不動産投資の出口戦略。成功するための4つの手法
不動産投資で成功するためには出口戦略についても重要になってきます。そこで本記事では出口戦略を描きやすい物件の特徴から、マンションタイプ別の出口戦略、譲渡の際の税率、出口戦略を成功させるための考え方や手法まで詳しく紹介します。
不動産投資の出口戦略とは
不動産投資には、主に2通りのキャッシュポイント(収益を得る機会)があります。それは、賃貸マンションや賃貸アパートを運用することで継続して得られる「家賃収入」と、物件を売ったときに得られる「売却益」です。一般的な不動産投資の用語として、毎月継続して得られる家賃収入をインカムゲイン、売却益をキャピタルゲインといいますが、この記事のテーマである「出口戦略」は、このキャピタルゲインを指します。
原則として、建物には耐用年数(使用可能期間)というものがあります。投資用の賃貸マンションの躯体(くたい)構造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造等が一般的ですが、投資用の収益物件を買ったときに、いつまでその建物を良好な状態で維持できるでしょうか。
例えば、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数(財務省が定めている資産に応じた耐用年数)は47年です。この鉄筋コンクリート造の賃貸マンションを新築時から30年経過している中古の状態で購入した場合、残り約20年で建物の資産価値は一般的に大幅に低下してしまいます。さらに建物の補修頻度が増え、定期的な大規模修繕等も必要なため、マンションを維持するための費用はどんどん大きくなります。年数が経過するごとに、こうした「負」の部分が拡大してしまうため、不動産投資家は、それまでに「売り抜ける」ことを考えています。そして、売り抜けるときには同時に売却益も得られるように、物件を買う前から戦略を立てておくのです。
これを「出口戦略」といいます。
不動産投資の出口戦略の描きやすい物件の特徴
建物は経年劣化によって不動産としての資産価値が低下していきます。建物が古くなれば賃料相場にも影響してくるため、10年後も同じ家賃収入が得られるとはかぎりません。不動産投資家は、どのタイミングで売却するのか、いくらで売り抜けるのか、といった着地予想をしてから物件を購入するケースが多くなっています。
では、不動産投資の出口を予想するためにはどんな点に気を付けておくべきなのでしょうか。出口戦略のチェックポイントを以下の7つにまとめました。
1. きちんと管理されている
建物の管理が悪い状態では、リフォームをしなければ入居者がつきにくくなるため余計な費用がかかります。例えば空室部分のリフォームと建物の外壁塗装などで500万円の費用がかかることになれば、それだけ利回りも下がってしまいます。投資家が物件購入を判断するときは、表面利回りだけでなく、物件取得にかかるすべての費用を計算して実質利回りで投資計画を立てるのが一般的です。
2. 修繕計画や積立金が適切に運用されている
修繕計画と修繕積立金に関しても同じで、きちんと修繕計画通りに実行されていなければ建物の管理状態を良好に保つことはできません。物件購入前に修繕計画の状況を確認しておく必要があります。
一棟マンションやアパートなどは、長期修繕計画によって10~15年ごとに大規模修繕を実施するケースが多いです。もし計画通りに大規模修繕が行われていなければ、物件購入後に莫大な修繕費用がかかってしまう可能性も。また、物件の所有者が管理費や修繕積立金を滞納している場合もあるので、あらかじめ管理会社や不動産仲介業者に確認しておくことが大切です。
3. エリアのマーケットニーズに合った戸数と間取り
不動産投資の対象物件があるエリアに賃貸需要があるかどうかをチェックします。不動産ポータルサイトを利用すれば簡単に確認できます。同じエリア内でどのくらい賃貸物件があるのか、単身者向けか、ファミリー向けか、などを調査していきましょう。単身者向けはワンルームタイプ、ファミリー向けであれば2LDK~3LDKの間取りが一般的。
また、物件価格に対して貸室が何戸あるのか、というのも重要です。貸室の戸数はリフォーム費用や直接賃料収入に影響してくるからです。
4. 容積率や高さ制限に余裕がある
容積率とは、土地の敷地面積に対して建物の延べ床面積が占める割合のことです。例えば、容積率が200%の用途地域内で、土地面積が500m2の宅地の場合は、延べ床面積が1,000m2までの建物が建築可能になります。
高さ制限は、周辺の建物に対する環境を妨げないように建築物の高さを制限することで地域の日照・通風を良好に保ち、一定時間以上の日影ができないようにしています。
建物は経年劣化していくため、築年数が古くなれば資産価値が低下していき、耐用年数を超えてくると建て替えも検討しなければなりません。建物の耐用年数は建築構造によって異なりますが、築40~50年のタイミングで建て替えが必要になるケースがあります。
既存の建物が容積率や高さ制限のギリギリの範囲で建築されていた場合は、建て替えの際に制限がかかり、より大きな建物を建てることができません。せっかく建て替えるのに貸室を増やすことができなくなる可能性があるのです。
容積率は、用途地域や前面道路の幅員によって決定されるため、物件情報に必ず記載されています。物件購入を検討する段階で、現況の建物の延べ床面積を見て、土地の敷地面積に対する割合を確認しておきましょう。
5. 売却価格が予測しやすい
物件を買うときの築年数や建築構造、エリア内の不動産相場などから将来的にいくらで売却できそうかを予測します。例えば築20年の鉄筋コンクリート造の一棟マンションを購入した場合、賃貸需要のあるエリアであれば10年後でも購入したときとあまり変わらない価格で売却できる可能性があります。しかし、同じ築20年でも、木造の一棟アパートだった場合はどうでしょうか。
木造の法定耐用年数は22年ですので、築20年の木造アパートを10年後に売却するとなれば、ほとんど土地の価格でしか売れないかもしれません。
不動産投資での出口戦略を考えるときは、建物の資産価値の低下も考慮に入れて予測を立てる必要があるのです。
6. 売却価格がローン残債を上回る可能性が高い
不動産を購入するときは、金融機関のローンを利用する場合が多いです。不動産投資の出口として売却するときに、ローンの残債よりも安い価格でしか売れないようであれば、足りない分を手出しで補填しなければならなくなります。どのタイミングで売却すればローン残債よりも高く売れてキャピタルゲイン(売却益)を得られるのか、しっかりとシミュレーションしておくことが大切です。
7. 入居率が安定している
不動産投資は、家賃収入によるインカムゲインを得ることができますが、入居率が低ければそれだけ収入も減ってしまいます。物件を検討する段階で、現況の入居率がどれくらいなのかを確認しておきましょう。
不動産仲介業者からもらえるレントロールを見れば入居状況や貸室の賃料がわかります。もし入居率が悪い場合は、管理会社の客付け状況を仲介業者に訊いてチェックしておくとよいでしょう。管理会社によっては客付けをきちんと行っていない場合があるからです。
出口戦略は、インカムゲインとキャピタルゲインの両方の視点から考えます。年間賃料収入×経過年数に加えて売却益によるメリット、物件購入時と売却時にかかる諸費用なども計算して出口を考えていきましょう。
マンション投資とアパート投資の出口戦略
マンション投資には、区分タイプと一棟タイプの2つがあります。区分タイプとは、主に単身者向けワンルームマンションのことをいい、初期投資にかかる費用が低めなので初心者でも参入しやすいのが特徴です。
一棟マンションは、価格が数千万円から数億円になる物件が多く初期投資費用は大きくなりますが、区分マンションの何倍もの家賃収入が期待できます。
アパート投資も同様に一棟アパートを指す場合が多く、貸室が複数あるため家賃収入もより大きくなります。
出口戦略を考えるときに気をつけたいのが、建物の構造です。先述したように、建築構造によって耐用年数が異なるため、経過年数による建物資産価値の低下に大きく差がでてきてしまいます。マンションは鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の場合がほとんどなので、法定耐用年数は47年と長めです。ところが、アパートの場合は木造であることが多く、法定耐用年数は22年と短め。
物件購入時の築年数から考えて、まだ耐用年数に余裕があれば出口戦略も立てやすいのですが、もし築古の木造アパートであれば売却時は建物を解体して更地にしなければ売れにくくなる可能性もあります。
マンション投資とアパート投資では、それぞれ出口戦略の立てかたが異なる場合があるので、不動産仲介業者に相談しながら事前にシミュレーションをしておいたほうがよいでしょう。
マンションタイプ別の出口戦略マトリクス
マンションのタイプによって価格やリスクが高い物件、価格が安くリスクも低い物件などさまざまなものがあります。それぞれメリット・デメリットも異なるので、タイプ別でご紹介していきます。
1. 区分マンションVS一棟もの
区分マンションは、東京都内でもワンルームタイプであれば物件価格が1,000万円~3,000万円となっており、売買しやすい価格帯なのが特徴です。不動産ポータルサイトにも、オーナーチェンジ物件としてよく売却に出ています。特に入居者が居住中であれば買い手がつきやすいので、出口戦略の計画通りに売却できる可能性が高いです。
一棟マンションの場合は売買価格が高くなってきますが、入居率や利回り次第では売りやすい物件になります。逆に、空室が多く建物の管理状態が悪ければ価格を低めに設定しないとなかなか売れない可能性も。
一棟マンションは貸室が複数あることから空室リスクの分散がしやすく、入居率が悪い場合は客付けが強い管理会社に変えることで改善するケースもあります。
2. 中古マンションVS新築マンション
指値を入れることで相場よりも安く買える可能性があるのが中古マンションの大きな特徴です。指値が通ればより大きな利回りが期待できるため、キャピタルゲインの利幅が広がります。ただし、築年数の経過による建物修繕費用の負担増加や家賃相場の低下などといったリスクもあります。
新築マンションは、中古マンションとは異なり初期投資に多くの資金が必要になりがちですが、出口戦略を描きやすく早期の売却によるキャピタルゲインも狙えるのがメリットです。ベテラン投資家の中には、安く購入した土地の上に新築マンションを建設し、入居者をつけた後そのまま収益物件として売却する人もいます。
エリア選定さえ間違わなければ、新築マンションは出口戦略を描きやすい傾向にあります。
3. 築浅マンションVS築古マンション
不動産業界では、築年数が浅いことを築浅、築年数が古いことを築古と略します。
築浅マンションの場合は、まだ建物や設備などが新しいため修繕費用があまりかからないのが特徴です。建物が新しくキレイな状態なので、入居者がつきやすいのも大きなメリット。
築古マンションは、建物の老朽化を理由に指値を入れることで購入価格を抑えやすく、高い利回りでの賃貸経営が期待できます。高利回りが確保できていれば賃料収入を多く得られるので、売却時は無理のない価格設定で早期売却がしやすくなるのも特徴です。
短期譲渡と長期譲渡の税率
不動産を売却したときに利益を得た場合は譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は、不動産を売却した年の1月1日の時点で、所有期間が5年を超えていたかどうかによって税率が異なります。
区分 | 所得税 | 住民税 | 所有期間 |
---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 5年超 |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 5年以下 |
参照: 国税庁 土地や建物を売ったとき
譲渡所得税には所得税と住民税の両方が課税されるため、長期譲渡所得と短期譲渡所得では税率に19%もの差があります。出口戦略を検討する際には、物件の所有期間も考慮しておいたほうがよいでしょう。
不動産投資で出口戦略を成功させるための4つの考え方・手法
ずっと同じ家賃収入で賃貸経営が続けられるとはかぎりません。建物の老朽化による家賃相場の低下や修繕費の負担増を考えると、解体せざるを得なくなる前に売却しておいたほうがリスクは低くなります。物件を購入する前から出口についても精査しておくことが大切です。
では、出口戦略を成功させるためにはどうすればよいのでしょうか。ポイントとして以下の4つにまとめました。
1. 将来の人口動向や需要を考える
購入対象の物件があるエリア内で、将来的な人口増減をチェックしてみましょう。例えば、「東京都 人口動態」で検索すれば、人口の統計データを見ることができます。
物件が所在する自治体がwebサイトで人口動態の詳細なデータを公開している場合もあるので、できるだけチェックしておくことをおすすめします。
2. 不動産の売却のタイミングを考える
先述したように、長期譲渡所得と短期譲渡所得によって課税される譲渡所得税が大きく変わるため、「物件を購入してから5年」というのがまず1つの売却タイミングとして考えられます。
また、10~15年ごとに行う大規模修繕の前に売却する、売却代金がローン残債を上回るタイミングで売却する、なども売却タイミングとしてのポイントとなります。
3. 複数の会社に査定を依頼し、査定額の根拠を比較する
出口を成功させるためには、物件がいくらで売却できるのかを把握しておかなければなりません。不動産相場は、路線価や収益還元法などを利用すれば自分でも調べることができますが、ある程度の知識が必要になってきます。
売却価格の査定は不動産会社が無料で行ってくれますので、プロに任せてしまったほうが早くて確実です。売却査定は複数の会社に同時に依頼することができるので、相見積もりをとって比較してみましょう。
4. 類似物件の売却実績を比較する
対象の物件と同じエリア内にある、条件が似た物件情報をチェックして、売却実績を比較することも重要です。現状売りに出されている物件は不動産ポータルサイトで確認でき、過去の成約事例は「レインズマーケット」から一覧として見ることができます。ただし、成約した物件の詳細を見ることはできませんのでご注意ください。
物件購入前にしっかりと確認を
不動産投資において出口戦略を同時に考えておくことは、将来的なリスクを回避することにもつながります。逆に、出口が見えずうまくいかないような物件は買うべきではありません。収益物件の利回りだけを見るのではなく、建物の管理状態、修繕計画の状況、総戸数と間取り、容積率なども精査しておきたいところです。
これらのポイントは、収益物件を転売して利益を得ている不動産会社も注意している部分です。できるだけ不動産投資のリスクを減らすためにも、物件購入前にしっかりと確認しておくことをおすすめします。
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