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公開日: 2021.07.12

短期間賃貸借は定期借家で解決できる!? 意外と知られていない定期借家のメリットとは

短期間賃貸借は定期借家で解決できる!? 意外と知られていない定期借家のメリットとは

マンションやアパートなどを貸す、もしくは借りるとき、一般的な賃貸借は「普通賃貸借」で契約することが多く、契約期間が満了しても貸主借主が合意すればそのまま更新(再契約)することができます。そのため、もし貸主が「2年後に契約を終了したい」という希望があっても、入居者が「借り続けたい」という場合は契約終了が困難になることがあります。

そこで、契約期間が満了した場合に更新ができない「定期借家」という制度が利用できます。ここでは、定期借家の内容や制度を利用することによるメリットについて解説していきます。

定期借家とは

定期借家とは、あらかじめ賃貸借の期間が定められた賃貸借契約のことを指します。例えば、契約期間を2年間としている場合は、契約開始から2年経過すると「期間満了により賃貸借契約は終了」となります。

一般的な賃貸借契約(普通賃貸借)の場合では、契約期間を定めていても正当な事由がない限り、オーナー(以下「貸主」という)側から一方的に契約を解除することができません。

ここでの正当な事由とは、「やむを得ない理由で売却しなければならなくなった場合」や「親族の介護などでその居宅に住まなければならない場合」などです。

これに対して、定期借家は、一定の期間(期間満了日から最短6カ月前)を設けて入居者(以下「借主」という)へ通知することで契約期間満了後であれば契約を終了できます(参考:借地借家法第38条)。
 
また、定期借家契約は、書面(公正証書による等書面)で契約しなければ認められないため、「定期建物賃貸借契約書」を作成して契約を締結するのが一般的です。このとき、契約期間の定めがあることと、その期間(例えば、2021年4月1日から2023年3月31日までの2年間)、期間満了後は更新がない旨などを記載し、借主に説明しておかなければなりません。

もし、こうした記載や説明をしていなかった場合は、契約の更新がないことが無効となってしまいます(賃貸借契約自体は有効なので、借主が契約更新を主張できるようになる)。なお、定期借家の契約書は、不動産仲介会社が作成して借主に重要事項説明を実施することが多いため、こうした専門的な部分は仲介業者に任せておいた方が安心できます。

オーナー側のメリット

定期借家は、普通賃貸借とは異なりオーナー側に大きなメリットがあります。主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

賃貸する期間を指定できる(1年未満の契約も可能)

例えば、普通賃貸借は、いわゆる借主保護を目的とした借地借家法の規定により、貸主は自由に「貸したい期間」を決めることができません。これでは、貸主は「転勤の間だけ貸したい」といった気軽な賃貸をすることができず、物件が空き家化してしまいます。

これに対して、定期借家はあらかじめ契約期間を定めて終了することができるため、貸主にとっては「貸しやすい」契約といえるでしょう。また、普通賃貸借契約で契約期間を1年未満とした場合は、「期間の定めのない契約」とされてしまうのに対し、定期建物賃貸借契約(定期借家)は1年未満の期間指定も有効です。

使わない間だけの賃料収入が期待できる

前述の通り、定期借家は「使っていないときだけ貸す」ということが可能になるため、その期間だけの賃料収入が期待できます。こうした部分も普通賃貸借にはない定期借家特有のメリットといえます。

賃料の改定がしやすい

通常の賃貸借(普通賃貸借)では、借地借家法第32条(以下、「法第32条」という)の「借賃増減額請求権」が適用されることから、以下の事由があるときは賃料の改定が認められる、とされています。

(1)土地・建物に対する租税(例えば固定資産税)の増減
(2)不動産価格の上昇もしくは低下その他の経済情勢の変動
(3)近傍同種の建物の賃料と比較して不相当となったとき

逆にいえば、上述のような事由がなければ気軽に賃料改定をすることができません(一定の期間賃料増額をしない、という特約は有効)。つまり、貸主が賃料増額をしたくても、賃借人にオーナーの一方的な要求を受け入れさせることはできないのです。

ところが、定期借家は法第32条の規定を適用しない条項(借地借家法第38条7項)があるため、賃料改定の特約が有効になります。

例えば、5年間の定期建物賃貸借契約をする際に、「賃料は、当初2年間は1カ月金100,000円也とし、2年以後から期間満了までは貸主と借主が協議して公正な市場賃料相当額に改定することができるものとする。」といった特約は有効です。

念のため但書として、「賃料改定の協議が調わなかったときは、法第32条の賃料増減額請求ができる」といった旨を入れておくと、紛争に発展するのを未然に防げる可能性があります。

入居者側のメリット

定期借家のメリットは、オーナー側だけではなく入居者側にも大きなメリットがあります。主な理由としては以下の通り。

短期間の契約ができる

先述したように、あらかじめ期間を決めておくことで短期間での契約ができます。例えば、「単身赴任のため半年や1年間だけマンションを借りたい」といったことが可能です。

一般的な賃料より低い可能性

定期借家は、貸主の都合で契約期間を定めているケースが多いため、家賃が一般的な賃料相場よりも低めに設定されていることがあります。「この期間だけ貸したい・借りたい」といった貸主借主双方の希望が合致すれば、普通賃貸借よりもメリットは大きい場合があるのです。

良好な居住性が期待できる

定期借家は、転勤などの理由でオーナーが自分の居住用として使っていた物件を貸しているケースが多く、一般的な賃貸用マンションよりも居住性が良い場合があります。例えば、マンション躯体の構造や気密性、貸室内のグレードが一般の賃貸マンションよりも高い、専有面積が広いといった可能性が挙げられます。

一般的な賃貸借では、投資家がはじめから「賃貸用マンション」として建設しているため、分譲マンションに比べると構造や気密性、防音性などが低い場合も。ところが定期借家では、分譲マンションが賃貸として貸し出されているケースがあるため、普通賃貸借ではあまり見られないようなメリットがあります。

定期借家はどれだけ認知されている?

ここまで定期借家の内容やメリット等について触れてきましたが、世間一般ではどれくらい認知されているでしょうか。定期借家の認知度については、国土交通省から調査結果が発表されています。

定期借家制度の認知

定期借家制度の認知引用: 令和2年度 住宅市場動向調査 報告書|国土交通省

国土交通省の調査では、平成27年度から令和2年度までの間、定期借家制度について「知らない」が回答全体の過半数を占めており認知度が低い結果になっています。

つまり、マンション・アパート等の貸主や借主となる人の多くが、定期借家について認知していない状況です。これでは「半年間だけ貸したい・借りたい」という希望がある場合でも、定期借家制度を知らなかったばかりに、仕方なく「1年以上の普通賃貸借契約をする」といったケースが発生してしまいかねません。

きちんと定期借家制度の内容を把握しておくことで、貸主借主の希望に沿った契約内容にできる可能性が高まります。

定期借家の利用状況について

それでは、実際の定期借家制度の利用状況についてはどうでしょうか。国土交通省の調査結果を見てみましょう。

賃貸借契約の種類

賃貸借契約の種類引用:令和2年度 住宅市場動向調査 報告書|国土交通省

上の調査結果を見ると、賃貸借契約のほとんどが「普通借家」であることがわかります。例えば、令和2年度では、全体のわずか2.5%しか「定期借家制度」が利用されていません。

もちろん、貸主借主双方の需要にもよりますが、定期借家制度の認知度の低さが大きく影響しているのではないでしょうか。

企業間の賃貸借でも使われている

定期借家は、企業間の賃貸借でも利用されることがあります。

例えば、事務所兼社宅として一棟商業ビルを所有していた企業が経営状況の変化によりビルを売却することになった場合です。ビルを売却した企業は、売却後も2年間だけそのビルを使用し続けたい、という希望があるためビルの買主から2年間だけ借りる、といったケースがあります。こうした場合に、定期借家制度を利用して賃貸借契約が締結されることになるのです。

先述したように定期借家は、普通賃貸借では認められていないような1年未満の契約期間指定が可能で、期間が満了すれば確実に契約を終了できる、といった特徴があります。そのため短期間での賃貸借契約として利用しやすく、逆に長期の場合であってもあらかじめ期間指定ができるのは貸主借主双方にとって安心できる部分です。

「この期間だけ貸したい・借りたい」という希望がある方は、定期借家での賃貸借を検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

長野久志

不動産専門のライターとして活動。元不動産売買仲介業者であり宅地建物取引士。不動産実務の知識と経験を生かした原稿の作成を行っている。主に不動産売買や不動産投資などについて執筆。

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