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公開日: 2025.07.18

地方の不動産投資は利益を出せる? メリットやリスク、失敗しないコツを解説

監修:
矢口美加子 (宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級)
地方の不動産投資は利益を出せる? メリットやリスク、失敗しないコツを解説

「都心の不動産は価格が上昇しているから、地方の不動産投資という選択肢はどうかな」と考えるとき、「人口減少や空室リスクが心配」といった不安がよぎるかもしれません。

三大都市圏と比較すると、地方の不動産投資は競合が少なく価格を抑えて始められます。本記事では、地方で不動産投資を始めるメリット・デメリットや成功させるポイントを解説します。

地方で不動産投資はできる?

 

国土交通省の定義する「地方」とは、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)を除く地域のことです。

地方は三大都市圏と比較して人口が少なく、不動産投資で利益を出せるか不安に思うかもしれません。確かに、地方では安定した収入を得ることは難しいかもしれませんが、戦略によっては十分に利益を出すことが可能です。

そこで、地方での不動産投資を検討する際のポイントを解説します。

1. 人が暮らす地域か否かで判断する

不動産投資は、入居者がいて初めて家賃収入が生まれる事業です。そのため、人々が生活するための基盤が整っている地域を選ぶことが、地方での不動産投資を成功させる鍵です。

たとえば、同じ地方であっても、県庁所在地や主要駅周辺のような行政・商業機能が集まる「地方都市」は、賃貸需要が比較的安定している傾向にあります。一方で、明確な産業がなく人口流出が著しいエリアでは、入居者探しが困難になる可能性があります。

2. 人口が増える要素がある地域かどうかで判断する

長期的に安定した収益を目指すには、現在の人口だけでなく、将来的に人口が増加、あるいは維持される要素を持つエリアへの投資が重要です。

人口が増え続ける地域は、賃貸の需要が底堅く、家賃が下落するリスクを抑えられます。将来、物件を売却する際の買い手も見つかりやすいため、出口戦略においても有利に働くでしょう。

人口が増えるか否かは、大規模な企業誘致や再開発、地方創生施策が実施される予定があるのかを確認するのが有効です。これらの要素がある地域は、局所的に人口が増加し、不動産投資の成功につながる可能性があります。

地方で不動産投資を始めるメリット

 

地方で不動産投資を始めるメリットは以下の3つです。

  1. 三大都市圏より価格を抑えて始められるケースが多い
  2. 競争が比較的少ない
  3. 固定資産税の負担が都市部より軽い傾向にある

順番に解説します。

1. 三大都市圏より価格を抑えて始められるケースが多い

地方は都市部ほど地価が高騰していないため、物件価格が安価な傾向にあります。不動産投資への参入ハードルが下がり、まずは小規模から資産形成を始めたい人でも挑戦しやすくなります。

初期投資額が低いと、金融機関からのローン借入額も少なく済み、月々の返済負担の軽減も可能です。万が一の空室発生時にも慌てずに対処できる経済的な余裕につながり、リスク管理の観点からも有利です。

都市部に比べて物件価格が手頃なため、同じ資金の場合、より大きな物件や複数物件を所有できる可能性があります。

【関連リンク】
【初心者向け】不動産投資に最低限必要な元手はいくら?

2. 競争が比較的少ない

地方の不動産投資は、競合が比較的少ない点も魅力です。

ライバルが少なければ、希望の物件情報をじっくりと比較検討する時間を確保できます。買い手が殺到する状況も少ないため、価格交渉も有利に進められるでしょう。

3. 固定資産税の負担が都市部より軽い傾向にある

不動産投資で利益を出すには、物件価格だけでなく、所有し続けるための運営コストにも目を向けることが大切です。地方の物件は、都市部の物件と比較して、毎年かかる固定資産税の負担が軽い傾向にあります。

固定資産税は、各市町村が決定する固定資産税評価額を基に計算されます。評価額は、土地の地価や建物の価値に連動しているため、物件価格自体が安価な地方では、必然的に税金の額も低く抑えられるわけです。

固定資産税は、家賃収入の有無にかかわらず毎年必ず支払い続ける必要があります。ランニングコストを抑えられるのは、不動産経営の収益性を高めるうえで重要なポイントとなります。

地方で不動産投資を始めるデメリットやリスク

 

地方で不動産投資を始めるデメリットやリスクは以下の5つです。

  1. 空室リスクがある
  2. 売却時に買い手が見つかりにくい
  3. 需要・供給バランスの見極めが難しい
  4. 融資を受ける難易度が高い
  5. 物件が遠方にあると管理に手間やコストがかかる

順番に解説します。

1. 空室リスクがある

多くの地方で若年層の都市部への流出などにより人口が減少しており、それに伴い賃貸の需要そのものが縮小傾向にあります。一度空室が発生すると、次の入居者が見つかるまでに数カ月、あるいはそれ以上の期間を要する可能性も考慮する必要があります。

空室の間は家賃収入が途絶えますが、ローンの返済や固定資産税管理費といった支出は支払い続けなければなりません。この状態が長く続くとキャッシュフローが悪化し、投資計画が破綻してしまうリスクがあります。

【関連リンク】
不動産投資はリスクが高い? 空室や修繕など9つのリスクと5つの回避策

2. 売却時に買い手が見つかりにくい

競争が少ないということは、地方の物件は、都市部の物件に比べて市場の流動性が低く、売却したいタイミングで買い手が見つかりにくいリスクも認識しておく必要があります。
賃貸経営がうまくいっている間は問題ありませんが、売却益を確保するには、物件を購入する段階で「どのような人に、いつ、いくらで売却するのか」という出口戦略を明確に描いておくことが不可欠です。

マイホームとして購入する層も見込めるファミリー向けの戸建てや、地域の中心部に位置する利便性の高い物件を選ぶなど、投資家以外にも売れる可能性を考慮して物件を選定すると安心です。

【関連リンク】
不動産投資の出口戦略とは? 売却に適したタイミングや成功のポイントも解説

3. 需要・供給バランスの見極めが難しい

地方では、大学の移転や企業の撤退、商業施設の閉鎖といった外部要因によって人口動態が変化しやすく、それに伴い賃貸ニーズも急激に変動する可能性があります。こうした変化を見誤ると、入居者が集まらず空室リスクが高まるおそれがあります。

安定的な収益を得るためには、将来的な地域動向を調査し、長期的に需要が見込めるエリアかどうかを慎重に見極めることが大切です。特に、需要が一時的に集中する地域や、施設依存度の高い地域では、需給バランスの変化に備えたリスク管理が欠かせません。

4. 融資を受ける難易度が上がる可能性も

多くの場合、不動産投資ローンの利用を検討するでしょう。しかし地方の物件を対象とする場合、融資のハードルが都市部の物件に比べて高くなる可能性があります。

金融機関は、物件の担保価値を審査します。将来の人口減少や、売却の難しさといった流動性の低さが懸念される地方物件は、都市部の人気エリアの物件よりも担保価値が低いと評価されやすいため、金融機関が融資に慎重になる可能性があります。

【関連リンク】
不動産投資ローンの融資額と必要な年収は?年収別の金融機関も公開

5. 物件が遠方にあると管理に手間やコストがかかる

物件との距離が物理的に離れていると管理に手間やコストがかかります。たとえ自分で物件を管理したいと思っていても、物件の状態を自身の目で直接確認する機会が限られるため、入居者募集や家賃回収、トラブル対応といった管理業務の多くを、結果的に管理会社に任せきりにすることになります。

一般的に家賃収入の5〜10%程度の管理委託手数料が発生しますし、もし信頼できる管理会社を見つけられないと、共用部の清掃が不十分であったり、設備の修繕対応が遅れたりして入居者の不満につながり、物件の価値が低下するリスクがあります。

このリスクを抑えるには、信頼できる管理会社をパートナーに選ぶことです。管理会社の選定時には、管理している物件の入居率や過去の管理実績、報告体制などを契約前に厳しくチェックしておくと安心です。

地方での不動産投資を成功させるポイント

 

地方での不動産投資を成功させるポイントは以下の7つです。

  1. エリア選定に力を入れる
  2. 特定の企業や大学に依存した賃貸需要は避ける
  3. 賃貸需要のある物件を探す
  4. 賃貸面積の広い物件を選ぶ
  5. 設備が整った物件で差別化する
  6. 駐車場のある物件を選ぶ
  7. 信頼できる管理会社を頼る

順番に解説します。

1. エリア選定に力を入れる

どれだけ条件のよい物件でも、賃貸の需要がないエリアでは入居者が見つからず、収益を上げられません。人口の動向や地域の経済基盤を丁寧に分析し、長期的に人々が集まり続ける場所を選ぶことが、安定した家賃収入の基盤となります。

有望なエリアを見極めるには、自治体が公表している「居住誘導区域」や、複数企業の進出・再開発といった人口増加の要素を確認するのが基本です。

災害リスクの低さも大切な視点で、国土交通省や自治体のハザードマップを使い、購入を検討している物件が洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれていないかを確認する必要があります。

【関連リンク】
不動産投資『次に来る街』はココ! 価格上昇が期待できる穴場エリアBEST3(東京・首都圏)

2. 特定の企業や大学に依存した賃貸需要は避ける

安定した賃貸経営を目指すなら、単一の大企業や大学だけに賃貸需要を依存しているエリアは避けるべきです。その特定の企業や大学が、万が一、撤退・縮小・移転してしまった場合、地域の賃貸需要がなくなり、所有物件の空室が増加するリスクがあるためです。

大手企業の工場がある、大きな大学が立地する地域は、一見すると入居者需要が安定している魅力的な市場に見えます。しかし、企業の業績悪化による工場閉鎖や、大学キャンパスの移転といった変化が起きた途端、不動産価値が暴落する可能性があります。

このような事態は、個人の投資家の力では到底コントロールできません。リスクを分散するためには、少なくとも2つ以上の企業や大学が周辺にあるエリアを選ぶことが重要です。

3. 賃貸需要のある物件を探す

投資家自身がよいと思う物件と、実際に入居者が住みたいと思う物件が一致しているとは限りません。ターゲットとなる入居者層のニーズからズレた物件を選んでしまうと、長期間の空室が発生する原因になります。

そのため、地方不動産投資を成功させるには、賃貸需要を正確に把握し、それに合致した物件を選ぶことが不可欠です。地域のリアルな賃貸需要を把握するためには、地元の不動産会社に直接ヒアリングするのも効果的です。

4. 賃貸面積の広い物件を選ぶ

多くの物件がひしめく都市部とは異なり、地方では競合物件との差別化を図るために、あえて賃貸面積が比較的広い物件を選ぶのも有効な戦略です。

都市部では高い家賃を抑えるためにコンパクトな間取りの物件が主流ですが、地方では比較的家賃が手頃な分、入居者はより広い居住空間や収納スペースを求める傾向があります。

特にファミリー向け物件であれば、子ども部屋を確保できる部屋数や、アウトドア用品なども収納できる広い収納スペースの有無が、物件選びの決め手になることも少なくありません。物件情報を見る際は、表面利回りだけでなく「平米単価(1㎡あたりの価格)」にも注目することが大切です。

5. 設備が整った物件で差別化する

入居者に物件を魅力的に感じてもらうためには、現代のライフスタイルに合った設備を整え、他の物件との差別化を図ることが不可欠です。入居者にとって、あって当たり前の設備がなければ、物件探しの初期段階で候補から外されてしまう可能性があります。

地方では物件の供給数が限られる分、設備の充実度がより強く入居の決め手となる傾向があります。バス・トイレ別、室内洗濯機置場、エアコンは、最低限の必須設備です。

これらに加え、無料インターネットやオートロック、宅配ボックス、独立洗面台といった設備は、物件の価値を大きく高めます。初期投資を惜しむと、長期的な空室により大きな損失を生む可能性があります。

6. 駐車場のある物件を選ぶ

駅やバス停が近くにある都市部とは異なり、地方では多くの地域で自動車が主要な移動手段となっています。通勤、買い物、レジャーなど、生活のあらゆる場面で車が必要とされるため、入居者のほとんどが駐車場を必須条件として探しています。

駐車場がない、あるいは空きがない物件は、それだけで検討の対象外にされてしまう可能性が高いです。特にファミリー世帯をターゲットにする場合は、夫婦でそれぞれ車を所有しているケースも多く、2台分の駐車スペースが求められることも珍しくありません。

物件の敷地内に駐車場がない場合は、近隣で月極駐車場を確保し、部屋とセットで貸し出すといった工夫も必要になります。駐車場付きの物件は、空室リスクを大幅に軽減できるだけでなく、毎月安定した駐車料金として別途収入を得ることも可能です。

7. 信頼できる管理会社を頼る

地方での不動産投資の成功には、その地域の不動産市場に精通し、信頼できる管理会社をパートナーとして選ぶことが絶対条件です。入居者募集から家賃の回収、入居中のトラブル対応、退去時の手続き、物件の清掃やメンテナンスまで、オーナーの手の届かない部分をすべて代行してくれるのが管理会社です。

優れた管理会社はオーナーの資産価値を守り、逆に質の低い会社は資産価値を大きく損なってしまいます。管理会社を選ぶ際は、提示された手数料の安さだけではなく、管理実績や担当者の対応の速さ・専門知識、報告体制などを、複数の会社で比較検討することが大切です。

地方と東京や大阪などの都市圏、需要の違いとは?

 

東京・大阪をはじめとした大都市の物件価格は高いですが、需要は高い確率で見込まれるエリアです。主な理由は以下の3つです。

  1. 転入者が多く需要が高い
  2. 将来的にも人口の増加が見込まれている
  3. 若年齢層の流入が多い

1. 転入者が多く需要が高い

多くの企業や大学が東京・大阪などに集中しているため、就職や進学を機に、全国から絶えず人々が集まり続けます。この安定した人の流入により、安定した収入を確保することが可能です。

令和5年度の都道府県別転入者数を見ると、2位の神奈川県に倍近くの差をつけ東京が1位となっており、大阪も4位につけています。

令和5年度 都道府県別転入者数

人々が東京・大阪に集まることで、賃貸物件への需要は常に高く維持されるため、地方の物件に比べて入居者を見つけやすい傾向にあります。空室リスクを低く抑えられ、安定した家賃収入を長期的に得られる可能性が高いでしょう。

2. 将来的にも人口の増加が見込まれている

日本全体では人口減少が避けられない状況ですが、利便性の高い東京への一極集中傾向は今後も続くと予想されています。不動産のような長期にわたる投資において、この将来的な人口動態の安定は、資産価値を維持する上で重要な要素です。

国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口によると、2050年までに多くの地方圏で人口減少が予測されているのに対し、東京都は20%以上増加すると予測されています。

 

また、大阪も数%の人口増加が見込まれています。長期的な視点で資産価値の維持が期待できるエリアを選ぶことは、不動産投資で利益を出すうえで重要です。

3. 若年齢層の流入が多い

賃貸市場を支えているのは、10代後半から20代の若年層です。この世代は、大学への進学や新社会人としての就職を機に上京し、一人暮らしを始める人が多いため、ワンルームマンションなどの賃貸需要をもっとも活発に生み出す層です。

2023年の都道府県別・年齢別転入超過数を見ても、東京への転入者数が圧倒的に多いことがわかります。

2023年 都道府県別・年齢別転入超過数

毎年春になると、多くの新入生や新社会人が部屋を探すため、東京の賃貸市場は繁忙期を迎えます。

同じように、大都市圏を形成する大阪も、グラングリーン大阪や新幹線の開通、大阪公立大学の新キャンパス開設に伴う新駅開発、大阪IP開発により、若年層の増加が予想されています。

 

このように、若く、流動性の高い人口が常に供給され続ける市場構造は、地方にはない都市圏ならではのメリットであり、安定した入居者確保と、それに伴う収益の安定化に直結するでしょう。

地方の特徴を理解して不動産投資を始めよう

地方の不動産投資は、都心より価格を抑えて始められる魅力的な投資手法です。しかし、成功には戦略的なアプローチが不可欠です。

エリア選定では人口動態や再開発計画を詳しく調査し、特定の企業や大学に依存しない複数の需要源がある地域を選ぶ必要があります。地方ならではの、賃貸面積の広いファミリー向け物件や充実した設備による差別化、駐車場付き物件が、選ぶうえで重要になります。

空室リスクや売却時の流動性リスクを理解し、信頼できる管理会社を選定することで、遠隔地管理も可能です。金融機関の融資も活用しながら、慎重に物件を選定すれば、安定した家賃収入を実現できます。地方不動産投資の特徴を正しく理解し、適切な戦略で取り組めば、資産形成の強力な手段となるでしょう。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

この記事を監修した人

矢口美加子 矢口美加子 宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級

不動産売買や不動産投資、リフォームなど不動産関連の記事を複数の大手メディアに寄稿。記名記事の実績は310以上。モットーは「初心者にもわかりやすい不動産記事の執筆」。家業で不動産投資をしており、マンション・アパート・戸建て賃貸経営で契約管理を担当。オーナー目線の記事を得意とする。

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