不動産投資をするとマイホームは買えない? 住宅ローンとの違いや両立するコツを解説
不動産投資を検討しているものの、「不動産投資ローンがあるとマイホームを買えなくなる」という噂を聞き、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
しかし、不動産投資をしているからといって、必ずしもマイホームが買えないわけではありません。
本記事では、不動産投資ローンと住宅ローンの違いや、住宅ローンを組みにくいケース・組みやすいケース、両立するコツなどを解説します。
不動産投資をするとマイホームは買えない?
不動産投資をすると「マイホームが買えない」と言われることがありますが、それは住宅ローンの審査が厳しくなる可能性があるためです。
住宅ローンでは年収や信用情報、既存の借入額が重要視され、不動産投資ローンがあると「借入総額が多い」「長期的に返済能力を維持できるか疑問」とみなされやすくなります。特に、投資による収入が不安定な場合、返済能力が低いと判断されることも少なくありません。
なので、収入が安定しており、借入比率を適切に管理できていれば、マイホームの購入は十分に可能です。事前に金融機関と相談し、資金計画を練ることが重要です。
不動産投資ローンと住宅ローンの違い
不動産投資ローンと住宅ローンの違いは以下の通りです。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
利用目的 | 投資用物件の購入 | 居住用物件の購入 |
金利 | 高め | 低め |
返済原資 | 不動産の収益 | 個人収入 |
審査基準 | 物件の収益性、個人の属性 | 属性 |
各ローンの違いを詳しく解説します。
1. 不動産投資ローンとは
不動産投資ローンとは、賃貸収益を目的とした投資用物件の購入に利用されるローンです。主な返済原資は家賃収入であり、金融機関は物件の収益性や立地、空室リスクなどを重視して審査を行います。
なお、物件の収益性だけでなく、申込者の収入や資産状況などの属性も審査されます。家賃収入が得られない期間が発生しても、ローンを返済できるかを確認するためです。
不動産投資ローンは住宅ローンと比べて貸し倒れ等リスクが高いとみなされるため、金利はやや高めに設定され、自己資金の割合も大きく求められる傾向があります。また、借入可能額は年収の7〜8倍程度とされる一方で、物件の将来性によって融資条件が変動する点も特徴です。
2. 住宅ローンとは
住宅ローンは、自らが住むためのマイホームを購入する際に利用するローンで、主な返済原資は給与や事業所得などの安定した個人収入です。
金融機関は借入者の年収、勤続年数、信用情報などを重視して審査を行います。返済期間を長期に設定できることや、金利が低い点が住宅ローンの特徴です。リスクが比較的低いと判断されやすく、一般的に不動産投資ローンよりも金利が低めに設定されています。
ただし、原則として投資目的では利用できず、融資対象は居住用物件に限られます。住宅購入を計画する際には、自身の返済能力とライフプランを踏まえた慎重な資金設計が必要です。
不動産投資ローンが原因で住宅ローンを組みにくいケース
不動産投資ローンが原因で、住宅ローンを組みにくいケースを3つ紹介します。
- 返済負担率が高い
- 与信枠を圧迫している
- 金融機関の方針により審査が厳しい
順番に解説します。
1. 返済負担率が高い
すでに不動産投資ローンを組んでいる場合、その返済額が年収に対して大きいと返済負担率(返済比率)が高いとみなされ、住宅ローンの審査に通りにくくなります。返済負担率とは「年収に占める年間の住宅ローン返済額の割合」です。
返済負担率が低いほど返済余力があり、リスクが低いと評価されます。
金融機関によって基準は異なりますが、返済負担率が高いとマイホーム用の住宅ローンが借りられない、または希望額を下回る可能性があります。借入れを検討する際は、収入に対する返済割合を意識した資金計画が大切です。
2. 与信枠を圧迫している
不動産投資ローンを利用していると、金融機関が設定する与信枠を消費してしまうケースがあります。与信枠とは、年収や信用情報をもとに決まる融資可能な上限額のことです。
与信枠が圧迫されていると、希望額を借りられない、あるいは審査に落ちるリスクが高まります。住宅ローンに申し込む際には、事前に自身の借入総額を把握し、十分な与信枠があるかを確認することが不可欠です。
3. 金融機関の方針により審査が厳しい
金融機関はローンの種類ごとに異なる審査基準を設けており、不動産投資ローンをすでに組んでいる場合、住宅ローンの審査が厳しくなることがあります。複数の借入れがあるとリスクが高いと判断され、融資額の制限や金利優遇の対象外となることも少なくありません。
そのため、住宅ローンを検討する際は各金融機関の方針を事前に確認し、自身の借入状況を正確に把握することが大切です。
不動産投資ローンがあっても住宅ローンを組みやすいケース
不動産投資ローンがあっても住宅ローンを組みやすいケースは以下の5つです。
- 収入が安定している
- 自己資金が多い
- すでに不動産投資で実績がある
- 購入する物件の担保価値が高い
- 金融機関の方針によって審査が通る
順番に詳しく解説します。
1. 収入が安定している
不動産投資ローンを組んでいても、収入が安定していれば住宅ローンの審査に通る可能性はあります。金融機関は借入者の返済能力を重視するため、給与所得が一定水準以上あり、継続的に収入が見込めれば信用に値すると判断されます。
公務員や医師など職業的に安定性が高い場合は、返済が滞るリスクが低いと判断されやすく、審査が有利に働くことも少なくありません。
2. 自己資金が多い
自己資金が豊富にある場合、不動産投資ローンを組んでいても住宅ローンの審査に通りやすい傾向にあります。借入額が少なく抑えられれば総返済負担率が低くなり、金融機関から「無理のない返済が可能」と判断されやすくなるためです。
また、自己資金の多さは信用力の裏付けともなり、審査上の安心材料としてプラスに働きます。頭金を多めに入れることで、金利の優遇を受けられる可能性もあります。
3. すでに不動産投資で実績がある
不動産投資ローンを組んでいても、物件運用が順調で安定した家賃収入を継続的に得ている場合は、住宅ローンの審査にプラスに働くことがあります。過去の返済履歴や収益状況から投資の実績が良好であれば、今後も安定的な物件の運用が見込まれ、金融機関からリスクの低い投資家と判断されるためです。
逆に、投資開始直後で収益が不安定な状態では、融資を断られる可能性もあります。実績は単に家賃収入があるだけでなく、計画的な運用と返済能力を証明できていることがポイントです。
4. 購入する物件の担保価値が高い
住宅ローンの審査においても、物件自体の担保価値も重視されます。担保価値が高い物件、たとえば立地が良く流動性の高いエリアや資産価値の落ちにくい住宅は、万が一返済が滞った場合でも売却で債務を回収しやすいためです。
不動産投資ローンを組んでいても、購入予定のマイホームの担保評価が高ければ、審査がスムーズに進むこともあります。また、担保評価が高いと融資額も高くなりやすく、金利面でも優遇を受けられる可能性があります。
5. 金融機関の方針によって審査が通る
住宅ローンの審査基準は金融機関ごとに異なり、不動産投資ローンを組んでいても柔軟に対応してくれるケースがあります。ある金融機関では通らなかった融資が、別の金融機関では承認されることも珍しくありません。
たとえば、投資用ローンを重視しない審査方針や、担保評価に重点を置く銀行であれば、他の条件次第で融資を受けられる可能性が高まります。複数の金融機関に相談し、それぞれの方針を比較・検討することが重要です。
不動産投資とマイホーム購入の優先順位
不動産投資とマイホーム購入を両立させたい場合は、資金計画だけでなく、ローンの審査影響まで見据えた優先順位の判断が欠かせません。一般的には、不動産投資ローンの方が審査が厳しく、住宅ローンよりも先に組む方が通りやすい傾向にあります。
しかし、明確にマイホーム購入の時期が決まっている場合は注意が必要です。不動産投資ローンを直前に組んでしまうと、返済負担率や与信枠の影響で住宅ローンが通らなくなるリスクがあります。そのため、マイホーム購入を控えているなら、その直前での不動産投資は避けるのが無難です。
不動産投資とマイホーム購入を両立させるポイント
不動産投資とマイホーム購入を両立させるポイントは以下の4つです。
- 与信枠を広げる
- 精緻な返済計画を立てる
- 売却は投資用の不動産から行う
- 信頼できる専門家に相談する
順番に解説します。
1. 与信枠を広げる
与信枠を広げることで、不動産投資ローンと住宅ローンの両方に十分な資金を確保できます。
この枠を広げるには、年収を増やすのがもっとも効果的です。たとえば、副業で安定収入を得る方法や転職による昇給、キャリアアップによる昇進などが挙げられます。また、家賃収入の実績を積み上げて信頼性を高めることも評価対象となります。
与信枠を広げることで、住宅ローンと投資ローンの両立が現実的になり、融資の選択肢も広がるでしょう。
2. 精緻な返済計画を立てる
不動産投資ローンと住宅ローンを同時に抱える場合、返済額の合計が家計に大きな負担を与えるため、精緻な返済計画が不可欠です。収入に余裕があるように見えても、空室や収入減などのリスクを想定し、最悪のケースでも家計が破綻しない資金設計を立てましょう。
毎月の返済額が収入に収まるようにシミュレーションを行い、余裕を持った返済比率を保つことが重要です。また、繰上返済やボーナス併用の活用も視野に入れることで、長期的な負担を軽減できます。
3. 売却は投資用の不動産から行う
不動産投資とマイホーム購入の両立が難しくなった場合、先に手放すべきは投資用物件です。
マイホームは生活の基盤であり、家族の安心にも直結するため、安易に売却しない判断が基本です。一方、投資物件はオーナーチェンジ物件として入居者付きでも売却できるケースがあり、キャッシュフローの改善や与信枠の回復につながります。
売却益をローン返済や頭金に充てれば、返済比率を下げて住宅ローン審査にも有利に働きます。ただし、売却のタイミングや価格、税金も含めた損益計算は慎重に行いましょう。
4. 信頼できる専門家に相談する
不動産投資とマイホーム購入を両立させるには、複雑な資金計画やローン戦略を考える必要があります。自己判断だけで進めると、返済負担や与信枠の管理を誤りかねません。
そこで活用したいのが、不動産投資会社やファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家です。自身の収入や資産状況、投資の目的に応じて、最適なローン構成や返済プランを提案してもらえます。
中立的な立場からリスクと対策を明確にしてくれるため、将来的な資金トラブルを未然に防げるでしょう。
不動産投資とマイホーム購入を両立させよう
不動産投資をしていても、マイホーム購入は決して不可能ではありません。重要なのは、適切な資金計画と戦略です。
与信枠を広げるために収入向上や既存ローンの返済を進め、金融機関からの信頼を獲得することが大切です。また、家賃収入と給与収入を含めた精緻な返済計画を立てることも欠かせません。
必要に応じて専門家への相談も視野に入れ、長期的に安定した資産形成の基盤を作りつつ、家族が安心して住めるマイホームを建てましょう。
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