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作成日: 2022.12.20

7年分の生前贈与が相続税の対象に! 富裕層に厳しい「2023年度税制改正大綱」発表

7年分の生前贈与が相続税の対象に! 富裕層に厳しい「2023年度税制改正大綱」発表

年に1度の税のルール変更(税制改正)の内容がまとまり、2023年度の税制改正大綱が発表されました。以前からお伝えしていた生前贈与の変更内容がついに決定し、節税を目的としたタワーマンション購入の規制の方向性も明らかになりました。そのほかにも富裕層に厳しい内容が盛り込まれました。相続に関わる項目を中心に、速報レベルの情報をお伝えします。

2023年度税制改正で変わる項目、変わらない項目

今回の税制改正では直前に防衛増税をめぐる混乱もあり、12月16日午後、与党は税制改正大綱を発表しました。

各省庁から出された要望は2022年8月31日付けで207項目あり、NISA恒久化の要望も盛り込まれていました。

今回は、主に相続に関わる3項目をお伝えします。

生前贈与は実質的な増税

相続時精算課税に基礎控除が新設

生前贈与をお伝えする前にまず、良くなった内容からご紹介します。

生きている間に子や孫に財産を移す「贈与」は、別の記事で以前お伝えした通り、2つの方法から選択できます。「暦年課税(暦年贈与)」と「相続時精算課税」です。

相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫などに財産を贈与するときに利用できる制度です。ただこの制度の控除額(非課税枠)は、これまで特別控除の2,500万円のみしかありませんでした。

非課税枠の2,500万円分も、生前に贈与したものについては相続時にはすべて課税対象として持ち戻すという制度でした。生前の非課税の枠内で贈与した金額については、少額でも毎年申告しなければならず、実務上の煩わしさもありました。

そのため富裕層にとっては、長年にわたり一人につき毎年110万円ずつ非課税で財産を渡せる暦年贈与(生前贈与)を選択する人が圧倒的に多かったという現実がありました。

それが今回の改正で、相続時精算課税に「暦年課税と同水準基礎控除を創設する」ことが決まり、相続時精算課税を選択しても、毎年基礎控除110万円を控除できることになりました。さらに、相続時にその非課税分は相続財産に加算する必要もなくなりました。2024年1月1日以降の贈与から、新ルールが適用になります。

これにより、「生前にまとまった財産を贈与しにくかった者にとっても、相続時精算課税を活用することで、次世代に資産を移転しやすい」環境ができると説明しています。

【関連リンク】
【相続税と贈与税の一体化】富裕層はなぜ生前贈与(暦年贈与)をするのか?

相続税の課税対象期間、生前贈与の持ち戻し期間が3年から7年へ延長 

では、もうひとつの方法、多くの人がこれまで選んできた暦年贈与はどうかというと、実質的な増税となります。

これまでも、ある人の財産が子や孫などほかの人へ移ったとき、その金額が1年間に110万円以下であれば税金(贈与税)はかかりません。長年にわたって暦年贈与(生前贈与)をすることで、税金を抑えることができていました。

生前贈与をしてきたその人物があるとき死亡します。すると相続する人たち(相続又は遺贈により財産を取得した者)は、相続する財産の金額に応じて、相続税を支払うことになります。

課税対象となる財産は、死亡時点での財産だけでなく、死亡時から一定期間さかのぼった暦年贈与も対象となっています。相続財産に加算される(持ち戻し)期間がこれまでは3年でした。それが2023年度の税制改正で、相続発生時からさかのぼる課税対象期間が7年になりました。2024年1月1日以降の贈与から、この「7年ルール」が適用となります。

これまで暦年贈与を選んできた人、暦年贈与を選ぼうとしている人にとっては、課税対象期間が2倍以上になり実質的に増税という結果です。

なお、今回延長となる4年間に受け取った贈与のうち100万円までは、「贈与の記録・管理に係る事務負担を軽減する観点」から課税対象とはならない(控除)となるようです。

暦年贈与を選ぶか、相続時精算課税を選ぶかは、その人の財産状況により異なってきますので、一概にどちらがいいとはここでは言えません。

マンションの相続税評価が変わる?

富裕層がこれまで用いてきた「タワマン節税」は、今後できなくなることがほぼ決まりそうです。2022年4月の最高裁の判決で、不動産業界に激震が走ったことはすでに別の記事でお伝えしましたが、その判決の余波というか、本震というべきか、ついに税制改正に盛り込まれそうです。

相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と、今後の検討課題に盛り込まれました。

相続税を計算する際の不動産の評価方法は、建物は固定資産税評価額、土地は路線価で評価するのが通例です。しかし、土地の面積が少なく鑑定評価額との乖離の大きくなりやすいタワーマンションでは、路線価での評価が認められなくなりそうです。

今後も引き続き注視が必要です。

【関連リンク】
最高裁の判決に業界激震、不動産相続に路線価は認められない!?

超富裕層に対する増税

年間の総所得が30億円を超える「超富裕層」に対し、2025年の所得から追加の課税がなされることが決まりました。超富裕層は国内に200〜300人いるとされています。

合計所得から3億3,000万円を控除後に税率22.5%をかけた金額が基準を超える場合、超えた部分に対して所得税がかかるというものです。

2025年の所得から適用されます。

今後の動きにも注目

今後のスケジュールは、例年通りだとすると2022年12月中に閣議決定、2023年1月の通常国会で審議、衆議院・参議院の審議を経て、2023年4月に法律施行となります。

今回お伝えしなかったその他の項目についても、別の記事で解説します。

参考:令和5年度与党税制改正大綱(PDF)|自由民主党 公明党

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

中井哲也 公認会計士・税理士

公認会計士・税理士。同志社大学経済学部を卒業。国内大手税理士法人に約12年勤務。富裕層、未上場会社、上場会社の対応案件を多数経験。メガバンク系証券会社、銀行にも出向、上場オーナー、未上場オーナーの事業承継、資産形成の業務に従事。 2021年7月に中井哲也公認会計士税理士事務所を開設。富裕層の手残りを増やすアドバイスには定評がある。 趣味は税金の勉強と筋トレです。

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