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公開日: 2025.07.10

不動産投資に資格は必要? 取得メリットや役立つ資格、注意点を紹介

監修:
柴田充輝 (1級ファイナンシャルプランニング技能士、社会保険労務士)
不動産投資に資格は必要? 取得メリットや役立つ資格、注意点を紹介

不動産投資を始めたいけれど、法的知識や税務面での不安から「資格は必要なのか」と考えていませんか?

結論、不動産投資に資格は必須ではありません。しかし、宅地建物取引士をはじめとする資格を取得することで、体系的な知識が身につき投資判断の精度が向上する可能性があります。

本記事では、不動産投資において資格を取得するメリットや役立つ資格、注意点などを解説します。

不動産投資に資格は必要?

 

不動産投資を始めるために、必ずしも資格は必要ありません。多くの投資家は資格を持たないまま不動産投資を開始し、利益を出すことに成功しています。

専門的な手続き、たとえば、不動産物件の所有者に対して義務付けられている不動産登記などにおいては、司法書士に依頼するなど、プロの力を借りることで対応できます。とはいえ、税金や法律などの知識は投資判断やトラブル回避に役立つため、資格取得を通じて学びを深めるのは有効です。

資格はあくまで知識習得の手段であり、取得そのものが成功を保証するわけではないため、目的に応じて上手に活用することが重要です。

不動産投資で資格を取得するメリット

 

不動産投資で資格を取得するメリットは主に以下の3つです。

  1. 体系的に専門知識を身につけられる
  2. 取引相手からの信用を得られる
  3. 物件選定の精度が高まる

順番に解説します。

1. 体系的に専門知識を身につけられる

不動産関連の資格を取得すると、不動産投資に必要な法律や税制、契約、管理運営などの知識を体系的に学べます。独学では情報が断片的になりがちですが、資格用の教材や過去問を活用することで、重要なポイントを効率よく習得できます。

不動産会社の提案内容が妥当かを判断したり、契約条件の良し悪しを見極めたりと、実践的な判断力を養える点もメリットです。基礎から応用まで段階的に学べるため、投資初心者でも安心して知識を深められ、失敗するリスクを軽減できます。

2. 取引相手からの信用を得られる

不動産投資に関連する資格を保有していることで、専門知識の裏付けがある投資家として、金融機関や不動産会社からの信用を得やすくなります。

融資を受ける際には、事業計画書の提出が求められることがあります。資格を通じて得た知識があれば、空室率やエリアの将来性などを加味した根拠のある収支シミュレーションを提示でき、金融機関からの評価も高まるでしょう。

また、不動産会社から見ても、価格交渉や条件交渉で的確な判断ができる投資家として評価します。その結果、円滑な取引や優良物件の紹介につなげられる可能性があります。

3. 物件選定の精度が高まる

不動産投資初心者は、不動産会社が提示する表面利回りの高さだけで物件を評価しがちです。しかし、安定したキャッシュフローを生む優良物件を見抜くには、実質利回りを算出しなければなりません。

実質利回りを算出するには、発生する費用や税金などの知識が必要です。資格取得のための学習を通じて知識を深めれば、物件ごとの収支を正確に記録・分析し、どの経費が収益を圧迫しているのかを明確に把握できます。

専門知識に基づいて収益性を分析すると、甘い見通しによる失敗を防げます。長期的に安定したリターンをもたらす物件を選ぶために、知識や分析力は欠かせません。

不動産・不動産投資に関する基礎知識を身につけられる資格6選

 

不動産・不動産投資に関する基礎知識を身につけられる資格は以下の6つです。

  1. 宅地建物取引士
  2. 賃貸不動産経営管理士
  3. マンション管理士
  4. 管理業務主任者
  5. 簿記
  6. ファイナンシャルプランナー

各資格の特徴を解説します。

1. 宅地建物取引士

宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引に必要な法律や税制の基礎を身につけるための国家資格です。不動産業界で働く人向けの資格ではありますが、不動産投資を行ううえでも大いに役立ちます。

勉強を通じて、不動産会社が説明する契約書の内容や税制の理解が深まるため、トラブル回避や交渉時の判断力向上につながります。合格率は16%前後とやや難易度は高めですが、不動産投資を本格的に始めたい人にとっては、最初に目指すべき資格といえるでしょう。

【関連リンク】
不動産投資に宅建はいらない? 取得するメリット・デメリットを解説

2. 賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理に関する専門知識と実務力が問われる国家資格です。入居者対応や建物管理、契約実務など、賃貸経営に直結する幅広い知識を体系的に学べるのが特徴です。

特に、賃貸物件を所有・運用する不動産投資家にとっては、トラブル予防や管理業者とのスムーズな連携に役立ちます。

3. マンション管理士

マンション管理士は、マンションの維持管理や管理組合運営に関する専門知識を持つ国家資格です。管理組合をはじめとする管理関係者をサポートする役割をになうので、管理規約の改正や大規模修繕計画、理事会や総会の運営などにも関与します。

資格を取得することで、管理会社の対応や費用の妥当性を判断でき、不利な契約を避けられます。特に区分マンション経営では、管理組合とのやり取りが不可避なため、知識があるだけで投資の安定性が高まります。

合格率は約10%と難易度は高めですが、実践的な知識を身につけられる価値のある資格です。

4. 管理業務主任者

管理業務主任者は、マンション管理会社管理組合に対して契約内容の説明や業務報告を行う際に必要とされる国家資格です。契約の重要事項説明などの独占業務が定められており、マンション管理に関する法律や設備、修繕、会計など幅広い知識を体系的に習得できます。

マンションを投資物件として所有する場合にも、管理会社からの報告内容を理解して不利な契約を見抜く知識が身につくため、有利に運営を進めやすくなります。試験はマンション管理士と出題範囲が重なる部分も多く、ダブル取得を目指す人も少なくありません。

5. 簿記

簿記は、収支の記録や財務状況の把握に欠かせないスキルで、不動産投資でも役立ちます。家賃収入や経費、ローン返済など不動産投資に関わる金銭の流れを整理できるようになるため、収益性や投資の健全性を可視化しやすくなります。

特に、65万円の特別控除を受ける青色申告を行う際には複式簿記の知識が必要となるため、確定申告の精度と節税効果を高めるうえでも有利です。初心者がまず取得を目指すことが多い日商簿記3級でも十分な実用性があり、キャッシュフローの理解や帳簿付けの基礎を身につけたい初心者におすすめです。確定申告や収支の管理を税理士に任せる場合でも、自分で数字を理解できることが経営判断の力になります。

【関連リンク】
​​不動産投資に確定申告は必要? やり方から税理士への依頼料まで解説

6. ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用・税金・保険・相続・不動産など幅広いお金の知識を体系的に身につける資格です。不動産投資単体ではなく、人生全体の資産形成の一環として不動産を捉える視点を養えます。

資金計画やキャッシュフロー管理、税制理解に役立ち、長期的な投資判断に強みを発揮します。不動産投資に加え、家計全体の見直しや資産運用を考える人に適した資格です。

国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)と、民間資格であるAFP、CFP®があります。

不動産・不動産投資の実務に関する資格5選

 

不動産・不動産投資の実務に関する資格は以下の5つです。

  1. 不動産実務検定
  2. 投資不動産取引士
  3. ホームインスペクター
  4. 土地活用プランナー
  5. サブリース建物取扱主任者

各資格の特徴を解説します。

1. 不動産実務検定

不動産実務検定は、不動産投資や賃貸経営に必要な知識を体系的に学べる民間資格です。契約の基礎から敷金精算、家賃滞納対策、満室経営のノウハウまで、不動産オーナーに求められる実践的スキルを幅広くカバーします。

2級と1級に分かれており、2級は不動産投資初心者向けで比較的やさしめです。全国で開催される認定講座や一般試験を通じて取得可能で、これから賃貸経営を始めたい人や実務に自信をつけたい投資家にとって、基礎固めに適した資格といえるでしょう。

2 .投資不動産取引士

投資不動産取引士は、投資用不動産の取引に特化した民間資格です。売買や仲介、契約内容のチェック、税制など幅広い知識を身につけられます。

投資用物件は居住用と異なり、利回りや入居者対応など独自の視点が求められるため、実務に即した専門性が強みです。資格を取得することで、物件購入時のリスク判断や適切な契約判断ができるようになり、トラブルを未然に防止できます。

3. ホームインスペクター

ホームインスペクター(住宅診断士)は、建物の状態や劣化を第三者目線で診断し、修繕の必要性や費用を見極める専門家です。不動産投資では、物件の外観だけで判断すると将来的な修繕リスクを見落とす恐れがありますが、この資格を活かすことで、購入前に正確な状態を把握しやすくなります。

建築士が取得できる「既存住宅状況調査技術者」の資格とあわせて活用すれば、住宅の劣化状況を明確に調査・報告することが可能となり、投資判断の精度も高まります。見えない不具合を見抜き、長期保有におけるトラブルを未然に防ぐ手段として、実務的な資格といえるでしょう。

4. 土地活用プランナー

土地活用プランナーは、土地の形状や立地条件を踏まえ、最適な活用法を提案できる専門家を認定する民間資格です。税制・法務・建築・マーケティングなど、幅広い知識をもとに収益性やリスクを分析し、土地所有者の目的に応じた活用方法を設計できます。

不動産会社からの提案内容を鵜呑みにせず、自ら判断する力を養いたい人に適しています。合格率は約70%と高めで、比較的取り組みやすい実務資格です。

5. サブリース建物取扱主任者

サブリース建物取扱主任者は、サブリース契約における法的ルールや説明義務、リスク管理などを学べる民間資格です。サブリースは不動産会社が物件を借り上げて第三者に再貸付けする仕組みで、安定収入を見込める一方、契約内容を誤るとトラブルに発展する恐れがあります。

本資格を通じて、長期収支計画の立て方やコンプライアンスの知識が身につき、不利な契約を回避できます。取得方法はWeb講座やDVD講習を受講後、レポート提出で修了となるため、取り組みやすいのも特徴です。

不動産投資に関する高難易度の資格2選

 

不動産投資に関する高難易度の資格は以下の2つです。

  1. 不動産鑑定士
  2. 司法書士

具体的に解説します。

1. 不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の経済的価値を公正に評価する専門家で、地価公示や相続評価といった公的業務も担う「三大国家資格」の一つです。不動産の価格が妥当かを見極める力は、投資判断を誤らないための大きな武器になります。

試験では、民法・会計・経済学など広範な知識が問われ、短答・論文の2段階で試験が行われます。合格率は短答式試験が約35%、論文式試験が約17%です。ただし、すべての投資家が取得を目指す必要はなく、必要な知識を選択的に学ぶだけでも十分な効果が得られます。

2. 司法書士

司法書士は、不動産登記や抵当権の設定・抹消など、法律に基づく重要な手続きを担う法律専門職です。不動産の売買や相続時には登記変更が必要なため、登記の正しい知識は不動産投資でも強力な武器になります。

特に、権利関係のトラブルや法令違反を未然に防ぐためには、専門家でなくとも基本を知っておくことが大切です。合格率は5%程度と難易度は高いですが、資格取得を目指さずとも学習を通じて得られる知識は実務で役立ちます。

不動産投資に関する資格を取得する際の注意点

 

不動産投資に関する資格を取得する際は以下の3点に注意が必要です。

  1. 手段と目的を間違えない
  2. コストや時間がかかる
  3. 必ず成功するとは限らない

順番に詳しく解説します。

1. 手段と目的を間違えない

不動産投資の成功に資格は必須ではありません。大切なのは、「知識を得て投資に活かす」という本来の目的を見失わないことです。

資格の勉強に没頭しすぎて、不動産の購入タイミングを逃してしまっては本末転倒です。自身の投資目的や戦略に合った知識を効率的に学び、資格はあくまで手段として活用する意識を持ちましょう。

2. コストや時間がかかる

不動産投資に役立つ資格の多くは、取得までにまとまった勉強時間と費用を要します。たとえ難易度の低い資格でも、テキスト代や講座費用に加え、学習にかかる時間は軽視できません。

特に不動産鑑定士や司法書士のような高難度資格では、数十万円の学習費用と数千時間以上の学習が必要になるケースもあります。本業との両立は難しくなる可能性もあるでしょう。

資格の勉強に没頭しすぎて、投資判断が遅れてしまっては意味がありません。時間や費用をかける前に、目的に見合うかどうか慎重に見極めることが大切です。

3. 必ず成功するとは限らない

資格を取得したからといって、不動産投資が必ずうまくいくわけではありません。資格はあくまで知識を身につける手段であり、実際の投資現場では経験や感覚、判断力が求められます。空室リスクや物件価格の変動、地域ごとの需要変化など、想定外のリスクに直面することも多々あります。

また、市場の動向や金融情勢は常に変化しており、資格取得時に得た知識だけでは対応できないケースも少なくありません。不動産投資の成果は、物件選びや資金計画、タイミングといった複合的な要因によって左右されるためです。資格はあくまで意思決定を支える材料の一つとして捉え、現場感覚や情報収集力を磨く努力が欠かせません。

必要に応じて資格を取得して不動産投資を成功させよう

不動産投資において資格取得は必須ではありませんが、体系的な知識習得と信用力向上のメリットは大きいです。初心者には、宅地建物取引士や賃貸不動産経営管理士などの資格が適しています。

資格取得はあくまでも手段である点に留意し、コストと時間を考慮して選択することが重要です。資格があれば必ず成功するわけではなく、実践での活用や経験を積むことが不可欠です。

自分の投資スタイルと目標に合わせて必要な資格を取得し、法的リスクを回避しながら安定したキャッシュフローを確保しましょう。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

この記事を監修した人

柴田充輝 柴田充輝 1級ファイナンシャルプランニング技能士、社会保険労務士

厚生労働省や不動産業界での勤務を通じて社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。 FP1級と社会保険労務士資格を活かして多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。現在はWebライターとして金融・不動産系の記事を中心に執筆しており、1,200記事以上の執筆実績がある。自身でも株式や不動産への投資を行っており、実体験を踏まえて記事制作・監修に携わっている。

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