新型コロナで家賃はどうなった? 不動産賃貸市場の動向レポート
2020年2〜3月頃に日本国内でも新型コロナウイルスが流行し始めてから3ヶ月ほど経ち、5月末現在では緊急事態宣言が解除される程度には落ち着きを見せてきました。
2〜3月頃に日経平均株価は大きく変動しましたが、不動産投資の収益源である居住用マンションの家賃相場は今回の情勢下でどのように動いていたのでしょうか。
RENOSYを運営している株式会社GA technologiesには研究開発の部署(AI Strategy Center)があり、AIエンジニアやデータサイエンティストが不動産のデータを日々分析しております。そこで、今回の記事では同部署に所属する三田が2020年4月末までの不動産賃貸市場の動向を簡単にご紹介します。
CONTENTS目次
現在までの家賃の動向は?
次の図は、東京23区の居住用マンションにおける直近2年のデータから月別の平均家賃を間取りごとに算出したものです。
いずれの間取りでも、2018年、2019年を見ると4月に上昇する傾向がありますが、今年は下落しています。
間取り別に見ると、「2LDK~3DK」は1月から4月の間で約9,000円(4.6%)減少、「1DK~2DK」は1月から4月にかけて約7,000円(5.1%)減少しています。
「1R・1K」は1月から4月にかけて約1,700円(1.8%)減少しているものの、他の間取りに比べて減少率はかなり小さくなっています。
2020年4月に限らず図中の期間全体においても「1R・1K」は他の2つの間取りに比べて平均家賃の変動が少なく安定した値動きをしていました。今回の経済的ショックに対して比較的下落が少ないのはその性質が現れているためかもしれません。
募集件数の動向は?
また、2020年4月は2020年3月に比べて築古物件の割合の増加や、入居者を募集している物件数の減少が見られました。
築年数が10年以上の物件について、3月より4月の方が割合が増えています。
不動産会社が募集をかける、募集件数そのものが大きく減少しています。
引越し業者を対象にした調査でも、回答したすべての事業者で引っ越しのキャンセルや延期があったことが報告されています。
市場全体の動きが緊急事態宣言によって止まったことがうかがえます。こうした市場の変化が、平均家賃下落の一因になっていると考えることができます。
REITとの比較
ここまで家賃の推移を見てきましたが、実際に不動産を自ら購入して家賃収入を得るタイプの不動産投資のほかに、多くの人から資金を集めて複数の不動産に投資する不動産投資信託(REIT)もあります。
REITも家賃やオフィス賃料などが関係するものの、全く異なる動きをしています。次の図は、上の家賃の平均値の図と同時期における東証REIT指数の推移を示しています。
新型コロナウイルスのショックを受ける前後で最大49%の下落がありました。4月末になると1,500円台後半の値になりますが、そちらも約2,250円であった2月20日頃と比べると約30%下落しています。
一口に不動産投資といっても、REITの価格と個別の家賃の平均値では変動が異なり、家賃は経済的ショックに対して比較的安定していることがわかります。
過去の経済的ショックと比較
過去に経済的ショックが起きた時の家賃の推移はどうだったのでしょうか?
リーマンショック発生前後の首都圏中古マンションの平均家賃は、不動産流通推進センター「不動産業統計集」で過去の推移が確認できます。
この統計は約半年間隔であるため、リーマンショック時の2008年9月の次のデータ点は2009年3月となってしまう点に留意が必要なのですが、リーマンショックのような大きな経済的ショックが起きた場合であっても、半年後の2009年3月時点では以前と同程度の家賃になっています。月単位のデータではもっと大きな増減がありえますが、半年単位では家賃の大きな変動はなかったと考えられます。
家賃の安定性を示したこの事例に鑑みると、もし新型コロナウイルスのショックがリーマンショックと類似した影響を市場にもたらした場合、短期的に家賃の下落があったとしても、リーマンショック時と同様に中長期的には大きな下落がなく推移するかもしれません。
まとめ
東京23区の月ごとの平均家賃を間取り別に見てきました。家賃はすべての間取りで2020年4月に下落がみられましたが、その中で「1R・1K」は下落が少なく比較的安定していました。
リーマンショック時の首都圏の家賃の推移を見てみると、ショック発生から半年後には以前と同程度の家賃になっており、中長期的にみるとすべての間取りが経済的なショックに対して安定していたことがわかりました。この事例は今後の家賃の動向を考える際に参考になりそうです。
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