不動産投資ローン中にがんと診断。団信(団体信用生命保険)を使って残債0円にした20代オーナーの葛藤と安堵
中古区分マンションの不動産投資を始めて数年のオーナーが、がんと診断され、ローンの残債が団信(団体信用生命保険)によって0円になるまでの話を聞きました。
団信(団体信用生命保険)とは
団信とは団体信用生命保険の略で、不動産投資家がローンを利用して物件を購入する際に、金融機関から加入を条件づけられることの多い保険です。ローン返済中に加入者が死亡または高度障害状態など万が一のことがあった場合、団信の保障によってローンが完済状態になる仕組みです。
オーナーが返済不能に陥ってしまうと、融資をしていた銀行は貸し倒れ(貸したお金が回収できず損失になること)になってしまいます。こうした貸し倒れを防ぐために、金融機関は、借入れを希望する人に対して、団信への加入を融資条件としています。
不動産投資をはじめる際に、多くの人はローンを組み、団信に加入することになるため、結果として「不動産投資は生命保険の代わりになる」と言われることがあります。
不動産投資ローンに団信のがん特約をつけた経緯
話を聞いたのは、RENOSY の不動産投資をお客様に説明・販売するエージェントを経て、自身も投資用マンションを保有するGA technologies 執行役員CSOの飯田修三(以下、飯田さん。20代)です(取材時)。
飯田さんは、2年前に物件を購入しました。その際、金融機関から加入をうながされる団体信用生命保険に、がんの保障がついた特約をつけて契約をしました。
特約つき団信のメリット
団信に、プラスアルファで条件を付加した「特約」をつけることによって、保障の内容は変わってきます。
「7大疾病」「全疾病」などの保障がついた特約や、最近は「がん団信」保障と呼ばれる特約をつけられる金融機関が増えてきているようです。
金融機関によって特約の内容や条件は異なりますが、一般的にがん団信は、医師によって「がん」と診断確定されると、その日から、不動産投資ローンの借入残高が0円になる保障がついています。
これも金融機関によって異なりますが、がんの種類によっては、保障の対象外となるがんもある(例えば上皮内癌など)ので、注意深く内容を確認する必要はあります。
飯田さんは、ローンを組む際に
かけ捨てのがん保険に入るのは抵抗があったけれど、がん特約なら金利が少しだけアップして月々の支払い金額が少し高くなる程度で、利息分は経費にもなるのでやっておいていいかな…と。
いま20代で将来のことは全くわからないけど、万が一、ということもあるかもしれないから、がん団信をつけよう。毎月高い保険料を支払って、別の保険に入る必要もなくなるし…。
という理由から、がん特約つき団信に加入したそうです。
数年後、がんと診断
日々、忙しく働いていた飯田さんは、昨年、年に1度の健康診断で「要検査」の結果を受け取ります。
そこで精密検査を受け、さらに身体の組織を顕微鏡で観察する「病理検査」を行いました。その結果、「悪性腫瘍」という診断がされます(保険上、正確には「悪性新生物」の診断)。
飯田さんはこの時の気持ちを次のように話してくれました。
病理検査の前から、お医者さんには「おそらく悪性だから覚悟した方がいい」と言われていました。
実際に「がんです」と言われるとショックを受けましたが、10秒後には「でも癌特約あるよな」と、少し気持ちが晴れました。
働けなくなる不安や、生きることの不安はもちろんありました。しかし、数千万円のローンがなくなるという安心材料もあったことで、気持ちの落ち着き具合が全然違ったと思います。
がん特約の保障を請求する手続き
実際にがんと診断されてから、ローンの残高が0円となるまでにとった手続きを聞きました(*飯田さんが契約していた金融機関の場合です)。
金融機関に連絡
がんになったことを、金融機関に電話で伝えます。すると、病院で「がん」と診断された日から、ローンの借入残高は0円と説明されるそうです。
もし金融機関への連絡が遅くなって、診断後にローンを返済していた場合も、支払いが0円になる起算日は、金融機関に申請した日ではなく、病理検査の結果が伝えられた日で、その日から支払いがなくなります。余分に払った金額は戻ってくるということです。
金融機関に申請する上で必要な「診断書の雛形」があり、それが金融機関から郵送で送られてくるのを待ちます。
医療機関で診断書を書いてもらう
その雛形をもって病院に行き、「診断書」を書いてもらいます。この1枚が必要な書類のすべてだそうです。
必要書類を金融機関に送る
病院から診断書をもらったら、金融機関にその診断書を郵送してます。
待っていると、飯田さんの場合は 金融機関から電話がかかってきたそうです。飯田さんが借り入れていたローン(数千万円)を金融機関が一括返済した日がいつなのか、決済日を伝える電話だったそうです。
もしがんと確定した日(起算日)以降にローンが引き落とされていたら、起算日にさかのぼって、自分の口座に振込がされるようです。
登記の抹消を行う
金融機関は、融資をする際に、飯田さんの物件の「抵当権」を取得しています。ローンを完済した状態になるということは、抵当権も手放すということになります。
飯田さんの場合も、金融機関から抵当権抹消に関する書類が送られてきたそうです。その書類を受け取ったあと、司法書士に名義変更を依頼したそうです。
治療の最中なので、自分で慣れない手続きを行うよりも依頼する方が間違いなく確実です。所有権登記名義人表示変更・抵当権抹消など、必要な手続きをまとめて進めてもらえるので司法書士への依頼費用は「安い」と感じたそうです。
手続き完了まで1カ月
ローン残高が0円になり、物件の所有権から金融機関の抵当権がなくなるまでに、飯田さんの場合は、1カ月だったそうです。
がんの治療が続く中で、これらの手続きに要した手間としては、それほどかからなかった、ということでした。
飯田さんはこのときの気持ちを振り返ります。
2年前に不動産を買って、がん特約をつけて、本当に良かったです。RENOSY でこの仕組みを知らなかったら、生涯、後悔することになりました。
特約をつけられるのは団信への加入時
このような話を聞くと、不動産投資をすでに始めている人で一般の団信(死亡・高度障害保障)に入っている人は「がん特約をつけたい」と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、がん団信の特約をつけられるのは、団信への加入時です。
がん特約をどうしてもつけたいという場合の解決策はあるかというと、ローンの借換えを視野に入れれば、金融機関によっては可能な場合があるそうです。
ローンの借換えによって、いま支払っている金利がどのくらいになるのか等、総合的に判断する必要がありそうです。
もちろん、新たに投資物件を購入される際には、ローンの審査時に健康状態およびその物件の価値をみられ、審査が通れば新規購入の物件に対してがん特約をつける金融機関は増えているようです。
特約をつける上での検討ポイント
がん保障の特約をつけるとなると、ローンの金利に、特約の保障分の金利が上乗せされます。金融機関によって異なりますが、少なくとも年0.1%は上乗せになるようです。
ざっくりとしたイメージとしては、2,000万円の借入に対して、月々1,000円〜数千円が上乗せされるイメージです(借入金額や金利によって異なります)。
特約は健康状態や年齢などにも左右されてしまい、場合によってつけられないこともあります。特約をつけることで、どのような保障がプラスされるのか、保障内容や条件をよく確認し、ご自身で納得のいく状態で決断されることをおすすめします。
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