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作成日: 2022.07.22

贈与で発生する税金の計算方法。不動産の場合は評価額が必要

監修:
窪 孝史 (公認会計士・税理士/税理士法人オフィスネクスト)
贈与で発生する税金の計算方法。不動産の場合は評価額が必要

財産の贈与には贈与税が課されます。年間110万円の基礎控除がありますが、最高税率は55%と高く、人によっては納税資金を確保するのが難しい場合があります。今回は贈与税の計算方法や税金を軽減する特例措置、不動産を譲り受ける際の注意点を解説します。

贈与にかかる税金はいくら?

贈与にかかる税金はいくら?

預貯金や不動産、有価証券などの財産を個人から譲り受けた場合、受贈者(贈与を受けた人)には「贈与税」の支払い義務が生じます。贈与税の基本的な計算方法を確認しましょう。

贈与税の基本的な計算方法

贈与税は、贈与者ではなく、受贈者が支払う税金です。贈与税の課税方法には、暦年課税制度相続時精算課税制度があり、相続時精算課税は一定の条件を満たした場合にのみ選択ができます。

まずは、贈与税の計算の基本となる「暦年課税」を押さえておきましょう。暦年課税とは、その年の1月1日~12月31日に贈与された財産の合計額に税金を課す方式です。

受贈者は翌年の2月1日~3月15日に贈与税の申告を済ませ、納付しなければなりません。暦年課税には、年間110万円の「基礎控除」があり、以下の計算式で算出します。

  • 贈与税=(贈与額-110万円)×税率-控除額

また、安く不動産を手に入れた場合(低額譲渡)、当該財産の時価と譲渡価格との差額が贈与とみなされます。譲受人には「贈与税」、譲渡人には「みなし譲渡所得税」が課せられる点に注意しましょう。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

課税価格によって最高55%の税率

贈与税は、課税対象の額が一定額を超えた場合に、超過分にのみ高い税率を課すのが特徴です。この方法は「超過累進課税」とよばれ、相続税や所得税の計算にも使われています。

贈与税は、「生前贈与による相続税の課税逃れ」を防ぐのが目的です。超過累進課税では、財産が多い人ほど納税額が高くなるため、担税力に応じた税負担が公平になり「資産を再分配」できるというメリットがあります。以下は、一般贈与財産用(一般税率)の速算表です。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

祖父母からの贈与、成人の親子間の贈与

贈与税は、贈与者と受贈者の関係性によって、「一般贈与」と「特例贈与」に区別されます。以下の条件に当てはまる場合は特例贈与とみなされ、特例贈与財産用の特例税率が適用となります。

  • 受贈者:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上
  • 贈与者:直系尊属(父母や祖父母など)

以下は、特例贈与財産用(特例税率)の速算表です。特例贈与は一般贈与よりも、税率が低めに設定されているのがわかるでしょう。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

長期間の基礎控除額で贈与税が抑えられる?

長期間の基礎控除額で贈与税が抑えられる?

子どもや孫に財産を贈与する人であれば、少しでも贈与税を抑えたいと思うのは当然です。基礎控除の範囲内で毎年贈与を続けた場合、贈与税0円は実現できるのでしょうか?

毎年110万円までの贈与を続けた場合

1月1日~12月31日の間で110万円以下の贈与をすれば、贈与税はかかりません。実際、贈与額を毎年110万円以下に抑えながら、非課税で財産贈与をする人は少なくないようです。

ただし、毎年同じ金額を特定の人に贈与し続けていると、「定期贈与」とみなされるケースがあります。定期贈与とは、定期金給付契約に基づき、定期的に贈与(給付)を行うことです。

例えば、受贈者と贈与者との間で「20年間にわたり、毎年100万円の贈与を受ける」という約束をした場合、受贈者は「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、贈与税の課税対象となってしまうのです。

定期贈与ではなく暦年贈与であることを証明するには、贈与のたびに「贈与契約書」を交わし、契約書に基づいた贈与を行う必要があります。

なお「令和4年度税制改正大綱」おいては、限度額まで税負担がないことに対し「非課税措置のあり方を見直す必要がある」との言及がありました。

資産の再分配機能の確保や早期の世代間移転などが目的で、今後、最終的な税負担は、諸外国のように贈与税相続税の一本化へと進むでしょう。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

基礎控除額の注意点

基礎控除額の110万円は、受贈者1人あたりの控除額です。例えば、受贈者が祖父から150万円、父から50万円の財産贈与を受けた場合、合算した贈与額から基礎控除額を減算します。贈与1件ごとに控除が適用されるわけではない点に注意しましょう。

この場合、課税対象となるのは、90万円(200万円-110万円)です。基礎控除後の課税価格が200万円以下なので、10%の税率がかかります。従って、贈与税額は、9万円(90万円×10%)となる計算です。

一括で生前贈与したい場合は?

生前に一括贈与をすると多額の贈与税がかかり、受贈者は納税資金の確保ができない可能性があります。もし、受贈者(子や孫)が18歳以上で、贈与者が60歳以上の父母または祖父母である場合は「相続時精算課税」の選択が可能です。

相続時精算課税とは、一言でいえば税金の支払いを先延ばしできる制度です。2,500万円の特別控除額があるため、贈与時は税金の支払いが大きく軽減されるでしょう。

贈与者が亡くなったときには、相続財産の価額に本制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

なお、相続時精算課税を選択すると、その後の贈与のすべてに本制度が適用され、暦年課税への変更はできません。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

条件を満たせば税の負担なく贈与ができる

条件を満たせば税の負担なく贈与ができる

贈与税はすべての財産が対象となりますが、贈与の目的や用途によっては、一定の限度額において贈与税が非課税となります。具体的にどのような贈与が非課税となるのか、見ていきましょう。

教育資金

直系尊属から教育資金として一括贈与を受けた場合は、1,500万円までが非課税となります。教育資金とは、学費・教材費・文具費などに充てられる金銭のことです。

直系尊属は、受贈者の父母・祖父母・曽祖父母などを指し、叔父や叔母、配偶者の父母は含まれません。非課税となるには、以下のような一定の条件を満たす必要があります。

  • 受贈者の直系尊属からの贈与であること
  • 受贈者が30歳未満であること
  • 金融機関との間で教育資金管理契約を締結したうえで、教育資金非課税申告書を金融機関経由で税務署へ提出すること

適用される期間は2013年4月1日~2023年3月31日です。

参考:No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁

結婚・子育て資金

直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合は、贈与税の非課税措置が適用されます。結婚・子育て資金に該当するのは、挙式費用・新居費用・不妊治療に要する費用・子の医療費・保育料などです。

非課税限度額は1人につき1,000万円(結婚関連は300万円)で、主な条件は以下の通りです。

  • 受贈者の直系尊属からの贈与であること
  • 受贈者が18歳以上、50歳未満であること
  • 金融機関との間で結婚・子育て資金管理契約を締結したうえで、結婚・子育て資金非課税申告書を金融機関経由で税務署へ提出すること

適用される期間は2015年4月1日~2023年3月31日です。

参考:No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

住宅取得資金

2022年1月1日~2023年12月31日に、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の条件を満たすと贈与税が非課税となります。非課税限度額は、省エネ等住宅が1,000万円、それ以外は500万円です。

受贈者の要件に加え、住宅用の家屋にも細かな条件があるため、すべての住宅取得者に当てはまるとは限りません。

例えば、新築・取得した住宅用の家屋の場合、登記簿上の床面積は、40m2以上、240m2以下で、床面積の1/2以上が受贈者の居住に用いられる必要があります。

また、2009~2023年の贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがない人が対象です。

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

不動産の贈与税の計算

不動産の贈与税の計算

祖父母や父母から「不動産」を贈与された場合も、贈与税の支払い義務が生じます。登記名義を変更した時点で贈与とみなされるため、受贈者は忘れずに申告・納税をしなければなりません。

名義変更して譲り受けたら贈与となる

土地や家、マンションなどの不動産名義変更手続きは「贈与登記」ともよばれます。物や金銭のやりとりがないと贈与の意識が薄れがちですが、不動産は名義変更で贈与が成立する点に注意が必要です。

贈与税の申告・納税は必ず「もらった年の翌年の2月1日~3月15日」に行いましょう。税務署にも名義変更の事実が通知されており、申告・納税を怠った場合はペナルティが科される対象となります。

不動産の贈与税の計算方法は金銭の贈与時と同じです。ただし、不動産の場合は取得した土地・建物を評価し、どのくらいの経済的価値があるのかをあらかじめ算出する必要があります。

土地の評価額とは

土地の評価方法には、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。対象の土地が路線価地域と倍率地域のどちらに該当するかは、国税庁が公開する「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で確認しましょう。

参考:財産評価基準書 路線価図・評価倍率表|国税庁

路線価方式とは、路線価(道路に面する標準的な宅地1m2あたりの価額)に基づいて評価額を算出する方法です。路線価に面積を乗じるのが基本ですが、これにさまざまな調整を加えて算出します。例えば、奥行きが短いまたは長い部分についてはそれぞれ法令解釈通達で指定された補正率を使って調整します。

倍率方式は、路線価のない地域での算出方法で、計算式は「固定資産税評価額×倍率」です。

建物の評価額とは

建物の評価額は「固定資産税評価額×1.0」で算出します。従って、評価額は固定資産税評価額と同額です。

固定資産税評価額は毎年役所から届く「固定資産税の納税通知書(課税明細書)」で確認できます。明細書の項目は「土地」と「家屋」に分かれており、該当する家屋の「価格」に記載された数字が固定資産税評価額です。

明細書には「課税標準額」という項目もありますが、これは評価額を算出する基となる金額です。

通常は「評価額=課税標準額」が成り立ちますが、課税標準の特例措置などが適用される場合は、「評価額>課税標準額」となります。評価額と課税標準額を間違えないようにしましょう。

不動産の生前贈与の注意点

不動産の生前贈与の注意点

不動産の生前贈与にはいくつかの留意点があります。無用なトラブルを避けるために、贈与の方法や不動産の利用、相続について、家族でしっかりと話し合っておきましょう。

土地を無償で借りる方法もある

祖父母や父母が土地を所有している場合、贈与をせずに無償で借りるという選択肢もあります。貸主から土地を無償で借用し、一定期間後に貸主に返還する契約は「使用貸借」とよばれます。 

使用貸借であれば贈与税の支払いはなく、賃貸借のように支払うべき料金も発生しません。ただし貸主が死去すると「相続問題」が絡んできます。仮に、土地が自分以外の相続財産となった場合、土地の使用を巡りトラブルになる可能性があるでしょう。

使用貸借をする場合は、関係者全員にその事実を知らせたうえで、貸主と借主との間で使用貸借契約書を交わすことをおすすめします。

また、一部の相続人が生前贈与で受け取った利益は「特別受益」とよばれます。使用貸借が特別受益とみなされた場合、遺産相続では相続人がすでに特別受益相当額の遺産を受け取ったとして、遺産分割協議を行うのが通常です(持ち戻し)。

持ち戻しを避けたい場合、被相続人は「特別受益を持ち戻す必要がない旨」を遺言書に残しておく必要があります。

相続時に小規模宅地等の特例が使えない

「小規模宅地等の特例」とは、相続・遺贈で取得した財産の中に、被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族により「事業の用」または「居住の用」にされていた宅地があった場合、相続税の評価額が割り引かれる特例です。

被相続人が居住していた宅地は、残された家族の住居となるケースが多く、多額の相続税が課せられると、宅地を手放し路頭に迷ってしまう可能性があります。

小規模宅地等の特例が適用となれば、最大80%まで評価額が減額されるため、相続税の負担は軽くなるでしょう。

小規模宅地等の特例は生前贈与には適用されません。税負担の面において、相続と生前贈与のどちらがよいか、家族で話し合う必要があるでしょう。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

贈与の方法や必要性を検討しよう

贈与の方法や必要性を検討しよう

預貯金や不動産等の財産の贈与には贈与税がかかります。課税制度は暦年課税と相続時精算課税の2種類があり、どちらにもメリットがあります。贈与を検討する際は、いつ・誰に・どのくらい贈与するのかを明らかにしたうえで、適切な方法を選ぶ必要があるでしょう。

贈与財産の中に不動産がある場合は、必ずしも生前贈与がよいとは限りません。多額の贈与税が課せられることを考えると、小規模宅地等の特例が活用できる「相続」という選択肢もあるでしょう。

財産の贈与方法や権利関係で困ったことがあれば、税理士や弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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