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公開日: 2018.02.02 更新日: 2025.10.03

不動産投資の減価償却とは? 期待できる節税効果や注意点も紹介

監修:
中井哲也 (税理士法人Novera Consulting 公認会計士・税理士)
不動産投資の減価償却とは? 期待できる節税効果や注意点も紹介

「不動産投資は節税になる」とよく言われますが、その仕組みの一つが減価償却を経費にできることです。実際の支出がなくても経費として計上できるので、手元のキャッシュを減らさずに税負担を軽減できます。

ただし、過度な計上は売却時に重い税負担を招くリスクもあるため、正しい理解が不可欠です。

本記事では、不動産投資における減価償却の基本から具体的な計算方法、節税効果を高める物件選び、注意すべき落とし穴までを詳しく解説します。

不動産投資の減価償却とは? 基本的な仕組みを解説

 

不動産投資で成功するための両輪は、「家賃収入を上げること」「経費を減らすこと」です。どちらかが欠けていても利益を上げることは難しいでしょう。もう一つ、不動産投資で儲けるために大事な要素は税金マネジメント(節税)です。

不動産投資の節税にはいくつかのポイントがありますが、初めに押さえたいのは「減価償却費」です。

【関連リンク】
不動産投資をするなら必ず理解したい、減価償却費とは?【基礎編】

減価償却費と通常経費の違い

減価償却費は、一般的な経費とは異なる点があります。通常の経費が「その年に実際に支払ったお金」であるのに対し、減価償却費は「その年に使っていないのに経費計上できるお金」であるのが特徴です。

不動産のような有形資産は、時間の経過とともに価値が減少します。この価値の減少分を「減価償却費」として経費計上できるのが、減価償却の基本的な考え方です。経費が増えれば増えるほど、課税対象となる利益が圧縮され、結果として所得税や住民税の負担を軽減できます。

  • 減価償却費:お金が減らない経費(=過去に支払った費用を分割して経費化)
  • 減価償却費以外の経費:お金がかかる経費(=実際に費用を支払うことで節税が可能)

不動産投資における利益は、「売上-経費」で計算されます。税金はこの利益の部分にかかってきます。計算式の経費のなかには減価償却費も含まれます。不動産投資の場合は、経費のなかでも減価償却の金額は相対的に大きくなる傾向です。

「使ってもいないお金をなぜ経費計上できるのか」を不思議に思う方もいるかもしれません。これは、不動産を購入した段階でその分の大きな費用をすでに支払っているからです。この不動産購入代金は、すぐには全額経費計上できません。その不動産購入代金を数年間にわたって分割して経費化していくのが減価償却費の仕組みです。

  • 減価償却費:先に払った不動産購入代金を後で経費化
  • 減価償却費以外の経費:払った経費をその時点で経費化

なお、減価償却の対象となるのは建物の価値減少分です。そのため、あくまで建物本体および建物附属設備のみが対象となります。土地は時間の経過とともに価値が減るものではないため、減価償却の対象にはならない点に注意が必要です。

不動産投資における減価償却費の計算方法と、耐用年数の計算方法

 

減価償却の方法としては、定額法があります。

定額法は、「取得金額×耐用年数に応じた償却率」の算式で計算します。耐用年数が短いほど、毎年の償却額は大きくなります。

償却方法とは別に、定額法に用いる償却率を割り出すためにも、耐用年数の計算方法として押さえておきたい方法として、実務上用いる簡便法があります。

簡便法は法定耐用年数と建築年からの経過年数をもとに計算します。築古の物件ほど年数が短いので、償却額が大きくなります。※建物(躯体部分)については平成10年4月1日以後、建物附属設備(設備類)については平成28年4月1日以後に取得したものの場合、定額法しか選択できません。

また、個人の所得税においては法人と違い、毎年必ず減価償却費を計上する必要があります。つまり、利益に応じて減価償却費を計上したりしなかったりといった操作ができません。

  • 法人の減価償却費:任意計上(計上してもしなくてもいい) 
  • 個人の減価償却費:強制計上(計上できる限り毎年必ず計上)

償却方法である定額法、耐用年数の計算方法である簡便法について、それぞれ解説します。

1. 定額法による計算 

定額法は、減価償却費を毎年均等額で計上していく計算方法です。多くの不動産オーナーがこの定額法を選択することになります。基本となる計算式は、以下のとおりです。

減価償却費=建物価格×耐用年数に応じた償却率

償却率は、建物の構造や用途によって国税庁が定めている耐用年数に基づき定められています。主な建物構造と耐用年数、それに対応する償却率は以下のとおりです。

  • 木造住宅(耐用年数22年):築年数15年の場合、耐用年数10年となり償却率0.1 
  • 鉄骨造(骨格材の肉厚が4mm超)耐用年数34年:築年数15年の場合、耐用年数22年となり償却率0.046
  • RC造SRC造(耐用年数47年):築年数15年の場合、耐用年数35年となり償却率0.029

たとえば、築15年・建物価格が2,000万円のRC造ワンルームマンションを購入した場合を考えてみましょう。

【計算例】
建物価格2,000万円×RC造の償却率0.029=年間58万円

この場合、毎年58万円を減価償却費として計上し、35年間かけて建物の取得費を費用化していくことになります。このように、定額法では購入した物件の構造と価格によって、毎年一定の金額を安定して経費にできるのが特徴です。

2. 中古物件・耐用年数を超えた築古物件で活用する簡便法

中古物件の耐用年数は法定耐用年数ではなく、本来、購入時以降の使用可能年数を見積もり、耐用年数とします。参照: No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

実際には使用可能期間の見積は困難なことが多いため、そこで用いる方法が簡便法となります。減価償却費の計算の際に必要になる耐用年数と償却率を割り出します。

この方法は、築古物件を選ぶ際に重要にもなります。簡便法では、法定耐用年数をすでに経過した、または一部経過している中古資産の耐用年数を簡易的に算出します。

簡便法の計算式は、以下のとおりです。

【法定耐用年数をすべて経過した物件の場合】
法定耐用年数×0.2
【法定耐用年数を一部経過した物件の場合】
(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2)

ただし、計算によって算出された耐用年数が2年未満となる場合でも、最低耐用年数は2年と定められています。

【計算例1】
築25年の木造アパート(法定耐用年数22年)を購入した場合

この物件は法定耐用年数(22年)をすべて経過している。

簡便法による耐用年数=22年×0.2=4.4年
小数点以下は切り捨てなので、耐用年数は4年となる。
【計算例2】
築10年のRC造マンション(法定耐用年数47年)を購入した場合

この物件は法定耐用年数を一部経過している。

簡便法による耐用年数=(47年-10年)+(10年×0.2)=37年+2年=39年
耐用年数は39年となる。

参照: No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

先の定額法の計算に用いた耐用年数も上記の計算式にあてはめて割り出したものです。

中古物件の耐用年数は、新築物件の法定耐用年数に比べて短くなります。耐用年数が短くなることで短期間で多額の減価償却費を計上できるため、効率良く不動産所得を圧縮し、償却期間中の所得税や住民税の軽減につなげやすくなるわけです。

不動産投資の減価償却に期待できる効果

 

不動産投資における減価償却費は、会計上の処理にとどまらず、以下のように投資家にとって大きな節税メリットをもたらします。

  1. 実際の支出を伴わない経費として計上できる
  2. 損益通算による所得税・住民税の軽減が期待できる

それぞれ詳しく解説します。

1. 実際の支出を伴わない経費として計上できる

減価償却のメリットの一つが、実際の現金支出を伴わずに経費として計上できる点です。通常の経費、たとえば管理費や修繕費、広告費などは、実際にお金を支払った分だけ経費になります。これらは手元の現金が減少する支出を伴う経費です。

しかし、減価償却費は物件購入時に一括で支払った建物の購入費用を、その建物の耐用年数に応じて毎年分割して経費化します。その年に減価償却費として、現金が減ることはありません。

そのため、手元のキャッシュフローを悪化させることなく、税負担を軽減できます。実際の収支は黒字を保ちながらも、減価償却費を計上することで帳簿上は赤字となり、課税所得を圧縮して節税効果を得ることが可能です。

2. 損益通算による所得税・住民税の軽減が期待できる

不動産投資で発生した赤字は、給与所得などほかの所得と損益通算できます。その結果、総所得金額を圧縮し、所得税・住民税を軽減できる効果があります。

損益通算とは、複数の所得がある場合に、ある所得で生じた損失を他の所得の利益から差し引ける制度のことです。不動産所得が赤字になった場合、その赤字分を給与所得や事業所得などの他の所得から差し引くことで、課税対象となる所得(課税所得)全体が減少します。課税所得が減少すれば、それに伴って所得税や住民税の金額も減るという仕組みです。

日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、所得税率が高い人ほど節税効果が大きくなるという特徴があります。

【関連リンク】
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不動産投資で減価償却を利用する際の注意点

 

減価償却費は節税効果がある反面、以下のような注意点もあります。

  1. 減価償却は永遠に使えるわけではない
  2. 売却時に税金が高くなる可能性がある
  3. 建物から躯体と設備の分離によって確定申告が複雑になる

それぞれ詳しく解説します。

1. 減価償却は永遠に使えるわけではない

減価償却期間中、減価償却費は経費として計上され、課税所得を圧縮します。しかし、減価償却期間が終了すると経費計上できる金額が減る一方で、ローン返済は継続するため、税負担が増加してキャッシュフローが圧迫されてしまうわけです。

たとえば、築古木造物件では4年程度で減価償却が終了するため、5年目以降は節税効果が見込みづらくなります。対策としては、不動産売却による出口戦略をあらかじめ決めておくことが重要です。売却によって最終的に利益を確保し、運用全体の収支をプラスにすることも可能です。

【関連リンク】
不動産投資の出口戦略とは? 売却に適したタイミングや成功のポイントも解説

2. 売却時に税金が高くなる可能性がある

減価償却費で毎年の所得税・住民税を節税できる反面、不動産売却時に譲渡所得税が高くなる可能性があります。不動産売却時の税金は売却価格から取得費(購入時の価格-減価償却費累計額)と譲渡費用などを差し引いた譲渡益にかかります。

つまり、減価償却費を多く計上するほど、税務上の取得費が減り、売却時の譲渡益が大きくなるわけです。

また、譲渡した年の1月1日現在において、保有期間5年以下の短期譲渡の場合は所得税・住民税をあわせて39.63%、5年超の長期譲渡でも20.315%の税率が適用されます。所有期間によっては、大きな税負担となる可能性もあるため、注意が必要です。減価償却による節税効果が高いほど、売却時の税負担も大きくなるため、投資全体での損益を考慮した出口戦略の検討が不可欠です。

3. 建物から躯体と設備の分離によって確定申告が複雑になる

不動産の減価償却では、建物本体(躯体)と建物附属設備(設備類)を分離して計上することで、より効果的な節税を目指すケースがあります。これは、それぞれに異なる耐用年数が設定されているため、適切に区分することで経費計上額を最適化できる可能性があるからです。

しかし、このように躯体と設備を分離して申告すると、その分、確定申告の手続きが複雑になります。購入費用の内訳を正確に区分し、それぞれの資産に異なる耐用年数や償却率を適用して計算を行う専門知識が求められます。

そのため、正確な申告と最適な節税効果を実現するには、税理士との連携が不可欠です。適切な記録管理と専門家のサポートにより、複雑な申告もスムーズに進められます。確定申告サポートが充実している、あるいは信頼できる税理士を紹介してくれる不動産投資会社を選ぶことで、安心して投資を進められるでしょう。

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不動産投資の減価償却に関してよくある質問

 

不動産投資の減価償却に関してよくある質問は、以下の5つです。

  1. 中古物件の場合、築年数をどのように計算しますか?
  2. 減価償却費は計上しなくてもいいのですか?
  3. 新築と中古、どちらが節税効果が高いですか?
  4. 減価償却期間が終了したらどうなりますか?
  5. 減価償却以外に不動産投資で計上できる経費は何ですか?

それぞれ詳しく解説します。

Q1. 中古物件の場合、築年数をどのように計算しますか?

中古物件の築年数は、建物の法定耐用年数に、新築からその物件を取得した年月までの経過年数を加味して計算するのが一般的です。具体的には、購入時の契約書類等に記載されている新築年月日(完成年月日)を基準とします。

中古物件の経過期間に1年未満の端数が生じる場合、月単位で計算します。一方で計算結果で端数となった月数は切り捨てます。

例:
RC造(法定耐用年数47年)
建物完成年月が2010年5月
購入年月が2025年9月

経過期間に1年未満の端数:4カ月

簡便法の式:(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2)

経過年数15年4カ月→184カ月(15年×12カ月+4カ月)

法定耐用年数47年→564カ月(47年×12カ月)

(564カ月-184カ月)+(184カ月×0.2)=416.8カ月
416.8カ月=34.7年

簡便法による耐用年数:34年(1年未満の端数切り捨て)

Q2. 減価償却費は計上しなくてもいいのですか?

個人の不動産投資家の場合、減価償却費は強制償却のため、計上できる分は必ず計上する必要があります。これは、税法上の義務として定められています。

法人の場合は、減価償却費の計上は任意であり、その年の利益状況に応じて計上したりしなかったりといった調整が可能です。ただし、年間の上限額は決まっており、翌年度以降に過去の不足分を追加計上はできません。

Q3. 新築と中古、どちらが節税効果が高いですか?

短期的な節税効果に限定すれば、中古物件の方が高くなる傾向があります。法定耐用年数をすでに経過した中古物件の場合、簡便法を用いることで、耐用年数を大幅に短縮できるためです。

耐用年数が短縮されると、その分、年間の減価償却費が大きくなり、短期間でより多くの経費を計上できます。これにより、購入後数年間は大きな節税効果を期待できる可能性があります。

一方で、新築物件は法定耐用年数が長いため、年間の減価償却費は中古物件に比べて少なくなるのが一般的です。そのため、長期間にわたって安定した節税効果を得ることが可能です。どちらの物件を選ぶかは、投資家の投資戦略(短期的な節税を重視するか、長期的な安定運用を目指すかなど)や、物件の築年数、構造、価格などによって異なります。

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Q4. 減価償却期間が終了したらどうなりますか?

減価償却期間が終了しても、建物自体は引き続き使用可能です。しかし、会計上の取り扱いとしては、新たな減価償却費は計上できません。

減価償却期間が終了すると、その資産の帳簿価額は、多くの場合1円(「備忘価額」と呼ぶ)となります。これは、資産がまだ存在していることを帳簿上で示すためのものです。以降は、減価償却費による節税効果はなくなるため、経費計上額が減少し、課税所得が増加します。

Q5. 減価償却以外に不動産投資で計上できる経費は何ですか?

減価償却費以外にも、不動産投資では多数の経費を計上することが可能です。これらの経費を適切に計上することで、不動産所得を圧縮し、節税効果を高められます。

主な経費としては、以下のようなものがあります。

  • 管理費・修繕費
  • 固定資産税都市計画
  • 火災保険料・地震保険料
  • ローン利息
  • 不動産取得税
  • 税理士費用

これらの経費を漏れなく計上するためにも、日頃から領収書や帳簿を整理しておくことが大切です。

【関連リンク】
不動産投資の経費どこまで落とせる? 計上できる経費とNGまとめ

不動産投資の減価償却については専門家に相談するのがおすすめ

不動産投資に関する税制は状況に応じて変化していきます。税金=費用と考えれば、毎年の税制改正は不動産投資をしていく上では非常に重要なトピックスですので、少なくとも不動産に関する部分だけでもぜひ毎年チェックしていただきたいと思います。

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※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

この記事を監修した人

中井哲也 中井哲也 税理士法人Novera Consulting 公認会計士・税理士

税理士法人Novera Consulting(ノベラコンサルティング)代表社員。 給与所得の節税を狙った申告が得意で2024年の給与所得の節税に関する申告件数が年間440件以上を突破。従業員30名を超える専門家集団です。富裕層の手残りを増やすアドバイスには定評がある。趣味は税金の勉強と筋トレです。 税理士法人Novera Consulting(ノベラコンサルティング)

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