遺産相続の手続きの種類と期限。注意点、忘れがちな請求などを確認
遺産相続の手続きにはどのような種類があるのでしょうか? 相続税の申告や準確定申告には期限があり、期限を過ぎるとペナルティーが科せられます。年金や健康保険の手続きも早めに済ませる必要があるでしょう。手続きの種類と注意点を解説します。
遺産相続手続きで重要な3つのポイント
身内が亡くなった場合、遺産相続に関わる手続きを行う必要があります。複数の手続きが同時期に発生するため、残された者同士で協力しながら、迅速に対処しましょう。
1. 手続きの期限を確認
遺産相続の手続きといってもさまざまなものがあり、それぞれに異なる期限が設けられています。遅延なく手続きを完了できるように、無理のないスケジュールを組みましょう。以下は代表的な手続きの一例です。
- 相続放棄の申述
- 相続税の申告
- 準確定申告
民法で定められている法定相続人は、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出することで、「相続放棄」が選択できます。申述期間は「自分が相続人になったことを知った日から3カ月以内」です。
他方、故人の財産を引き継いだ相続人には、相続税の納税義務があります(基礎控除額あり)。相続税を計算したうえで「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」に、申告・納税を行うのが原則です。
故人が生前に収入を得て納税者だった場合、相続人は「生前の所得税の確定申告」をしなければなりません(準確定申告)。年の中途で亡くなった場合、申告・納税の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内」です。
2. 遺産の分け方
故人が遺言書を残しているケースでは、遺言書の内容に従って遺産を分割するのが基本です。遺言書がない場合は、法定相続人全員で協議をし、誰が何をどのように引き継ぐかを決定します。
協議を始めるに当たり、代表的な遺産の分け方を確認しておきましょう。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
「現物分割」は、現物のまま分割する方法です。法定相続分(民法で定められた相続割合)に従って分割するのが基本ですが、相続人全員の同意があればその限りではありません。
「換価分割」は現物の売却によって得た「売却金」を分ける方法です。土地や不動産といった物理的に分割が難しい財産に用いられます。
「代償分割」は、代表者が財産を取得する代わりに、他の相続人に代償財産を与える方法です。被相続人の家に住んでいた相続人がそのまま住み続ける場合などに利用されるケースが多いでしょう。
3. 必要な書類を収集
手続きには、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票の除票といったさまざまな添付書類が必要となり、書類集めだけでも相当の時間がかかります。人によっては1~2カ月を要する場合もあるようです。
役場の受付時間は平日の日中が基本なので、働いている人は仕事の合間を縫って出向かなければなりません。特に「法定相続人の印鑑証明書」は、以下のようなさまざまな場面で必要になります。慌ただしくなる前に取得しておくのが望ましいでしょう。
- 遺産分割協議書の作成
- 相続税の申告
- 不動産の登記名義の変更(相続登記)
- 金融機関における預貯金の相続手続き
- 死亡保険金の受け取り
年金や健康保険に関する手続き
残された家族は、被相続人の未支給年金や高額療養費制度の還付金の手続きを忘れずに行いましょう。未支給年金は相続財産に該当しませんが、高額療養費制度の還付金は相続財産に含まれます。
未支給年金の請求
公的年金は2カ月に1回、偶数月の15日に対象者の金融機関口座に振り込まれるのが一般的です。
年金受給者が偶数月の15日より前に亡くなると3カ月分、15日以降に亡くなると1カ月分、奇数月に亡くなると2カ月分の未支給年金が発生します。
未支給年金は「故人と生計を同じくしていた配偶者や親族」が受け取れます。年金事務所または年金相談センターで、以下の届け出を行いましょう。
- 受給権者死亡届の届け出(日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は不要)
- 未支給年金請求の届け出
受給権者死亡届の届け出期日は「死亡日から10日以内(国民年金は14日以内)」です。届け出が遅れ、亡くなった日以降分の年金を受け取った場合は、返金の義務が生じます。年金の受給権には時効があるため、早めに請求手続きを行いましょう。
高額療養費制度の還付手続きなど
日本には、1カ月の医療費や薬代が一定の自己負担限度額を超えた場合、超えた金額を払い戻す「高額療養費制度」があります。
還付が発生する場合は、加入している保険者に対して忘れずに還付請求を行いましょう。還付金は、故人が生前に受け取るはずのものであるため、相続財産に該当します。
故人が国民健康保険の加入者であった場合、「死亡日から14日以内」に故人が住んでいた市区町村の役場に「国民健康保険資格喪失届」を提出し、加入者本人の保険証を返却します。
国民健康保険や健康保険の被保険者が亡くなると、保険者から埋葬をする人に対して「葬祭費」や「埋葬料」が支給されます。保険資格喪失届の提出時に、支給手続きも済ませておくと二度手間になりません。
死亡保険金の請求
故人が生命保険に加入している場合、保険の受取人になっている人は「死亡保険金」が受け取れます。保険会社に連絡して、死亡保険金の請求手続きを行いましょう。
請求方法と期限
死亡保険金受け取り事由が発生した場合、受取人が生命保険会社に連絡を入れます。請求のための資料が送付されるため、案内に従って請求手続きを進めましょう。
必要書類は保険会社によっても異なりますが、「保険証券」「被保険者の住民票」「受取人の戸籍抄本」「印鑑証明書」「医師の死亡診断書」「受取人の本人確認書類」などが必要です。
死亡保険金には請求期限があり、ほとんどは「被相続人が死亡した日から3年間」に設定されています(かんぽ生命は5年間)。
税金に注意
死亡保険金は契約者や受取人の違いにより、課される税金の種類が異なる点に注意しましょう。
- 契約者と被保険者が同一で、受取人が異なる(例:契約者と被保険者が夫、受取人が妻):相続税
- 契約者と受取人が同一(例:契約者が妻、被保険者が夫、受取人が妻):所得税
- 契約者・被保険者・受取人が異なる(例:契約者が妻・被保険者が夫・受取人が子):贈与税
契約者と被保険者が同一で、受取人が異なる場合は、相続税の課税対象です。ただし、死亡保険金は受取人の固有財産であるため、遺産分割の対象にはなりません。相続財産とみなして相続税を課税することから「みなし相続財産」とよばれています。
契約者と受取人が同一の場合は、所得税の課税対象です。一時金で受領した場合は「一時所得」として扱います。申告・納付期限は「死亡保険金を取得した年の翌年2月16日~3月15日」です。
被保険者・受取人が異なる場合は、贈与税が課税されます。贈与税の申告・納付期限は「死亡保険金の贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日」です。
遺言書の有無を確認
遺産分割について話し合う前に「遺言書の有無」を確認しましょう。遺言書がない場合は、法定相続人が財産を相続しますが、遺言書がある場合は「遺言者の意思」が優先されます。
遺言書の探し方
遺言書は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に大別されます。
自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で作成したもので、自宅や法務局に保管されるケースが大半です。法務局(遺言書保管所)にない場合は、思い当たる場所を探すしかありません。
公正証書遺言は、公証役場で作成された遺言書です。公証役場の「遺言検索システム」で一元管理されているため、公証役場の窓口で照会請求を行いましょう。
相続人が照会する際は、「遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本)」や「相続人であることが証明できる戸籍謄本」「本人確認書類」などが必要です。
公正証書遺言以外は遅滞なく検認を請求する
封印のある遺言書は、家庭裁判所にて開封しなければなりません。自宅で自筆証書遺言を見つけた場合は、その場で開封せずに「検認の申し立て」を行いましょう。
検認とは、家庭裁判所が相続人に対して遺言の存在や内容を知らせることです。相続人の立ち会いの下、裁判官が遺言書を開封し、その場で内容を確認します。検認のプロセスがない場合、遺言書の偽造や変造が行われる可能性があるでしょう。
なお、公正証書遺言と法務局で保管される自筆証書遺言については、検認が不要です。
遺言書の内容に納得できない場合
特定の相続人に特定の財産を相続させる旨が遺言書に記されているのであれば、遺言書に基づいて分割するのが原則です。ただし、以下のような条件がそろっている場合は、遺産分割協議により相続割合が決定できます。
- 遺言で遺産分割協議が禁じられていない
- すべての相続人・受遺者(遺言により財産を受け取る人)の同意が得られている
- 遺言執行者が同意している
ポイントは、受遺者が納得するかどうかです。受遺者が財産の多くを取得するようなケースにおいて、「話し合いで決めていい」と合意するケースは少ないでしょう。
遺留分侵害額請求権とは
「愛人にすべての財産を相続する」など、公平性に欠けた内容の遺言が残された場合、被相続人の配偶者・子ども・直系尊属(父母・祖父母など)は、受遺者・受贈者(贈与を受けた人)に対して「遺留分侵害額請求権」が行使できます。
遺留分とは、法律により各相続人に確保されている最低限度の財産です。配偶者や子どもは、被相続人と生計を一にしているケースが多く、不公平な遺言のために生活のすべを失ってしまう可能性もあります。
対象者が遺留分侵害額請求をした場合、一定割合の財産を取得できます。
- 相続人が直系尊属のみ:法定相続分の1/3
- 上記以外:法定相続分の1/2
- 兄弟姉妹:請求権なし
請求の期限は「相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったとき」から1年間です。請求された側は、遺留分を相手に返還しなければなりません。
口頭や電話で請求することもできますが、相手に時効を主張される恐れもあるため、「配達証明付き内容証明郵便」で通知するのが望ましいでしょう。
相続人や遺産の内容を確認
遺産分割協議に際し、「遺産調査」と「相続人調査」をするのが最初のステップです。「故人の財産はどのくらいあるのか」「誰が相続するのか」を正確に把握しない限り、遺産分割は前に進みません。
相続人の調査
民法で定められた相続人は「法定相続人」とよばれます。遺言書がない場合、故人の財産は法定相続人が引き継ぐのが原則です。
法定相続人は「配偶者」と「血族」です。故人の出生から死亡までの全部の戸籍謄本を取得したうえで、誰が法定相続人に該当するのか確認しましょう。
以下は、民法で定められた法定相続人の範囲です。法定相続人には以下のように相続の優先順位があり、上位順位の相続人がいない場合に、下位順位の相続人に相続権が移ります。
- 故人の配偶者:常に相続人になる
- 故人の子ども:第1順位
- 故人の直系尊属(父母・祖父母など):第2順位
- 故人の兄弟姉妹:第3順位
すべての法定相続人が確認できたら、相続人の相関図を作成しましょう。
戸籍収集の方法
法定相続人を証明するのは戸籍です。戸籍には、「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」があり、遺産相続の各種手続きで提出を求められます。
手続きによって必要な戸籍の種類は変わりますが、どの手続きでも必須といえるのが「戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)」です。
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求をします。本籍地が離れている場合は「郵送による請求」も可能です。また、市区町村によっては「コンビニのマルチコピー機での取得」もできます。
財産の調査
財産調査は、遺産がどれだけあるかを調査するプロセスです。遺産が確定しなければ、当然ながら分割もできません。
相続財産には、預貯金・不動産・車両・貴金属などの「プラスの財産」のほかに、借金・未払い金・保証債務などの「マイナスの財産」があります。財産調査を怠ると、相続人が多額の債務を引き継ぐ可能性があるでしょう。
財産の中に不動産や有価証券がある場合は、さまざまな方法を使って、その価値を査定する必要があります。調査や査定が難しい場合は、司法書士や行政書士、弁護士などの専門家にサポートを依頼しましょう。
預貯金や不動産の調べ方
故人の遺留品の中に、キャッシュカードや通帳、明細書があれば、当該の金融機関に連絡します。金融機関では、法定相続人であることが証明できれば、預金の有無や残高の照会が可能です。残高がある場合は「残高証明書」を発行してもらいましょう。
不動産に関しては、遺留品の中から「登記識別情報通知書(権利書)」を探します。毎年届く「固定資産税の納税通知書」からも、不動産の有無を確認できるでしょう。
不動産がある市区町村が絞り込めていれば、役場で「名寄帳」を取得する手もあります。名寄帳は市区町村が作成した固定資産課税台帳で、不動産の所有者が一覧表で確認できます。
不動産を所有している事実が判明した場合は、不動産ごとに「不動産登記簿謄本」と「固定資産評価証明書」を取得しておきましょう。
負債の調べ方
金融機関からの借入れは、当該の金融機関で確認できます。債権者からの催告通知によって借入先が判明するケースも珍しくありません。
見当がつかない場合は、「信用情報機関」に情報開示を求める手もあります。以下の機関では、クレジットカードやローン、割賦販売といった、個人の信用情報を管理しています。開示方法は、各機関のウェブサイトを確認しましょう。
- シー・アイ・シー(CIC)
- 日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
個人間の借入れは、遺留品から「借用書」や「金銭消費貸借契約書」を探すしかありません。預金通帳に「個人名への振込履歴」がないかもチェックしましょう。
遺産分割協議を行う
相続人調査と財産調査が完了したら、法定相続人の間で「遺産分割協議」を行うのが次のステップです。協議で意見がまとまらない場合、調停委員が当事者の間に入る場合もあります。協議の流れや注意点を確認しましょう。
法定相続人全員で遺産の分け方を話し合う
遺産分割協議は「法定相続人全員で行うこと」が絶対条件です。1人でも欠けると、協議内容は無効とされます。
具体的には、「遺産分割協議書」にすべての法定相続人が記名・押印(認印)することで、協議が成立します。遺産分割協議書がなければ、不動産や預貯金などの名義変更はできません。
遺言書がない場合、分割割合は以下の「法定相続分(民法が定めた相続割合)」を目安に決定するのが一般的です。子ども・直系尊属・兄弟姉妹が複数人いるときは、法定相続分を頭割りにします。
法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者と子ども | 配偶者が1/2・子どもが1/2 |
配偶者と直系尊属 | 配偶者が2/3・直系尊属が1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者が3/4・兄弟姉妹が1/4 |
もめてしまった場合
遺産分割協議が円滑に進まない場合、家庭裁判所での「遺産分割調停」や「遺産分割審判」へと進みます。
調停は話し合いによる解決方法です。調停委員がそれぞれの意見を聴取したうえで、全員が納得できる分割方法を検討します。調停が成立しない場合は、遺産分割審判によって裁判所が分割方法を決定します。
相続税の申告期限は、「相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内」です。分割方法が期限までに決まらない場合は、法定相続分で相続したものと仮定して相続税を納めます。
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などの制度は、遺産分割が確定しない限り適用されません。従って、遺産分割の確定後は、税額計算のやり直しや払い戻しで手間がかかることが予想されます。
相続した財産の名義変更を行う
遺産分割協議の終了後、相続人は相続した財産の名義変更を行わなければなりません。名義変更の方法は、相続した財産の種類によって異なります。
預貯金
口座名義人の死亡が確認できると、金融機関は該当する口座を凍結します。以降は、預貯金の相続手続きが行われるまで、お金の引き出しは一切できません。
預貯金を相続した人は、必要書類と一緒に「相続手続依頼書」を金融機関に提出します。複数人の戸籍謄本や法定相続人全員の印鑑証明書を求められるケースもあるため、必要書類は早めに確認をしておきましょう。手続き完了後、相続人に払い戻しが行われます。
預貯金の相続手続きに期限はありませんが、相続税の申告期限までに手続きを済ませるのが望ましいでしょう。
不動産
不動産を相続した人は、不動産の名義変更(相続登記)を行います。相続登記は、2024年4月1日以降は義務化される予定です。相続人は、「不動産の所有権の取得を知った日から3年以内」に、相続登記を行わなければなりません。
法改正以前の相続についても登記義務化の対象となるため、先延ばしをせずに手続きを進めましょう。相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。主な必要書類は以下の通りです。
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票
- 相続人の印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 遺産分割協議書
- 不動産関係書類(固定資産評価証明書など)
参考:あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~|法務省
株式など
故人が所有していた株式や債券、投資信託などは、故人の証券口座内では売却ができません。相続人の証券口座へ移管したうえで売却を行いましょう。
- 相続人が証券口座を開設する
- 移管手続きをする
- 売却の手続きをする
移管可能な証券口座を相続人が所有していない場合、口座開設から移管手続きの完了までにかかる日数は2~3週間程度です。
株式や債券の価格は日々変動するため、売却するタイミングによって、手にできる金額が異なります。株式を売却して利益が出ると、「譲渡所得税」が課税される点にも留意しましょう。
準確定申告と納税
故人が納税者であった場合、相続人は納税地の税務署に「準確定申告書」を提出し、所得税を納める必要があります。準確定申告が必要なケースや、申告のルールを見ていきましょう。
準確定申告とは
「準確定申告」とは、本来故人が行うべき確定申告を相続人が代わりに行うことです。相続人は「1月1日~死亡した日」までに確定した所得金額と税額を計算し、「相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内」に申告・納税をしなければなりません。
相続人が2人以上いる場合、以下のいずれかの方法により準確定申告書を提出します。提出先は「被相続人の死亡当時の納税地の税務署長」です。
- 各相続人の連署で提出する
- 他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出する(他の相続人に申告内容を通知しなければならない)
参考:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁
準確定申告が必要なケース
収入を得ていたすべての人が準確定申告の対象になるとは限りません。準確定申告が必要なのは、以下のようなケースです。
- 基礎控除額以上の事業所得や不動産所得がある人
- 給与所得が2,000万円以上ある人
- 2カ所以上から給与を受け取っている人
- 公的年金などの収入が400万円を超える人
- 外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある人
詳細は、国税庁のウェブサイトにある「確定申告が必要な方」を確認しましょう。
本来申告が不要な人でも、準確定申告により「還付金」が生じるケースがあります。医療費控除や住宅ローン控除、寄付金控除などは、準確定申告をしなければ還付は受けられません。
相続税申告と納税
故人から財産を受け継ぐと、人によっては相続税の申告と納税の義務が生じます。申告が必要かどうかはどのように判断すればよいのでしょうか? 判断のポイントと申告書の作成方法を解説します。
申告が必要か判断するには
相続税には非課税枠があります。基本的に、相続財産が「相続税の基礎控除額以下」であれば、申告・納税の必要はありません。
- 基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が5人の場合、基礎控除額は6,000万円(3,000万円+600万円×5人)です。
申告が必要か否か判断できない場合は、国税庁のウェブサイト「相続税の申告要否判定コーナー」を活用しましょう。相続財産の金額を入力すると、申告の可否を判断できます。
参考:【相続税の申告要否判定コーナー】-申告要否判定コーナートップ
申告書の作成方法
相続税の申告書の作成には、「紙の申告書を使う方法」と「国税電子申告・納税システム(e-Tax)を使う方法」の2パターンがあります。
紙の申告書は、国税庁のウェブサイトよりダウンロードが可能です。「税務署への持参」または「郵送」により提出しましょう。
国税電子申告・納税システム(e-Tax)を使う場合は「e-Taxソフト」または「民間の税務会計ソフト」で相続税の申告書を作成します。必要事項を入力するだけで、税額の計算が自動で行われるため、手書きよりも楽に作成できるはずです。
申告書に添付する書類は、適用される課税制度や特例の有無によって異なります。詳しくは税務署に問い合わせましょう。
相続税申告の注意点
初めての相続税申告は、必要以上に時間がかかる可能性があります。期限内に申告・納税を行えなかった場合は、どのようなペナルティーがあるのでしょうか? 申告に不安がある人は、早めに専門家に依頼しましょう。
財産の総額が大きい場合などは税理士に依頼しよう
相続財産の総額が億単位になる場合や、複数の不動産を所有している場合は、税理士に相談するのが賢明です。
相続財産の額が大きければ大きいほど、支払うべき税金も高くなります。ミスがあった際の追徴課税も相当な額になるため、プロの力を借りて正確に計算することが重要なのです。
とりわけ不動産の評価は素人では難しく、1人でやろうとすると膨大な時間と手間がかかるでしょう。
相続税にはさまざまな特例制度があり、特例の適用によって支払うべき税額が大きく変わります。適用漏れで余計な税金を払わないためにも、税理士へのサポート依頼を検討しましょう。
申告が遅れたらペナルティー
納付期限までに相続税を納めなかった場合、「無申告加算税」や「延滞税」が発生します。
無申告加算税は、確定申告を忘れたときのペナルティーです。納付すべき額は「税務調査の事前通知前」「事前通知後から税務調査前」「税務調査後」のタイミングによっても変わります。
税務署の調査を受ける前に納付をすれば5%に軽減されるため、できるだけ早く対処しましょう。申告期限から1カ月以内に自主申告した場合は、無申告加算税は課税されません。
無申告加算税とは別に、法定納期限の翌日から完納する日までは「延滞税」が生じます。延滞税の税率は以下の通りです。
- 2カ月を経過する日まで:「年率7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い方
- 2カ月を経過する日の翌日以降:「年率14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方
なお、災害によって申告期限までに提出できなかった場合は、「申告・納付期限の変更」が可能です。
参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
参考:延滞税の計算方法|国税庁
参考:1 申告期限の延長|国税庁
相続放棄をする場合
遺産を引き継ぎたくない法定相続人は「相続放棄」を選択する手もあります。相続放棄ができる期限が決まっているため、早めに決断して手続きを進めましょう。
相続放棄とは
相続放棄とは、故人の財産の一切を引き継がないことです。相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことになるため、遺産分割協議にも参加する必要がなくなります。
従って、「親族とのもめ事を避けたい」「マイナスの財産を継ぎたくない」といった場合に選択されるケースが多いようです。
相続放棄は、故人の財産に手をつけないことが前提です。財産の一部または全部を処分したり、形見分けで経済的価値の高いものをもらったりした場合、財産を無条件で引き継ぐ「単純承認」が成立してしまいます。
相続放棄をしても取得できるものは以下の通りです。
- 受取人が被相続人以外に指定されている死亡保険金・死亡退職金
- 遺族年金
- 未支給年金
- 香典
- 祭祀財産(仏壇・仏具・お墓など)
- 葬祭費・埋葬料
期限を過ぎると単純承認とみなされる
相続放棄をする際は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、「相続放棄の申述書」を提出します。
申述期限は「自己に相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」です。3カ月間は「熟慮期間」とよばれており、限定承認や相続放棄の選択ができます。
限定承認とは、相続で得たプラスの財産の限度内で、故人の債務などマイナスの財産を引き継ぐ方法です。故人のマイナスの財産がどれだけあるか見当がつかない場合に選択する人が多いようです。
申述期間を過ぎると単純承認が自動的に成立し、限定承認や相続放棄はできなくなります。「手続きが必要なことを知らなかった」「やり方がわからなかった」という理由は通用しません。
相続人になったときは、財産の状況をできるだけ早く調査し、相続の可否を決定する必要があるのです。
遺産相続は余裕を持って早めに動き出そう
遺産相続の手続きといっても、その内容は多岐にわたります。話し合いが円滑に進まなかったり、必要書類が準備できなかったりして期限切れにならないように、手続きの種類や流れを確認しておきましょう。
身内が亡くなったあとは、葬儀や後片付けなどで何かと忙しくなりますが、余裕を持って早めに動くことが肝要です。自分たちだけで対処ができない場合は、専門家の力を借りましょう。
※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
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