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更新日: 2021.05.21

不動産投資のNOI(営業純利益)とは? 利回りについて徹底解説

不動産投資のNOI(営業純利益)とは? 利回りについて徹底解説

NOIとは営業純利益のこと。不動産投資におけるNOIは「家賃を手に入れるためにかかった費用を差し引いて、実質的に手にすることができる利益」。今回は利回りを理解するために必要な「NOI」についてわかりやすく説明していきます。銀行員として不動産投資への融資審査をしてきた経験から、この記事でも融資審査をする視点で語っていきますので、ローン利用の不動産投資を考えている人など、ぜひ参考にしてください。

NOI(営業純利益)とは

「家賃を手に入れるためにかかった費用を差し引いて、実質的に手にすることができる利益」これがNOIの定義です。NOIはNet Operating Incomeの略で「営業純利益」「純収益」といった意味になります。

かかった費用のことを「運営費」ともよびます。運営費とは年間に必要なランニングコストのことで、固定資産税都市計画税といった税金の他に、管理費(賃貸管理を業者に委託する場合)、共用部分の水道光熱費、清掃、メンテナンスといった維持費や火災保険などがあります。

【関連リンク】
不動産投資にかかる費用とは〜初期費用・運用費用・手数料など

ここで注意しなければいけないのが、運営費は実際に支払った(銀行ではキャッシュアウトといいます)お金だけとして計算するという点です。減価償却費のような支出を伴わない費用、支払利息など金融費用、あるいは修繕費の積み立てなどは「資本的支出」とよび、こうした減価償却費などの資本的支出はNOIを計算するときには計算から除外されます

不動産投資において(投資額ー費用)で生み出される単純な残り、すなわち「キャッシュフロー」を表しているのがNOIだとも言えるのです。こうしたことからNOIは不動産物件の資産価値を評価する場合の指標としても利用されます。

なお、NOIから上記したような資本的支出もあわせて差し引いたものがNCF(Net Cash Flow)です。

銀行では融資審査をする観点で、このNCFも重視します。

NOI利回り

表面利回りを見れば物件の「ざっくりとした」利回りイメージをつかめます。ただし表面利回りは満室想定で計算していることに注意しなければいけません。4室のアパートなら4室がすべて埋まっている、表面利回りではこの状態を想定して家賃を計算しています。当然ですが賃貸物件には空室が発生するものです。ですがこの空室リスクは表面利回りではわからないのです。

いっぽうNOIの考えかたではこの空室リスクもしっかり反映された「NOI率」という数値で計算をします。

NOI率(営業純利益率)

NOI率は、万一空室になった場合の家賃未収入分などを控除してNOIが満室家賃に対しどのくらいの割合になるのか?を表す指標です。

例えば空室率10%(10室のうち1室が空室)、運営比率(年間家賃*ここは満室想定、に対する運営費の割合)が40%とするとNOI率は50%になります。
 
<NOI率の計算式>
 100%-(空室率:10%+運営費率:40%) 
*100%は、満室想定の家賃を意味しています。
 
NOI率は専門の調査会社などが全国的なデータを公表しています。投資を考えている物件と近いNOI率のデータを見れば、該当物件のNOIとNOI利回りも概算で求めることができます。

参考:第6回(2018年版)全国賃貸住宅実態調査 報告書|「特定⾮営利活動法人IREM JAPAN」「公益財団法人日本賃貸住宅管理協会」「株式会社 LIFULL」

NOI利回りを実際に計算してみよう

NOI率を使えば表面利回り(計算式(1))から、あるいは満室想定家賃(計算式(2))から、それぞれNOI利回りを導き出すことができます。

計算式(1)は近隣NOI率を使ったものです。あくまで周辺の参考値をもとにした数値なので、より具体的に計算したいなら実際の収入や費用を盛り込んだ計算式(2)が良いでしょう。

また(1)と(2)を比べることで平均値と検討中物件の比較もできます。

計算式(1) NOI利回り=表面利回り×NOI率 

計算式(2) NOI利回り=年間賃料収入-(諸経費:固定資産税、火災保険料、管理費、修繕費等)÷(物件購入額+諸費用:不動産取得税や不動産会社への手数料等) 

以下、計算式の用語を簡単に解説します。

<用語解説>

  • 年間賃料収入:1年間の家賃を合計したもの、NOI利回りの計算では満室ではなく空室率を加味します(満室家賃1,000万円×90%=年間賃料900万円:空室率10%として)
  • 固定資産税:実際に必要な固定資産税を調べます。なお銀行の融資審査では、固定資産税や火災保険料、管理費用などは一定の率で値上がりするものと仮定して試算します。
  • 管理費:不動産屋さんに入退去の管理を頼んだ場合、あるいは一括借り上げで必要な手数料など(一括借り上げの場合で、満室の80%を家賃収入で計算していれば不要)
  • 修繕費:経年劣化に備えて毎年積み立てておくべき金額です。実際に積み立てるかどうかはオーナー次第ですが、将来必要な費用ですので準備はしておかなければいけません。銀行では融資の条件として、修繕費の預金積立を依頼する場合もあります。
  • 物件購入時の諸費用:銀行融資を受ける場合は関連する手数料も加えます。
【関連リンク】
不動産投資で見落としがちな固定資産税。計算方法や算出例で解説します

満室想定家賃500万円、購入費1億円という物件、近隣で参考となるNOI率が65%と仮定すると

<計算式>
(家賃500万円÷物件1億円×100)×NOI率54%=NOI利回り2.7%

表面利回りは(家賃÷購入費)なので、上の式ではカッコ内の数値で5%です。
利回りの違いでこの物件を表現すると
「表面利回り5%、経費や空室リスクも考慮した実質利回りは2.7%」と言うことができます。

【関連リンク】
不動産投資の利回りとは?利回り計算方法と事前に知っておくべき注意点

これまでの不動産投資の指標

指標とは物事を判断するための目印、といった意味です。投資においてもさまざまな指標が存在します。

たとえば「利回り」も指標の一つだと言えます。

銀行預金で表現するなら、1年間にどれだけ利息が付くのか?が「金利」であり、この金利から税金(利子税)が差し引かれて実際に受け取るお金が「利回り」になります。これは他の金融商品でも同じで、外貨預金なら預けるときや解約時の為替手数料を差し引いたものが実際の受取額となり、投資信託や個人年金などではいろいろな手数料差し引き後となります。

こうしたリターン(預金では金利)を手にするための必要経費(税金や手数料)を差し引いたあと実質的に受け取ることのできるものが「利回りなのです。

冒頭でお話ししたように、不動産投資では利回りが重視されます。不動産投資で使われる指標はいろいろありますが、利回りを示すものが大半です。以下簡単に説明します。

不動産投資の指標1.表面利回り

表面利回りは投資したお金に対して得られる収益の期待値純粋に表現したものです。

年間の家賃を購入費用で割ったもの(%)で、その物件からどれだけ利益が生まれるか?という数値で不動産物件の案内に記載されている「利回り」は大半がこの表面利回りです。表面利回りは「グロス利回り」ともよばれます。これは家賃収入から必要経費など一切何も引かないで計算した結果なのでこうよばれています。

投資物件事例集 利回りや収支など限定公開中 事例を見る
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不動産投資の指標2.実質利回り

ゴルフをする人ならなじみがあると思いますが、18ホール回った総打数「グロス」に対し、ハンデを差し引いた「ネット」スコアがあるように、不動産投資でもグロスに対する「ネット利回り」があります。それが「実質利回り」というもので、ゴルフのハンデにあたる部分が必要経費になります。

家賃収益(リターン)を手に入れるためにかかったお金を差し引いて計算する点が表面利回りとは違うところで「実質的に手にすることのできる利回り」だから実質利回りとよばれてきました。

「純利回り」「ネット利回り」そして「実質利回り」などネットではいろいろよばれていますが、これらは「NOI利回り」とイコールで語られることもありますし、より厳密にしたものが「NOI利回り」だとされる場合もあります。ここで今回のテーマ「NOI」について解説する前に、もう少しその他の指標(利回り)について、いくつか簡単に説明します。これらもNOIを理解するうえで必要になってくる部分です。

不動産投資の指標3.自己資金投資利回り

投資した自己資金に対していくらの利回りがあるのか?というのが「自己資金投資利回り」です。

購入代金や税金、諸経費など、物件を手に入れるためのお金で自己資金をいくら投入したか?この自己資金に対する利回りを求めたもので、家賃収入で自己資金を割って計算します。

自己資金が多いほど重要になる指標で、逆に自己資金が少ない、あるいはフルローンなどの場合はあまり意味がない数値です。

不動産投資の指標4.借入金返済後利回り

NOI(実質)利回りを計算するときに借入金の支払いも含めたものが「借入金返済後利回り」です。

NOI利回りでは、原則借入金の元金返済は含みません。これはすべての人がローンを組むわけではなく、全額キャッシュで不動産投資する人もいるからです。

表面利回りは考慮しないほうがよいのか

表面利回りでは、文字通り表面的なイメージしかつかむことができません。しかし、一般的に物件の利回り表示は表面利回りが現在も多く使われていますので、比較検討するために、表面利回りも価値があると言えます。また想定が満室でも、現状や経年劣化を考慮して家賃水準を低めに計算している場合もあるので、やはり有効な面もあると言えます。

物件を比較する際の注意点

参考引用したNOI率のデータを見て、不動産融資を審査する銀行員として感じたことがいくつかあります。

これは物件を比較する際の注意点にもつながることで、以下その注意点と簡単な説明をしていきます。

<物件を比較する際の注意点~NOIの視点から>

  • NOIを精緻に導きだすには見積もりが大変
    正確な数値を求めるには例えば修繕費や管理費など見積もりをそろえなくてはならず、見積もりを頼むには業者との接触が必須となり、検討段階ではむずかしいものです。
  • 空室リスクにも注意する
    近隣のNOI率データでは空室率も公表されていますが、検討している物件と比較して数値を考えることが大事です。楽観的な考え方はリスクを伴います。
  • 地方と都会の違いも考慮が必要
    単に都会だから入居率が高い、地方だから家賃が低いといった単純な図式にはなりません。地方でも賃貸需要が高いところはありますし、都会でも投資に向かない物件はあります。大事なことは物件の所在と実態を自分の目でしっかりと見て判断することだと思います。

まとめ

銀行では融資審査をする観点から、不動産投資で利回りと言えばNOI利回りのことを指します。

物件チラシなどに記載されている表面利回りは、融資審査では参考程度にしかなりません

また不動産投資の融資相談で、一度も現地に行ったことがなく、物件もまったく見ていないケースもありますが、これは間違いなく融資審査が通りません(私の勤める地方銀行の場合)。本人の頭の中ではデータや予想数値など「勝算」があるのかもしれませんが、少なくとも借金をして不動産投資をするうえで物件を見ない(見る気持ちがない)人には、その姿勢が感じられた時点で融資はしません。なぜなら銀行は、そうした人は不動産投資で失敗することを多くのケースで経験しているからです。このことは今後の参考にぜひ覚えておいてください。

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この記事を書いた人

加藤隆二

勤続30年の現役銀行員。金融ライター。 入社してから渉外担当、融資担当者として数え切れないほどお客様と会ってきました。とくに年齢を重ねてからは融資窓口で「事業資金融資」「住宅ローン」「不動産投資」など、あらゆる融資でお客様の相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けない自信があります。そんな一介の銀行員目線で記事を書いています。

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