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作成日: 2022.06.26

不動産相続で名義変更は必要? 必要性と名義変更の流れを紹介

不動産相続で名義変更は必要? 必要性と名義変更の流れを紹介

不動産を相続した際に、被相続人から相続人に所有権が自動的に移転すると思っている人もいるかもしれません。しかし移転させるためには名義変更が必要です。不動産の所有権の移転に必要な名義変更について解説します。

不動産相続時の名義変更とは

不動産相続時の名義変更とは

相続によって不動産を取得することになった場合、名義変更手続きが必要と聞いたものの、名義とは何なのかよくわからないという人も多いと思います。まずは名義とは何なのか、名義変更しないことによる不利益があるのか見ていきましょう。

名義変更の手続きの必要性

人が亡くなった際には生命保険の手続きや公共料金の解約などを行う必要があります。これは、土地の名義変更も例外ではありません。

不動産の所有者は、法務局の登記簿によって管理されています。人が亡くなった際には、相続人に土地の所有権が移りますが、名義変更の手続きをしない場合、不動産の名義は被相続人のままです。

不動産を相続するためには、名義変更の手続きを行わなければなりません。

名義変更しないことによる不利益

不動産の名義変更については2022年時点で法律で義務づけられているわけではないので、放置していたとしても罰せられることはありません。しかし、名義変更を行わないことで不利益を被る可能性があります。

最も多いのが、相続人同士のトラブルです。例えば名義を変更しない間に相続人の誰かが亡くなった場合、さらに所有権が複雑化します。

すぐに相続すれば兄弟や親子間で話し合うだけで済んだものが、疎遠な親族まで協議に入ってくる可能性が出てくるのです。

また、住民票や戸籍附票については保管期限があるため、放置しておくと登記に必要な書類が揃えられなくなってしまい、相続手続きが複雑化してしまうこともあります。

名義変更をするメリット

名義変更をするメリット

名義変更のメリットとして、「不動産を自由に売却できる」「不動産が担保の融資を受けられる」「所有者を特定しやすくなる」という3点が挙げられます。各メリットについて説明します。

不動産を自由に売却できる

不動産の名義は、不動産の所有者が誰なのかを証明するものです。そのため不動産売買では、登記簿謄本で不動産の所有者が誰なのかを確認します。

もし名義変更をしていない場合は、名義人と売り主が違うため「他人物売買」になり、基本的に不動産の売却が成立しません。

相続発生時に名義を変更していれば、名義人と売り主が同一人物になるため、いつでも自由に不動産を売却できます。

不動産が担保の融資を受けられる

不動産は資産価値が安定しており担保価値があるため、不動産を担保にしてお金を借りられるケースは多いでしょう。しかし、担保となる不動産の名義がお金を借りる本人と異なっている場合、担保にはできないためお金を借りられません。

名義変更すれば名義人と融資の申込者が同一人物になるため、不動産を担保にしてお金を借りられるでしょう

所有者を特定しやすくなる

相続の際に共有状態にしているケースでは、複数人が名義人になります。名義変更せずに放置していると、いつまで経っても故人が名義人のままです。

仮に共有者の1人が死去したことで二次相続が発生した場合には、その権利を相続人が引き継ぎます。このように相続が繰り返された場合は、最終的に誰が権利者なのか特定が困難になるでしょう。

名義変更していれば、誰が名義人なのかが明記されるため、相続が繰り返されても問題なく所有者を特定できます。

不動産相続の流れ

不動産相続の流れ

不動産相続の名義変更を速やかに行うには、不動産相続の全体の流れを把握しておくことが大切です。不動産相続の主な流れは以下の通りです。

  1.  相続人や相続財産の特定
  2.  遺産分割協議
  3.  提出書類の準備
  4.  法務局で相続登記の申請
  5.  相続税の申告・納付

不動産相続の流れを詳しく見ていきましょう。

相続人や相続財産の特定

相続発生時に引き継ぐ遺産は、不動産に限られません。そのため、不動産だけでなくほかの財産がどのくらいあるのかを特定する必要があります。

また、複数の相続人がいる場合は、遺産分割協議によってどのように遺産分割を行うのか話し合わなくてはなりません。遺産分割協議は相続人全員が参加しなくてはならないため、相続人が誰なのか特定する必要があります。

遺産分割協議

遺言書が作成されている場合、遺言書の内容を参考にしながら遺産分割を進めます。しかし、遺言書が作成されていない場合、相続人同士で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議を有効なものとして成立させるには、遺産分割協議書に相続人全員の参加と全員の同意・押印が必要です。

参加していない相続人がいたり、反対する相続人がいたりする場合、遺産分割協議が成立しません。遺産分割協議の終了後、話し合った内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、次のステップに進みます。

提出書類の準備

相続登記を行うためには、以下の書類を準備しなくてはなりません。

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人の戸籍謄本と住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書
  • 法定相続人の印鑑証明

場合により必要な書類は異なります。どの書類が必要なのかわからないという人は、最寄りの法務局に確認しましょう。

法務局で相続登記の申請

相続登記の申請は、相続が発生してから何カ月以内に行わなくてはならないという期日は決まっていません。

しかし、時間が経過するほど必要書類の確保などに手間がかかるため、早めに申請を済ませておくことをおすすめします。

申請が完了すれば不動産の名義変更手続きは完了です。

相続税の申告・納付

相続登記の申請が完了したからといって、手続きのすべてを終えたわけではありません。

相続税申告書の作成と相続税の申告・納付をすることによって、ようやく不動産相続を含むすべての相続手続きが完了します。

不動産の名義変更とは異なり、相続税の申告・納付は期限が決まっています。相続の発生を知った日の翌日から10カ月以内に行わなくてはならないので、注意しましょう。

名義変更でかかる税金と費用

名義変更でかかる税金と費用

不動産相続時の名義変更を行った際にどのような費用や税金がかかるのかを解説します。

相続時に発生する2つの税金

不動産の相続時には、登録免許税相続税の2つの税金が発生します。

登録免許税とは、登録手続きにかかる税金で、相続の名義変更では、不動産の固定資産評価に対し0.4%が課されます。

相続税は、不動産に限らず被相続人から相続した遺産に対してかかる税金です。相続財産から基礎控除額を引いたものに、相続税率を掛けた値を算出します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

引用:No.4155 相続税の税率|国税庁

税金以外にかかる費用

税金以外にかかる費用については、以下のようなものがあります。

  • 申請書類の取得にかかる費用
  • 専門家への依頼料

土地の相続を行うには、登記事項証明書や戸籍謄本などの書類が必要になります。これらについては1つあたり数百円で取得できるため、それほど高くありません。

専門家は、司法書士や税理士、行政書士が該当します。専門家の種類や相続財産によっても依頼料は変わってきますが、数万円から数十万円かかることもあります。

不動産相続時の名義変更の今後

不動産相続時の名義変更の今後

法改正によって、不動産相続時の名義変更を取り巻く環境が大きく変化する予定です。不動産相続時の名義変更の今後を詳しく解説します。

法改正で名義変更が義務化

2022年の時点では、不動産の相続が発生した場合において、名義を被相続人から相続人に変更しなくてはならないということは法律で明文化されていません。

しかし、所有者を特定できないことで生じるトラブル回避の観点や空き家問題などから、名義変更が義務化されました。

義務化されるのは「2024年4月1日」からです。それ以降は、相続開始を知った日から3年以内に手続きを行わなければ、10万円以下の過料の対象になります。また、遡及適用といって過去の相続にも適用されるので注意しましょう。

必ず名義変更手続きを行おう

必ず名義変更手続きを行おう

これまでは、不動産を相続しても必ずしも名義変更を行う必要はありませんでした。しかし法改正によって名義変更が義務化されることになったので注意が必要です。

相続の発生を知った日から3年以内に名義を変更しなかった場合は、10万円以下の過料の対象となります。

相続発生から時間が経過するほど、名義変更手続きに必要な書類の確保に手間がかかるため、速やかに名義変更手続きを行いましょう。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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この記事を書いた人

矢野翔一 宅地建物取引士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)

有限会社アローフィールド代表取締役として不動産投資や株式投資を行う一方で、学習塾の経営も行っています。自身の経験と保有資格を生かしながら、ライターとして活動しています。 【保有資格】宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP) 有限会社アローフィールド

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