一生持ち続けたい「配当株+優待株」の選び方
2024年から開始した「新NISA」は、運用益にかかる税金が一生涯ゼロになる制度です。一生涯非課税で利益が得られるとなって、注目されているのが「高配当株」です。
今回は、一生持ち続けたい「配当株+優待株」の選び方をご紹介します。
新NISAで注目
運用益にかかる税金が、期限つきではなく一生涯非課税となり、一生利益が得られるということで注目の「高配当株」。その高配当株の中でも、人気が高いのは「連続増配株」「累進配当株」です。
また、高配当に加えて、株主優待がもらえる銘柄も人気があります。株主優待がQUOカードになっている銘柄も多いですが、株主優待オリジナル商品がもらえる銘柄、生活必需品やレジャーなど株主優待割引で購入・利用できる銘柄もあります。
「配当金」「株主優待」をもらうにはどうすればいい?
今や株式投資は1株からできる時代です。銘柄によっては、1株数百円から投資ができます。
配当金は1株しか保有していない株主も受け取ることができます。一方、株主優待は単元である100株以上の保有が優待受け取りの条件となっていることがほとんどです。1株から株主優待をもらえる銘柄もありますが、20〜30銘柄くらいです。
配当金や株主優待を受け取る権利を手にするためには、「権利確定日」に株主として株主名簿に記載されている必要があります。そのためには、2営業日前である「権利付き最終日」に株を保有していなければなりません。
ただ、権利付き最終日にだけ株を持って入れば配当金や株主優待を受け取る権利を手にできるので、翌営業日に売却しても問題ありません。権利付き最終日の翌営業日を「権利落ち日」と呼びます。
このルールにより、権利付き最終日に向けて、投資家が株を買う傾向が高くなるため、株価は上がりやすく、権利落ち日は投資家が株を売る傾向があるため、株価が下がりやすくなっています。
<配当金・株主優待をもらうには>
配当金が実際に受け取れるのは、権利確定日から約2~3カ月後です。証券口座で配当金の受け取り方を「株式数比例配分方式」にしていると、このタイミングで証券口座に入金されて現金として引き出すことが可能になります。
「配当利回り」や「優待利回り」の高さだけに注目するのはNG
配当利回りは、株価に対して年間でどのくらい配当金を受け取れるかを示す指標であり、「年間予想配当金÷株価×100」という式で算出されます。
高配当株とは、配当利回りが高い株を指しますが、いくら以上という明確な定義はありません。一般的には配当利回りが3%を超えてくると高配当株・高配当銘柄といわれます。
優待利回りは、株価に対して年間でどのくらい株主優待を受け取れるかを示す指標です。金額換算できる株主優待品だけを対象に算出されます。
なお、配当利回りと優待利回りを合わせて、「実質利回り」と呼ばれています。
<配当利回り+優待利回り=実質利回り>
ただし、配当利回りや優待利回りの高さだけで飛びつくのはNGです。どちらの計算式にも分母に株価があるので、株価が下がって利回りが高くなっている可能性があります。株価が下がることは「不人気な銘柄」であることを意味しますが、不人気な理由は、業績悪化が主要因になっていることが多いです。
業績悪化が続けば、優待縮小・廃止、減配・無配になる可能性が高まります。そうなれば、更なる株価下落は免れないでしょう。つまり、配当利回りにしろ、優待利回りにしろ、利回りだけ見て飛びつくと資産を減らしてしまいかねません。業績は好調なのか、財務は健全なのかの確認は必須です。
ところで、日本株は近年、株主優待を廃止して配当金を増額する企業が増えています。株主優待は廃止までは行かなくとも、改悪されるケースは意外と多い印象です。よって、配当利回りを重視しつつ、優待はプラスアルファで考えておく方が良いと思います。
「連続増配」「累進配当」の高配当株を狙え
企業は業績好調なときなどに配当金を増やす「増配」を行うことがあります。業績が堅調に推移している企業は、増配を継続的に繰り返すので、配当利回りがあまり高くない時に購入した場合でも、長期で保有すれば配当利回りが10%以上のお宝銘柄になることも夢ではありません。
配当利回りの計算式は上述のとおりですが、投資家自身が保有する目線での実質的な配当利回り(実質配当利回り)は、「年間配当金÷株価(購入時)×100(%)」となります。
例えば、以下の株を購入したとします。
購入時
- 株価:3,000円
- 配当金:60円
- 配当利回り:2%
現時点では以下の状態になったとします。
現時点
- 株価:4,000円
- 配当金:100円
- 配当利回り:2.5%
現時点でこの株を購入する人にとっては配当利回りが2.5%ですが、自分の目線では、100円÷3,000円×100=3.3%になるというわけです。
つまり、保有している銘柄が連続増配することによって実質的な配当利回りもどんどんアップしていきます。人気のある高配当株は購入時点の配当利回りが2%程度になっていることもありますが、連続増配する銘柄であれば、実質配当利回りが10%を超える高配当銘柄になる可能性もあるというわけです。
また、毎期のように増配はしていなくても、減配せず維持できるかどうかも重要。減配せず、増配や配当金を維持する銘柄を「累進配当」と言います。長い間、累進配当を実施している株なら、突然減配となったり無配になったりする可能性が低いので、高配当株投資をする上で注目ポイントになります。
下図は、日本株の主な累進配当銘柄をまとめたものです。
<日本株の主な累進配当銘柄>
最近は累進配当を表明する企業が増えています。数年先まで受け取れる最低限の配当金を予想することができるのは安心感につながるでしょう。累進配当に関する情報は企業サイトの「株主・投資家向け情報」や「中期経営計画」などで表明されていることが多いので、気になる企業があった場合はチェックしましょう。
長期保有を前提で高配当株に投資するのであれば、「連続増配」「累進配当」の株に投資した方がベターです。
一生持ち続けたい、“優良”な高配当銘柄の選び方
優待はあくまでもプラスアルファで考え、"優良"な高配当株を選ぶのがベターだと思っています。"優良"な高配当株を選ぶポイントは次のとおりです。
その1:配当利回り2%以上をチェック
配当利回り3%以上を条件にすると、“優良”な高配当株を逃す可能性が高まります。人気が集まると株価が高くなり、配当利回りは低くなります。よって、配当利回り2%以上を条件に検索して、“優良”な高配当株を探せるようにフォローしましょう。配当利回りは銘柄選びの最初のフィルターです。
その2:「連続増配」「累進配当」かどうか
一般的な傾向として、「業績が良い→増配」「業績が悪化→減配」となります。1株あたりの配当金の推移をチェックすれば、ある程度、その企業が毎年しっかりと利益を出し続けているどうかをスクリーニング(ふるいわけ)できます。また、減配していない銘柄も安定した経営が続いているといえます。
その3:配当性向は30〜50%が目安
企業の最終的な利益である「当期純利益」から、配当金として分配された割合を示した指標が「配当性向」です。計算式は「配当金総額÷当期純利益×100(%)」です。
配当性向が高ければ、高いほど良いというわけでもありません。利益は、設備や研究開発などに投資することで、企業の成長を促します。配当性向が高い企業は、事業拡大の好機を逃しているといえます。そうなると、高い配当を出し続けられるかどうかの継続性にも関わってきます。
配当性向は業界によって平均値に差がありますが、30~50%くらいがちょうどいいと考えています。
なお、配当性向が100%を超えている場合や「-」と表記されている場合は要注意です。100%を超えるということは、当期純利益を超えて配当金を出しているということですし、「-」となっている場合は、当期純損失なのに配当金を出していることを意味します。
連続増配株や累進配当株の一部には時々こういった銘柄が出てきますが、なぜ、そうまでして配当金を支払うかというと、減配(配当金が減る)や無配(配当金がない)になると一気に株が売却される傾向にあるためです。つまり、株価急落を防ぐために支払うのです。
その4:売上高・営業利益が両方とも右肩上がりで成長
“優良”な高配当株を見つけるうえで、最も重要なのは「売上高」と「営業利益」が両方とも右肩上がりで増えているかどうか。営業利益は売上原価と販売管理費を差し引いたものであり、本業の収益です。営業利益だけが右肩上がりの企業は、販売管理費(人件費)削減によるものです。企業の成長には「人材(人財)」が欠かせません。
売上高と営業利益がともに、過去3〜5期分の実績と今後の1〜2期分の予想が伸び続けている高配当株であれば、株価の成長、連続増配や累進配当の期待も高まります。2期分の予想をチェックするならば「会社四季報」が便利です。
その5:1株あたり利益(EPS)が右肩上がりで成長
1株あたり利益(EPS)とは、最終的な利益である当期純利益を発行済み株式数で割ったもの。そもそも、配当金の源泉は当期純利益なので、ここをチェックしないに訳にはいきません。EPSは、1株あたりいくら儲けているのか収益性を見る指標であり、株主にとっては投資した分で利益がしっかりと出せているかどうかを見るのに重要な指標です。EPSが年々増えている企業は堅実に成長していることを表し、増配の期待も高まります。
頼藤がスクリーニングした銘柄5選
以上の条件を踏まえて、スクリーニングした銘柄を5つ紹介します。
優待はあくまでもプラスアルファで考えていますので、優待がない銘柄も含んでいます。
(以下、2025年7月17日時点の情報に基づいて記載)
小松製作所(6301)
建設・鉱山機械などの生産・販売で世界シェア2位。連結配当性向40%以上の方針
- 【権利確定月】3月
- 【株価】4,859円
- 【予想配当利回り】3.965(予想配当金:190円)
- 【優待内容】「300株以上」かつ「3年以上」保有でオリジナルミニチュアがもらえる
豊田通商(8015)
トヨタグループの総合商社。安定した事業構成で14期連続増配中。2024年3月期から2026年3月期までの3年間、累進配当を実施し、配当性向30%以上の方針
- 【権利確定月】3月
- 【株価】3,256円
- 【予想配当利回り】3.41%(予想配当金:110円)
- 【優待内容】無し
三菱HCキャピタル(8593)
大手総合リース会社。配当金を25期連続増配中。「配当性向40%以上」を掲げる
- 【権利確定月】3月
- 【株価】1,094円
- 【予想配当利回り】4.18%(予想配当金:45円)
- 【優待内容】無し
NTT(9432)
通信インフラの中核。利回り・優待ともに優秀。13期連続増配中
- 【権利確定月】3月
- 【株価】150.4円
- 【予想配当利回り】3.53%(予想配当金:5.3円)
- 【優待内容】
「100株以上」かつ「2年以上」保有でdポイント1,500ポイント、
「100株以上」かつ「5年以上」保有でdポイント3,000ポイント - 【優待利回り】
「100株以上」かつ「2年以上」:9.97%、
「100株以上」かつ「5年以上」:19.95% - 【実質利回り】
「100株以上」かつ「2年以上」:13.50%、
「100株以上」かつ「5年以上」:23.48%
KDDI (9433)
auでおなじみの総合通信会社。23期連続増配中。金融など非通信事業も展開
- 【権利確定月】3月
- 【株価】2,455.5円
- 【予想配当利回り】3.30%(予想配当金:80円)
- 【優待内容】
「200株以上」かつ「1年以上」保有で2,000円相当、
「200株以上」かつ「5年以上」保有で3,000円相当 - 【優待利回り】
「200株以上」かつ「1年以上」:0.41%、
「200株以上」かつ「5年以上」:0.61% - 【実質利回り】
「200株以上」かつ「1年以上」:3.71%、
「200株以上」かつ「5年以上」:3.91%
*本記事で紹介した個別銘柄については、あくまでも参考として申し述べたものです。投資の最終決定は各自の責任でお願いいたします。
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