マンション売却の減価償却とは? 税金処理に必要な計算を解説
マンションを売却した際は売却益に課税されることがあり、その場合は確定申告が必要です。ここで重要になるのが「減価償却」という考え方。しかし、「減価償却」という言葉を聞いたことがあっても、どのようなものなのかわからないという方もいるでしょう。
そこで今回は、マンションを売却するときに必要な「減価償却」と、その計算方法を紹介します。確定申告にも必要ですので、覚えておきましょう。
そもそも減価償却とは
減価償却とは、会計上の仕組み
マンションのような耐用年数が長いものを購入したときに、購入した年に一括計上するのではなく、利用可能な年数に分けて費用配分する会計上の仕組みが「減価償却」です。その際に発生した費用を「減価償却費」といいます。
自宅としてマンションを所有しているだけなら、減価償却費は意識しなくてもよいでしょう。毎年「費用(経費)」として計上するのは、投資用マンションを保有しているときだけだからです。
しかし自宅だとしてもマンションを「売却」した場合は、減価償却費を加味して売却益を計算する必要があります。
減価償却できるのは建物のみ
マンション売却時に減価償却費を計上できるのは建物価格だけです。土地は年月が経っても価値が持続するからです。マンション価格は「土地価格」と「建物価格」に分けられるので、そのうち建物価格にだけ減価償却を行います。
マンションを売却した際の譲渡所得税との関係は?
マンションの売却で出た譲渡所得には、所得税、住民税、そして復興特別所得税がかかります。このうち、所得税、住民税を合わせて「譲渡所得税」とよぶことがあります。この譲渡所得を算出するときに、減価償却費が必要です。
譲渡所得の計算方法は以下の通りです。
[1] 譲渡収入:マンションを売却した金額
[2] 取得費用:マンション購入時の物件価格と不動産会社に支払う仲介手数料などの諸費用から、減価償却費を差し引いたもの
[3] 譲渡費用:不動産会社に支払う仲介手数料や印紙税などマンション売却時に発生した費用
ちなみに、「譲渡所得税」とは税法上の正式な名称ではありません。あくまで正式な名称は「所得税」「住民税」「復興特別所得税」となります。
マンションの減価償却費、どう計算する?
それでは減価償却費はどのように計算すればいいのでしょうか。
結論から言うと、国税庁の「確定申告作成コーナー」にマンションの構造などを打ち込むと、減価償却費が自動入力されるので、こちらを利用した方がよいでしょう。またマンション売却を仲介してくれる不動産会社によっては、減価償却費を計算してくれます。
ただし計算方法は頭に入れておいた方がよいため、簡単に解説していきます。
まず減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類あり、今回は定額法の計算方法の解説です。
定額法とは、減価償却の対象となる金額を耐用年数で均等に割り、毎年定額を償却処理する方法です。
減価償却費の計算式は以下の通りです。
[1] 建物購入代金
マンションの減価償却費を計算するときには建物購入時の金額が必要です。通常は、購入した際に交わした売買契約書の金額を使います。
ただし、売買契約書に記載された売買価格をそのまま建物購入代金として使用してはいけません。なぜなら、売買契約書に記載されている金額は、建物と土地の合計金額であるからです。
建物価格と土地価格の内訳を確認し、建物価格の金額のみを使いましょう。
そしてこの建物購入代金に0.9をかけます。会計上、取得費から残存価格10%を引く必要があるからです。
[2] 償却率
減価償却費の計算に使用する償却率は、建物の耐用年数により異なります。マイホームなど非事業用のマンションの場合は、通常の建物の耐用年数の1.5倍で算出が可能です。
耐用年数とは、その資産が利用できる会計上の年数のことで、建物の材質や構造により異なる点に注意しましょう。
材質・構造ごとの耐用年数と償却率の関係は以下の通りです。
材質・構造 | 法定耐用年数(非事業用) | 償却率 |
---|---|---|
木造 | 33年 | 0.031 |
軽量鉄骨・鉄骨造 | 28年~51年 | 0.020~0.036 |
鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 70年 | 0.015 |
多くのマンションは、鉄筋コンクリート造(RC造)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)なので、償却率は0.015が適用されます。
参照:主な非業務用資産の償却率|「減価償却費」の計算について|国税庁
[3] 経過年数
減価償却を計算する際の経過年数は、マンションの築年数ではなく購入してから売却するまでの期間です。
計算時には6カ月以上の端数は1年と計算し、6カ月未満は切り捨てます。例えば平成24年4月から平成30年9月の場合、所有期間は6年5カ月となるので経過年数は6年です。
減価償却費の計算例
それでは具体的に、マンション売却時の減価償却費を計算してみましょう。
- 購入時期:平成24年
- 購入代金:3,000万円(土地800万円・建物2,200万円)
- 構造:鉄筋コンクリート造
- 売却時期:平成30年
先ほどご紹介した、
この式に当てはめていきます。
→減価償却費は178万2,000円となります。
マンションの譲渡所得・譲渡所得税の計算方法は?
譲渡所得を求める計算方法
譲渡所得を求める計算式は以下の通りです。
譲渡所得=譲渡収入 [1] -(取得費用 [2] +譲渡費用 [3])
[1] 譲渡収入:マンションを売却した金額
[2] 取得費用:マンション購入時の物件価格と不動産会社に支払う仲介手数料などの諸費用から、減価償却費を差し引いたもの
[3] 譲渡費用:不動産会社に支払う仲介手数料や印紙税などマンション売却時に発生した費用
譲渡所得税の計算方法
マンションの売却で譲渡益が発生した際には譲渡所得税がかかります。計算方法は以下の通りです。なおマンションを所有していた期間により税率が異なり、所有期間が長いほど税率は低いです。
■短期譲渡所得(所有期間5年以下)
■長期譲渡所得(所有期間5年超)
※復興特別所得税とは、東日本大震災の復興財源を確保するための税金。所得税額の2.1%が税率
なお、売却するマンションを10年を超えて所有していた場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について「マイホームの軽減税率の特例」が受けられます。
■所有期間が10年超の場合のマイホームの軽減税率の特例
-
譲渡所得6,000万円以下の部分
※譲渡所得が6,000万円を超える部分は、長期譲渡所得と同様の税率です
節税にもつながる「減価償却」を理解しよう
「減価償却」というと難しいイメージがあるかもしれませんが、式に沿って計算すればさほど難しいものではありません。
マンションを売却する際には、売却益がプラスなら確定申告で税金の処理を行う場合があります。場合によっては税額が高くなることもあるため、「減価償却」を知っておくことは大切といえるでしょう。
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