アメリカ不動産投資のメリット・デメリット
アメリカは言わずと知れた世界最大の経済大国です。移民も多く、不動産投資先として魅力に感じている人も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、アメリカ不動産投資のメリット・デメリットから、投資先の都市選びのポイントとおすすめ都市例まで詳しく紹介します。
アメリカ不動産投資のメリット
不動産市場の成長実績
アメリカの住宅価格はこれまで着実に成長してきました。アメリカの住宅価格に関する代表的な指標であり、全米の主要都市圏における一戸建て住宅の再販価格を基に住宅価格の変動を算出しているS&Pコアロジック・ケース・シラー全米住宅価格NSA指数を基に住宅価格の長期的推移を確認してみると、全米(U.S. National)、代表20都市(20-city)共に過去10年で2倍程度になっていることがわかります。
■住宅価格指数の推移 (2012年7月〜2022年7月)
本指標は2000年1月の価格を100として算出していますので、20年程度のスパンで見ると3倍になっている計算になります。
今後も高い成長期待がある
今後についても、高い成長の期待があります。理由の一つは人口増加です。アメリカの人口は右肩上がりで伸び続けています。
移民の受け入れにも積極的で、先進国の中では珍しく長期にわたり人口増加が続くとされています。国連の将来人口の予測を確認してみると、日本が人口減少を続ける一方、アメリカは毎年130万人程度の人口増加が続く見込みで、2022年現在約3.4億人の人口が2050年時点では3.8億人になるとされています(下図参照)。
■将来人口の予測 (単位:千人, 2022年 〜 2050年)
住宅用不動産の需要は人口により決まりますが、人口増加とともに住宅需要が長期的に伸びることが見込まれることは、値崩れの心配も少なく大いに期待が持てる点といえます。
また、経済に関しても世界有数の経済大国でありながら、さらに成長を続けておりとどまるところを知りません。一人あたりGDPの推移を日本と比較すると、日本が低成長により2000年以降ほとんど成長できておらず$40,000近辺にとどまっているのに対し、アメリカの一人あたりGDPは増加を続けており、2027年には$90,000に達する見込みとなっています。
経済の成長により、物価と共に住宅価格が上がるだけでなく、可処分所得の伸びに連動し賃料も高くなるため、キャピタルゲイン・インカムゲイン共に期待できるといえます。
■一人あたりGDPの推移
カントリーリスクの低さ
アメリカは世界有数の先進国として政治・経済的なリスクが小さいこともメリットとして挙げられます。不動産市場も成熟しており、新興国のように突然法律が変わったり、政情不安で資金回収が困難になったりするといった可能性は極めて低く、カントリーリスクが極めて低い国といえます。不動産取引に関する制度も整備されており、この点は安心して投資できるといえるでしょう。
事実、世界各国の不動産市場の透明度を評価した指標として、世界最大の総合不動産サービス会社の一つであるジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)社とラサール・インベストメント・マネージメント社が公表しているグローバル不動産透明度インデックスがありますが、2022年度版ランキングにおいて、アメリカはトップのイギリスに次いで2位にランクインしています。
外国人に対する規制なく不動産を所有できる
東南アジア諸国など外国人に対する不動産規制がある国もあるなか、アメリカでは外国人が不動産を購入・所有することに対する規制が基本的にありません(近年、安全保障の観点から一部規制が導入されたりもしていますが、個人の不動産投資の観点から考慮すべきものとはいえません)。
外国人でも土地も所有することが可能ですし、不動産価格の下限規制もない点は日本人投資家にとっても安心できる点でしょう。
建物の価値が落ちにくい
日本の建物は経年劣化という考えが一般的で、不動産の価値は落ちていくものとされています。一方、アメリカでは住宅は古い建物でもリノベーションして長い間活用するという考え方が一般的で、実際に市場に流通する不動産の70%以上が中古物件となっています。
値崩れの心配が少ないだけでなく、立地が良く資産価値の高い物件であれば、適切にメンテナンスをすれば建物の資産価値を上げていきキャピタルゲインを狙うことも十分可能です。
ローン(融資)に積極的な日本国内の金融機関が多い
アメリカに居住していないと現地の金融機関でローンを組むのは難しいのが現状です。そんな中にあって、日本国内の金融機関では世界の中でもアメリカに限っては融資に積極的で、いくつもの金融機関や銀行がローン商品を提供しています。
アメリカ不動産投資のデメリット
不動産価格が高騰
1つ目はアメリカでは不動産価格の上昇が続いた結果、すでに手が届かないレベルまで高くなってしまっている可能性がある点です。アメリカでの不動産価格の高騰についてはご紹介した通りですが、現在の実際の価格はどうなっているのでしょうか。
全米で不動産仲介サービスを展開するRedfin社のデータによると、2021年12月時点の各都市の販売価格(中央値)は以下の通りです。特にIT産業が多数集積するサンフランシスコや大都市であるニューヨーク、ロサンゼルスといった都市では不動産価格が高騰しており、サンフランシスコが142.5万ドル、ロサンゼルスが95万ドル、ニューヨークが80万ドルとなっており、現地の人でも物件の購入が難しくなっているといわれます。
住宅価格の上昇に加え、日本人投資家の場合は為替の影響も加わります。ドル・円の為替では円安が進行しており、2022年年初には1ドル110円程度であったものが、本稿執筆時点である2022年10月現在では1ドル150円を超えています。
物件価格を1ドル150円で円に換算し、円ベースで購入にあたり必要な費用を確認してみると、サンフランシスコが約2.1億円、ロサンゼルスが約1.4億円、ニューヨークが約1.2億円となっています。中央値でこの価格ですので、日本人にとってアメリカへの不動産投資は従来より手が届きにくくなっていることは間違いありません。
■物件の販売価格 (中央値)
都市名 | 物件価格 | 物件価格 (円) |
---|---|---|
サンフランシスコ | 142.5万ドル | 2.14億円 |
ロサンゼルス | 95万ドル | 1.43億円 |
ニューヨーク | 80万ドル | 1.2億円 |
ボストン | 73.5万ドル | 1.1億円 |
ホノルル | 70万ドル | 1.05億円 |
ワシントン | 62.1万ドル | 9.3千万円 |
デンバー | 58万ドル | 8.7千万円 |
マイアミ | 53万ドル | 8千万円 |
全米平均 | 40.3万ドル | 6千万円 |
ミネアポリス | 33.2万ドル | 5千万円 |
参照:Housing Market Data (Redfin)のデータ(2022年10月27日時点)
※日本円価格は1ドル150円として計算
またインフレに伴い、物件価格だけでなく現地の管理会社へ物件管理を依頼したり建物の状態の調査・診断を依頼したりする費用も高騰しているため、実際の投資ではトータルでかかる費用はさらに高くなることを認識しておく必要があります。
減価償却による節税効果は薄くなっている
従来、海外不動産投資の魅力の一つに海外の物件購入による節税効果がありました。しかし、2020年の税制改正に伴い、海外の中古不動産取得による減価償却費について、日本国内における所得との損益通算ができなくなり、税制改正以前に比べるとアメリカ不動産の節税効果が薄くなっているのが実情です。
本件については「海外の不動産投資で節税できる? 税制改正の内容や対策」の記事にて、税制改正の内容について紹介しているので詳しくはそちらを確認してみてください。
税理士が解説! 富裕層はなぜアメリカ不動産を買うのか?
アメリカ不動産投資における投資先都市の選び方とおすすめの都市例
不動産価格の高騰により、大都市を中心に不動産投資の投資先として選ぶことが難しくなっていることをお伝えしました。では、アメリカ不動産への投資はもはやできなくなっているのでしょうか。また、もし可能だとするとどのように投資先を探せばいいのでしょうか。
結論としては、メリットの箇所でご説明した通りアメリカは経済・人口ともに長期にわたり増加傾向であり不動産の投資先としてまだまだ有望であり続けているといえます。
都市選びのポイントとしては、大都市よりも地方都市で、雇用や賃料が増加傾向な都市などは有望であるでしょう。ここでは、地方都市も含めたアメリカの主要都市の物件について、投資先の検討方法の一例をご紹介します。下図は先ほどのRedfin社の住宅販売価格・賃料のデータを基に全米主要都市を物件の買いやすさと収益性に基づき分類したものになります。バブルの大きさは賃料を表しています。
こうして分類してみると、
- 西海岸都市は物件価格が高く利回りも低くなっており、買いやすさや利回りの観点で他に劣る
- 東海岸の物件は西海岸に比べると買いやすいものの、家賃(=バブルの大きさ)は西海岸の都市と同等ほどとなっており今後の家賃の値上がりを通じた物件価格の値上がりは見込みにくい
ことが読み取れるかと思います。
このように考えるとグラフの左下に位置している地方都市は狙い目といえるのではないでしょうか。
■住宅の購入しやすさ・収益性に基づく全米主要都市の分類
内陸部といっても多くの都市がある中で、どのように選べばいいのでしょうか。不動産の原則から考えれば、今後も継続して人口や雇用が増えるような地域は不動産の需要や家賃の伸びが期待できるといえます。また、アメリカは地震や津波のリスクは少ないもののハリケーンやサイクロンといった天災が発生することもありますので、天災リスクについても注意するといいでしょう。
おすすめの都市を例に挙げますと、ミネアポリスやメンフィスです。メンフィスは大規模ビジネスへの優遇税制が行われ、大企業が続々と誘致されています。必然的にそこで働く人や仕事が集まりますので、不動産の需要も必然的に増えます。地理的にも飛行機でニューヨークから3時間、シカゴやヒューストンから1時間でアクセスできる、天災リスクも少ない地方都市です。
また、インフラも整っており住宅維持費も比較的安いため、実質利回りで見てもニューヨークやマイアミなどの都市よりも高くなることが期待できます。
日本人に人気のハワイもおすすめ!
海外の不動産投資先を選ぶうえでは、実際に自分の肌感覚として「ここに住みたい」「また行きたい」と思える場所を選ぶことも大事です。そういった点では王道のハワイもおすすめです。
表面利回りで比較しますと内陸部の都市よりは低くなりますが、土地が限られる中、不動産価格は長期的に上昇しており、今後もハワイ在住人口や海外からの旅行者が増え続ける結果、住宅需要は堅調であると思われます。
キャピタルゲインを狙った投資先としては有望ですし、セカンドハウスとして利用しつつ、不在時には旅行者向けに貸し出す、といった使い方も考えられます。やはり、ハワイは日本人にとってなじみ深く、観光や旅行も兼ねた使い方ができるのはとても魅力的ですので、一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。
ハワイ不動産投資のメリット・デメリット
RENOSY海外不動産投資のメリット・デメリットを、データを交えながらご説明します。 こちらよりお問い合わせいただくことで、より詳しい内容がわかります。
※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
関連キーワード