産投資法人に出資する仕組みで、その法人が出資金を使って複数の不動産に分散投資を行います。自分で投資対象を選べない代わりに、証券取引所で株式のように投資口を売買できるため、流動性が高く、情報開示も進んでいるのが特徴です。また、収益は「配当所得」に分類されます。
不動産小口化商品の種類と向いている人の特徴
不動産特定共同事業者が提供する不動産小口化商品は、大きく2種類に分けられます。
種類 | 匿名組合型 | 任意組合型 |
---|---|---|
特徴 | 投資家が不動産事業者に出資する | 出資者が不動産の一部(持ち分)を所有する |
所有権 | なし | あり |
出資金額の目安 | 1口1万円程度〜 | 1口100万円程度~ |
運用期間の目安 | 短期間 (数カ月程度〜2年) |
中長期間 (10年〜15年) |
それぞれの種類をもとに、向いている人の特徴を解説します。
1. 匿名組合型が向いている人
匿名組合型は、投資家が不動産事業者に対して出資する方式です。不動産の所有権は不動産事業者にあるため、投資家は登記費用をはじめとする直接的な費用負担がありません。不動産クラウドファンディングの多くで、匿名組合型が採用されています。
商品は1口1万円程度から、不動産小口化商品のなかでもとくに少額から始められるのが特徴です。また投資期間は数カ月程度から2年程度まで、投資期間の選択肢があります。所得は雑所得となります。
少額で不動産投資を始めたい人や、試しに不動産投資をやってみたい人に向いているといえるでしょう。
2. 任意組合型が向いている人
任意組合型は、出資者が不動産の一部を持ち分として所有する方式です。実物の不動産を所有していると扱われ、所得区分は不動産所得となります。
このタイプは1口100万円程度から購入でき、匿名組合型よりも始めるハードルが高めですが相続対策につながるメリットがあります。相続発生時、建物の評価額(固定資産税評価額)は時価の7割程度になるためです。
中長期間にわたって投資できる商品が多いため、ある程度初期費用を用意でき、安定的に収入を得たい人、相続税対策として不動産を所有したい人に向いているといえるでしょう。
不動産小口化商品に投資する3つのメリット
不動産小口化商品に投資するメリットは、次の3つです。
- 少額で始められる
- 複数物件への投資でリスクを分散できる
- 相続税の節税につながる
それぞれ詳しく解説します。
1. 少額で始められる
不動産小口化商品は、商品によって、最低出資額が設定されているケースが多いです。匿名組合型であれば1口1万円から投資できる商品もあります。お試し感覚で気軽に不動産投資を始めることが可能です。
2. 複数物件への投資でリスクを分散できる
不動産小口化商品なら、一つの物件だけでなく同時に複数の物件へ投資できるため、リスクの分散につながります。
REITも複数物件に分散投資できる仕組みですが、運用先やポートフォリオはファンド側に一任されます。
一方、不動産小口化商品は投資家自身が物件を選べるため、自分の投資判断でリスク分散の方針を立てやすい点もメリットです。
3. 相続税の節税につながる
任意組合型の不動産小口化商品は、物件がそのまま相続税の対象になるのではなく、相続税評価額によって算出されます。建物の相続税評価額は、毎年の固定資産税を計算するために市区町村が決定する「固定資産税評価額」です。
固定資産税評価額は、物件の実勢価格の7割程度です。評価額がそのまま相続税の対象となる現金や有価証券と比較して、相続税を抑えられます。
また、小口なので遺産分割がしやすい点もメリットです。一方で、匿名組合型は相続対策にならないうえに、遺産分割が難しい点に注意が必要です。
不動産小口化商品に投資する際のデメリット
不動産小口化商品は、少額から始められる一方で、不動産ローンを活用できないデメリットがあります。
そのため、一般的に不動産小口化商品を購入するときは、出資額の全額を自己資金で用意する必要があります。
不動産小口化商品に投資する前に知っておくべきポイント
不動産小口化商品に投資する前に知っておくべきポイントは、次のとおりです。
- 投資対象の不動産を調べる
- 実物不動産投資との違いを理解する
- 運用会社の透明性と実績を確認する
- リスクを踏まえて投資期間を検討する
- 確定申告が必要な場合を把握する
それぞれ、不動産小口化商品の特徴に触れながら解説します。
1. 投資対象の不動産を調べる
不動産小口化商品に投資する際は、本当に収益を得られるかどうか、投資対象の不動産を事前に詳しく調べることが大切です。
たとえば、建物種別(オフィス、住宅、商業施設など)や築年数、総戸数・総床面積などの基本情報のほか、現在の入居率や平均賃料水準などです。
また、新築と中古、エリアなどの条件によっても実質利回りや入居率が変わるため、可能であれば過去数年間の収益実績を確認しましょう。
2. 実物不動産投資との違いを理解する
不動産小口化商品と実物不動産投資では、次の違いがあります。
比較項目 | 不動産小口化商品 | 実物不動産投資 |
---|---|---|
投資額の目安 | 1口数万円から数百万円程度 | 数千万円から数十億円 |
物件の所有権 | 匿名組合型:所有権なし 任意組合型:不動産の一部(共有持分)を所有 |
所有権あり(単独で所有) |
物件選択の自由度 | 高い | |
運用の手間 | プロに任せるため手間なし | プロに任せる〜自ら行うまで |
流動性 | 実物不動産より流動性が高い場合がある | 低い |
節税効果 | 任意組合型のみ相続対策効果あり | 相続対策効果あり |
注意点 |
|
|
これらの違いを理解したうえで、あらためて不動産小口化商品への投資が自分に合っているかどうかを判断することが大切です。
3. 運用会社の透明性と実績を確認する
不動産小口化商品は、投資対象の物件を明示するのが一般的です。しかし、なかには建物の図面や修繕履歴、入居者属性まで詳しく開示されないこともあります。
2025年4月に行われた国土交通省の検討会でも、SNSなどで高利回りを強調した不適切な勧誘や原野商法、ポンジ・スキームといった詐欺への懸念が示されています。
引用:参考資料|第1回 一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会|国土交通省
- SNSなどで高い利回りなどを宣伝して、一般投資家を誘引している商品がみられるが、何らかのルールが必要ではないのか。
- 不動産特定共同事業において原野商法やポンジ・スキームが行われるリスクがあり、これらを防止するための対策を更に検討すべきではないか。
安全に投資を行うためにも、問い合わせしたら適切に対応してくれるか、透明性は適切に保たれているか、実績はあるかなどの観点で、運用会社の透明性や情報開示体制を十分に確認することが大切です。
4. リスクを踏まえて投資期間を検討する
不動産小口化商品は、運用期間が決められており、原則として途中解約できません。
投資期間を検討するときは、運用期間中に対象不動産の価値変動や賃料下落、空室発生などのリスクが発生することにも目を向ける必要があります。また、運営会社が倒産するリスクがあります。
リスクを踏まえたうえで、ご自身の将来的な資金計画やライフイベントと照らし合わせつつ、無理のない投資期間を慎重に検討することが重要です。
5. 確定申告が必要な場合を把握する
任意組合型の不動産小口化商品で収益を得た場合、年間所得が20万円以上になると、会社員であっても確定申告が必要になります。
多くの会社員にとって確定申告はなじみがないため、どのような準備が必要かわからず戸惑うかもしれません。
期日前に慌てることなくスムーズに準備するためにも、手続きの流れや必要書類などを早めに確認することが大切です。
不動産投資に確定申告は必要? やり方から税理士への依頼料まで解説
不動産小口化商品で不動産投資を始めよう
不動産小口化商品は、少額から不動産投資を始めたい方、相続を検討される方にとって魅力的な選択肢です。複数物件への分散投資でリスクを抑えることもできます。
しかし、高い利回りをうたった誇大広告や勧誘も散見されるため、商品の選定には注意が必要です。
これから法改正が進み選びやすくなる可能性もありますが、いずれにせよ自分の目で適切な商品を見極める力が求められます。そのため、投資を始める前に不動産小口化商品の特性や実物不動産投資との違いを理解し、運用会社の透明性や実績をしっかり確認することが大切です。
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