不動産投資でよくある詐欺の手口は? 回避方法や騙されたときの相談先も紹介
「不動産投資に興味があるが、詐欺の話もよく聞くので不安がある」「詐欺に遭わないための知識を身につけてから始めたい」このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
投資に絡めた詐欺では、投資歴が長い人でも詐欺被害に遭う事例も聞かれます。
本記事では、不動産投資詐欺の手口・詐欺被害に遭う人の特徴、詐欺被害に遭わないためのポイント、万が一詐欺に遭った場合の相談先などを解説します。
不動産投資のよくある詐欺の手口8選
不動産投資は大きな利益を生み出す可能性がある一方で、詐欺の標的にもなりやすい分野です。代表的な詐欺の手口には、以下の8つが挙げられます。
- 手付金詐欺
- 二重譲渡詐欺
- 二重売買契約(融資詐欺)
- 一法人一物件スキーム
- デート商法
- 満室詐欺
- 海外不動産投資詐欺
- 住宅ローン投資詐欺
それぞれ詳しく解説します。
1. 手付金詐欺
手付金詐欺は、物件購入の意思表示として支払う手付金を騙し取って姿をくらます手口です。詐欺師は実在しない物件や権利のない物件を売りに出したり、実際は問題のある不良物件を優良物件と偽ったりします。
「この物件は人気があるので早く決めないと」などと焦らせて手付金を支払わせ、連絡が取れなくなるのが典型的なパターンです。
このような詐欺から身を守るには、相手の言動に不自然な点がないか、手付金の金額が相場より高くないかなどを冷静に判断することが重要です。
2. 二重譲渡詐欺
二重譲渡詐欺は、同一の不動産を複数の人に売却する悪質な手口です。最初に所有権の移転登記を済ませた買主だけが所有権を得られるため、後から買った人は物件を取得できず、支払ったお金も戻ってこない可能性があります。
被害に遭わないためには、事前に登記簿を自ら取得して現在の所有者を確認し、購入決定後はできるだけ早く所有権移転の登記手続きを行うことが効果的な対策です。また取引相手が宅建業者かどうかを調べるには、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認することができます。
3. 二重売買契約(融資詐欺)
二重売買契約とは、契約書に記載された金額と実際の取引金額が意図的に異なるようにする詐欺手法です。代表的なケースでは、金融機関からより多額の融資を受けるために実際より高額な契約書を作成します。
たとえば、実際の契約書面では5,000万円の物件であるのに対して、金融機関向けに6,000万円の記載がある契約書面を準備します。「なるべく多く融資を受けられると、家電の買い替えや引っ越し費用などにも使える」などと言われた場合には、注意が必要です。
金融機関がこの事実を把握すると、融資詐欺とみなされて、一括返済を求められる可能性があります。契約書の内容は隅々まで確認し、このような提案には決して応じず、弁護士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。
4. 一法人一物件スキーム
一法人一物件スキームは、物件を購入するたびに新しい法人を設立し、その法人名義で借入れを行う手法です。この手口では、不動産オーナーはすでに複数の法人を持っていることを隠し、あたかも初めての融資のように装います。本来なら個人や既存の法人では融資がそれ以上受けられない状況でも、新たな法人を作ることで審査をクリアし、多額の借入れが可能です。
金融機関がこの事実を把握した場合、融資の即時停止や一括返済の要求、さらには詐欺罪や偽計業務妨害罪(偽計を用いて人の業務を妨害する行為)として刑事告訴されるリスクがあります。このような違法なスキームを勧める業者には、決して関わらないようにするのが賢明です。
5. デート商法
デート商法は、マッチングアプリや婚活サイトを利用して詐欺師が近づき、恋愛感情を利用して不動産投資を勧める手口です。親密な関係を築いたあとで、「将来の資産形成のため」「結婚して幸せになるため」などと持ちかけ、実際は収益性の低い物件を高値で売りつけます。
恋愛感情によって冷静な判断力が奪われている状態を巧みに利用するため、被害者は通常なら気づくはずの問題点も見逃してしまいます。恋愛関係にある相手から投資の話が出た場合には、いったん距離を置いて冷静になることが大切です。
6. 満室詐欺
満室詐欺は、実際は空室や家賃滞納者が多い物件を「全室入居中で家賃収入が安定している」と偽って売りつける手口です。特にほかのオーナーから引き継ぐオーナーチェンジ物件で多く見られます。
すぐに家賃収入が得られることや、新たな入居者募集のための仲介手数料がかからないなどのオーナーにとってのメリットを悪用し、高値で販売しようとします。実際には入居者がいないにもかかわらず、知人や関係者を一時的に住まわせて満室を装う悪質なケースも珍しくありません。
満室詐欺に遭うと、想定していた家賃収入が得られず、ローンの返済が困難になる可能性があるなど、さまざまなリスクが発生します。こうした詐欺を見抜くには、入居者の入居時期や家賃支払い履歴を詳細に確認することが効果的です。また実際の物件を訪問し、本当に人が住んでいるかを確かめることも重要です。
7. 海外不動産投資詐欺
海外不動産投資詐欺は、海外の不動産を「高利回り」「確実な値上がり」などとうたって販売する詐欺です。現地の法律や市場状況がわかりにくく、実物確認も容易ではないため、被害に遭いやすい手口といえます。
詐欺師は美しい写真やパンフレットを見せ、「日本では得られない高い利回り」「政府保証付き」などの魅力的な条件を提示します。しかし実際には存在しない物件や、写真と全く異なる物件であるケースも少なくありません。
海外不動産の購入を検討する際は、現地の不動産法や税制についても理解を深めることが重要です。また不動産投資の経験が浅い方は、いきなり海外不動産への投資は避けるべきでしょう。可能であれば、現地を直接訪問して物件を確認することも有効です。
8. 住宅ローン投資詐欺
住宅ローン投資詐欺は、投資目的であるにもかかわらず、自己居住用として住宅ローンを申請する不正な融資スキームです。住宅ローンは投資用ローンより金利が低く、審査も通りやすいため、不動産業者が「みんなやっている」「銀行にバレない」などと勧めるケースがあります。
「最初の数カ月だけ住んだことにして、あとは賃貸に出せば問題ない」などと説明し、虚偽の申告をさせるパターンもあります。金融機関にバレた場合はローンの一括返済を求められるだけでなく、融資詐欺として刑事責任を問われる可能性もあります。
このケースでは不動産会社だけでなく、融資を受けた投資家自身も加害者とみなされます。虚偽の申告を行う投資スキームには、決して手を出さないようにしましょう。
なお上記1〜8のような不動産投資詐欺の手口を紹介する動画(Vimeo)が、宅地建物取引業保証協会のホームページで紹介されています。
参考:テーマ2 不動産投資詐欺|消費者向け情報提供|公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会
詐欺を疑った方がよい不動産会社の怪しい言動
ここでは特に注意すべき不動産会社の怪しい言動を紹介します。
- 「必ず儲かる」
- 「将来値上がりする」
- 「クーリングオフできるから安心」
これらの言動が見られた場合は詐欺の可能性を疑い、取引を慎重に進めるようにしましょう。
1. 「必ず儲かる」
不動産投資において利回りの高さは重要な指標ですが、「利回りが高くて“必ず”儲かる」といった言葉を信用してはいけません。不動産投資には空室、家賃下落などの問題が発生する可能性があり、リスクがないということはありません。一般的に周辺相場に比べて明らかに高利回りの物件には、なんらかのリスク要因が隠されている可能性があります。
たとえば、以下のような問題を抱えていることが少なくありません。
- 築年数が古い
- 立地条件が悪い
- 入居率が低い
- 管理状態が悪い など
こうした問題点を伏せて高利回りだけを強調する業者は要注意です。重要なのは、なぜその物件の利回りが高いのかを明確に説明してもらうことです。
また「絶対」「必ず」などの断定的な表現を使う業者は、宅地建物取引業法で禁止されている不当表示を行っている可能性があります。利益を確約するような言動が見られた場合は、その不動産会社との取引を再考すべきでしょう。
2. 「将来値上がりする」
「将来“必ず”値上がりが期待できるので、今買っておけば得をする」などの言葉で勧誘してくる不動産会社には、警戒が必要です。不動産市場は景気や人口動態、政策などさまざまな要因の影響を受けるため、将来の値動きを確実に予測することは不可能です。
過去のデータや開発計画などを根拠に値上がりの予測はできますが、それはあくまで可能性の話であり、確実なものではありません。宅地建物取引業法では、不確実な事項についての断定は禁止されています(※)。このような勧誘方法を用いる業者は法律違反を犯している可能性が高いため、取引を避けるべきです。
不動産投資の出口戦略。成功するための4つの手法
※参考:不動産取引における 違法な勧誘行為について|東京都 住宅政策本部
3. 「クーリングオフできるから安心」
「クーリングオフできるから安心して契約してください」などと急かす不動産会社には、注意が必要です。宅地建物取引業法上、クーリングオフは必ずできるわけではなく、適用されるケースが限られています。
不動産会社の事務所以外の場所(喫茶店や自ら指定していない自宅、勤務先など)で契約した場合には、原則クーリングオフが適用されます。しかし以下のケースでは、クーリングオフが適用されません。
契約場所 |
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期限 |
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悪質な業者はこの法律の抜け穴を利用し、「クーリングオフができる」と安心させつつ、実際には適用されない状況で契約を結ばせようとします。契約を急かす言動や、クーリングオフについて曖昧な説明しかしない業者とは取引を避け、契約前に必ず適用条件を確認しましょう。
国土交通省の解釈によれば、実際にトラブルが発生した際には、どちらが申し出たか否かについて立証が難しい場合があるため、契約書や申込書等に顧客が自宅等を契約締結等の場所として特に希望した旨を記載することが望ましいとされています(※)。
※参考:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(P30)|国土交通省
不動産投資詐欺を行う会社の共通点
不動産投資詐欺を行う会社の共通点を事前に知っておくと、悪質な業者を見分け、被害を未然に防ぐことが可能です。代表的な共通点は、以下の3つです。
- おとり広告を表示している
- メリットしか伝えない
- 事務所以外で話そうとする
詳しく解説します。
1. おとり広告を表示している
おとり広告とは、実際には取り扱っていない物件を意図的に広告掲載する手法です。すでに成約済みの人気物件を掲載するケースや、実在しない架空の物件を載せるケースなどがあります。
この手法の目的は、魅力的な条件の物件情報を使って問い合わせや来店を促し、実際には「その物件は先ほど契約が決まった」と伝えて、同じような条件の別物件への契約を誘導することです。おとり広告は、違法行為として宅建業法で明確に禁止されています(※)。
ただし、不動産は一点ものであり、話を聞きに行ったタイミングで本当に物件がなくなるケースも珍しくありません。見分けるポイントとして、同様のパターンが繰り返される場合や、代替物件の条件が明らかに劣る場合は注意が必要です。
※参考:いわゆる「おとり広告」等の禁止の徹底について|国土交通省
2. メリットしか伝えない
不動産投資詐欺を行う会社は、物件のメリットやよい点ばかりを強調し、デメリットやリスクについては意図的に触れない傾向があります。「絶対に儲かる」「こんな状態のよい物件なかなか出ない」などの耳障りのよい言葉ばかりを使い、断言的な表現を使うことが多いです。
取引を検討する際は、自らデメリットやリスクについて積極的に質問してみることが大切です。このような質問に対してはぐらかしたり、不十分な回答しかしなかったりする業者は要注意といえるでしょう。
3. 事務所以外で話そうとする
宅建業免許を取得するためには、一定の条件を備えた事務所を構える必要があります。そのため、独立した事務所を持たず、いつも喫茶店やファミリーレストランなどの公共の場所に呼び出す業者には警戒が必要です。
正規の事務所を持たない業者は、トラブル発生時にすぐに姿を消してしまう恐れがあり、信頼性が大きく欠けます。取引前に必ず相手の事務所を訪問し、宅地建物取引業者票が掲示されているかを確認することが重要です。
不動産投資の詐欺を避ける3つの方法
不動産投資の詐欺被害を避けるためには、以下の方法が効果的です。
- 不動産会社の実績や評判を確かめる
- 不動産投資の基礎知識を身につける
- 購入物件の契約内容をよく確認する
それぞれ詳しく解説します。
1. 不動産会社の実績や評判を確かめる
信頼できる不動産会社を見つける際には、以下のような項目を確認しましょう。
- 業歴
- 宅地建物取引業の免許番号
- サービス内容(不動産を販売して終わりなのか、出口戦略まで考えてサポートしてくれるのか)
- 管理物件数
- 口コミ、お客様の声
- SNSでの発信 など
宅地建物取引業の免許番号は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。同じく国土交通省が運営する「ネガティブ情報等検索サイト」では、過去の行政処分の履歴を確認できるので、こちらも参考になるでしょう。
口コミを確認することで客観的な評価がわかりますし、友人や知人で不動産投資の経験者がいれば、その業者に関する情報を聞いてみるのも有効です。
2. 不動産投資の基礎知識を身につける
自分自身で不動産投資に関する書籍を読んだり、セミナーに参加したりして基本的な知識を身につけましょう。知識を身につけることで、詐欺から身を守れるだけでなく、投資の成功率アップにもつながります。
最近ではSNSやブログで実際の投資家が経験談を発信しているケースも多く、生の情報として参考にできます。ただし無料セミナーなどでは、参加者に強引に契約を迫るような業者もいるため、主催者の信頼性を事前に確認することが大切です。
3. 購入物件の契約内容をよく確認する
購入予定物件の契約内容や登記情報などを事前に確認することが重要です。不動産投資には専門的な内容も多いため、不安な場合には、弁護士などの専門家にリーガルチェックを依頼することも検討しましょう。
実際に物件を訪れ、状況などを自分の目で確認してみることも有効です。
不動産投資の詐欺に遭ったときの相談窓口
不動産投資の詐欺に遭った際の相談窓口は、以下のとおりです。
- 消費生活センター
- 宅地建物取引業保証協会
- 弁護士
それぞれ詳しく解説します。
1. 消費生活センター
不動産投資詐欺の被害に遭ったと感じたら、まずは消費生活センターに相談するのが有効です。消費生活センターは、都道府県や市区町村に設置されている公的機関で、消費者と事業者間のあらゆるトラブルに関する相談を受けつけています。消費者庁が所管する国民生活センターと連携し、地方自治体が運営しているため、公正な立場からのサポートが期待できます。
全国共通の消費者ホットライン「188」に電話をかけると、消費生活センターと連絡を取ることが可能です。相談は無料で行えるため、被害の程度に関わらず気軽に利用できます。
2. 宅地建物取引業保証協会
不動産取引における詐欺被害の場合、宅地建物取引業保証協会への相談も効果的です。宅地建物取引業保証協会とは、宅建業を営む会社が所属できる団体のことです。
詐欺行為を行った不動産会社が宅地建物取引業保証協会に所属していた場合、同協会に申し出ることで問題解決のサポートを受けられます。調査の結果、詐欺被害が認められれば、一定額の弁済金が支払われる可能性もあります。
ただし、この保証制度を利用するには、相手の不動産会社が協会に所属していることが前提条件です。
3. 弁護士
不動産投資詐欺のような法的なトラブルでは、最終的に弁護士への相談が問題解決の鍵となります。法律の専門家である弁護士は、詐欺の事実関係の整理から民事訴訟の提起など、包括的な法的支援を提供してくれます。
弁護士探しに悩む場合は、国が設立した法律支援法人の「法テラス(日本司法支援センター)」の利用を検討してみましょう。法テラスでは法律相談や弁護士の紹介を行っており、資力の乏しい方には費用面での支援制度もあります。初回相談は無料の場合も多いので、詐欺の疑いを感じたら早めに相談することが大切です。
不動産投資詐欺の手口を理解したうえで信頼できる会社を選ぼう
不動産投資詐欺には、手付金詐欺や二重譲渡などさまざまな手口があり、初心者だけでなく経験者も被害に遭う可能性があります。詐欺を行う会社には「おとり広告の掲載」「メリットだけを強調」「事務所以外での商談」などの共通点があります。
詐欺被害を避けるためにも、不動産会社の実績・評判の確認や不動産投資に関する基礎知識を身につけましょう。万が一詐欺に遭った場合には、消費生活センターや宅地建物取引業保証協会、弁護士などの専門家になるべく早く相談することが大切です。
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