不動産投資の回収期間は何年くらい? 回収の目安や詳しい計算方法を解説
不動産投資を始める際、「投資した資金をどれくらいで回収できるのか」は、多くの方が気になる疑問かもしれません。投資金額を回収するには、それなりの期間が必要です。そこで今回は、利回りとの関係や回収期間の目安、計算方法、回収期間を短くする方法などをまとめました。具体的な資金回収のシミュレーションを用いて解説します。
不動産投資は何年で回収できるもの?
不動産投資の回収は短期間では難しく、中古コンパクトマンションの場合、売却して利益を確定させるとしても、少なくとも5〜10年ほどはかかるものです。
本記事では、アパートとコンパクトマンションそれぞれの回収期間について、シミュレーションをしています。なお、回収期間はあくまでも目安であり、必ずしも「期間が短い=正解」ではありません。売却時に黒字化するケースも多くあるため、個人の目的を踏まえた資産形成の視点を考慮することが重要です。
新築物件と中古物件の違い
新築物件は、設備が新しく快適な住環境を提供できるため、入居希望者を集めやすく当面の修繕費もほとんどかかりません。しかし、新築物件ならではの価値「新築プレミアム」が加わって、購入価格が中古物件と比べて1〜3割ほど高額になりがちです。その結果、資金回収までにより多くの時間を要します。
中古物件には、過去の入居状況や家賃推移などのデータが蓄積されているため、現実的な収支計画を立てやすいメリットもあります。好立地かつ建物のコンディションがよい中古物件を選べば、投資資金の回収をより早期に実現できる可能性があります。
不動産投資を何年で回収できるか計算する3つの指標
不動産投資の回収期間を把握する際には、以下3つのような指標を使うことができます。
- CCR(自己資本配当率)
- PB(資金回収期間)
- ROI(投資収益率)
指標 | 指標からわかること |
---|---|
CCR | 自己資金の回収効率 |
PB | 自己投資額の回収期間 |
ROI | 自己資金含め、投資全体の効率性 |
各指標を活用することで、異なる角度から投資効率を測定できます。
1. CCR
CCRは「キャッシュオンキャッシュリターン(Cash On Cash Return)」の略で、投資した自己資金(自己資本)に対する年間家賃収入(リターン)の割合、つまり自己資金利回りを示す指標です。この数値が高いほど、自己資金の回収効率がよいと判断できます。計算式は、以下のとおりです。
具体例として、以下の条件で計算してみましょう。
- 自己資金投資額:1,000万円
- 年間のキャッシュフロー:120万円
こちらを計算すると、120万円÷1,000万円×100=12となります。つまり、1年間で回収できる自己資金の割合は12%とわかります。年間のキャッシュフローは、年間の家賃収入からローンの返済額や管理費・修繕費などの賃貸経営にかかった費用を引いた金額です。
また回収期間は、次のように計算できます。
この計算式に、自己資金1,000万円と年間家賃収入120万円を当てはめると、8.33と算出でき、約8年4カ月で回収できるとわかります。
上記の数字は満室を想定しての数値です。実際には建物や設備のメンテナンス費用や空室が発生する可能性があります。そのため年間のキャッシュフローや回収額は一定ではないため、指標は定期的な見直しが大切です。
2. PB
PBは「ペイバックピリオド(Payback Period)」の略で、投資額を回収するまでにかかる期間を年数で表した指標です。CCRよりも、具体的な年数を把握するのに役立ちます。計算式は以下のとおりです。
具体例として、以下の条件で計算してみましょう。
- 自己資金投資額:1,000万円
- 年間家賃収入:120万円
- 諸経費:30万円
計算すると、1,000万円÷(120万円-30万円)=11.11となり、投資額を回収するまでにかかる期間が約11年2カ月とわかります。PBの値が低いほど、投資回収にかかる期間が短くなります。ただし、諸経費を低く見積もりすぎると、実際の数字と乖離する可能性もあるため注意しましょう。
3. ROI
ROIは「リターンオンインベストメント(Return On Investment)」の略で、投資した自己資金のみならず借入金額を含めた総投資額に対する、年間の利益の割合を示す指標です。計算方法は、以下のとおりです。
以下の条件で実際に計算してみましょう。
- 総投資額:3,000万円(自己資金1,000万円+借入金2,000万円)
- 年間家賃収入:120万円
- 経費(家賃収入の20%と仮定):120万円×20%=24万円
これを計算すると、(120万円-24万円)÷3,000万円×100=3.2となり、年間の回収率が3.2%だとわかります。ROIの数値が高ければ高いほど回収期間は短くなり、効率のよい投資ができる判断基準の一つになります。
不動産投資に欠かせない利回りとは
不動産投資における利回りは、投資の収益性を判断するうえで基本的な指標です。利回りには表面利回りと実質利回りの2種類があり、それぞれ異なる観点から収益性を測定します。
物件選定の際には、両方の利回りを確認することで収益予測が可能となります。それぞれ詳しく解説しますので、参考にしてみてください。
表面利回り
表面利回りは、購入価格に対する収益率のことで、不動産投資における基本的な収益指標です。物件情報で目にする利回りの多くは、この表面利回りを指しています。計算方法は、以下のとおりです。
以下の条件で実際に計算してみましょう。
- 購入価格:3,000万円
- 年間家賃収入:180万円(月15万円)
表面利回りは、180万円÷3,000万円×100=6%となります。ただし、この数値は維持管理費や税金などの経費を考慮していないため、実際の収益性を判断する際は注意が必要です。
実質利回り
実質利回りは、経費を含めた実際の収益率を表す指標です。計算式は、以下のとおりです。
年間諸経費には、以下のような項目を考慮します。
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費・修繕積立金
- 火災保険料
- 維持管理費(清掃費、設備点検費など)
- ローン返済の利息部分
- 減価償却費
たとえば、以下の条件で実際に計算してみましょう。
- 購入価格:3,000万円
- 購入時の諸費用:100万円
- 年間諸経費:60万円
- 年間家賃収入:180万円(月15万円)
実質利回りは、(180万円-60万円)÷(3,000万円+100万円)×100=3.87%となります。表面利回りよりも低い数値となりますが、より現実的な収益性を示しています。
不動産投資の回収期間のシミュレーション
実際の投資計画を立てる際には、具体的な数字を用いたシミュレーションも重要です。ここでは、一棟アパートとコンパクトマンションのケースで、CCR(自己資本配当率)を用いた回収期間のシミュレーションを行ってみます。
一棟アパートの場合
シミュレーションの条件は、以下のとおりです。
- 購入価格:10,000万円(新築)
- 自己資金:1,000万円
- 賃貸収入:1部屋7.5万円×8室=60万円/月
- ローン:9,000万円(35年)、変動金利2%
- 諸経費:賃貸収入の15%(税金、保険料、修繕費含まず)
この条件での年間収支は、以下のとおりです。
- 年間家賃収入:60万円×12カ月=720万円
- 年間諸経費:720万円×15%=108万円
- 年間ローン返済額:約358万円
- 年間純収益:720万円-108万円-358万円=254万円
CCRを計算すると、254万円÷1,000万円×100=25.4%であり、1年間で回収できる自己資金額は、約25.4%とわかります。また、自己資金回収までにかかる期間は、1,000万円÷254万円=3.93となり、約4年で回収できる計算です。ただし、これは満室時の理想的な状況であり、実際には空室率や予想外の修繕費など上記試算に含まれない支出も考慮する必要があります。
コンパクトマンションの場合
シミュレーションの条件は、以下のとおりです。
- 購入価格: 2,500万円(中古物件)
- 自己資金:400万円
- 賃貸収入:9.6万円/月
- ローン:2,100万円万円(35年)、固定金利2%
- 諸経費:1万円/月
この条件での年間収支は、以下のとおりです。
- 年間家賃収入:9.6万円×12カ月=115.2万円
- 年間諸経費:1万円×12カ月=12万円
- 年間ローン返済額:約83.5万円
- 年間純収益:115.2万円-12万円-83.5万円=19.7万円
CCRを計算すると、19.7万円÷400万円×100=4.93%となり、1年間で回収できる自己資金額は約5%と、アパートとの単純比較では回収期間は長くなります。しかしコンパクトマンションは、1物件に対する回収期間で考えるというより総合的にとらえるのが一般的です。
比較的価格が抑えられている物件を複数購入し、そのうちのまず1件に対して集中的に繰上返済を行います。完済した物件はキャッシュフローが改善され、その完済物件を担保に新たな物件を購入し、規模を大きくしていくという手法となります。
また近年コンパクトマンションは、購入して長期間保有というスタイルに加え、5〜10年後といった中期保有での売却を戦略として取り入れるケースも増えています。
不動産投資の回収期間を短くする5つの方法
不動産投資の回収期間を短縮するためには、以下のような方法が効果的です。
- 資金を減らす
- 家賃を上げて経費をなるべく抑える
- 耐用年数の長い物件を選ぶ
- 家賃以外の収入源を確保する
- 利回りの安定した中古物件を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
1. 自己資金を減らす
自己資金を減らして、金融機関からの借入比率を高めることで、回収期間を短くできます。借入額が増えると回収期間が伸びるように感じられますが、レバレッジ効果を活用する有効な戦略です。
たとえば、物件価格3,000万円の場合、自己資金を1,000万円から500万円に減らすことで、CCRを2倍に高められます。ただし、ローン返済額は増加するため、キャッシュフローの管理に注意が必要です。また、個人の属性(年収や勤続年数、他社からの借入れなど)や購入予定物件によっては、希望の借入額の融資がおりない可能性もあります。
2. 家賃を上げて経費をなるべく抑える
家賃を上げて収入を増やしつつ、支出を抑えることで、回収期間を短縮可能です。ただし、過度な家賃設定は空室リスクを高めるため、近隣相場を十分に調査したうえで慎重に設定する必要があります。また、経費を抑えるために、委託費用の低い賃貸管理会社へ変更すると、自主管理部分が増えてしまいます。結果的に入居者の快適性が損なわれて、退去リスクが高まるかもしれません。
そのため、賃料アップを希望する場合は、入居者のニーズに応える設備投資や内装のグレードアップを検討してみましょう。たとえば、築古物件でも古い浴室をリノベーションすることで、月額家賃を1〜2万円程度上げられる可能性があります。リノベーションによって支出も増えるため、不動産投資会社と相談し、十分な収支シミュレーションを行ったうえで実行しましょう。
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3. 耐用年数の長い物件を選ぶ
鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、木造に比べて耐用年数が長く、維持管理コストを抑えやすい特徴があります。SRC造やRC造の法定耐用年数は47年であり、適切なメンテナンスを行えばさらに長期間の使用が可能です。
築年数が経過しても資産価値の下落が緩やかなため、将来的な売却時にも有利に働きます。建物の耐用年数は、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。
4. 家賃以外の収入源を確保する
家賃以外の収入を増やすことができれば、CCRの数値が高くなり、回収期間の短縮が可能です。たとえば、以下のような副収入が考えられます。
- 物件の敷地内に自動販売機を設置する
- 有料の駐車場や駐輪場をつくって収益を得る
- 敷地内に広告看板を設置する
- 屋上に携帯電話基地局を設置する
など
5. 利回りの安定した中古物件を選ぶ
中古物件は新築と比べて購入価格を抑えられるため、より高い利回りが期待できます。また、東京や大阪、横浜、福岡のような都市部には人口が集中しており、今後の人口増加も見込まれるため、安定した入居率を維持できる可能性が高いといえます。
中古物件は、過去の動向を管理会社や不動産会社のデータを通して把握できるため、空室率を想定しやすいのも特徴です。さらに都心の人気エリアにある物件やリノベーションで物件価値を高めた場合では家賃の値上げも可能な場合があり、物件購入時より売却時の方が値が高くつくこともあります。
修繕費やメンテナンス費を考慮する必要はありますが、それでも回収期間を短くする方法として、利回りの安定した中古物件を狙うのはおすすめです。
不動産投資の回収期間をシミュレーションしましょう
不動産投資の資金回収期間を確認することは、投資戦略を立てるうえで重要な要素の一つとなります。回収期間の計算には、CCR・PB・ROIなどの指標を用いて、多角的な視点から収益性を評価することが重要です。また、表面利回りだけでなく実質利回りも考慮し、より現実的な収支計画を立てましょう。
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