不動産投資物件のリフォーム戦略、築20年以上の収益物件を次々とリフォームしたリノベ戦略とは?
築20年を越えた「築古」の賃貸物件に、部屋の印象を劇的に変えるリフォーム「デザインリノベーション」を施して、空室50%の状態から仲介不動産会社の引き合いが入るまで経営を大幅に改善された不動産オーナー五味さん。RENOSY マガジン編集部では、リフォームを実施した背景や狙い、賃貸経営のコツなどをお伺いしました。
リフォームで築古物件を「借りたい物件」に変身
インタビューさせていただいたのは、三多摩と呼ばれる東京の西側エリア、多摩地域を中心に現在11戸のマンションを所有する五味さんです。
もともと別業種のサラリーマンだった五味さんが不動産業に関わるようになったのは、ご実家に併設された築23年の賃貸マンション(8戸)の運営を始められたのがきっかけでした。
開始時は“よくある”築古マンション
以前から空室が目立ち始めていたそうで、五味さんが運営をスタートした当時は、半数にあたる4戸が空室となっていたそうです。
「8戸とも約20m2のワンルームマンションです。キッチンスペースがあり、バストイレ3点ユニットで、クロスや間取りなどはいわゆる『普通のワンルーム』でした。
空室が出ると、複数の会社に声をかけて原状回復をしていました。何社かお付き合いしている会社があったので、その都度、依頼する会社や職人さんを変えていました」
空室が埋まらない
当時“ビギナー大家”だった五味さんは、物件の運営スタート直後から、苦戦を強いられました。
「周辺物件との価格競争を考慮して少し家賃を下げてみても、すぐには決まらなかったんです。不動産会社に問い合わせてみても、『入居者を探してます』とは言われるけど、口だけの対応でした」
原状回復を繰り返して築年数が経過した「普通」の物件は、仲介不動産会社にとっては、入居希望者に積極的に紹介する物件ではなくなっていたそうです。
また入居者が決まっても、その後の関係がうまくいかないこともあったそうです。
「賃料をただ下げて決まった入居者は、それまでの入居者層とのバランスが取れなくなり、マイナス面が見えてしまうこともありました」
うまくいかないな……と空室のマンションを眺めながら、ある時
「よく考えたら、自分が住みたいようなところじゃないと、誰も借りないのでは?」
という思いが、ふと頭に浮かんだそうです。
物件再生の気づきは自宅のリノベーション
堅苦しく「賃貸経営は入居者目線で考えるべき」と結論づけたというよりは、「築古マンションもリノベーションしたらいいのでは?」とシンプルに思った五味さん。
ちょうどご自宅のマンションをリノベーションされたばかりだった五味さんは、リノベーションを依頼した会社にさっそく相談します。
「その会社は賃貸物件のリノベーションは施工実績がなかったんでしょうね。反応が芳しくなかったんです」
出てきた見積りは、3点セットの水回りを別々にする工事が100万円。その他の居室部分の工事を含めると合計200万円だったそう。
「想像よりかなり高かった」と、五味さんは当時を振り返ります。
どうしたらいいんだろうとネットを検索して、ふと目に入ったのが、ワンルーム専門(当時)のデザインリノベーションを手がける「イエスリノベーション」のホームページでした。
ページに掲載された商品ラインナップは、「55万円」と「65万円」の2パターンのみ(*)。
他社だと水回りの工事なしでも100万円かかるところ、半額でできるとホームページに書いてあり、「この金額でできるの?」と五味さんは驚いたそうです。
ホームページに紹介されていた施工例は、見ているだけで楽しくなる雰囲気で「見た目がすごくいい。これはぜひやってみたい」と思った五味さん。
*2024年4月現在、m2単価2.5万円の定額パック料金のみ。20m2未満の場合は一律20m2として計算(税別)。定額パックに含まれない工事も別途オプションにてご相談可能。
まずは1部屋の内装を一新
五味さんはまず、ホームページで気に入ったグリーンのアクセントクロスが特徴のデザインにしようと、1部屋をリフォームしました。
結果、
「ものすごく綺麗に仕上がっていたんです。それまで経験したことがなかったので、感動しました」
原状回復を依頼したことのある会社とは比較にならないほど、最終的な仕上げが美しかったと言います。そしてリノベーション後、すぐに入居者が見つかったそうです。
「内見に訪れた人に与える第一印象が格段によくなった。これだ!と確信しました」
次々とリノベーション
五味さんは、ご実家に併設されたお部屋を次々とリノベーションしていくことになります。
残りの空室に対してリノベーションを実施、その後も空室が出るたびに実施。そうして賃貸マンション8戸すべてのデザインを一新しました。
築古物件が、「普通の部屋」とは差別化できる新しい部屋として生まれ変わりました。
抽選で入居者を決めるほどに
リフォームをして、入居者がすぐに見つかるようになり、これまで疎遠だった仲介不動産会社から「いまお部屋空いていますか?」と問い合わせがくるまでになったそうです。ときには入居希望者が重なり、抽選で入居者を決めたことも。
問い合わせがくる関係にまでなった要因の一つには、五味さん自身が仲介会社へダイレクトに働きかけを行っていることも関係しているかもしれません。
部屋の写真を載せたチラシを自ら作成し仲介会社に持参、物件の存在をアピールすることもあるそうです。
見栄えがよくなり家賃は上がった
さらに、家賃を周辺相場より「高く設定できる」ようになったそうです。
ただ、これまでより高い家賃に設定ができるかというと、そうではないと五味さんは言います。単純に言えないのは、次のような理由からだと言います。
周辺相場の影響
例えば、2つの部屋があります。
- 10年前からずっと家賃を払い続けてくれている入居者のお部屋
- 10年後に新規の入居者を募集するお部屋
同じ立地の2つの部屋を比べると、10年後に入居者を募集する部屋の方が築年数も経過し、地域差はありますが、周辺の相場に影響されて家賃が下がるのが一般的です。
たとえば、10年前にワンルームが80,000円の家賃相場だったエリアが、10年後には相場が60,000円になったとします。
そうなると、デザインリノベーションをしても85,000円ではさすがに貸せない。でも相場よりは高い値段で、例えば65,000円で貸せる、ということになります。
「リノベーションをして10年前と同じ家賃にできるか?というと、そんなに単純にはいかない。けれど、強気の価格を設定できる」と五味さん。
実際にやってみて、どの程度のラインで家賃を設定すればいいかが、わかったそうです。
リフォームで安定経営
家賃を周辺相場よりも高めに設定できたこと以外にも、よいことが起きたそうです。
それは入居期間が長くなったこと。
以前は、ご実家に併設された賃貸マンションは1年で退去されることも多かったそうですが、いまは4年以上入居される方も多いとのこと。
今年に入り新型コロナウイルスの影響によって引っ越しを余儀なくされた方がいらしたそうですが、空室期間は3カ月を超えることなく、経営は安定しているそうです。
中古区分マンションを3つ購入
築古物件の賃貸経営に勝ち筋を見出した五味さんは、大家業開始からこの10年間で同じ多摩地域にある中古マンションを3つ購入されました。
いずれもリフォームを前提として、築30年以上の築古物件を安く購入されたそうです。
入居者がいる状態での物件購入(オーナーチェンジ物件)のため、リフォームは、購入時の入居者が退去となるタイミングで実施することになります。
現在デザインリノベーションの施工中
お話を伺ったとき(2020年6月18日)にも、オーナーチェンジ物件として購入した物件1件に空きが出たタイミングでした。
デザインリノベーションをこれから実施するということで、退去直後の様子をみせていただいただきました↓
この物件がデザインリノベーションでどのように生まれ変わるのか、楽しみです。
2020年8月3日追記
工事開始から1カ月ほどで、完成されたそうです。完成写真をご紹介します!
シンプルでとても住み心地がよさそうな空間になりました!
既存の設備を用いつつ、棚の取手の色も変わり、アクセントになっていますね!
大家業はほどよい規模で
経営が順調な五味さんに、今後も所有物件数を増やしますか?と質問してみました。
「所有物件を増やすために、法人組織にして従業員を雇うこともやろうと思えばできますが、生き方の問題もあるので、それはしません」
というお返事でした。
自由になる時間を確保して、ボランティア活動などもしたいという五味さん。ほどよい規模で、大家業を継続されるそうです。
サラリーマン時代のスキルを生かしたお仕事もされているそうで、充実した人生を送られている様子がうかがえました。
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