20代で買ったマンションを約1年で売却しようと決めた理由と売却に際してやるべきこと
私は20代前半でマンションを購入しました(購入についての記事はこちら)。そして今もこの物件に住んでいます。特に大きな不満はありませんし、とても気に入っています。買ってよかったと思っています。しかし、物語はそこで終わりではありません。 いろいろあって今、私はその物件を売却するための活動をしています。引っ越しをしてわずか1年半もたっていないのにもかかわらずです。マンションは30〜40代で家庭を持つ前後に購入するものだという考えの方からすると、若いうちに買うこと自体も驚きなのに、さらにこんなにもすぐ売ってしまうなんて、信じられないかもしれません。 しかし、これも一つの選択肢として「あり」だと感じたため、このような決断に至りました。せっかく購入した我が家の売却を考えるに至った理由と、売却活動を行う上でやっておきたいことについて解説します。
CONTENTS目次
20代でマンションを売ってしまう理由
なぜ購入してから1年半弱でマンションを売るという選択に至ったのかを、何はともあれ、経緯とともに説明します。
まず、売却を意識しだしたきっかけは、給与の額が下がったことでした。働き方改革の影響で、残業をしてはならない風潮が広まり、手取り額が激減してしまったのです。
そもそも、購入時の私の考えとしては「購入すれば、そのまま住み続けた場合資産だけが残るし、もし途中で何か状況の変化があっても売ればお金になって戻ってくるし、その場その場で最善の方法を取ればよい」でした。
なので、状況の変化があれば当然「住まい方」の見直しを行うべきで、この手取り額の変化という出来事を契機に、状況の整理を行おうと考えたのです。
売却するかどうかを決断した際の検討材料
よくある「賃貸VS購入議論」については一概に言えるものではなく、ライフスタイルの変化や、実家との関係、建物自体の資産性などがかかわってきます。つまり、前提となる自分を取り巻く条件が変化すれば、答えも変わるということです。私の場合は、次のような事柄を考慮して売却を決めました。
収入とのバランス
私の中で売却を考えるきっかけとなった一番の要因が、収入とのバランスです。固定での支払い額は毎月次の通りで、
家のローン+管理費で9万円、その他教育ローンの返済で4万円。
購入時は手取りが25万円前後でしたが、先述の理由により17万円程度まで下がり、残りの4万円で暮らすような状況でした。
賃貸では収入に変化があった際、安い家に引っ越すということができますが、購入してしまうと居住費を下げたいと思ったときにフレキシブルに対応することが難しくなります。政府の方針という予測に織り込むことが不可能な要因で、バッファーが全くない状況に変化しました。
資産構築的観点
マンション購入のメリットとしてよく挙げられるものに「一生大家さんにお金を払い続ける必要がない」「老後の居住費が基本的にはかからなくなる」「資産として手元に残る」などがあります。
しかし、安い賃貸に住むことで、それ以上のスピードで貯金ができるならば、そちらの方が効率の良い資産構築方法といえます。売却を決断したときの私は、購入時と違ってミニマリスト的生活習慣を身に付けていたため、賃貸で「狭い=安価な物件」で要件を満たすようになっていました。
建物の老朽化
建物は古くなります。私は築40年超の物件を買っていたので、自分の老後、築80年となった住まいに住み続けられるかはわからないという問題がありました。そのため買い手がつかなくなる前に売却をするか、あるいは建て替えの決議を通すなどが必要になってくると予想されます。
ちなみに私の場合は実際に住んでみて、建て替えはしばらくなさそうということがわかりました。
景気の波
オリンピックが目前に近づいていることにより、地価や建築コストへの影響が考えられます。売るならタイミング的に今のうちだと思いました。
身動きのしづらさ
購入時は、ずっと東京で暮らすつもりでした。なので、身動きの取れなさは問題にはなりませんでした。しかし、定住地を持たない生き方や、将来的に生活費の安い海外で暮らすのもいいなぁと少しずつ考え方をシフトしていたので、「新たな暮らし方」を実行に移すために持ち家を賃貸に出すなり何らかの処置をせねばならないことは、自分の中でデメリットになりうる状況に変わっていました。
なお、賃貸に出すことで利益が結構出るのであれば、むしろプラスになります。
ただ私の場合は、周辺の相場的にそこまでの利益は出ないので、賃貸に出すという選択肢は決定打にはならないことが分かっていました。
これらの要因を考慮して、売却を検討するに至りました。売却査定をしたところ、頑張り次第で手残りが出る価格での売却が可能そうだったので、いまお客さんが訪ねてくるのを待っている状況です。
売却活動に際してやるべきこと
住まいの売却を視野に入れることを決めたら、何をすればよいのでしょうか。すぐに不動産屋に駆け込むのも一つの方法ですが、いろいろと準備、つまり情報収集をしてから臨むことをお勧めします。
目的は、自分の中に物差しを持っておくことです。
プロと対峙したときの私たちの心理として、どうしても「こちらを言いくるめようとしているのではないか」という疑心を抱いてしまいます。こちらの知識がないのであれば、不安感はなおさらです。
事前に自分の物件を取り巻く情報を仕入れておいて、「自分の物差し」を持っておくことで、不動産屋さんと利益が相反する場面でも流されず、売却活動終盤で突然収支が成り立たないことに気づいたりなどのトラブルを防ぐ効果があります。自分の中での納得感にもつながります。
ただし、少し知識をつけたからといって、なんでも疑ってかかるようなお客さんになるのはやめた方がいいと思います。あくまでも相手はプロ。言っていることには利があるはずです。耳を傾けることは重要です。
自分の定規を基準にはしながらも、それは絶対正しい基準ではありません。あくまでも、出発点を持とうという趣旨です。
相違が出た場合、私の場合は「こう思っていたのですが、そうではないということでしょうか?」などと詳しく尋ねることにしました。
あまりほしい説明がもらえないことが続く場合、業者を変える検討をしてもよいでしょう。なお、不動産に詳しい知り合いがいれば、情報収集の段階から適宜相談しながら進めるとよいでしょう。
ところで、なぜ不動産取引において情報収集が大切なのでしょうか。不動産には定価もなければ価値を見積もる定量的な方法があるわけでもありません。このことから、価格設定は情報量の勝負となるからです。地域特性などを十分理解していないと、不適切な値付けをしてしまうリスクが高まります。
ここで、情報量の勝負というと「プロに勝てるわけないよ」と思ってしまいそうですが、これは専門知識がなくてもできることです。私がやったのは、自分の物件にフィーチャーして不動産サイトなどを調べることだけでした。以下で具体的に述べます。
周辺の相場の確認と、現実的な売却価格の想定
周辺の似た物件を参考に、どれくらいの値付けが現実的か調査します。例えば当該物件が築20年35㎡だとして、周辺物件に築15年35㎡3000万円と築20年30㎡2500万円のものがあった場合、2500万円~3000万円が妥当ということがわかります。
なお、考慮に入れるべき項目には駅距離や構造(鉄骨造や鉄筋コンクリート造)、リノベーションの有無などがあり、ほかにも「近くの同条件の物件がないので少し強気に出ることができる」等の条件も関わってきます。
売却時の手残りと、売却が成り立つ希望価格の想定
いくらで売れれば十分なお金が手に入るのかを計算します。十分の定義は人により違いますが、下記の段階に分けることができます(下に行くほど高値で売れた場合)。
- ローンの残りを〇〇円まで減らすことができる
- ローンを完済することができる
- ローンの他に売却に際して直接的にかかる諸費用(仲介手数料・登記費用)を賄うことができる
- ローンや諸費用のほかに引っ越し代まで賄うことができる
- 儲けが出る
いくらで売れればどこまで賄える(儲かる)のかを把握しておくことで、値下げしないとなかなか売れないといった局面に瀕したときに、値下げしてでも早く売った方がよいのか、時間をかけてでも価格を死守した方がよいのか、また下げるならいくらまで下げても大丈夫かがわかります。
私の場合、「50万円の手残り」からスタートして、「引っ越し費用まで」は値下げ可能、ただしここを最低ラインと想定して臨んでいます。
賃貸に出した場合の検証
売却を検討する場合でも、一度は賃貸に出したケースを想定して収支を確認してみることをおすすめします。
なお注意が必要なのは、ローンによっては事情にかかわらず賃貸に出すことが禁止されている場合もありますので、確認が必要です。私の場合は問題なさそうでした。
儲けについては、本格的に投資をするのであれば、利回りという考え方で検討したりしますが、そういうわけではないという方は、単純に得られる家賃と支出をみて、どれくらいの余りができるかを計算してみる方法の方が、わかりやすくてお勧めです。なお、年単位で計算することをお勧めします。税金は年単位で発生するからです。
【1年間の収支】
(家賃収入×12カ月)−(ローン支払い×12カ月)−(管理組合費×12カ月)−固定資産税 > プールしておきたい金額
このとき、自転車置き場代やその他に発生するお金などがあれば、別途請求するのか、家賃に組み込みとするのか考え、それぞれの場合で収支が成り立つ計画を立てておきましょう。
また賃貸に出す場合は、ぎりぎり毎月の支払いだけは賄えるという状況ではよくありません。上式右辺のプール金を考えに入れることが大事です。もし「設備が壊れたので直してください」と借家人からいわれたときには、借家人に過失がない場合大家が負担して直さなければなりませんし、空室対策としてクロスの貼り替えのお金なども必要になるかもしれません。
それらを考慮して、少しは手残りが出るように組まないと、何かあったときに自分の生活を脅かす可能性があります。
例えば、空室になってしまったので
利益が出ない → 傷んでいるところを直せない → 売ることも貸すこともできなくなりローンの支払いだけが残る
というスパイラルに陥ったら最悪です。
上記の計算を実際にやってみました。結果、近隣の相場と比べてかなり高めで貸し出しても手残りがほぼなく、修繕のケアを考えると、売却した方がよさそうという判断材料がひとつ。
加えて私の物件は事務所利用可の物件だったので、「なかなか事務所に使えるマンションが見つからずに困っている事業者」狙いで少し高めの家賃とすることができそうでしたが、それを加味しても、あまり手元に残らないことがわかりました。
これらの状況から、売却を選択しました。
なお、売却のときの収支と、賃貸のときの収支が両方はっきりしていないと比較ができないと思ったので、それぞれ別の会社にいくらで貸せそうか、売れそうかのヒアリングを行ったうえで、判断をしました。
掃除など
売りに出した場合、お客さんは内見に訪れ、そこで買うかどうかの意志を確かなものにしていきます。なるべくきれいに見えるように、掃除や、目立つクロスの継ぎ目を補修したりなどを行います。
不動産屋探し
不動産業者探しのプロセスです。選ぶ基準はいくつかありますが、いろいろ考えて下記を判断材料として業者探しをすることにしました。
購入時にお世話になった業者
自分が買った物件を仲介してくれた会社なので「該当物件の売買の経験値がある」という点と、ある程度どんな人かわかっているので安心と考えました。
インターネットで評判が良い業者
業者も玉石混交です。インターネットのレビューで評判の悪い業者は、避けた方がよいと思いました。
そのエリアに詳しい業者
そのエリアに詳しい業者は、相場感やターゲットの層、競合物件の動きなどに詳しく、頼りになると考えました。なお、当該物件最寄り駅前の業者や、その地域に何店舗か存在するローカルチェーンなどが私的には高得点です。
自分が家を買うことをイメージするとわかると思うのですが、家を探すときに考えられる行動は、住みたい駅の不動産屋を訪れるか、不動産情報サイトで気になる物件を直接探して資料請求するかといった具合でしょう。駅前の不動産屋は、その駅にピンポイントで住みたいと思っているお客さんが付きやすく、駅周辺の物件を紹介してもらいやすいという考えです。
エリアのローカルチェーンは、店舗数に比例してその地域の物件数が多い(インターネットに載っている情報数が多い)という特徴があります。
仲介の現場では、資料請求で来店したお客様の「目当てにしていた物件」が売れてしまった場合、「同エリアの物件」を代わりに案内するということがよくあります。掲載数の多い地元チェーンなら、エリア内の1件として自分の物件を紹介してもらう機会が多そうだと考えました。
ターゲットに強い業者
物件の個性によって、狙うターゲットは異なってきます。そのターゲットに強みを持つ業者であれば、買ってくれるようなお客さんにマッチングしやすくなると考えました。
例えば、外国人に売れそうな個性のある物件であれば、英語対応している浅草の業者がよいだろうとか、女性向けに振った内装の物件なら、女性の暮らし応援をテーマにしている業者を狙おうというようなことです。
自分の物件を名指しで狙っている業者
今の家に引っ越してから、帰宅時に郵便受けの中を探ったときに「このマンションの住戸を売りませんか?」というチラシが入っていることが度々ありました。そのチラシにはピンポイントで、自分の住んでいるマンションの名前が書いてありました。
よほどその物件を売る自信があったり買いたいお客様の顔が見えている等の理由がなければ、わざわざチラシを印刷して配る手間をかけてまで投函しないものです。そこに頼むかは別として、顔の見えているお客さんがいくらまで出せるのか、とりあえず聞いてみてもよいでしょう。
知り合い
不動産業界は報酬の上限が決められているため、報酬外で利益を稼げる物件や、高額な物件、売るのに手間がかからず数をこなせる物件などが業者から好かれます。そのような不動産屋の都合をスキップする方法が、知り合いに頼むという方法です。同期や後輩でそのような人がいれば、頼むのもありだと思いました。同期や年下がよいのは、年上の取引先等だと、パワーバランス的にやりづらいためです。
上記の選択肢を検討した結果、家の郵便受けに入っていたチラシの業者さんにお願いすることにしました。浅草の不動産業者でした。選んだきっかけは、投函されたチラシに「購入を検討している法人様がいらっしゃいます(当該マンションの他の住戸を購入された実績あり)」というような内容が書かれていたことでした。
その法人が、不動産事業で中古再販(古い物件を買って、リフォームして高く売る)を生業としているならば「事業性の観点からあまり価格は伸びないかもしれない」が、もし社宅としての利用を想定しているならば「会社の近くがよいなどの理由から、多少無理をしてでも購入に踏み切るかもしれない」という考えがありました。
浅草の業者さんに問い合わせたところ、狙っていた法人からの回答は、私の希望価格より低く、それを飲むとなるとローンだけが残ってしまう状況でした。
残念だけれどその法人には売れない旨を伝えると、その業者さんから、外国人投資家のお客さんを狙ったらどうかという提案がありました。
その提案の理論は妥当そうでした。最初に金額を高めに提示しておいて、最終的に希望の価格で決着をつけるという道筋を相談し、なんとか売ることができそうだという言葉をいただきました。
対応もしっかりとしていたので、大丈夫だろうという判断も加味し、決定をしました。ここで「無理だからローンが残ってでも安く売るかあきらめろ」といわれていたら、頼んでいなかったと思います。今は、投資家の方が日本に来るタイミングがあるそうなので、それを待っている状況です。
まとめ
家を買うことは人生を縛ることというような表現をよく目にしますが、家を買うこと自体は人生を縛るとは限らないと思っています。「家を買って、そこに住み続ける」ことで自分を制限しなければ、売ることも貸すこともできるからです。
人生を取り巻く状況は刻一刻と変わるので、未来のことを考えすぎてもある意味無駄な部分があります。
大切なのは自身の人生からくる要求の変化に応じて、最適解を見直し続けること。その結果として、買ってすぐ売ったり、貸して後で戻ってきたりすることは、その判断が適切なら、適切な行為となりえます。
不動産のリテラシー向上と、遠く感じがちな不動産業界への敷居の高さをいかに下げるかということが必要です。
電車に乗り慣れている我々が軽い気持ちでターミナル駅まで買い物にいけるのは、電車に乗る方法が分かっていて抵抗がないからです。
同じように、「住まい」に関してもどのような選択肢があるかを十分に把握することで、自身の行動を無駄に制限しないですむようになる。そのように思います。
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