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作成日: 2021.09.28

日本に定着する? 富裕層が注目するワイン投資は分散投資の一環として有効か

日本に定着する? 富裕層が注目するワイン投資は分散投資の一環として有効か

ワイン投資とはその名の通り、ワインを投資対象とする資産運用の方法です。日本では発展途上ですが、ヨーロッパでは伝統的な投資であり、現在では金投資のような実物投資の一手法として広く行われています。

新型コロナショックで幅広い資産の価格が下落するなど有価証券だけでは分散投資が難しくなるタイミングにおいて、ワイン投資はほかの資産のリスクヘッジとしての機能も果たすとして、富裕層から注目されつつある投資手法です。

この記事ではワイン投資の基本やメリット・デメリット、そしてワイン投資を始める方法について紹介します。

富裕層が注目するワイン投資とは?

ワインは食品の一種でありながら長期保存が可能で、銘柄を厳選し保存方法を工夫すれば、年数が経過することで価値の上昇が期待できる商品です。

このような性質を利用して投資を行うのがワイン投資です。有価証券ではなく、金やプラチナ、大豆などといった実物資産に投資を行う「コモディティ投資(もしくは商品投資)」の一種ではありますが、日本ではまだマイナーな投資手法といえるでしょう。

ワイン投資の収益源は、もっぱらワインの値上がり益になります。つまり、ワインの購入時の価格と売却時の価格差から、保存に要したコストを差し引いてプラスになれば、投資は成功となります。

株や債券のように金融市場の影響を受けにくく、また適切に保存すれば価値も劣化しにくいことから、富裕層の中では資産の分散先として活用されているようです。

【関連リンク】
富裕層の特徴、考え方とは。資産運用の重要性についても解説

長期保存によりヴィンテージワインとしての価値を高めていくことで収益を得るのが一般的である一方、より短期的な需給による価格変化を捉えて数カ月程度で利益確定が可能なケースもあります。

ただし株式のように日々リアルタイムで売買できるものではないため、当面は使用予定のない余裕資金で行うことをおすすめします。

ワインの近年の価格推移

投資先を考えるうえで大切な値動きですが、Liv-exというイギリスのワイン取引プラットフォームを運営する企業が、ワイン価格の指数を公表しています。

これによると2003年末から2021年8月の期間で、世界の主要ワイン1,000本の価格はなんと3.8倍に上昇しています(Live-exが集計している指数Live-ex 1,000 indexを参照)。

ワインの近年の価格推移引用:A sparkling year of gains for the fine wine market’s broadest index| Liv-ex

実際に投資する場合には、個別のワインの銘柄を厳選する必要がある点は留意が必要ですが、ワイン市場全体としては過去15年超にわたり堅調な値動きとなっているのがわかります。

また、多くの資産価格が大幅に下落したリーマンショックや新型コロナなどにおける価格下落も限定的でした。ほかの多くの資産とは異なる値動きをすることから、富裕層が期待するように、分散投資先としても適しているといえるでしょう。

参照:A sparkling year of gains for the fine wine market’s broadest index| Liv-ex

ワイン投資のメリットと魅力

ワイン投資のメリット・魅力は、大きく分けて次の3点となります。

1.値崩れを起こしにくい

金や大豆、原油などの実物投資と同様、現存する商品を投資対象とするものは、価値がゼロになるリスクが極めて低いという特徴があります。これは、例えば株式では発行する企業が倒産すれば無価値になるのとは対照的です。

その実物投資の中でもワインは値崩れを起こしにくい特徴を持っています。ワインの多くは生産されたその年に飲まれ、また年数を経ることにその産出年の現存ワインは減っていきます。つまり、保存状態さえ良ければ、貯蔵年数の長いワインはそれだけで希少性が高まり、価値が上がりやすくなります。

従って短期的な価格変動により一時的に損が発生する可能性はある一方で、長期間保有し続けることで、価格上昇を見込みやすい投資手法といえます。

2.インフレに強い

インフレとは物価が上昇して、お金の価値が下がることをいいます。インフレの中で現金を持っていると、購入できる商品の量が減るため、実質的には損失が発生します。

一方で、ワインをはじめとした実物投資はインフレに強いという特徴を持っています。なぜなら、実物資産の価格は、インフレが起こればそれに連動して価格が上昇するためです。富裕層の間では、インフレリスクを避けるために実物投資を積極的に行う方も少なくありません。

3.自身が楽しむこともできる

投資としては本質的ではない部分ではありますが、実のところ、自身の嗜好品の調達も兼ねてワイン投資を行っている富裕層も珍しくありません。高級ワインを趣味として嗜んでいる方は、適宜購入したワインの一部を自分で飲むために消費しているようです。

この場合も、同銘柄のヴィンテージワインを市場価格で購入するより、自身の在庫の仕入れ・管理コストが安く収まっているならば、実質的には得をしていると考えることもできます。

ワイン投資の3つのデメリットとリスク

ワインは非常にデリケートなものであるため、それを投資商品として扱うことによるデメリットやリスクも存在します。

1.流動性は有価証券には及ばず、短期売買には向かない

ヨーロッパではワインの取引プラットフォームが整備されているなど、ある程度活発な取引が行われているものの、日々リアルタイムで売買可能な株式投資のようにはいきません。

短期的な価格変動を狙うとして最短でも数カ月、貯蔵により希少性を高める観点からは数年の期間をかけて投資を行う商品であるため、短期的な値上がり益を狙うのは難しいでしょう。

2.保管が難しく、またコストがかかる

ワインは非常にデリケートなものであるため、保管が難しい商品です。まして再販売を前提とした投資用のワインについては「正統に保管された商品である」ことを示す必要もあるため、基本的に個人が投資用ワインを保管するのは現実的ではありません。

そのため一般的にワインの貯蔵を専門に行う業者に預ける必要がありますが、当然貯蔵に際してコストが発生します。値上がり益を得るためには、保管コストも含めて利益が残るかを計算しながら売却タイミングを見極める必要があるのです。

3.破損リスクがある

ワインは瓶詰めされているため、瓶が破損してしまえば、たとえどれだけ希少な産出年のワインだったとしてもその瓶のワインに関しては無価値になってしまいます。

瓶の扱いに慣れている専門業者に貯蔵を頼むことで、リスクはある程度は抑制できますが、それでも運搬中の不慮の事故や天災による倉庫の倒壊など、瓶が破損するリスクを完全にゼロにすることはできません。

ワイン投資の2つの方法

ワイン投資には現物購入と、ワインに紐づいた金融商品の購入という2つの手法があります。ここでは2つのワイン投資の方法についてそれぞれ紹介します。

インポーターを通じた現物投資が基本

実際にワインを購入して貯蔵し、それを価格が上昇したタイミングで売却する「現物投資」が基本的なワイン投資の方法です。

酒屋でワインを購入して貯蔵し、また売却すればいいので「一見単純」に見えますが、実際にはワインの品質を維持しながら貯蔵するのは容易ではありません。仮に運よくそれができたとしても、ワインの品質は購入して栓を開けてみなければわからないため、個人が貯蔵したワインを、信用して高値で購入してもらえる可能性は低いでしょう。

そのため、先にも紹介した通り、ワインの貯蔵を行ってくれるプロに保管を代行してもらうのが現実的です。ワインの購入・保管・売却を一手に引き受けてくれる業者を「インポーター」とよびますが、このインポーターを活用して投資を行うのが一般的です。

日本では、長年インポータービジネスを行っており信頼度が高く、ある程度日本語での情報収集が可能なイギリスのBerry Bros. & Rudd(ベリー・ブラザーズ&ラッド)社などを利用する方が多いようです。同社では保管料の一部をワインの破損に対する保険に充ててくれるため、デメリットで挙げた瓶の破損リスクも抑制できます。

ワインファンドなど金融商品への投資も可能

インポーターとの調整や、ワインの目利きに自信がないという場合には、ワインファンドなどの金融商品へ投資する方法もあります。ただし、現時点では日本のワインに関する金融商品の取引市場が未発達であるため、現物投資より投資機会は限られている点は留意が必要です。

ワインに関する金融商品は現状大きく分けて次の3つです。

1.投資資金でワインを購入し売却益を得る「ワインファンド」

投資信託の感覚でワイン投資のプロにお金を預け、プロが代わりにワイン投資を行います。ヨーロッパでは、富裕層をターゲットとしたワインファンドが組成され、しばしば人気を集めています。

保管方法や売買チャネルなどを自身で整備する必要がないため手軽な投資手法として発展してほしいところなのですが、日本では2016年に大手のワインファンド「VIN-NET」が破綻したことでファンド組成が停滞しています。そのため、日本からこのタイプのワインファンドへ投資する機会は限られているのが現状です。

2.投資資金でワインを生産し、販売利益を分配する「ワインクラウドファンディング」

日本国内では従来のワインファンドに代わり、集めた資金でワインを生産・販売する「クラウドファンディング」タイプの金融商品がよく見られます。生産されたワインがより順調に売れれば高い収益を獲得できる仕組みです。

ワインに関する投資商品ではありますが、ワイン投資として一般的な貯蔵による希少化を狙うものではないため、製造時点でのワインの出来と、その時のワインの需給に損益が左右されることは留意が必要です。

一事例
広島産 苗木からこだわるワインファンド|セキュリテ

3.ワインの先物取引にあたる「プリムール」

ボルドーではプリムールという制度があり、いわばワインの先物取引のような役割を果たしています。1〜2年後に出来上がる予定のワインを得る権利をあらかじめ購入するもので、先に紹介したBerry Bros. & Rudd(ベリー・ブラザーズ&ラッド)社でも取り扱っています。

うまくいけば当たり年のワインを得る権利を安価で購入するチャンスもありますが、そのためには試飲などで出来上がりを予測できるだけの高いワインの知識と観察眼が求められます。

なお、プリムールで手に入れたワインは、即時売却することも、そのまま貯蔵に回すこともできます。インポーターとして信頼のある同社を活用すれば貯蔵に回す場合もスムーズです。

ワイン投資の始め方

ワイン投資には、当然ながらワインに関する知識が必要ですし、購入方法も一般的な有価証券投資などとは大きく異なります。ここではワイン投資の始め方を簡単に紹介します。

ワインに関する知識を習得しておく必要がある

ワインに詳しくない場合には、まずワインに関する基本知識を習得する必要があります。例えば、次のような知識については基本として押さえておきましょう。

  • 代表的な生産国・生産地域
  • 代表的な銘柄(特にロマネ・コンティなど高級銘柄が投資対象になりやすい)
  • 需要や生産量の推移や特徴
  • 値上がりが見込めるヴィンテージの特徴

まず本などで一般的な知識を習得する必要がありますが、そのうえで、需要や生産量、価格上昇が見込めるヴィンテージは時々によって変化するものなので、日々情報をアップデートしていく必要があります。先ほどからたびたび登場するベリー・ブラザーズ&ラッドの日本支店では、定期的にワインセミナーやセラー・プラン説明会を開催しており、こうしたセミナーなどを活用するのも一案です。

ワインの買い付け方法

ワインの買い付け方法は本来は次の3通りがあります。

  • インポーターから購入する
  • 海外のワイナリーから直接買い付ける
  • ワインオークションで購入する

売買と保管を一貫対応してくれるインポーターからの購入以外の方法では、貯蔵先を見つける手間とコストがかかります。また、海外のワイナリーとの直接交渉では当然現地の言語かせめて英語を扱う必要があります。

インポーターについては業者によりますが、先にも紹介した通り、一部日本語で対応できる業者もあります。まずはインポーターを通じて投資を始めるのがおすすめです。

そのうえでワインに対する造詣が十分に深まり、さらに本格的にワイン投資に取り組む場合には、独自の保管チャネルを整備してワイナリーからの直接買い付けやオークションでの購入を検討するのがよいでしょう。

ワイン投資のおすすめの銘柄とは?

ワイン投資を始める場合には、まずボルドーワインの中における「フランスの5大シャトー」から始めるのがおすすめ。5大シャトー(ワイン生産者)とは、ボルドーワインの格付けで最高格付けを持つシャトーで、具体的には次の5つのシャトーです。

  • シャトー・ラトゥール
  • シャトー・ラフィット・ロスチャイルド
  • シャトー・ムートン・ロスチャイルド
  • シャトー・マルゴー
  • シャトー・オー・ブリオン

これらのワインは世界的に知名度が高く価格が安定しており、シャトーの名前と生産年でおおよその市場価格が決まります。そのため初心者でも価格が見通しやすいワインであるといえるでしょう。

実物投資の一環としてワイン投資がおすすめ

実物投資を取り入れて投資先を分散することで、株や債券などの有価証券とは異なる動きをする商品を持つことになり、より安定した資産運用が可能になります。

今回紹介したワインはそのような分散投資先としておすすめです。金融市場の価格下落やインフレへの備えをしつつ、長期間保有し続けることで収益の獲得が期待できます。ワインの保管の手間などがネックですが、専門のインポーターを活用するなどすれば、初心者でもチャレンジ可能な投資手法です。

伝統的な有価証券への投資以外の新たな手法にチャレンジしたい方にとっては、ワイン投資はおすすめの投資手法といえるでしょう。

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この記事を書いた人

伊藤圭佑 証券アナリスト

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。

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