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お金と制度
2022.06.13

暦年贈与廃止で相続税の負担増? 今後の節税対策について解説

暦年贈与廃止で相続税の負担増? 今後の節税対策について解説

所得には所得税や住民税、贈与には贈与税、相続時には相続税と、何かと税金が課されます。そのため、税負担を軽減したいと考えている人も多いのではないでしょうか?相続税の節税対策の一つである暦年贈与について解説します。

そもそも相続税とは

そもそも相続税とは

相続税という言葉は聞いたことがあるものの、具体的にどのような目的で徴収されるのか、税率がどの程度なのかは詳しく知らないという人も多いと思います。まずは相続税の概要や税率について見ていきましょう。

相続で取得した財産に課せられる

相続税とは、相続によって財産を相続した場合、相続した財産に課される税金です。遺産に対して税金が課されることに不満を抱く人も多いと思いますが、資産を1カ所に集中させず再分配させるという目的が相続税にはあります。

徴収された相続税は、行政サービスを充実させるために使用されます。そのため、納付した相続税の恩恵を、何らかの形で自分も受けているといえるでしょう。

相続税の税率

相続税は、相続財産のすべてに対して課されるわけではありません。基礎控除額の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を引いた「課税遺産総額」に対して課されます。

税率は超過累進税率が用いられ、課税遺産総額が多いほど税率が高くなる仕組みです。相続税の税率は以下の通りです。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

贈与税とは

贈与税とは

相続発生時の遺産が少なければ相続税の負担を軽減できるため、生前に財産を移したいと考えている人も多いでしょう。しかし、生前贈与をする場合は、贈与税に注意しなくてはなりません。贈与税の概要や税率について解説します。

生前の財産の引き渡しに課される税金

贈与税とは、個人からの贈与によって財産を取得した場合、その財産に課される税金です。生前に財産を第三者に贈与しておけば、相続時の遺産を減らせるので相続税の負担を軽減できます。

しかし贈与税には、贈与によって死後に課される相続税の負担を減らそうとする行為を防ぐ目的があります。そのため、生前・死後ともに、第三者に引き渡した財産には、原則的に何らかの税金が課されると考えておきましょう。

贈与税の仕組み

贈与税の仕組み

贈与税は「暦年課税方式」と「相続時精算課税方式」の大きく2つに分かれます。それぞれの課税方式について解説します。

暦年課税方式

暦年課税とは、1年間に贈与を受けた財産の合計額に基づいて、贈与税額を計算する課税方式です。

基礎控除の範囲内である110万円以内の贈与については贈与税が課されず、申告も不要です。

暦年課税の税率

贈与税の一般的な課税方式である暦年課税では、基礎控除の年110万円を引いた課税価格に、以下のような超過累進税率が適用されます。

【一般贈与財産用(一般税率)】
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
【特例贈与財産用(特例税率)】
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

特例税率が適用されるのは、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の者が直系尊属(父母や祖父母など)から贈与で取得した財産です。

上記に該当しない贈与には一般税率が適用されます。例えば兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子供への贈与で子供が未成年である場合などです。

相続税贈与税どちらも最高税率は55%ですが、相続税は6億円超で最高税率が適用されるのに対し、贈与税は一般税率の場合3,000万円超、特例税率の場合4,500万円超で最高税率が適用されます。税負担は贈与税の方が大きいので、生前贈与で節税対策を行う際には注意が必要です。

相続時精算課税方式

相続時精算課税とは、贈与を受けたときに2,500万円の特別控除額と、20%という一定の税率で贈与税を計算し、贈与者が亡くなったときに相続税で精算する課税方式です。

暦年課税と相続時精算課税のどちらを選択すべきかは、財産の種類や金額など状況によって異なるので、税金の専門家に相談することをおすすめします。

暦年贈与を利用するメリット

暦年贈与を利用するメリット

暦年贈与とは、生前に複数回に分けて財産を誰かに引き渡す方法です。暦年贈与を利用するメリットについて見ていきましょう。

生前に財産を減らせる

暦年贈与を利用すれば、毎年110万円までの資産を非課税で誰にでも譲ることが可能です。例えば、20年間、毎年100万円の暦年贈与を行った場合、2,000万円の資産を引き渡せます。

相続税の対象となる資産を減らせるので、相続の発生時に相続税を軽減できるでしょう。

孫にも財産分与できる

通常の相続では、子供が既に亡くなっている場合を除き、孫には遺産を渡せません。

しかし贈与の場合、相続とは違って優先順位が決まっているわけではないので、金額や順番を自由に財産分与できます。確実に財産を渡したい相手がいる場合は、暦年贈与を選択するとよいでしょう。

相続争いを防ぎやすい

相続発生時には、どのように遺産を分割するのかを相続人同士で話し合う遺産分割協議を行います。しかし、お金が絡む話なので、トラブルに発展するケースも多いものです。被相続人が遺言書を作成していても、必ずしもその通りの相続が行われるとは限りません。

暦年贈与で生前に贈与している場合、財産分与に自分の意見を反映できます。また話し合いながら財産を渡せるため、相続発生後のトラブルを軽減できるでしょう。

暦年贈与を利用する際の注意点

暦年贈与を利用する際の注意点

相続税の負担軽減のために、暦年贈与の利用を検討している人も多いでしょう。しかし暦年贈与が認められない可能性もあるため、注意点を押さえておくことが大切です。暦年贈与を利用する際の注意点について解説します。

口座の管理は受贈者が行う

贈与者が受贈者の口座を管理して暦年贈与を行っている場合、口座の名義人と実際にお金を出した人が違う「名義預金」とみなされて暦年贈与が認められない可能性があるため注意が必要です。

暦年贈与では、受贈者が自由に使えるかどうかが重要な観点なので、口座管理は受贈者自身で行う必要があります。

定期的な贈与は避ける

毎年同時期に同額の贈与が行われている場合には、最初から計画的に贈与する予定だったという「定期贈与」とみなされ、暦年贈与が認められない可能性があります。

暦年贈与を認めてもらうためには、時期や金額をずらすといった工夫が必要です。

相続開始前3年以内の贈与は相続税の対象

相続開始前3年以内に行われた贈与については、贈与が成立していても相続財産に加算して相続税を計算します。

つまり、暦年贈与の基礎控除の対象にはならず相続税の課税対象となるため、暦年贈与による節税を検討している人は早めに開始しましょう。

贈与契約書を作成しておく

本当に贈与が行われたのかどうかを証明できなかった場合には、暦年贈与が認められない可能性があるので注意しましょう。

贈与のたびに贈与契約書を作成し、いつ、誰から誰に、いくら贈与したのかなどを明確に記しておくことが大切です。

相続時精算課税制度を選ぶと変更できない

暦年贈与と相続時精算課税を併用することで、節税効果を高められると考える人もいるでしょう。しかしこの2つの方法は併用できず、一方を選択しなければならない点に注意が必要です。

仮に相続時精算課税制度を選択した場合は、年に110万円の贈与も課税対象となるので、どちらが自分の状況に合っているのかよく考えてから選択しましょう。

暦年贈与廃止後の節税対策

暦年贈与廃止後の節税対策

贈与税相続税を補完するのが目的であるにもかかわらず、暦年贈与をうまく利用すれば相続税を節税できるという矛盾を抱えています。そのため、政府は暦年贈与の廃止を検討しており、将来的には暦年贈与が廃止される可能性があります。

暦年贈与が廃止された場合における節税対策について、詳しく見ていきましょう。

相続時精算課税制度の利用

相続時精算課税制度は、所有中の財産が将来値上がりする可能性が高い場合に利用することで相続税の節税効果が期待できます。

例えば、再開発によって将来的に値上がりが期待される不動産を所有していたとします。相続時精算課税では評価額は贈与した時点のものを採用するため、相続時に評価額が上がっていた場合、相続税の負担を軽減することが可能です。

しかし不動産価格が下落していた場合は、多くの税金を納めなくてはなりません。判断が難しい点なので、税の専門家に相談しながら利用するか否か考えましょう。

不動産投資

不動産を贈与する際、国税庁が定めた「相続税評価額」を用いて贈与税を計算します。すなわち、不動産を贈与する際は時価ではなく、相続税評価額により贈与税を算出するのです。

不動産の評価額は、時価よりも2割~3割ほど減ります。賃貸用の不動産の場合は、さらに評価額を下げることが可能です。

評価額を下げられるということは、贈与税相続税を算出する際の基準となる課税価格を下げられるので、贈与税相続税の両方の負担を軽減できます。

高い需要が期待できるエリアで不動産投資を始めた場合には、節税効果だけでなく家賃収入も期待できるので、不動産投資も選択肢の一つといえるでしょう。

暦年贈与が廃止された場合に備えておこう

暦年贈与が廃止された場合に備えておこう

贈与税の本来の目的は、生前贈与によって財産を減らし相続税の課税を逃れる行為を防ぐことです。しかし、暦年贈与による課税逃れが目立ち、贈与税の本来の目的を達成できていないため、暦年贈与は廃止する方向で話が進んでいます。

廃止になった場合には、ほかの手段で相続税の節税に取り組む必要があります。税制の見直しは定期的に行われているため、常にアンテナを張り巡らせておきましょう。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

矢野翔一 宅地建物取引士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)

有限会社アローフィールド代表取締役として不動産投資や株式投資を行う一方で、学習塾の経営も行っています。自身の経験と保有資格を生かしながら、ライターとして活動しています。 【保有資格】宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP) 有限会社アローフィールド

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